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新年が明け、春がやってくるのが待ち遠しい時期。目には見えなくても、庭や街中、公園や観光地で育つ植物たちは季節の変化を敏感に察知して、春に向けて成長しています。中でもいち早く春を知らせてくれるのは、黄色い花を咲かせる植物たち。神奈川の自宅の庭で25年以上ガーデニングを楽しむベテランガーデナーの遠藤昭さんに、春に咲く黄色い花を教えていただきます。
目次
「春は黄色い花からやってくる」
「春は黄色い花からやってくる」と言われるのをご存じだろうか? 確かに、自然界の植物を見渡すと、春に真っ先に咲くロウバイを始めとし、黄色い花が多い。今回はそんな春を告げる黄色い花にスポットを当ててみよう。
ロウバイ(蝋梅)
まずはロウバイだ。
学名:Chimonanthus praecox
和名:ロウバイ(蝋梅)
科名 / 属名:ロウバイ科 / ロウバイ属
ロウバイは名前の通り、ロウ(蝋)で作った造花のような花だ。春一番に黄色い花を咲かせ、その高貴な香りで親しまれている。早いものは12月中に咲き始め、2月頃まで楽しめる。中国原産の落葉低木で、日本には江戸時代の初期に渡来したとされる。他の花に先駆けていち早く咲くので、生け花や庭木としても好まれている。
ロウバイは大きく2つの品種に分けられる。花の内側が茶褐色をした、いわゆるロウバイと、花弁すべてが黄一色のソシンロウバイで、一般に出回っているものはソシンロウバイが多い。
樹高は4m程度まで大きくなり、碧空を背景に咲くロウバイは美しい。耐寒性、耐暑性とも強く、初心者におすすめの花木だ。かなり大きくなるので、鉢植えには難しく、庭木として楽しむことをおすすめする。
半日陰から日向でよく育ち、土壌もあまり選ばないので育てやすいが、過湿は嫌うので水はけのよい所に植える。
施肥は、4~5月の成長期と12月に寒肥(かんごえ、かんぴ)を。化成肥料より発酵油粕のほうがよいだろう。
苗の購入は、やはり開花苗で。花を確かめられる時期にポット苗を購入し、寒さの和らぐ2月中旬から3月に地植えにする。
増やし方は種子からでもいいし、挿し木でも増やすことができる。
ロウバイの香りは言葉では表現できないほど魅力的なので、ぜひ、実際の生の香りを味わってほしい。
フクジュソウ(福寿草)
さて、次に春を告げる花は福寿草だ。
学名:Adonis ramosa
和名:フクジュソウ(福寿草)
科名 / 属名:キンポウゲ科 / フクジュソウ属
フクジュソウは日本原産で、本州から北海道に広く分布する山野草だ。私事だが、僕のオヤジの名前が福寿で、僕にとって、とても親しみのある花なのだ。オヤジも「明るく、おめでたい性格」だったが、フクジュソウも、福寿というおめでたい名前のため、お正月の鉢ものとして人気で、東京近辺の自然環境下では開花は立春頃だ。
東京近辺では、降雪の季節と重なり、時として雪の中から黄色い花を覗かせる素敵な光景に巡り合えることがある。葉はニンジンの葉に似ている。
育てる環境としては、落葉樹の下や明るい木もれ日の当たる所が適している。鉢植えの場合、冬は午前中に日が当たる場所に置くこと。梅雨時期に葉が枯れるので、その後は軒下や棚下などへ移動し、休眠させる。
鉢植えの水やりは、表面が乾いたらたっぷり、という草花栽培の定石通りだ。
スイセン(水仙)
次の黄色い花は、ペチコートスイセンと呼ばれるナルキッスス・バルボコディウムだ。
学名:Narcissus bulbocodium
その他の呼び方:ペチコートスイセン、原種スイセン
科名 / 属名:ヒガンバナ科 / スイセン属(ナルキッスス属)
ナルキッソスと聞くと、ギリシャ神話の美少年や、ナルシストを思い浮かべる方も多いと思うが、まさしく春一番に咲く美少年的な美しさを備えた原種水仙なのである。
ナルキッスス・バルボコディウムは原種スイセンの代表種で、ヨーロッパや北アフリカに広く分布する。ギリシャ神話とも地理的に合致するのだ。原生地の地中海式気候は冬に湿潤で夏は乾燥するため、このナルキッソスも乾季明けの秋から葉を伸ばし、早春に黄色い花を咲かせ、初夏には葉を落とし、夏は休眠する。
ペチコートスイセンの原生地は地中海式気候で、雨期と乾季がはっきりしており、雨期に成長する植物だ。鉢植えの場合、生育期は日当たりのよい場所で育てる。冬は厳しい寒さに当たると花芽が傷むので、東京近辺では、南側の軒下など寒さに当たりにくい場所で育てる。
鉢植えの場合は、肥料は生育期に2週間に1回、液体肥料を施す。
ミモザ (ギンヨウアカシア)
さて、次の黄色い春を告げる花は、お馴染みのオージープランツのミモザだ。
学名:Acacia baileyana
和名:ギンヨウアカシア その他の名前:ミモザ
科名 / 属名:マメ科 / アカシア属
毎年、バレンタインデーには開花する。早春の青空に黄色い可憐な花が舞い、葉も銀葉で明るく美しく、春を感じて心ウキウキさせてくれる魅力的な花だ。
日本では一般にミモザと呼ばれ、銀葉アカシア=Acacia baileyanaがミモザとして知られているが、もともと、アカシアはじつに多くの品種が世界中に分布するといわれる。多くがオーストラリア原産で、現地ではワトル・ツリー(wattle tree)と呼ばれている。
ボンボリ状の可愛らしい黄色の花と、ミモザという響きも素敵で、近年、庭木としても人気だ。マメ科植物なので、痩せた土地でも育つのも魅力だ。
スワッグを作るのも楽しい。
アカシアについては、『【ミモザ】庭に春を呼ぶ!育てやすい種類と挿し木・タネ播き・育て方』、
また、スワッグの作り方は『ミモザのスワッグを作ろう! 簡単にできる、春を告げる黄色のスワッグ』も参考に。
菜の花(ナバナ)
さて次は、誰もが春の花といえば思い浮かべる、菜の花だ。
ロウバイにも負けないほど、春の早い時期に咲き出す。「菜の花」とは、アブラナ科アブラナ属の植物の一般総称で、地中海沿岸が原産地とされ、日本には弥生時代に中国から渡来し、日本全国に広がったといわれている。しかし、菜の花に関してはさまざまな説があるので、ここでは、「春を告げる黄色い花」としての紹介にとどめよう。
菜の花は、用途によって食用、観賞用、菜種油用と大きく3つに分けられ、それぞれ品種が異なる。食用の菜の花は、菜花(ナバナ)とも呼ばれ、若い茎や、つぼみを食べる。
料理方法としては、おひたしとか、からし和えとか、家庭でもお馴染みだ。桜のシーズンに黄色い畑が広がる光景は、何とも日本的で美しい。ところで、一般的に菜の花といわれているのは西洋ナバナだ。
学名:Brassica rapa L.(和種ナバナ) Brassica napus L.(洋種ナバナ)
和名:ナバナ、菜の花 英名:Rape
原産地:地中海等諸説あり
科名 / 属名:アブラナ科 / アブラナ属
菜の花畑は、多くの日本人にはお馴染みだが、広くヨーロッパやアメリカでも、主に菜種油の原料として栽培されている。ドイツのドレスデンを旅行中に、実に広域に広がる菜の花畑に出くわした。見渡す限り黄色の菜の花畑は、なかなか感動的だ。そして、花も日本の菜の花よりも小さかった。
ミッキーマウスツリー
さて、「春は黄色い花から」の最後は、子(ねずみ)年にちなんで、ミッキーマウスツリーをご紹介しよう。
耐寒性があまりないので温室栽培だが、1月頃に黄色い花を咲かせ、やがて実がなると、あのミッキー君に似ているのだ。Ochana serrulataが正式名称で、南アフリカの原産。子どもたちに人気の花だ。干支にちなんで、今年はカワイイ、ミッキーマウスツリーも育ててみませんか?
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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