秋晴れの下、風にそよそよと吹かれながら咲くコスモスは、まさに秋の風物詩。広い高原を埋めつくすように、ピンクや白の花が咲く光景は見応えがあります。可憐でたおやかなのに、強風が吹いても倒れないしなやかで強い一面を併せもつ、生命力の強さも魅力です。近年は、花色、花形ともに多彩になり、特にコスモスの仲間のチョコレートコスモスの切り花は通年流通し、人気。ここでは、コスモスのルーツに始まり、どんな種類や品種があるのか、扱い方のポイントなどを詳しく紹介しましょう。
目次
コスモスってどんな花?
まず、基本的なことについて知っておきましょう。
コスモスの基本データ
学名:Cosmos bipinnatus
科名:キク科
属名:コスモス属
原産地:メキシコ
和名:秋桜(アキザクラ)、大春車菊(オオハルシャギク)
英名:Cosmos
開花期:9~10月、チョコレートコスモスは5~7月
切り花の出回り時期:8~10月、チョコレートコスモスは通年
花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、茶、複色
花もち:5~10日、チョコレートコスモスは5~7日
花言葉:乙女の純潔、真心、恋の思い出(チョコレートコスモス)
コスモスの名前は、ギリシャ語で「秩序」「調和」を意味するKosmosにちなんでいます。
そもそもコスモスは、メキシコの高原に咲いていた野の花。それをコロンブスがアメリカ大陸に到達したのち、植物調査隊が種子をスペインに持ち帰り、栽培。コスモスと名づけました。それが、ヨーロッパに伝わったきっかけだったようです。
スペイン語のcosmoには、「宇宙」の意味があり、花びらが無数に並んで咲く花の姿は美しく、満天の星のよう…。当時の人々は、その情景にそんな無限の広がりを感じたのかもしれませんね。
コスモスは一年草で、春から夏に種をまいて、日が短くなる秋に咲く性質があります。秋の草原を軽やかに、そして華やかに彩る様子から、和名を秋桜(アキザクラ)といい、日本の秋を代表する花のひとつになっています。
日本への渡来ははっきりしませんが、幕末には伝わっていたようです、その後、広く普及したきっかけは明治12年(1879年)に、イタリアから東京の美術学校に赴任してきた、ラグーザによって持ち込まれた種によるという説や、明治42年(1909年)に文部省が全国の小学校に栽培法を付して配布してからという説などがあります。

もうひとつの和名、オオハルシャギクから、キクの仲間であることがわかります。花も葉も少しキクに似ていると思いませんか。
花のつくり
コスモスともっと仲よくなるために、細部に近寄って、じっくりと眺めてみましょう。

花
多くはひと重ですが、半八重や八重咲きもあります。花びらは、筒状のものやフリンジ状のもの、花びらに縁どりのあるピコティなど、さまざまなタイプが出回るようになりました。輪の大きさも大小あります。
葉

品種によって、大きさもつき方も異なりますが、多いのは、細かく枝分かれした茎のまわりに、もしゃもしゃと茂るようにつくタイプです。
茎

茎は細くて長いのが特徴です。品種によって、太さは多少異なります。草丈は40㎝程度のものから1m近いものまでさまざま。細い部分はくねったり曲がったりしていることもありますが、それを生かしてあしらうと、味わいのある風情が生まれます。
コスモスを購入するとき、扱うときの注意点
購入時は、茎が細く締まったものを選ぶとよいです。水もちはあまりよくないので、水切りはこまめにするとよいでしょう。1日に1回は、水替えと切り戻しをしたいものです。
葉を整理して飾るのがポイントです


上のふたつの写真を見比べれば、違いは歴然でしょう。コスモスのふさふさとした葉は、花器にいける前に大部分を取り除きましょう(OK例)。ボリュームのある葉と茎は花器のなかで蒸れて、傷みやすいためです(NG例)。余分な葉を取り除くことで、茎のラインも引き立ちますよ。ただし、茎は折れやすいので、丁寧に扱いましょう。
切り花のコスモスの出回りは…?
8~10月が出回りの時期で、旬は9月。ただし、コスモスの仲間のチョコレートコスモスは、周年出回っており、5~6月にピークを迎えます。いずれも流通しているのは国産のみで、改良が進んだため、秋に限らず幅広くなっています。
飾ったあとのお手入れ、注意点
コスモスは、水もちがあまりよくない花です。水切りをこまめにするとよいです。花が水落ちしたら、茎ごと新聞紙などに包み、高さのある器(牛乳パックなどを利用しても)に水をたっぷりと入れ、そのなかに1時間ほど浸けると回復してきます。この方法を、深水といいます。
風にも弱いので、エアコンの風が直接当たるような場所は避けて飾りましょう。
コスモスの仲間について知りたい!
コスモス属は、20種類以上あります。切り花の花材としては、下の写真のように、大きく3つのタイプに分けられます。写真右(ピンクの花)のおなじみのコスモスのほか、中央のチョコレートコスモスと、左端のキバナコスモスです。

おなじみのコスモス
ピンクや白が主流でしたが、赤、黄色、オレンジ、複色なども登場し、花色も豊富になっています。なかでも代表種といえば、センセーションという品種で、1輪の大きさが8~10㎝もあり、大輪。初めて作られた黄色系の品種が、イエローガーデンです。そのほか、花びらが筒状になるシーシェル、半八重と八重咲きが交じるダブルクリックなど、花形も多彩で見飽きません。

キバナコスモス
黄色やオレンジ色の花を咲かせます。主に栽培されているのは、草丈の低い園芸種で、サニーシリーズなどが代表種です。

チョコレートコスモス
ブラウン系の独特な花色だけでなく、チョコレートのような甘い香りをもつ、人気花材。すっと細く長いラインが魅力で、花首の長さを生かしたアレンジもシックで素敵です。よく見ると、茎まで赤みを帯びたものも。キバナコスモスとの交配など改良が進み、微妙に花色が異なる品種が増えたり、花びらが厚く花もちのよい品種などが新しく誕生しています。香りがよいのは、原種で、改良が進むほど香りは弱まる傾向にあるようです。

キバナコスモス×チョコレートコスモスのアレンジ
花の直径が3㎝程度と小さい、チョコレートコスモスと、キバナコスモスで飾った、かわいらしいウサギのモスです。白色がチョコレートコスモスで、オレンジ色はキバナコスモス。ビビッドな黄色はウインターコスモスという名で出回るセンダングサです。思わず笑顔になる愛らしいアレンジですよね。

画像一覧つき! コスモスの人気品種
ピンクや白、赤、黄色、オレンジ、茶色など、花色は豊富。ひと重を中心に、半八重や八重咲きなど、個性的な品種も増えています。
「おなじみのコスモス」の仲間
ピコティ

白地に赤系の縁どりが入った品種。ツートンカラーが目を引きます。
レッドイリュージョン

外側の花びらのほか、花芯のまわりを小さな花びらが囲みます。
センセーション ミックス 赤系

花径は8~10㎝の大輪。赤系のほか、ピンク系、白の混合種もあります。1930年代にアメリカで育成された、早咲き系統の品種。コスモスの代名詞ともいえる品種で、コスモス畑などでよく見かけるのもこの品種。
センセーション ピンキー

人気シリーズ、センセーションのひとつです。
センセーション ホワイト

同じく、人気のセンセーションのひとつで、定番ともいえる品種です。
ホワイトベルサイユ

整った花形で、堅くしっかりとした茎をもつ、ベルサイユシリーズの白色品種。花径約8㎝の大輪種で、優雅。
サイキ

大輪で半八重の豪華なタイプ。色は赤系、白系もあります。
ダブルクリック 赤系
花びらは筒状で、半八重または八重咲きで豪華です。ボリューム感もあります。
ダブルクリック ピンク系

上と同じ品種。花径は約7㎝と大きめです。
ダブルクリック 白

上ふたつと同じ品種の白色種。イギリスで誕生したとか。
ディープレッドキャンパス

深い赤が印象的。花径はやや大きめです。
レッドベルサイユ

濃い赤色。花は大きく、花びらも厚めです。
イエローガーデン

やさしい黄色で、中心部分がやや白いです。ピンク系の色しかなかった、おなじみのコスモスから初めて作られた黄花種。
イエローキャンパス

イエローガーデンの改良品種で、より明るい黄色が特徴です。
オレンジキャンバス

ピンクと黄色をぼかしたようなニュアンスある色。花は大きめ。
シーシェル ピンク系
花びらが筒状で、ユニーク。色は赤系や白もあります。
「キバナコスモス」の仲間
オレンジフレア

花径約6㎝と、ほかのキバナコスモスよりやや大きめです。
サニーレッド

鮮やかな朱赤がかったオレンジ色。出回りの多い人気品種です。
ムーンライト

蛍光がかった明るさをもつ、レモンイエロー。
「チョコレートコスモス」の仲間
チョコレートコスモス

花顔は小さめで、チョコレートのような色と芳香が人気。出回りは主に春~初冬。
ビターチョコ

濃度の高いチョコレート色。まるでビターチョコのような色です。
キャラメルチョコ

キバナコスモスと交雑した新品種。オレンジがかった色です。
ストロベリーチョコ

赤みがかった色と、かわいいネーミングが人気です。
ホワイトチョコ
チョコレートコスモスなどを交雑した、白色品種。比較的新しいです。
以下の記事も併せてどうぞ!
・生花のコスモスを楽しみたいとき「コスモスのおしゃれな生け方・飾り方。フラワーアレンジで長もちさせるコツ」「コスモスのおしゃれなアレンジ・飾り方、アイデアまとめ12選」
・コスモスをドライフラワーに「したいとき「コスモスの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」
Credit
記事協力
大髙令子
『ランコントレ』主宰。
パリの花に魅せられ渡仏を重ね、1992年、東京・自由が丘にアトリエをオープン。“優雅とナチュラル”が同居した、パリ仕込みの洗練された花装飾が好評で、花教室、ウエディングなどで活躍。植物を素材にしたあらゆる表現において、クライアントのイメージをキャッチする能力に評価を得ている。多くの雑誌に作品を発表するほか、著書に「きほんのフラワーアレンジ」(学習研究社)などがある。
https://www.instagram.com/atelier_rencontrer
花・大髙令子 撮影・落合里美 構成と文・山本裕美
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