桜やツツジと並び、日本を代表する花木であるツバキ。日本はもとより世界中の公園や庭園の定番花木として愛されている花木ですが、その原産地は日本や中国といった東アジア。花形や花色のバラエティも豊富で、常緑の葉も美しいツバキは、庭木だけでなく盆栽や鉢植えでも栽培することも可能です。花が少なくなる季節を彩るツバキの特徴や育て方、品種などを解説いたします。

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ツバキとは

ツバキ
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Camellia japonicaという学名が示すように、ツバキは日本原産の花木。日本国内で作出された品種だけでも2,000種を超え、欧米でも「カメリア」と呼ばれて愛されています。9月から4月まで多彩な品種が楽しめ、日本の気候・風土にも適したツバキの魅力を紹介します。

古くから庭木として親しまれている日本を代表する花木

ツバキ
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万葉集に9首もの歌が詠まれているツバキは、日本人にとって古から馴染みのある植物。ツバキが観賞用に栽培されるようになったのは中国では900年以上も前、日本では室町時代中期頃といわれています。

日本に分布するツバキには、ヤブツバキとユキツバキ(ヤブツバキの亜種ともされている)がありますが、前出のCamellia japonica(ヤブツバキ)は、日本列島とその周辺に限って自生する種で、青森県の夏泊半島が北限とされています。高さが15mにも達する常緑高木で、海岸や山地に自生。日本の照葉樹林を代表する木でもあります。11~2月、もしくは2~4月に、枝先に濃紅か紅色の直径5~7cmの花をつけます。まれに、淡紅色や白色のものもあります。

ツバキの由来と分布

ツバキ
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ツバキという名前は、「厚葉木(アツバギ)」または「艶葉木(ツヤバギ)」に由来するとの説がありますが、「春に咲く木」との「椿」という国字(和製の漢字)があてられていることからも、日本人がこの花木に寄せる思いの深さが伝わってきます。日本では古くから、材の硬さを生かして器具や彫刻の材料にするほか、灰は媒染材に、種子は灯火や化粧用の油にと、有用な植物資源として利用してきました。

ツバキ科の植物は、世界の湿潤な熱帯や暖温帯地域を中心に分布していますが、camellia属はすべてアジア東南部が原産です。中国南部を中心に、東は日本、西はネパール、南はインドネシアといった広い範囲に、約250種類が分布しています。

ツバキの種類と仲間

ツバキ
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古くから観賞用に用いられてきたのは、日本原産のヤブツバキ、ユキツバキ、サザンカ、中国原産のトウツバキの4種でしたが、近年では、花形や花色、香りなど、たくさんの原種が栽培されるようになり、カタログ販売などで多様な原種苗が入手できるようになりました。

原種だけをみても、直径が数cmに満たない極小輪から10cmを越える大輪まで、花色も白、桃色、紅色、黄色、さらに絞りや斑入りのものまでバラエティに富んでいます。

獅子咲きのツバキ
獅子咲き品種 ’Jury’s Yellow’ SariMe/Shutterstock.com

植物の栽培技術が向上した江戸時代には、選抜や育種により、ツバキにも多くの名花が誕生しました。これらが、1800年代にヨーロッパに紹介されると、短期間で世界中に普及。現在では、欧米やオーストラリア、ニュージーランドなどでも交雑育種が進んでいます。

ヤブツバキ系 ‘侘助’
ヤブツバキ系 ‘侘助’ Hope Dorman/Shutterstock.com

有名なものは‘侘助’、‘黒椿’、‘袖隠’といったヤブツバキの古典品種があり、ほかにも熊本県で発展した肥後椿や、サザンカにも‘東雲’、‘獅子頭’、‘富士の峰’といった古典的な品種があります。日本では‘侘助’に代表される一重のものが好まれますが、欧米や中国では八重咲きや牡丹咲き、獅子咲きといった豪華な花形が人気のようです。

ユキツバキ系 ‘乙女椿’
ユキツバキ系 ‘乙女椿’ phototenki/Shutterstock.com
サザンカ系 ‘勘次郎’
サザンカ系 ‘勘次郎’ Taow Phitchanee/Shutterstock.com

●その他の品種についてはこちら『日本原産の美しい花木 ツバキの魅力を再発見!

ツバキの育て方

日本の風土、気候のもとで発達し、日本人に愛でられてきたツバキ。日本原産のため、日当たりや土質、風や寒さといった、生育環境への適応能力が高く育てやすい花木といえます。庭植えにして大きく育てるだけでなく、ベランダなどでの鉢植え栽培もおすすめです。

栽培環境

木の寿命が長く丈夫なツバキは、土壌を選ばず、日向でも日陰でも育ちます。とはいえ、花つきをよくするには、寒風の当たらない、半日陰の環境がベスト。西日を避けられる、建物の東側か南側で、乾燥しすぎない場所を選びましょう。鉢植えは、半日陰で風当たりの少ない場所に置きますが、花芽のできる6月から7月にかけては、やや日当たりのよい場所に移動して日光を十分に当てましょう。

水やり・肥料

水やり
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水はけのよい土壌を好むツバキに、過度の水やりをすると根腐れの原因になってしまいます。とはいえ、鉢植え、庭植えともに、植えつけてから2年未満の株は、土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。特に、根の張りが遅くなる鉢植えは、乾燥によるダメージが大きいため、土が乾いていないかチェックを忘れずに。

また、開花期の株は、花弁を広げるために水を必要とするのでたっぷりと与えましょう。庭植えで植えつけてから2年以上たつ株は水やりの必要はありませんが、雨が少なく土の表面が乾く真夏は、たっぷりと与えます。高温乾燥の時期は時間帯にも気をつけたいもの。日中の水やりは葉焼けや新芽を傷める原因となるので、朝か夕方に行いましょう。

黄変した葉のツバキ
黄変した葉のツバキ。

庭植えは2月に、鶏フンなどの有機質肥料もしくは緩効性の化成肥料を、寒肥として株元の周辺に埋めておきます。鉢植えは3月にお礼肥として化成肥料を株元に。また秋にも同様に置き肥をしておくと、つぼみが充実します。酸性(pH4.5~6.0)を好むツバキは、用土がアルカリ性になると葉が黄色くなって弱ってきます。そのため、石灰や草木灰などアルカリ性の肥料は施さないようにします。

病気・害虫

花弁に茶褐色の不規則な病斑が生じる「花腐れ菌核病」や、枝枯れの原因になる「炭疽病」、葉が餅上に肥大する「もち病」などが主な病気です。菌核病や炭素病は、病気にかかった部分を放置すると伝染が広がるので、つみとって焼き捨て、マンネブダイセンを散布します。

もち病は、バシタック水和剤を新葉が展開する前から散布しておくと予防になります。

チャドクガ
チャドクガ  traction/Shutterstock.com

ツバキにつく害虫といえば、チャドクガです。早ければゴールデンウィークあたりから、後半は7月下旬から8月にかけて発生します。チャドクガは葉裏に産卵して、ふ化後しばらくは葉裏に集団でかたまってつきますが、数週間すると分散して被害が拡大します。名前の通り、毛に毒があるので、刺されると痛痒くかぶれます。駆除にはスミチオンやマラソン乳剤などが有効で、スプレー式殺虫剤も多く市販されています。カイガラムシやアブラムシもつきやすい害虫です。排せつ物を栄養源に「すす病」も発生するので、薬剤での早めの予防・駆除を心がけましょう。

植え付けや植え替え・増やし方

ツバキを育てるには、苗木を入手して植えるのがポピュラーな方法です。一般的な品種は、園芸店やガーデンセンターなどでも売られていますが、展示会や植木市、カタログによる通信販売などを利用すれば、原種や外国産の品種も入手できます。植え付け方法や増やし方のコツを紹介しましょう。

植え付け・植え替え

ツバキの鉢植え
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庭植えの場合、真夏と厳寒期を除けば、いつでも植え付けができますが、適期は春(3月中旬~4月)、梅雨(6~7月)、秋(9~10月)の3回。強く剪定した木や、鉢植えにする場合は適期に行いましょう。

地植えの場合は、苗の根鉢の倍程度の深さと幅に掘り、有機質を含む堆肥などを混ぜておくとよいでしょう。深植えにならないよう、かつ、すき間のできないように植えたら、根元に十分水をやります。地面が凍結するような寒冷地では、敷き藁やビニールなどでマルチングを施します。

鉢植え
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鉢植えの場合は、排水のよい用土を選び、根腐れを防ぐことに注意を払いましょう。排水性、保水性に優れた酸性の赤玉土や鹿沼土に、有機質の腐葉土やピートモスなどを混合するとよいでしょう。根張りをよくするには、大きすぎる鉢はNG。根鉢より一回り大きめを目安に選びましょう。鉢底に深さ1~2cm程のゴロ土を敷いてから、用土を入れます。苗をポットから抜いたら、根の先を1~2cm切り取って中央に置き、竹箸などでつきながら隙間ができないように用土をしっかりと入れていきます。

鉢の底穴から根がはみ出してきたら、植え替えのタイミングです。もとの根鉢の一部や底のゴロ土を落とすように少しほぐしてから、一回り大きい鉢に植え付けと同じ要領で植えます。

増やし方

ツバキの挿し木
挿し床に挿したツバキの枝。

発根しやすくて手間もかからないツバキは、一般的には挿し木で増やします。適期は6月下旬~8月上旬。9月末までには発根させて、鉢上げできるようにしましょう。挿し穂には、生育の旺盛な木から、今春伸びた新しい枝を選びます。大きい葉は半分に切り、1枝に2~4枚の葉がつくように下処理を施します。挿し床には、肥料分のない清潔な土を用意。赤玉土や鹿沼土、気流砂、バーミキュライトなどの細粒が適しています。

ほかにも、取り木や接ぎ木といった方法もあります。また、実生(種子を播く)で繁殖することができますが、園芸品種では親と同じ花は咲きません。

ツバキの種子
ツバキの種子。traction/Shutterstock.com

ツバキ科の植物

紅茶や緑茶になる「茶の木」も、じつはツバキ科ツバキ属です。ほかにも、ツバキの仲間には、私たちの生活に関わりの深い植物が多くあります。

サザンカ

サザンカ
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日本原産で、北海道を除くほぼ全域で自生。高さ5~6mになる常緑小高木で、暖かな産地に育ちます。野生のサザンカは白花で、香りがあるのが特徴。江戸時代以降、園芸化が進み、ツバキと同じく多くの品種があります。ツバキが春に咲くのに対して、サザンカは秋から冬に咲くものが多く、花が少なくなる季節の庭に華やかさを提供してくれます。

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チャノキ

チャノキ
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紅茶や緑茶、ウーロン茶など、世界中で飲用されている〝茶=tea〟は、Camellia sinensisの葉です。原産地は中国西南部で、ベトナムからインドにかけての熱帯山地や、亜熱帯、暖温体の森林で自生しています。タンニン含有量の高い変種のアッサミカは主として紅茶用に、耐寒性がありタンニン含有量の少ない変種シネンシスが主として緑茶用に栽培されています。

モッコク

モッコク
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海岸に近い山地に生える常緑高木。整った樹形と落ち着いた雰囲気で、光沢のある葉に赤い葉柄も美しく、優れた庭園樹です。かつてはツバキ科とされていましたが、近年ではモッコク科(Pentaphylacaceae)として分類されるようになりました。

サカキ

サカキ
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神前にお供えする玉串にされるサカキ(マサカキ)。山地に自生していますが、神社の境内に植えられて、御神体とされていることもあります。6~7月に、直径1.5cmほどの白い5弁花をつけ、果実は黒熟します。モッコクと同じく、現在ではモッコク科に分類されています。

ヒサカキ

ヒサカキ
Skyprayer2005/Shutterstock.com

暖地の林床に時勢するヒサカキは、生け垣や庭木として植えられ、サカキの代用として神事にも使われます。春につける小さな壺形もしくは鐘形の白い花には、強い異臭があります。ヒサカキも現在はモッコク科に分類されています。

花や葉を楽しむことができるツバキの栽培を楽しもう!

ツバキ
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日本原産のツバキとサザンカは、日本の気候にマッチした育てやすく、花木に初挑戦というガーデナーにもおすすめの植物です。品種を選べば、秋から春までと楽しめる時期も長く、開花する植物が少ない季節に華やかさを与えてくれます。茶花にもよく使われるツバキは、一輪挿しにしてもさまになりますし、水に浮かべたり、洋風の器に活けたりとアレンジもききます。自分で育てたお気に入りの花を、部屋にも飾ってみてはいかがでしょう。

ツバキ
Bildagentur Zoonar GmbH/Shutterstock.com

Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:
「NHK趣味の園芸 人気品種と育て方 ツバキ、サザンカ」(日本ツバキ協会編・NHK出版刊)

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