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5月の誕生花、シャクヤク。花言葉や花名の由来、英語名を紹介します

5月の誕生花、シャクヤク。花言葉や花名の由来、英語名を紹介します

風薫る季節。シャクヤクは華やかな姿と芳しさで、年々、人気が高まっています。美人のたとえ、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と、古くから慣れ親しまれているシャクヤク。すらりとした茎に、美しい花を咲かせることから、立ち姿のきれいな女性にたとえられたようです。優雅な気分を誘うため、最近では母の日の花として、シャクヤクを選ぶかたも増えています。そんなシャクヤクともっと仲よくなるために、ここでは、花言葉と誕生花のあとで、歴史や切り花の扱い方について、紹介いたしますね。

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シャクヤクの花名、花言葉の由来は?

シャクヤクを漢字で書くと「芍薬」。「芍」は、抜きんでて美しいという意味をもちます。そして、シャクヤクの根は、古くから鎮痛剤などに用いられてきた生薬(しょうやく)。花名の由来は、見とれてしまうほど見目麗しい花をつける「薬」ということのようです。

花名の由来には、たおやかで、やさしげな姿を意味する「綽約(しゃくやく)」から転じた名前だとする説もあります。いずれにせよ、その美しさをたたえられ、花名になったよう。余談ですが、「綽(しゃく)」は、ゆったりとした様を意味します。焦らず、のんびり構えていることを「余裕しゃくしゃく」と言いますよね。漢字では「余裕綽々」と書きます。

花言葉についても紹介しましょう。シャクヤクは、その華やかな風貌からは、ちょっと想像がつきにくい花言葉をもっています。それは「恥じらい」「はにかみ」「謙虚」というもの。なぜでしょう? 一説には、イギリスの古い民話が由来とか。恥ずかしがり屋の妖精が、ある日、シャクヤクに隠れたら、花も赤く染まったそうです。羞恥心のシンボルとして伝わり、かわいらしいこんな花言葉になったのかもしれませんね。

シャクヤクの英語名、海外での花言葉が知りたい

英語は「ピオニー」。これはじつは、シャクヤクとボタンの仲間の総称です。シャクヤクだけを指すときは、こんな呼び方をされています。原産地の名前を冠して「Chinese peony(チャイニーズピオニー)」。また、草のとか草本の、ハーブの、という意味の形容詞をつけた「herbaceous peony(ハーベイシャス ピオニー)」。あとで触れますが、シャクヤクって草なんですよ!

「ピオニー」は、ギリシャ神話の医療の神、パイエオンに由来するそうです。

ところで、英語には「blush like a peony」という慣用句があることをご存知ですか? 恥ずかしさから、ピオニー(シャクヤク)のように頬を赤く染める様子をいいます。

英語での花言葉は「bashfulness(恥じらい、はにかみ)」、「compassion(思いやり)」など。日本での花言葉と、そう変わりませんね。前に紹介したように、イギリスの古い民話から生まれたという説がありますが、、詳細はわかっていません。

シャクヤクの花言葉は色によっても変わります

花材:シャクヤク6種 花・田中光洋 撮影・中野博安

花色ごとにも、花言葉があるようです。

ピンク…はにかみ
赤…誠実
白…幸せな結婚

これらの3色をまとめてウエディングブーケにしたら、素敵でしょうね。

※花言葉はその花の特質などに合わせて象徴的な意味をもたせたもので、明確な根拠があるものではありません。監修する人や国、文化などによって、選ばれる言葉が違うこともよくあります。

美人の代名詞、シャクヤクは5月の誕生花

誕生花とは、生まれた月や日にちなんだ花のことです。理由は定かではありませんが、自分のシンボルフラワーとして知っておくのも素敵かもしれませんね。

シャクヤクが誕生花の人は5月生まれの人。ちょうど旬を迎え、花屋さんにも切り花のシャクヤクが種類豊富に並んでいる頃です。バースデイウィークには、シャクヤクを飾ってお祝いしませんか? ちなみに、同じ5月生まれの誕生花には、スズランやクレマチス、アヤメ、花木のヒメウツギなど、爽やかな初夏の到来を告げる花々があります。

シャクヤクは、海を渡ってきた渡来植物です

シャクヤクの基本データ

学名:Paeonia lactiflora
科名:ボタン科
属名:ボタン属
原産地:中国、朝鮮半島など
和名:芍薬(シャクヤク)
英名:chinese peony
開花期:5~6月
切り花の出回り時期:4~6月
花色:ピンク、赤、オレンジ、黄色、白
花もち:5~7日

シャクヤクのふるさとは、アジア大陸北東部。中国北東部やモンゴル、朝鮮半島北部などの一帯です。もたらされた時期については諸説あり、奈良時代、漢方薬の材料として、渡来したという説もあります。鑑賞のための生きた植物としての渡来は、平安時代もしくは室町時代とされます。そして、戦乱の世が過ぎ、園芸の技術が開花した江戸時代。茶席に飾る茶花として、品種改良が積極的に行われるようになったそう。なかでも、肥後藩(今の熊本県)では武士のたしなみとして園芸を推奨し、「肥後芍薬」という、数々のオリジナルの園芸品種が誕生しました。

多くの品種が江戸時代に誕生した肥後芍薬は、こんなシャクヤクです↓。

肥後六花に挙げられる肥後芍薬の花を見るなら、東京では早稲田の肥後細川庭園、大阪なら八尾市にある九宝寺緑地へ!

育種が本格的に行われるようになったのは明治期以降。神奈川県の農事試験場で育種が進められ、昭和初期には、なんと700種もの新たなシャクヤクが発表されたそうです。美しいシャクヤクを作り出そうとする熱意が伝わりますね。前述の肥後芍薬を合わせて誕生した日本生まれのシャクヤクは「和シャクヤク(和シャク)」と呼ばれ、ひと重咲きや、内側に小さな花弁をぎっしりと抱える翁(おきな)咲きなど、風情のある花形のものが多く見受けられます。

ひと重咲き(コーラルキング)

翁咲き(富士)

一方、中国のシャクヤクは、18世紀にヨーロッパへももたらされ、そこで生まれた品種は「洋シャクヤク(洋シャク)」と呼ばれます。バラ咲きなど、花びらの数が多く、豪華な姿同様に、香りの華やかな品種が多いのが特徴です。

バラ咲き(サラベルナール)

シャクヤクとボタンの見分け方は、葉に注目

シャクヤク(芍薬)とボタン(牡丹)。あまりにも似ていて、紛らわしい花だと思ったことはありませんか。それもそのはず! どちらも、ボタン科ボタン属の花です。

ほら、この写真がボタン。ひとつ前の写真のシャクヤクと見くらべると…花びらの形や質感、ボリューム感たっぷりに重なる様子までよく似ていて、ぱっと見ただけでは、なかなか見分けるのが難しそうですね。

豆知識として、見分け方のポイントを紹介しましょう。

■見分けポイント1
大きな違いは、シャクヤクは「草」で、ボタンが「木」だということ。シャクヤクは「宿根草」です。冬には、根だけを残してすべて枯れます。新芽が生まれるのは春。木にならない草本植物のため、別名を「草牡丹」。

ボタンは落葉低木。冬には茎だけの状態で越冬し、春になるとその茎に新芽が生まれます。幹は年々、太くなります。でも、これでは冬にならないとわかりませんね…。

■見分けポイント2
すぐ知りたいときは、葉の様子に注目してみて!

シャクヤクの葉は、枝先に三枚の葉がつく複葉。丸みを帯びて、つやつやと光沢があります。触ってみると、厚みもあります。

対して、ボタンはというと…。上の写真でわかるように、葉は同じ複葉でも、1枚ずつに切れ込みがあります。そして、いちばんの決定打。光沢がまったくありません!白く曇った葉の色をしていて、厚みもありません。

園芸用として庭に植えられている場合は、開花の時期も少し前後します。先に咲くのはボタンで、4月下旬~5月初め。シャクヤクは、5月初旬~5月下旬です。気候変動の激しい昨今ですから、思いのほか早く咲いた…なんてこともありますが…。

上手に選んで、切り花のシャクヤクを楽しんで

シャクヤクのシーズンになると、待ってました!とばかりに、切り花のさまざまなシャクヤクが花屋さんに勢揃いします。馥郁と咲くシャクヤクの季節を満喫するために、これも覚えておきましょう。そう、花が咲かずに、つぼみのまま終わって、がっかりしないためのコツ!

花屋さんに並ぶ切り花のシャクヤクを購入するとき、いつもどんな状態の花を選んでいますか? 少しずつ花がほころぶ過程も楽しみたいからと、つぼみの花を買っていませんか? 確かに、つぼみで出回るケースは多いですが、じつは、シャクヤクの場合はお得感どころか、つぼみのままで終わったり、咲いても日もちがよくなかったりと残念なこともあるようです。

1日でも長く、きれいな花を楽しむには「少しでも、花びらが開いたシャクヤク」を選んでください。シャクヤクに限ることではありませんが、花はつぼみを開くとき、とても多くのエネルギーを消費します。その段階で体力を使っては、咲いたあと、息切れ状態に…。

花のもちは短くなります。なお、花びらが黒ずんでいたり、縮れていたりするつぼみは、すでに弱っていて、花が開かない可能性があるので、ご注意を。

葉の状態も確認してください。

〇葉がしゃっきりと立っている→水が行き渡っている証拠
×葉がだらりと下がっている→水が下がっています ※その場合は次項目の対応策を!

切り花のシャクヤクを買ったら、下処理を!

咲きかけのシャクヤクを入手できて、これで万全だと、いきなり花器にいけてしまわないで。シャクヤクがもっているパフォーマンス力を最大限、引き出せるよう、まずは下準備をしましょう。

余分な葉を取って整理します

いけたときに水に浸かる葉や、アレンジに生かさない葉はすべて取ってしまいます。せっかく、いきいきときれいな葉なのに、と思うかもしれませんが、これは花に十分な水を与えるための大事な作業です。

植物は主に葉から、吸いあげた水を蒸散します。吸いあげた水よりも、この蒸散の量が勝ってしまうと、花は、ぐったりと水切れを起こしてしまうんです。シャクヤクは、葉が大きく蒸散しやすい花。水切れを起こさないためにも、余計な葉は取ることが大切です。花と葉で別々に切り分けて、いけるのも手かもしれませんね。

同じ緑色でも、花のつけ根にあるのはガクです。このガクには、花の支えという大切な役割があります。ないほうがきれいかも?なんて取ってしまうと…花びらが落ちやすく。取ってしまわないよう、気をつけて。

茎を「水切り」しましょう

花の「水あげ」って知っていますか? 切り花の全身に水を行き渡らせ、元気な状態で楽しむために欠かせないステップ。茎を焼く、深い水で休ませるなど、さまざまな方法があるなか、いちばんスタンダードな方法が「水切り」です。シャクヤクはこの方法で、水が上がります。

手順は簡単! ボウルなどの深さのある容器に、水を注ぎ、水中で茎を切ります。このとき、茎は大きく斜めにカットすること。切ったあとは、茎を引き出さず、そのまま水中で2分ほど休ませましょう。

植物の茎には導管という水を吸い上げるパイプが無数に通っています。水中で、茎をカットすることで、導管内への空気の侵入を防げ、パイプの通りがぐんとよくなります。さらに、大きく斜めにカットすると、導管の数も増やせるというわけです。導管がつぶれないように、よく切れるハサミでカットしましょう。

しかし、葉がしんなりと垂れ、水が下がっている場合は、「深水(ふかみず)」を試してみてください。これも水あげ方法のひとつです。用意するものは、新聞紙とバケツなどの深めの容器。茎元だけ出るようにして、シャクヤクを新聞紙でしっかりと包んだら、水をたっぷりと注いだバケツに、茎を下にして入れておきます。水圧を高めて、水を上げる方法。花びらがデリケートなシャクヤクなので、水に浸からない部分は新聞紙で包んでおいて。バケツなどに入れて2時間ほど休ませると、しゃっきりとしたシャクヤクに復活です!

つぼみは洗って、すっきりと

切り花のシャクヤクを選ぶときは、“少しでも、開いた花”がおすすめとはいえ、つぼみのシャクヤクしか入手できない場合もあるでしょうし、花がほころぶ過程をゆっくりと愛でたい気分のときもありますよね。

つぼみからいける場合はまず、つぼみを触ってみて。もしも、ベタベタした蜜がついていたら、洗いましょう(花屋さんで処理をしている場合もあります)。

方法は、これも簡単です。水切りをする前に、水につぼみを入れて、やさしく洗うだけ。

蜜がとれ、花びらが開きやすくなります。それにしてもなぜ、シャクヤクのつぼみには蜜がついているのでしょう? 一説には、アリとハチを蜜でおびき寄せ、つぼみを食べる害虫から身を守るためとか。虫同士の敵対関係を巧みに利用するシャクヤクって、すごいですよね。

毎日のお手入れで、さらにシャクヤクを長もちに

きれいに飾ったシャクヤク。少しでも長く咲いていてもらうには、毎日のお手入れを忘れずに行ってください。シャクヤクのシーズンは、気温が高くなる初夏。いけたままでは水中にバクテリアが発生します。花の寿命を縮めるバクテリアの繁殖を防ぐために行いたいのが、水替えと切り戻しです。

器の中の水を入れ替える作業「水替え」

水替えとは、花をいけたあと、器の水を入れ替えることです。いけた水は、見た目には変わらなくても、汚れているもの。毎日が難しくても、2日にいちどは、器の中の水をきれいな水に替えましょう。その際、茎も丁寧に洗い、ヌメリを取るのがベター。

また、器の中を、食器用の中性洗剤で洗浄すると、バクテリアの発生がぐっと抑えられます。器を洗うときは、汚れが溜まりやすい底まで丁寧に。口が狭く、手が入らない器も、コップや水筒用の柄つきスポンジを使えば、隅々までキュキュッと洗うことができます。

「切り戻し」で茎を切り直し、吸水しやすく

花をいけたあと、茎や枝の切り口を新しく切り直すことを、「切り戻し」といいます。水替え時に、茎のヌメリを洗ってから行ってください。茎を新たにカットすることで、導管の入り口が新しくなるのです。水が下がりぎみのシャクヤクも、このひと手間でまた、元気に水を吸いあげてくれます。シャクヤクを切り戻すときも、水中で斜めにカットします。

花の見ごろが終わり、いけたシャクヤクとさよならをするとき、使った器は台所用除菌剤で、菌を徹底退治!しましょう。次の花のために、これもぜひ行いたいお手入れです。

Credit

記事協力

構成と文・鈴木清子

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