30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了された遠藤昭さん。帰国後は、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストでも数々の受賞歴があり、60㎡の庭づくりの経験は25年になるという遠藤さんに、注目のオージープランツを解説していただきます。
目次
庭木として楽しみが多いレモンの木

「そんなにもあなたはレモンを待っていた」
高村光太郎の「レモン哀歌」は悲しいけれど、我が家は「レモン賛歌」で嬉しいのだ。
庭にレモンの木を植えると、見た目にもお洒落だし、何より、採りたてのレモンは、紅茶蜂蜜レミン、レモンスカッシュ、レモンソルト、そしてレモン胡椒等……。さまざまな料理やお菓子に使用できて、とても重宝するうえ、豊かさを運んでくれる。

もともと、メルボルン駐在中に住んでいた家に大きなレモンの木があり、年中実っていて、とても豊かな気分だった。帰国後に、ダメ元で神奈川・横浜の我が家にリスボン種の苗木を植えたら実ったのだ。かれこれ植えて20年以上になるが、毎年100個ほど実る。
たまに降る雪でも枯れないレモンの木

確か、20年程前には、庭にレモンがなる家は見かけなかったが、最近は若干見かけるようになった。温暖化のせいか、品種改良のおかげか、少なくとも関東以西では育てられるようだ。木が大きくなれば、たまに降る雪でも枯れることはない。
今後、庭木として人気が出るのは間違いなしだ。

園芸の世界も、ここ数年は野菜がブームだが、次は果樹だと僕は予測する。何故かというと、見た目にもおしゃれで美しいし、野菜ほど手間隙をかけなくても、実ってくれる。庭で収穫したばかりの果物を口にするのは最高の贅沢だし、豊かさを感じさせてくれ、感動間違いなし! 僕は特に、男性のガーデニング入門には、まず果樹を育てる事を勧めている。野菜もおすすめだ。何故なら育てる園芸の基礎が習得できて、解りやすくて、長期的展望にロマンを感じる男の感性に合っているのだ。

男性の多くは、花いっぱいの外構やバラの園には、あまり憧れを感じない。キレイよりカッコ良さに魅力を感じ、汗水たらした成果としての実利的な「果実」は欲求を満足させるにピッタリなのだ。そして、毎年、収穫が増え、成長が確認できて、長期的にガーデニングが楽しめるのだ。大地にどっしりと根をおろし、太陽を浴びて大らかに実るレモン、オススメです。
カゴ一杯収穫したレモンで男の料理

6月に入ると、収穫し損ねて残っていたレモンを、次のレモンの果実を育てるためにカゴ一杯収穫する。毎年、使い切れないほどのレモンが実るが、使わないからとつけたままにしておくと、既に花が咲き始めている木にはよくないので全て収穫する。そして蜂蜜ホットレモン、レモンスカッシュ、レモンソルトなどに利用している。レモンは果汁とパセリ、バジルの葉などを入れて自家製ソーセージづくりにも活用。レモンの果汁と皮、唐辛子でつくる柚子胡椒のレモン版にも。絞ったレモンを製氷機に入れて凍らせ、キュービックにして保存すると、一つずつ使えるので便利。
庭植えで育てるレモンの木、栽培のコツ

簡単に育て方に触れておこう。
まず、品種だが、リスボン種は耐寒性があるようだ。我が家もリスボン種。果樹を購入するときは、実際に果実がついている鉢植えの苗木を購入すると間違いがない。レモンの実つきの鉢植えが出回るのは、色づき始める10月頃からのようである。

寒い時期に購入した場合、霜の当たらない日当たりのよいテラスや屋内で越冬させ、3月頃に日当たりがよく、できたら霜や北風の当たりにくい、建物の南側に植えるとよい。鉢植えの場合は10号くらいの大きな鉢に植え替える。

施肥は寒肥を2月に、9月頃にそれぞれ、発酵油粕を与えるとよい。剪定の方法は、3月に樹木に太陽がまんべんなく当たるように、上から見るとドーナツ状に間引き剪定するとよい。この剪定方法は、オーストラリアで学んだ。

病虫害では、アゲハチョウの青虫が発生し葉を食い荒らすので早めに捕獲を。新芽はアブラムシがつきやすく、一度つくと葉が縮れたり糞によるカビ病になったり、醜くなるので、早めに薬剤散布をする。また、ミカンハダニもつきやすく、冬期にマシン油乳剤により防除するとよい。そうして根づいたレモンは、周囲に育つ植物と季節ごとに景色のコラボレーションを見せてくれる。バラの‘ヘリテージ’とレモンのコラボもよい。幸せのシーンを演出してくれるレモンを庭に一本植栽して欲しい。
併せて読みたい
・意外とカンタン! ベランダでゆずの木を育てて果実を収穫してみよう
・レモンの収穫【写真家・松本路子のルーフバルコニー便り】
・初めてでも庭で育てられる! かんきつ類の育て方とおすすめの種類をご紹介
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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