ヨーロッパの有名庭園や、フラワーアレンジメントなどで昨今見かける宿根草のエリンジウム(Eryngium)。装飾的な花とオーナメンタルな姿で、庭植えにしたい人気の植物です。ここでは、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんに、エリンジウムの詳しい育て方のコツと日本での栽培におすすめの11品種を地域に合った3タイプに分けながら解説していただきます。

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装飾的な花、オーナメンタルな姿を楽しめるエリンジウムの多様な世界

装飾的・神秘的な雰囲気の花で人気の高い植物、エリンジウムについて、前回から2回にわたって、日本の気候でも栽培できる原種・品種や栽培のコツなどをご紹介しています。

エリンジウム
エリンジウム・プラヌムとカラマグロスティス’カール・フォースター’の穂を組み合わせて。

今回は後編。日本でも庭植えで楽しめるエリンジウムをタイプ別にご紹介します。

エリンジウムの特徴や魅力、育て方のコツなどについては、前回記事、『装飾的な花、オーナメンタルな姿を楽しみたい エリンジウム概要編』も併せてお読みください。

地域や環境に合わせて選びたいエリンジウム、おすすめ11種

前回のおさらいになりますが、エリンジウムは世界のさまざまな地域に分布している植物で、種類によって性質も大きく異なります。

エリンジウム・リーベンウォルシィ
アメリカ中央部の乾燥した草原地帯原産のエリンジウム・リーベンウォルシィ。

そのため、本記事では、日本で庭植え植栽する観点から、エリンジウムを性質別に下記の3タイプに分類し、植栽効果が高く比較的育てやすい11種をご紹介します。お住まいの地域や植え場所の環境に合わせて適切な種類を選ぶのが、栽培以前の重要なポイントです。

タイプ1
やや高温多湿に弱く、冷涼な地域できれいに育つタイプ

冷涼な気候を好むエリンジウム

梅雨~夏にかけての高温多湿で弱ってしまいがちで、夏に冷涼な地域での方が栽培しやすいタイプです。温暖地では強い直射や水はけに配慮が必要です。

  • エリンジウム・ギガンテウム
  • エリンジウム・バリィフォリウム

タイプ2
カラッとした乾燥ぎみの環境を好むタイプ

乾燥ぎみを好むエリンジウム

暖かいけれど降水量の少ない地域原産種に多く見られます。耐暑性はあるものの、蒸れたり水はけが悪いと弱りやすいので、水はけ・風通しよく管理することで維持できるタイプです。

  • エリンジウム・マリティマム
  • エリンジウム・ブルガティ
  • エリンジウム・ザベリィ
  • エリンジウム・ユッキフォリウム
  • エリンジウム・プラヌム
  • エリンジウム・リーベンウォルシー

タイプ3
高温多湿にも耐え、どちらかというと温暖地向けのタイプ

温暖地向きのエリンジウム

南米など、降雨量もあり暖かい地域を原産とする種。高温多湿に強く、日本の夏環境にも合い育てやすいです。このタイプの属する原種は、葉姿がアガベやディッキアなどのトロピカルオーナメンタルプランツに似たものも多く、日本でのドライガーデンやトロピカル植栽の素材としても珍奇で面白いでしょう。

  • エリンジウム・パンダニフォリウム
  • エリンジウム・アガビフォリウム
  • エリンジウム・エブルネウム

エリンジウム・ギガンテウム(タイプ1)

海外の有名庭園の植栽でも、フォーカルポイントとして自慢げに植栽され、フラワーアレンジメントの主役キャラとしてもしばしば使用される、エリンジウムの中でも特にオーナメンタルな美しさで人気の高い魅惑種です。

エリンジウム‘ミスウィルモッツゴースト’
エリンジウム‘ミスウィルモッツゴースト’ (Eryngium giganteum ‘Miss Wilmott’s Ghost’)

銀灰色の金属細工のようなシャープな苞葉の美しい造形が観る者を釘付けにします。コーカサス地方などを主な原産とする種で、耐寒性はありますが、高温多湿に弱い種です。夏に冷涼な気候の地域で水はけ・風通しよい場所での栽培に向きます。

エリンジウム‘シルバーゴースト’
エリンジウム‘シルバーゴースト’ (Eryngium giganteum ‘Silver Ghost’)

硬質な見た目を生かして、フワフワと散漫な雰囲気になりやすい宿根草植栽の引き締め役にするとよいでしょう。淡い銀青紫花の品種 ‘ミスウィルモッツゴースト’ 、神秘的な銀白花の品種 ‘シルバーゴースト’ などが知られています。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium giganteum ‘Miss Wilmott’s Ghost’ 、Eryngium giganteum ‘Silver Ghost’
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈 :70cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:やや弱い
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・バリィフォリウム(タイプ1)

常緑傾向のある深緑地の葉に白い葉脈模様がマーブル状に入り、開花期以外、特にウィンターガーデンでのロゼット葉の姿も観賞価値が高い北アフリカ原産種。

エリンジウム・バリィフォリウム

乾燥には比較的強いですが、高温多湿が苦手なため、日本の気候下ではどちらかというと冷涼地向けの植物です。暖地では密植を避け、半日陰で風通しよく管理するとよいでしょう。

エリンジウム・バリィフォリウム

初夏に立ち上がる花茎も、白い葉脈が際立った針棘状の葉・苞葉の姿が、危険と紙一重の彫刻的な異彩を放ちます。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium variifolium
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:40cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:やや弱い
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・マリティマム(タイプ2)

ヒイラギの葉を思わせる棘葉の様子からシーホーリー(Sea Holly)とも呼ばれる、ヨーロッパの海浜地域に広く分布する、たいへん美しい原種です。

エリンジウム・マリティマム

外縁に棘を擁した葉形の美しさもさることながら、銀水色の葉色の美しさも素晴らしく、常緑傾向もあるため、開花期以外も極上のリーフプランツとして楽しめます。

エリンジウム・マリティマム
エリンジウム・マリティマムのオーナメンタルな銀水色葉。

砂浜などに自生する種なので、風通しや水はけの悪い場所を好みません。土中は乾燥しないけれど、地表はやや乾き気味になるようなカラッとした場所を選んで植えるとよいでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium maritimum
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:40cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・ブルガティ(タイプ2)

スペイン~南フランス、トルコやモロッコなど地中海沿岸地域に広く分布する原種です。

エリンジウム・ブルガティ

「エリンジウム」と聞いて真っ先に思い浮かぶ、金属細工の装飾品のような花容の青紫色の大輪花を咲かせる美麗種です。深い青緑色の葉も美しく、耐暑性も比較的あります。原産地からも分かるように「温暖でカラッとしている」気候を好みます。耐暑性はあっても、日本のように降水量が多い高温多湿環境となると株が弱りやすいです。蒸れないよう密植を避け、水はけと風通しよく管理しましょう。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium bourgatii
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:60cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・ザベリィ(タイプ2)

極大輪だけど高山性で高温多湿な日本では育てにくい「高嶺の花」アルピヌム種と、前出のブルガティ種の種間交雑種です。

エリンジウム ‘ビッグブルー’
エリンジウム ‘ビッグブルー’ (Eryngium x zabelii ‘Big Blue’)

アルピヌム種の花の美しさを継承しつつ、ブルガティ種の耐暑性を獲得することに成功し、今日、ヨーロッパでもこのザベリィ種系統の品種改良が進んでいます。

エリンジウム ‘ネプチューンズゴールド’
エリンジウム ‘ネプチューンズゴールド’ (Eryngium x zabelii ‘Neptune’s Gold’)

大輪の青紫花品種 ‘ビッグブルー’ 、リーフプランツとしても秀逸の黄金葉品種 ‘ネプチューンズゴールド’ などが知られています。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium x zabelii ‘Big Blue’ 、Eryngium x zabelii ‘Neptune’s Gold’
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:70cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・ユッキフォリウム(タイプ2)

夏に咲く白い球状の花序や、秋に向けて黒褐色に乾いていくシードヘッドの様子もオーナメンタルで、宿根草植栽に織り交ぜるとナチュラルさとデザイン性の高さを同時に演出してくれるアメリカ原産種。

エリンジウム・ユッキフォリウム

当代随一の宿根草植栽家 ピート・アウドルフ(Piet Oudolf)氏が好んで使う素材としても知られています。種小名が示す「ユッカのような」という形容よりは、グラスとブロメリアの中間のような雰囲気の葉です。葉縁に小さな棘を擁した柔らかい細剣葉を茂らせる開花時以外の草姿も、ナチュラルかつ独特の存在感があります。

エリンジウム・ユッキフォリウム

グラス類やユーパトリウム、エキナセアなど、北アメリカ原産の宿根草などととてもよく似合う、新感覚の宿根草素材です。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium yuccifolium
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:1m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・プラヌム(タイプ2)

青紫花のエリンジウムの中でも、性質が強めで、日本でも育てやすく流通量も多いヨーロッパ原産種です。

エリンジウム・プラヌム

ザベリィ種などと比べると金属細工のような苞葉は小さめですが、分岐が多くたくさんの花を咲かせ、花茎上部から球状の花序までもが銀青紫に色づく姿がとても壮麗です。比較的性質も丈夫で開花時にはボリュームも出るので、花いっぱいの宿根草植栽に織り交ぜてもとてもよく目立ち、オーナメンタルな球状の花容と神秘的な花色で絶好のフォーカルポイントになります。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium planum
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:1m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向~半日陰

エリンジウム・リーベンウォルシィ(タイプ2)

花序のてっぺんにぴょこんと飛び出た苞葉が特徴的で、切り花でも人気の高い、アメリカ中央部原産種。

エリンジウム・リーベンウォルシィ

青紫系のエリンジウムより少し赤みのある紫色の花で、棘棘した苞葉が飛び出した花容も含め、とてもオーナメンタルで目を引く美麗種です。岩場などもある乾燥ぎみの草原地帯原産の原種なので、多湿を好みません。同じような地域原産のエキナセアやフェスツカなどの宿根草と組み合わせて、やや乾燥ぎみの場所に植栽しても素敵でしょう。

本記事で紹介している他のエリンジウムが宿根草なのに対し、本種は花が咲いて種子を実らせたら枯れる一、二年草です。開花後に採種して種子が新鮮なうちに播くことで維持していけます。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium leavenworthii
■ セリ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 草 丈:70cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向

エリンジウム・パンダニフォリウム(タイプ3)

「タコノキ(パンダヌス Pandanus)のような葉の」という種小名を持つ、アルゼンチンやブラジル周辺原産の大型種。

エリンジウム・パンダニフォリウム

葉縁に棘を擁した、長さ1.5m程度にもなる葉をダイナミックに茂らせ、開花時には2.5m程度にもなる花茎を伸ばし、「巨大なワレモコウ」といった雰囲気の臙脂色の球状の花序を壮大に咲かせます。葉の姿はタコノキというよりはキジカクシ科のオーナメンタルプランツ、ダシリリオンの鋸葉種のような雰囲気。

ダシリリオン・ウィーレリィ
【参考】本種と似た雰囲気の葉を持つ ダシリリオン・ウィーレリィ(Dasylirion-wheeleri)

青紫花のエリンジウムのイメージとは全く異なる、トロピカルでアーキテクチュラル(建築的)な植栽効果のある珍種です。暑さにも強く、日本の高温多湿な夏場もよく成長します。大きく育つのと、葉縁の棘に触れると痛いので、安全で広い場所を確保して植えましょう。アガベなどの乾燥地系素材とも、カンナなどのトロピカル素材とも相性よく似合います。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium pandanifolium
■ セリ科
■ 主な花期:夏
■ 草 丈:2.5m程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

エリンジウム・アガビフォリウム(タイプ3)

「アガベのような葉の」という種小名を持つ、アルゼンチン原産種。

エリンジウム・アガビフォリウム

アガベというよりは、ディッキアやヘクティアといった、葉縁に豪棘があり平たいロゼットを形成するブロメリアに似た草姿で、より葉質が柔らかい雰囲気といった様相を呈します。

開花時以外は地際に平たいロゼット葉を展開し、開花時以外もオーナメンタルなリーフプランツとして観賞価値があります。

エリンジウム・アガビフォリウム

初夏に咲く花はクリームホワイト色の楕円球状の花序で、多くの宿根草と開花時期が重なります。

暑さや寒さにも強く、日本の気候でも育てやすいです。比較的寒冷な地域で熱帯っぽい雰囲気を植栽に盛り込みたい場面で活躍します。開花時以外は背の低いロゼット葉の状態なので、カッコいい葉姿も観賞できるように、植栽では手前寄りに植栽するとよいでしょう。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium agavifolium
■ セリ科
■ 主な花期:初夏
■ 草 丈:1.2m程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

エリンジウム・エブルネウム(タイプ3)

「エリンジウム・ブロメリフォリウム」という異名が示すように、まさにディッキアやヘクティアといった、葉縁に豪棘のあるブロメリア科(パイナップル科)植物に似た葉姿となる南米原産の珍種です。

エリンジウム・エブルネウム

前出のアガビフォリウムよりも葉幅が狭く、開花時以外のロゼットの雰囲気も、ブロメリアの仲間と見紛うほどによく似ています。

ヘクティア・ロセアナ
【参考】本種とよく似た葉・ロゼット姿となるブロメリア科の植物、ヘクティア・ロセアナ(Hechtia roseana)。

初夏に、ユッキフォリウム種の花をより壮大にしたようなクリームホワイト色の球状の花序を咲かせます。

エリンジウム・エブルネウム

その他の性質や植え方などは、ほぼアガビフォリウム種に準じます。熱帯植物っぽい見た目に反して耐寒性もあり、関東平野部以南であれば屋外でも問題なく地植えで越冬可能です。

エリンジウム・エブルネウム

ドライガーデンやトロピカルオーナメンタル植栽に用いても、珍奇な雰囲気を添加するのに貢献してくれる新感覚素材です。

【DATA】
■ 学 名:Eryngium eburneum (syn. Eryngium bromeliifolium)
■ セリ科
■ 主な花期:初夏
■ 草 丈:1.8m程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

エリンジウム

「芸術におけるすべての回答は、偉大なる自然の中にすべて出ている。
私たちは、その偉大な教科書を紐解いているだけだ。」
(アントニオ・ガウディ 建築家 1852 – 1926)

Credit


写真&文/太田敦雄
「ACID NATURE 乙庭」代表。園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科卒業後、前橋工科大学で建築デザインを学ぶ。趣味で楽しんでいた自庭の植栽が注目され、建築家とのコラボレーションワークなどを経て、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書に『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)。オンラインショップでは、レア植物や新発見のある植物紹介でファンを増やしている。
「ACID NATURE 乙庭」オンラインショップ http://garden0220.ocnk.net
「ACID NATURE 乙庭」WEBサイト http://garden0220.jp

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