最近は、フラワーギフトを贈る際などに、花言葉にこだわる方が増えています。花言葉とは、花姿、色、香り、雰囲気、伝説、神話、風習など、その植物にまつわるさまざまな情報から、それぞれの植物に独自の象徴的な意味を持たせるために与えられた言葉です。もともとは、花に思いを込め、花を使って人にメッセージを伝えるヨーロッパの古い風習から来ています。たくさんある花言葉の中から、ここではマリーゴールドの花言葉について詳しく紹介しておきましょう。花言葉は国や時代によって、また提唱する人によっても若干変わってきますので、ここでは日本における代表的な花言葉を取り上げます。
目次
マリーゴールドの花言葉について知りたい!
最初にマリーゴールドという花のことを、簡単に説明します。
マリーゴールドの基本データ
科名:キク科
属名:タゲテス(マンジュギク)属
学名:Tagetes
英名:marigold
原産地:メキシコ
開花期:4~10月
和名:千寿菊(センジュギク)、万寿菊(マンジュギク)
花色:オレンジ、黄色、白、複色
春~夏の花壇で、元気いっぱいにオレンジ色や黄色の花を咲かせているマリーゴールド。近年では、切り花としても人気が高まっています。太陽を思わせる鮮やかな色合いと、群を抜くもちのよさ、細くてやわらかな花びらがくしゅくしゅと集まるキュートな花形が、愛される秘密なのでしょう。最近では、大輪タイプや一重咲きタイプも登場しています。
日本におけるマリーゴールド全般の花言葉は下記です。
「勇者」
「可憐な愛情」
その意味など詳しい解説は「3.マリーゴールドの花名や花言葉の由来は?」でご紹介します。
花言葉は、花の色や種類によっても変わります
マリーゴールドの花言葉は色によっても違ってきます。色ごとの花言葉は下記です。
黄…健康
オレンジ色…予言、真心
マリーゴールドには、いくつかの種類があります。草丈が低くて枝分かれの多いフレンチ・マリーゴールド、草丈が高くて大輪のアフリカン・マリーゴールド、同属の近縁種で強い柑橘系の香りがあるレモン・マリーゴールドなどです。それぞれの種類によっても花言葉が違います。
アフリカン・マリーゴールド…逆境を乗り越えて生きる
フレンチ・マリーゴールド…いつも側において
レモン・マリーゴールド…愛情
フレンチ・マリーゴールドはフランス王室の庭で栽培されていたことからこの名がつきました。アフリカン・マリーゴールドはアフリカで栽培されていたものが16~17世紀にヨーロッパに持ち込まれたものです。ほかにも、ひと重咲きの品種が多いメキシカン・マリーゴールド、レモン・マリーゴールド同様、近縁種で香りの強いミント・マリーゴールドなどもあります。
※花言葉はその花の特質などに合わせて象徴的な意味を持たせたもので、明確な根拠があるものではありません。前述したように、監修する人や国、文化などによって、選ばれる言葉が違うこともよくあります。
マリーゴールドの花名や花言葉の由来は?
マリーゴールドの名前の由来は、聖母マリアにあります。聖母マリアの祝日にいつも咲いていることから、「マリア様の黄金の花=マリーゴールド」と呼ばれるようになったそうです。その聖母マリアの祝日ですが、キリスト教の宗派によって、春から冬にかけて年5~10回もあります。そんなにも長い期間ずっと咲いている、ということは、この花が古くから1年を通じて咲く花として知られ、非常に丈夫な花であることを示すものだと言えるでしょう。日本名の千寿菊、万寿菊も、キク科のなかでも開花期間が長いことから命名されていますし、開花期間の長さ(花の丈夫さ)は黄色いマリーゴールドの花言葉「健康」の由来にもつながります。
ちなみに、学名のTagetes(タゲテス)は紀元前8世紀~紀元前1世紀ごろに、イタリア半島中部にあった都市国家群エトルリアの神話に登場し、エトルリアに占術を伝えたターゲス(Tages)の名前に由来するとも言われます。
マリーゴールドの誕生には、こんな逸話があります。カルタという美しい少女が、太陽神アポロンに恋をしました。彼女の生きがいはアポロンの側にいて、アポロンを見つめることだけ。燃え立つ朝日が登るのを、日々野原で待ち焦がれているうち、恋の炎に焼かれるように徐々にカルタは衰弱し、体が消え、やがて魂だけになってしまいました。カルタの魂はかげろうのように太陽に吸い込まれ、その跡に1本のマリーゴールドが咲いていた、というものです。
マリーゴールドの花言葉には、じつはよいイメージの言葉と、あまりよくないイメージの言葉があります。よくないイメージの花言葉は「嫉妬」「絶望」「悲嘆」などです。こんなに明るい花のイメージには、あまり合わない言葉ばかりですよね? 反対に、よいイメージの花言葉が「勇者」「可憐な愛情」です。どうしてこんなに両極端の花言葉をもつようになったのでしょうか? そこには、いずれも太陽神アポロンが関わっています。
水の妖精クリスティは太陽神アポロンに激しい恋心を抱いていました。しかし、アポロンにはすでに王女レウトコエという恋人がいます。嫉妬したクリスティは、王女の父である国王にふたりの仲を告げ口します。すると、王は怒りのあまり、レウトコエを生き埋めにしてしまったのです。クリスティは自分のしたことによって、ひとりの女性が命を落としたことを深く後悔し、9日間に渡ってアポロンを見つめ続けました。やがてクリスティの体が黄色い花に変わり、太陽に向かって咲くマリーゴールドになったのです。ここから「嫉妬」「絶望」「悲嘆」といった花言葉がうまれました。同時に、クリスティが一途にアポロンを思う気持ちから、「可憐な愛情」というよい意味の花言葉もうまれたのです。「勇者」という花言葉もまた、太陽神アポロンから来ています。
このように、黄色やオレンジ色の花をつけるマリーゴールドは、ヒマワリと同じように太陽に結びつくイメージをもつ花なのです。実際に、ヒマワリが「太陽の花」と呼ばれるようになる前は、マリーゴールドが「太陽の花」と呼ばれていたようです。日が昇ると花が開き、日が落ちると閉じる、規則正しさと華やかさからこんな別名がついたのでしょう。
ちなみに、種類を問わず、黄色い花はみな不吉な意味をもつ花言葉を与えられています。これは黄色がイエス・キリストを裏切ったユダの衣の色であることからきています。花にはまったく罪がないのに、かわいそうになりますよね。
色別の花言葉の由来についても少し説明しておきましょう。
黄色いマリーゴールドの花言葉「健康」は、花期の長さと、やはり太陽神アポロンのイメージからきています。
オレンジ色のマリーゴールドの花言葉「予言」は、名前の由来となった聖母マリアにちなんでいます。
オレンジ色のもうひとつの花言葉「真心」には、また別の由来があります。これもまたアポロンに関係のある逸話です。アポロンは非常に美しく男らしい神なので、女性だけでなく、男性からも慕われていました。美少年クレムノンもそのひとりで、毎日太陽(アポロン)を見つめることに幸せを感じていたのです。アポロンもまた、そんなクレムノンを愛しく思うようになりました。しかし、それを知った雲の神が嫉妬し、太陽(アポロン)を雲で隠してしまいました。何日もアポロンに会えなくなったクレムノンは嘆き悲しみ、最後には死んでしまいます。そのひたむきな愛情に心打たれたアポロンは、クレムノンをオレンジ色のマリーゴールドに変身させて、その姿を愛でるようになったそうです。アポロンは太陽を司る神であり、多くの人々から愛され、敬われる偉大な存在だけに、たくさんの恋の物語、それもなぜか悲恋の物語を生み出しているのかもしれません。
マリーゴールドの英語名と、海外での花言葉
マリーゴールドの英語名は「marigold」。英語での花言葉は「jealousy(嫉妬)」「despair(絶望)」「grief(悲嘆)」など、日本のものと変わりません。ちなみに、マリーゴールドはアラブ首長国連邦の国花であり、原産地のメキシコでは「死者の日」という日本のお盆に似た祝日に供える花とされています。
花言葉の世界はいかがでしたか? 花言葉にはさまざまな物語が隠れていますよね。ただし、花言葉は明確な根拠があるものではないので、あまりこだわりすぎないことも大切です。花を買うときには、自分の好きな色、そのときにビビッと来た色の花を選ぶのが、いちばんよいのではないでしょうか。
マリーゴールドを主役にした、ギフトの紹介はこちらへ。⇒「マリーゴールドのフラワーギフト(プレゼント)、選び方とおすすめ10選」
マリーゴールドの扱い方、飾り方は「マリーゴールドのおしゃれな生け方・飾り方。 フラワーアレンジメントで長もちさせるコツ」、ドライフラワーにしたいときは「マリーゴールドの、上手なドライフラワーの作り方と簡単アレンジ」をご覧ください。
Credit
構成と文・高梨奈々
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