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春から初夏の庭へ。バラと開花期が合うオージープランツの楽しみ方 品種編【乙庭Styleの植物16】
晩春から初夏の主役となる花、バラと組み合わせる新たな選択肢として、オージープランツを取り入れてみませんか? バラの開花期に合わせてコンビネーションが楽しめるオージープランツのオススメ品種と栽培のコツを、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。
目次
バラの前後も花のシーンをつなぐオージープランツの品種をセレクト
アガベなどのオーナメンタルプランツを使ったドライガーデン好きの方だけでなく、バラ好きの方にも差別化素材としてオススメしたい、「春のバラとも開花期が合う」、オーストラリア原産の植物、いわゆるオージープランツをご紹介するシリーズ記事の第2回。今回は、具体的な品種紹介編となります。
バラとオージープランツを庭で両立させる植栽のコツなどについては、『春から初夏の庭へ。バラと開花期が合うオージープランツの楽しみ方 概要編【乙庭Styleの植物15】』も併せてご参照ください。
その個性的でワイルドな風情の面白さから、近年人気が高まりつつあるオージープランツ。まだ日本国内では詳しい情報も少なく、「興味はあるけど、なかなか導入に踏み切れない」「どれを選んだらよいか分からない」という方も多いかもしれませんね。
本記事では、チューリップが咲く春からバラが最盛期を迎える晩春、そして初夏に向けて開花リレーをし、さらには日本の気候環境でも庭植えで比較的育てやすいオージープランツをセレクトしてご紹介します。バラや宿根草などを中心にお庭づくりをしている方にも、新しい植栽のヒントや刺激になれば幸いです。
上の写真は乙庭が植栽した実例。カロタムヌス・クアドリフィドゥス(写真左)、グレビレア ‘ガウディチャウディ’ (写真手前)といったオージープランツと、耐寒性のアロエ・ストリアツラ や ユッカ・ロストラータなどの乾燥地系オーナメンタルプランツを組み合わせて、無国籍な乾燥地系植栽の表現をしています。
これは花モノが少ない例ですが、こういった植物と同じ視界に入るようにバラや宿根草の植栽を配していくことで、より独創性の高いイノベイティブな植栽をつくることができます。
前回記事のおさらいになりますが、オージープランツとバラなどの花モノを植栽する際に、以下の点にはくれぐれもご注意ください。
- オージープランツは全般的にリン酸系肥料を好みません。肥料を多く与えて育てるバラや花モノとは土壌環境を離して植えること。植え場所を分けた上で、同じ視界に入るように配置の工夫をしましょう。
- オージープランツはカラカラの乾燥地原産のイメージがありますが、土中まで完全に乾くと一気に枯れます。特に夏場、鉢植えのものは水切れさせないように注意しましょう。
では、開花期の早いものから順に、乙庭オススメのオージープランツをご紹介します。
セレクト1
ダーウィニア・タクシフォリア、ダーウィニア・シトリオドラ
ダーウィニアは主に西オーストラリアを原産とする常緑小低木です。今回ご紹介するタクシフォリア、シトリオドラの2種は、どちらも開花期以外の時期、特に冬の葉姿も美しく、関東平野部では概ね夏冬問題なく越せる程度の耐寒性・耐暑性もあり、育てやすいオススメ種です。
ダーウィニアは「マウンテンベルズ」という英名が示すような釣鐘状の形状の花も、カラフルな中に日本人の美意識にも響く奥ゆかしさを兼ね備えています。
また、ダーウィニアという属名は「種の起源」で知られるチャールズ・ダーウィンの祖父に当たるイギリスの詩人・自然哲学者、エラズマス・ダーウィンの名にちなみます。
2種とも、チューリップなど秋植え球根が多く開花する4月の中旬以降から、バラが次々と咲き始める5月中旬にかけて、美しく色づいていくつぼみから開花まで、長い期間楽しめます。
ダーウィニア・タクシフォリアは、這性の小型針葉樹のような姿で濃ピンク色の花を咲かせます。葉色も少し水色がかり、グラウンドカバー向けの常緑小低木としても美しいです。
ダーウィニア・シトリオドラは、「シトラス香のある」という種小名が示すように、葉を揉んだりすると爽やかな柑橘香を楽しめます。小さな楕円形の葉を密生させてこんもりとしたマウンド状の樹形に育ち、少し灰緑がかった葉色にオレンジ色の花の対比も美しいです。
【DATA】
■ 学 名:Darwinia taxifolia 、Darwinia citriodora
■ フトモモ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:50cm~1m程度
■ 耐寒性:普通(マイナス5℃程度)
■ 耐暑性:普通 (蒸れに注意)
■ 日 照:日向~明るい半日陰
セレクト2
ハケア・ラウリナ
南西オーストラリアを中心に、タスマニアや北部熱帯地域まで、オーストラリアの比較的幅広い地域に分布する、常緑中木です。
ユーカリを思わせる灰水色がかった葉も美しく、「ピンクッションハケア」という英名のように、白い雌しべが針山状に飛び出した、赤ピンク色のとても美しい花を咲かせます。
開花期は、関東平野部で4月下旬~5月頃。比較的、耐寒・耐暑性もあり、ユーカリの一部の種のように巨木になって手に負えなくなることもなく育てやすいです。冬の間につぼみが膨らんでいきます。寒風などでつぼみが傷んでしまうと開花しにくくなるので、南向きの壁面沿いなど、北風や強い霜を避けられる暖かい場所を選んで植えるとよいでしょう。枝が柔らかく枝垂れがちの樹形になります。必要に応じて支柱をして樹形を補正してあげるとよいでしょう。
【DATA】
■ 学 名:Hakea laurina
■ ヤマモガシ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:3~5m程度
■ 耐寒性:普通(マイナス5℃程度)
■ 耐暑性:普通
■日 照:日向
セレクト3
カロタムヌス・クアドリフィドゥス
南西オーストラリア原産の常緑中木です。ローズマリーなどを連想させる短針状の葉を枝全体に密生させます。その葉には繊毛が生えていて、遠目に銀葉のように見えます。
逆光を受けると葉の繊毛が光を乱反射し、枝全体が白く発光しているような様相を呈し、リーフプランツとしても面白い素材です。
関東では、ゴールデンウィークから5月中旬頃にかけて、コーラルレッド色の花を咲かせます。幹や枝から直接花が咲く姿が風変わりです。
耐寒・耐暑性もほどほどあり、日本でも比較的温暖な地域であれば育てやすいです。暑い時期によく枝を伸ばし、放任するとボサボサと茂った姿になりやすいので、幹が傾かないように支柱をし、花後に適宜剪定して樹形を整えてあげるとよいでしょう。
【DATA】
■ 学 名:Calothamnus quadrifidus
■ フトモモ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:3m程度
■ 耐寒性:普通(マイナス5℃程度)
■ 耐暑性:普通
■日 照:日向
セレクト4
テロペア・スペキオシッシマ
オーストラリア南東部、シドニー市のあるニューサウスウェールズ州原産で、同州の「州花」にも指定されている、オージープランツの中でも特に花の観賞価値が高い常緑低木です。
アボリジニの言葉で「赤い花」を意味する「ワラタ」という英名でも知られています。樹高3m程度になり、面の広い厚手の常緑葉が茂る姿もワイルドでカッコいいです。春から大きなつぼみが膨らみ始め、バラの最盛期と重なる5月中旬~下旬にかけて、クリムゾンレッドの大輪花を咲かせます。フラワーアレンジメント素材でも人気の高い花です。
テロペアとは全く別種ですが、たとえるならば厚物咲きのキクを思わせるような、中央がぼってり厚く盛り上がったゴージャスなシルエットの花です。とても造形美があり、庭でも異彩を放ちます。
バラとも全く異なる花容なので、バラと同じ視界にあると好対照となり、お互いに引き立て合います。春以降、つぼみが膨らんでいく過程も美しいので、開花期まで含めると比較的長く楽しめます。また、開花期以降の葉や樹形も野生みとオーナメンタルさを併せ持っていて、とても庭で映える樹木です。オージープランツの中でも耐寒性・耐暑性に優れ、後述するカリステモンと並んで、日本の温暖地の気候環境に合歌め育てやすいです。
【DATA】
■ 学 名:Telopea speciosissima
■ ヤマモガシ科
■ 主な花期:晩春
■ 樹 高:3m程度
■ 耐寒性:普通(マイナス7℃程度)
■ 耐暑性:強
■日 照:日向
セレクト5
ディアネラ ‘カッサブルー’
アヤメやニューサイランを連想させるような細みの常緑剣葉をシュッと茂らせる草姿もスマート。水色みを帯びた葉色も美しく、春に咲く薄青紫色の花や花後に実る暗紫色の実など、観賞どころも多く、通年楽しめるユリ科の植物です。
オーストラリアの南東部からタスマニア島辺りを原産とするディアネラ・カエルレア種の青葉選抜種に、さらに他のディアネラを交配させて生まれたとされる美しい青葉品種です。
美しい葉を通年楽しめ、バラの最盛期と開花期が重なる晩春に、美しい薄青紫色の花を咲かせます。花後は暗紫色の実もなり、季節ごとに観賞ポイントも移り変わり、面白い素材です。
宿根草やバラ、またはアガベやユッカといったオーナメンタルプランツとも見た目の相性もよく、ともするとモシャモシャしたブッシュ低木ばかりになりがちなオージープランツ植栽においても、整った剣葉が植栽の引き締め役になります。比較的耐寒性もあり、関東平野部以南では概ね屋外でも越冬可能です。日向~半日陰のさまざまな環境に適応し、暖地では手間もかからず育てやすいでしょう。
【DATA】
■ 学 名:Dianella ‘Cassa Blue’
■ ユリ科
■ 主な花期:晩春
■ 草 丈:60cm程度
■ 耐寒性:普通(マイナス7℃程度)
■ 耐暑性:強
■日 照:日向〜半日陰
セレクト6
グレビレア
オーストラリア南西部を中心に分布し、これまで約250種の原種が知られているヤマモガシ科の低~中木です。花弁がなく雌しべが突出した風変わりな穂花が個性的。花色鮮やかな品種も数多くつくられており、園芸的にも安定した人気を誇るオーストラリアを代表する固有種の一つです。種によって樹姿や性質なども異なりますが、本項では、バラと開花期が重なり、かつ日本での屋外栽培に向くオススメ品種を4つご紹介します。
セレクト6-1
グレビレア ‘エレガンス’
Grevillea ‘Elegance’
非常に細長く裂け込んだ葉が涼やか。関東平野部では、ゴールデンウィーク明け頃から、鮮やかなコーラルピンク色の花を咲かせます。花も葉も美しい品種です。
セレクト6-2
グレビレア ‘ピーチズアンドクリーム’
Grevillea ‘Peaches and Cream’
比較的近年に紹介された品種で、アプリコット~クリームイエローへと移ろうグラデーション色彩の穂花がとても美しい品種。バラの開花最盛期の5月中〜下旬に咲き始め、秋までまばらに繰り返し咲きます。性質も丈夫で育てやすいです。
セレクト6-3
グレビレア ‘ムーンライト’
Grevillea ‘Moonlight’
グレビレアの中でもよく知られ、比較的普及も進んでいる有名な品種です。5月中旬頃から淡いクリームイエローの美しい花を咲かせ、春バラのピークと開花期が重なります。
セレクト6-4
グレビレア ‘ガウディチャウディ’
Grevillea ‘Gaudichaudii’
這性タイプのグレビレアで、5月中旬頃からダークなマルーンレッドの花を咲かせます。美しく裂け込んだ葉の形状もオーナメンタルで、枝先の葉が赤褐色がかる色合いも美しく、グラウンドカバーや垂れる素材として使っても面白いです。性質が丈夫で育てやすいのも魅力。枝が伸びすぎたら晩春の開花後に刈り戻し剪定をして、姿を整えましょう。
【DATA】
■ 学 名:Grevillea (各品種名は上記)
■ ヤマモガシ科
■ 主な花期:晩春~初夏を中心に、秋までまばらに繰り返し咲き
■ 草 丈:30cm〜3m程度(這性から立性まで品種により樹姿が異なる)
■ 耐寒性:普通(マイナス5℃程度)
■ 耐暑性:強
■日 照:日向
セレクト7
カリステモン
オーストラリア本土からタスマニアにかけて約30種の原種が知られるフトモモ科の常緑中木です。赤花のスペキオススは、明治中期頃に日本に渡来し、園芸植物としても比較的古くから親しまれています。
花の形状から「ブラシノキ」と呼ばれるほか、「キンポウジュ」という和名でも知られています。春バラの最盛期を過ぎた頃、5月下旬頃から開花し、バラからバトンタッチして初夏の庭へと花風景をリレーしてくれます。
日本の気候にも合い、オージープランツの中でも最も育てやすい種類の一つでしょう。大きく育てると幹肌もゴツゴツと風格を増し、立派なシンボルツリーになります。最近では赤色だけでなく、濃淡ピンク花や白花の品種も流通しており、好みに合わせて花色の選択肢も広がりました。モダンな「オージープランツ」のイメージと、「ブラシノキ」という昭和ノスタルジーな雰囲気を併せ持った素材です。
上の写真は乙庭によるカリステモン植栽事例。モダンな雰囲気の素材群の中に、あえてカリステモンの「昭和み」をプラスすることで、ちょっとスパイシーな「ダサカッコよさ」を演出しています。よく知られている素材だけに、新しさと懐かしさというダブルの意味合いを上手に生かして使いこなしたいですね。
【DATA】
■ 学 名:Callistemon speciosus をはじめ、園芸品種もあり
■ フトモモ科
■ 主な花期:晩春~初夏
■ 樹 高:3~5m程度
■ 耐寒性:普通(マイナス10℃程度)
■ 耐暑性:強
■日 照:日向
「行為としてのデザインには、対象を構成要素に分解した上で、再び組み立て直すというニュアンスがある。デザインとは組み替えそのものだと言ってもいい」
(佐宗邦威 ストラテジックデザイナー)
Credit
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