ドライガーデンで目を引く珍素材! マンフレダ・マンガべをご存じですか? 品種編【乙庭Styleの植物19】
ローメンテナンスでワイルドなカッコよさから、今、人気急上昇中のドライガーデン。しかし、人気のアガベやユッカなどばかりコレクションのように植えても単調な植栽になってしまいます。ここでは、ドライガーデンに取り入れても異彩を放つアガベの近縁種、マンフレダとマンガベの魅力、そしておすすめの品種を8種ピックアップ! 分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。
目次
キモカッコいい珍ドライガーデン素材「マンフレダとマンガべ」品種編
アガベの近縁種で、葉に入るチョコチップ状の斑点模様や、アガベよりもドロッと垂れた姿が珍妙で目を引く新感覚素材「マンフレダとマンガベ」。その魅力や特徴については、前回の概要編もぜひ併せてお読みください。
アガベ、ユッカ、ヤシだけではなかなか差がつきにくい、ドライガーデン植栽に個性を加えてくれる植物です。今回は、特にキャラクターの際立った品種をセレクトしてご紹介したいと思います。
上写真は、アガベやユッカばかりで単調にならないように、マンフレダ ‘チョコレートチップ’ (写真手前中央)やカンナ ‘オーストラリア’ (写真中央奥)や非耐寒性のブロメリアなども合わせて熱帯的な雰囲気を演出した夏の寄せ置き植栽例です。カリフォルニアっぽいドライガーデンとは違う、無国籍なエキゾチック感のある植栽になっていますね。
他とは違う独創的なガーデニングを目指している方々に、新たな視点を与えてくれる植物です。
マンフレダとアガベの交配種「マンガべ」
マンガべ(x Mangave)は、アガベの亜属であるマンフレダとアガベの交配種で、主に21世紀に入ってから、アメリカのナーセリーを中心に品種開発が進み始めた植物です。
特に2010年以降は、交配親のアガベに多様性を持たせることで、さまざまなタイプのマンガべが登場しています。現在進行形で毎年新しい品種が世に出ている、同時代性も感じられて面白い植物です。
では以下にて、耐寒・耐暑性もあり、ガーデニングで異彩を発揮するマンフレダ、マンガべのおすすめ品種をご紹介します。
セレクト1
マンフレダ ‘チョコレートチップ’
葉縁がヒラヒラと波打った細長葉で、品種名のごとく葉面にチョコレートチップのような斑点模様が無数に入る品種です。
地植えすると地面にべたっと張り付いたような平たいロゼット姿となり、段差のある花壇の縁や鉢に植えると装飾的な垂れ葉姿となります。
葉が柔らかいため高さが出ず草丈も低いですが、たいへん個性的なルックスで目を引きます。晩春~初夏に花茎を高く伸ばして咲く花も不思議な雰囲気があり、独創的な植栽演出に貢献してくれます。
■学 名:Manfreda undulata ‘Chocolate Chips’
■草 丈:20cm(葉)~2m(花茎)
セレクト2
マンガべ ‘マッチョモカ’
ロゼット径1m程度に大きく育つ、マンガべの初期の代表的な名品種です。
全体がボルドーを帯びて見えるほど葉面にびっしりと密に斑点模様が入ります。大型のアガベと合わせても引けを取らない圧倒的な存在感が魅力の品種です。
マッチョモカのレアな斑入り品種 ‘エスプレッソ’ (x Mangave ‘Espresso’)も、より装飾性が高く、植栽の中で異彩を発揮します。
■学 名:x Mangave ‘Macho Mocha’
■草 丈:50cm(葉)~2.4m(花茎)
セレクト3
マンガべ ‘ジャガー’
ダークな深緑地に黒みの斑点模様が入る、マンフレダ・グッタータ(Manfreda guttata)系統の品種です。
一つのロゼットが大きくなるというよりは、分頭しやすく、葉数の多い立ち葉気味の群生姿になります。多肉質のしなやかな細葉が叢生する姿は、オーナメンタルプランツだけでなく、カラーリーフやトロピカルな雰囲気の宿根草ともよく似合います。他のマンガべよりも耐寒性があり冬の葉傷みが少なく、育てやすいのもうれしいところ。
2016年には本種‘ジャガー’ のピンクみの黄外斑入り品種 ‘カレイドスコープ’ (xMangave ‘Kaleidoscope’)が、2018年にはクールな白外斑入り品種 ‘スノーレオパード’ (xMangave ‘Snow Leopard’)も発表されています。
■学 名:x Mangave ‘Jaguar’
■草 丈:45cm(葉)~2.2m(花茎)
セレクト4
マンガべ ‘スポッティドッティ’
緑色地に濃紫褐色の斑点模様がバランスよく入り、ドット模様がとても際立って見える、2017年発表の新しい品種です。
葉幅も広く、ロゼット径70~80cm程度にも広がり、とても存在感があります。マンフレダ・マキュロサ(Manfreda maculosa)とアガベ・ジプソフィラ(Agave gypsophila)との交配により生まれた品種で、アガベ・ジプソフィラの形質を受け継ぎ、葉縁に緩やかな波打ちラッフルも入ります。
■学 名:x Mangave ‘Spotty Dotty’
■草 丈:45cm(葉)~2.2m(花茎)
セレクト5
マンガべ ‘フォーリングウォーターズ’
幅広葉でどっしりとイカツい姿がとてもカッコよく人気の高い、アガベ・オバティフォリア(Agave ovatifolia)の血を受け継いだ、耐寒性に優れ姿も美しい2017年発表の品種です。
地植えにすると直径75cm程度のぼってりとしたロゼット姿になり、鉢植えにすると、その品種名のように滝の通り、流れ垂れた草姿になります。
アガベ・オバティフォリアの幅広く分厚い葉、剛強な棘などの形状を受け継いだ、シルエットの美しい品種です。葉縁の棘は形としてはしっかり残っていますが、柔らかく、触れても痛くないので、アガベのようなカッチリした姿と棘の危険性を避けたい場所などに最適です。
耐寒性の強いオバティフォリアの性質を受け継ぎ、他のマンガべの品種よりも冬傷みも少なく、マンガべ特有のチョコチップ模様も楽しめ、育てやすさ・観賞価値の両面において完成度の高い品種です。
■学 名:x Mangave ‘Falling Waters’
■草 丈:40cm(葉)~2.2m(花茎)
セレクト6
マンガべ ‘シルバーフォックス’
マンフレダ由来の紫褐色のドット模様がびっしりと入った上に、パウダーがかったシルバーグレーが乗り、これまでのマンガべにはない、とても珍しい銀灰紫みの美しい葉色を獲得した、2017年発表の美麗品種です。他のマンガべにはない気品の高さを感じさせます。
直径55cm程度の端正なロゼットに育ち、葉色の美しさと相まってとても目を引きます。他にあまり類を見ない葉色なので、さまざまなカラーリーフプランツと組み合わせて楽しめます。耐寒性のエケベリア や セネキオなどの多肉植物と合わせても、デコラティブで独創性の高い植栽になります。
■学 名:x Mangave ‘Silver Fox’
■草 丈:25cm(葉)~2m(花茎)
セレクト7
マンガべ ‘メイアンクイーン’
前出の ‘シルバーフォックス’ を思わせる銀灰色に覆われつつも、赤紫を帯びた斑点模様が強く、そしてロゼット径75cm程度と ‘シルバーフォックス’ より大型に育つ、異彩と迫力、おしゃれな雰囲気を兼ね備えた2017年発表の品種です。
■学 名:x Mangave ‘Mayan Queen’
■草 丈:45cm(葉)~2.2m(花茎)
セレクト8
マンガべ ‘デザートドラゴン’
マンガべらしい「毒々しい」雰囲気満点の2018年発表の品種です。
交配親の一つが、葉縁に波打ちラッフルが入るアガベ・ジプソフィラ 亜種 パブロカリロイ(Agave gypsophila ssp. pablocarrilloi)であるせいか、大きく波打った葉縁が装飾的な雰囲気を漂わせます。
地にへばりついたような直径50cm程度にもなるロゼットや、灰緑の地色に粒の大きな、そして黒みの強い斑点模様が入り、不気味ダークなキャラクターがとても強い品種です。こういった植物がさりげなく植えてあると、「ここの庭主はどんな人なんだろう」と思わず空想が膨らんでしまいませんか? 見る者のイマジネーションを掻き立ててくれる品種です。
■学 名:x Mangave ‘Desert Dragon’
■草 丈:15cm(葉)~2m(花茎)
「独創的なものは、初めは少数派である。多数というものは独創ではない。」
(湯川秀樹 理論物理学者 1907 – 1981)
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