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豊富な種類が魅力の「タイム」! 育て方から料理への活用方法まで大公開

豊富な種類が魅力の「タイム」! 育て方から料理への活用方法まで大公開

自宅でハーブを育ててみたいと思っているものの、うまく育てられるか自信がないという人も多いのではないでしょうか? ハーブはもともと草という意味の植物。少しのコツさえつかめば、育てやすい種類もありますよ。ハーブ初心者さんにオススメの種類の1つに「タイム」があります。タイムと一口にいっても、実は種類が豊富にあることをご存じですか? 今回は、ガーデンセラピーを学べる教室「花音」代表の堀久恵さんに、タイムの基礎知識や種類をはじめ、うまく育てるためのポイントや、タイムを料理に活用する方法などをご紹介いただきます。

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タイムはどのような植物?

タイムは、シソ科・イブキジャコウソウ属の多年草に分類されるハーブの総称。ハーブの中でも特に種類が豊富で、350種類を超える品種があります。病害虫や暑さ・寒さに強く、初めてガーデニングに挑戦する人でも育てやすいのも嬉しいですね。ヨーロッパ・北アフリカ・アジアが主な原産地で、日本に自生している品種もあるんですよ。

手でこするとスッとする独特な香りをもち、料理の香りづけやハーブティー、精油(エッセンシャルオイル)などに活用され、人気の高いハーブです。タイムの茎や葉に含まれているチモールという成分は、ハーブの中でも強い殺菌作用と抗菌作用があり、古代エジプトではミイラを作る際の防腐剤としても使われたそう。このように、タイムは薬草として、人類が最も古くから利用してきた植物の一つで、歴史あるハーブなのです。

タイムの人気品種

タイムはまず大きく分けて、茎が上に立っている「木立ち性」と、茎が立たず横方向に這うように成長する「ほふく性」の2種類があり、ここから、さまざまな品種へと分かれていきます。植えるスペースの広さや使う用途によって、うまく使い分けましょう。それぞれ代表的な人気品種について、具体的にご紹介していきますね。

【木立ち性】人気品種その1:コモンタイム

【木立ち性】人気品種その1:コモンタイム

タイムの中で最もポピュラーな品種です。コモン(common)というのは、一般・通常という意味で、学名からも「一般的な」といった意味が読み解けます。古くから親しまれてきた品種で、食べたり飲んだりといった食材として使い勝手もよいですし、知名度や人気も高く、流通量も多いのが、このコモンタイム。

他の品種と比べると爽やかな強い香りが特徴で、魚や肉の臭みをうまく消してくれるため、料理によく活用されます。丈は30cm、幅は40cm程度に成長する木立ち性で、夏に近づくと淡いピンクの小さな花を咲かせます。この花はエディブルフラワーとして食べることもできますよ。

【木立ち性】人気品種その2:レモンタイム

【木立ち性】人気品種その2:レモンタイム

丈30cm、幅30cmほどに成長する木立ち性のタイムです。一見するとコモンタイムに似ていますが、名前の通りレモンによく似たさっぱりとした香りが特徴です。コモンタイムよりも軽めの爽やかな香りなので、料理はもちろん、ハーブティーやポプリにもおすすめですよ。レモンの代用としても使い勝手がよく、パウンドケーキなどのお菓子にもぴったり! 比較的成長スピードが早い種類です。

また、このレモンタイムを園芸用に品種改良したものに「ゴールデンレモンタイム」があります。ゴールデンレモンタイムは葉のふちが黄色くなります。食べたり飲んだりする場合は、レモンタイムを使用しましょう。

【木立ち性】人気品種その3:マスティックタイム

【木立ち性】人気品種その3:マスティックタイム
Israel Hervas Bengochea/Shutterstock.com

木立ち性で、丈は30~60cmにもなることがある比較的大型のタイムです。花の色はピンクが多い一般的なタイムとは異なり、フワフワとした綿毛のような可愛らしい白い花が楽しめます。スペインのイベリア半島に生息する固有種です。

コモンタイムに比べると、甘く強い香りがあるのが特徴で、精油(エッセンシャルオイル)としても活用されています。精油になるとスパニッシュマジョラムやタイムマストキナという名前になって販売されていますので、ご注意くださいね。

【ほふく性】人気品種その1:クリーピングタイム

【ほふく性】人気品種その1:クリーピングタイム

地面を這うように横に成長するほふく性のタイムで、丈は5~10cm程度です。「ワイルドタイム」とも呼ばれ、主にヨーロッパに自生する品種です。初夏になると手毬のように丸いピンクの花が絨毯のように咲き広がる様は圧巻! 観賞用としてもオススメです。

クリーピングタイム
olko1975/Shutterstock.com

地面を覆うグラウンドカバーとして適しているので、雑草対策にもぴったり。植えてしばらくして根がしっかりついたら、怖がらず踏みつけてください。その上を普通に歩くくらいなら、問題ありませんので安心してくださいね。あまり人が通らないところに植えてもよいですが、そうすると草丈が上に伸びてきます。草丈を低くしたい場合は適度に踏んであげましょう。

【ほふく性】人気品種その2:イブキジャコウソウ

【ほふく性】人気品種その2:イブキジャコウソウ 
backpacking/Shutterstock.com

滋賀県伊吹山で発見され、ジャコウの香りがするのでこの名前が付いたといわれています。クリーピングタイムによく似ているのですが、ヨーロッパ原産であるクリーピングタイムに対し、イブキジャコウソウはアジア原産で、クリーピングタイムとは草丈や花の付き方が若干異なります。

耐寒性に優れたタイムで、もともと日本に自生しているため、手間もかからず非常に育てやすい品種。葉には爽やかさとともにほんのり甘い香りがありますが、飲んだり食べたりするのに向く品種ではありません。

タイムを上手に育てるポイント6選

タイムは、ハーブの中でも比較的丈夫といわれますが、そうはいっても、生き物です。放っておいても勝手に育ってくれるわけではありません。ですが、ポイントをいくつか押さえることで失敗は少なくなります。ここでは、タイムを上手に育てるポイントを6つ、ご紹介します。

【ポイント1】栽培環境

タイムを丈夫に育てるには、まず栽培環境を整えることが大切! よく日光が当たり、風通しのよい場所で栽培しましょう。もともと地中海沿岸に自生しており、乾燥気味の環境を好むため、水はけの悪い場所は避けてくださいね。

タイムは耐寒性に優れており、氷点下以下にならなければ根が枯死することはほぼないので、初心者でも育てやすい種類といえますが、夏場の高温多湿は注意が必要です。葉が茂ったままにしておくと風通しが悪くなり、蒸れて枯れてしまうことも…。夏場は特に水やりは控え、風の通り道を意識して、枝数を減らすなどしてあげましょう。

プランターを使用して育てる場合は、ハーブを栽培するのに適した配合になっている専用の土を使うとよいでしょう。ハーブ用の土は、ホームセンターの園芸用品コーナーで購入できます。

【ポイント2】種まき

タイムは一般的には苗や挿し木から増やすことが多いですが、タネから育てることも可能です。種まきに適した時期は、4~5月と9~10月の年2回。これはお住まいの地域によって異なりますので、タネ袋に書かれている気温をよくチェックして、適した時期に行ってくださいね。

小さなポットに土を入れ、タネをひとつずつ間隔を空けて丁寧に置いていきましょう。発芽には日光がたっぷりと必要なので、タネの上に深く土は被せないようにします。

種まき後は水をたっぷり与えます。土を深くかぶせていないと、タネが流れる可能性もあるため霧吹きを使用しましょう。芽が出るまで水は毎日、しっかり地面が濡れるまで与えてくださいね。

芽が出て本葉が3枚ほどになったら、よく育っているものだけを残し、それ以外は、丁寧にカットします。これを「間引き」といいます。この時、手で抜くと、せっかく育った根がごっそり抜けてしまいますので、ハサミを使ってくださいね。

そのあと、草丈が5cmくらいに育ったら、地面や新しい鉢に植え替えてあげましょう。

【ポイント3】植え付け・植え替え

タイムの植え付けは、4月中旬~6月下旬、または9月中旬~下旬頃がおすすめです。人間にとって過ごしやすい季節は植物にとっても同じ。なるべく負担がない季節のほうが失敗は少ないですよ。地面に植える場合は、高畝を作り、20cm程度の間隔を空けて苗を植えましょう。高畝を作ることで、水はけと通気がよくなります。また、タイムは一見すると草のようですが、分類上は常緑低木…つまり「木」なのです。うまく根付くと茎は木質化し、肥大成長しますから、植える場所は広めに取っておくのがおすすめです。

鉢植えの場合は、鉢底ネット、その上に鉢底石を敷いて、土を入れましょう。この際、培養土やハーブ用の土を使用するのがおすすめです。根はあまり深く張らないので、浅めの鉢でも大丈夫です。タイムは丈夫でよく成長するため、元気に育てたいなら、大きさに応じて植え替えも必要です。タイミングは、鉢底から根が出てきたり、水を与えてもあまり吸わなくなったりした時。作業する時期は、春や秋など植え付けと同じ頃がおすすめ。一回り大きな鉢へ植え替えましょう。

【ポイント4】水やり

全般的にハーブを育てる時に大事なのが、水の与え方。ハーブと一口にいっても、水が好きなもの・嫌いなものがあります。今回のタイムは、もともと乾燥を好む植物なので、頻繁に水やりをする必要はありません。地植えでしっかり根が付いた場合は、自然の雨だけでも十分なくらいです。

特にタイムは、水をやり過ぎると根腐れを起こしやすく、そこに高温が加わると枯れてしまうこともあるため注意が必要です。土の表面が完全に乾いたら、たっぷりと与えましょう。そして次に水をやるタイミングは、また土の表面が完全に乾いてから。水をあげなきゃ!  と思うのではなく、この土の表面が乾くのを待つことに意識を向けてみてください。特に冬は、寒さで成長が緩やかになるため、土が乾いてから数日後に水をやるくらいでも十分ですよ。

【ポイント5】肥料

植え付ける時の土に、緩効性肥料を混ぜておきましょう。その後の追肥は、地植えの場合は、基本的にあまり必要としません。鉢植えの場合は、春と秋に1~2回の置き肥または月5回程度の液体肥料を与えると、葉の成長はよくなります。ですが、肥料を与えすぎると根腐れの原因になったり、香りも弱くなるため、注意が必要です。使用する肥料に合わせて、回数などは調整してください。

【ポイント6】収穫

植え付け後、根が張り、しっかりした株に生長したら、葉を茎ごと刈り込んで収穫します。一年を通して緑なので、長期にわたり収穫ができるのも、タイムを栽培するメリットですね。収穫のルールは、一度に葉をすべて収穫しないこと! 葉がなくなるとそれ以上成長できなくなる恐れもあるため、1回の収穫量は全体の1/3くらいまでにとどめておきます。そして大きくなってきたら、また1/3ほど収穫します。その繰り返しです。

実はこの収穫作業は、ハーブを育てる上でとても大事な株元の通気を確保する作業にも繋がっています。生えっぱなしにせず、こまめに収穫して活用してください。収穫する際は葉の根元近くを切り、枝数を減らすようにしましょう。また、一年中緑のハーブですが、成長が鈍る冬は収穫を控えるのがおすすめです。また来春に、元気な芽が出てくるのを楽しみに待っていてくださいね。

タイムの上手な管理方法

タイムはとにかく高温多湿に弱いです。私の住む埼玉県熊谷市は日本一暑い街…タイムは育ちにくい環境だといえますね。なので、水やりは控えて、地植えも鉢植えも自然の雨にお任せする程度にしています。そして蒸れないように、株元の風通しを確保するため、収穫をこまめに行っています。梅雨前には全体の1/3程度のボリュームにし、秋の終わりには全体の1/2程度まで剪定しておくと、翌年の春には新しい芽が出てきてくれますよ。タイムは耐寒性に優れているため、冬でも枯れることはないものの、地域によって異なりますので、冬越しが心配な場合はご注意ください。

タイムを料理に活用する方法

タイムは料理にとても使えるハーブ! ぜひいろいろな方法で活用してください。

【香りづけ】

爽やかな香りをもつタイムは、料理の香りづけとしても最適。独特の風味が出て味の変化を楽しめるとともに、見た目のアクセントにもなりますね。香りづけにはコモンタイムが向いています。パウンドケーキにもおすすめ!

パウンドケーキにもオススメ!

【臭み消し】

肉や魚を調理するとき、独特の臭みが気になる人も多いかもしれません。そんな時、下ごしらえをする段階でタイムを一緒に入れておくと、スッとした爽やかな香りが臭みを消してくれます。使用するのは生葉のままでOK! また、タイムは殺菌・防腐作用をもつ成分を含むため、衛生面でも一役買ってくれます。

【ハーブオイル】

オリーブオイルに生のタイムの枝を漬け込んでおくと、ハーブオイルが出来上がります。タイムとオリーブオイルの組み合わせは、特にイタリア料理に合いますよ。

【ハーブビネガー】

ハーブビネガー

タイムはお酢との相性もばっちり! ドレッシングやピクルスを漬け込む際などにもおすすめです。

育てやすいタイムで手作りのハーブを楽しもう

タイムは、比較的丈夫で育てる手間もかからないため、今回ご紹介した育て方のポイントを押さえれば、初心者でも挑戦しやすいハーブの一つ。また、育てるだけではなく、そのあとの楽しみも無限に広がります。種類も豊富なので、花や香りなど自分好みの品種を見つけ、ハーブ栽培を始めてみませんか?

【ご注意ください】

タイムは強い香りが特徴で、刺激成分があります。妊娠中の方は使用を控えめにしてください。

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