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読者のお悩みに経験豊富なGarden Story執筆陣が回答! ②高地でのハーブ選び
Garden Storyへ読者の方からお便りをいただきました。標高900mの高地にあるクラインガルテンで、宿根草やハーブを育てたいけれど、どんなものを選べば? というご質問。草花編に続き、ハーブについて、クラインガルテン歴20年以上の岡崎英生さんが丁寧に回答します。
高地の庭の花選び(草花編)についてはこちら。
目次
標高900mの庭でのハーブ栽培、どんなものを選べばいいですか?
ハーブのほとんどは寒さに強く、それほど制限はありませんが、熱帯地域が原産といわれるレモングラスや、南アフリカ原産のゼラニウムなどは寒さが苦手です。このように、耐寒性や耐暑性の判断は、その植物の原産地が手掛かりになります。代表的なハーブの原産地は、地中海沿岸やヨーロッパの中緯度地帯が多く、高地での栽培には後者のほうが向いています。
例えば、ローズマリーもいろいろな料理に重宝する非常に有用なハーブですが、残念ながら高冷地では冬越しをすることができません。私は自分で増やした10株ほどを山あいの畑に移植したことがありますが、一冬ですべて枯れてしまいました。
ただし、熱帯地域原産のものでも一年草であれば、ご自宅で苗を育てておいて十分地温が上がり、霜の心配がなくなってからクラインガルテンの庭に移植することで、楽しめるものもあります。私自身、そのようにしてバジルなどの収穫を楽しんでいます。それでは私の経験も含めながら、オススメのハーブをご紹介します。
おすすめハーブ①
カモミール
初夏から夏にかけて、甘い香りの小さな白い花を咲かせるハーブです。ヨーロッパでは、乾燥させた花に熱いお湯を注いだものが、カモミールティーとしてよく飲まれています。このティーには心を穏やかにしてくれる効果があり、ホットミルクで煮出して飲むと安眠できます。
本来は秋になると枯れてしまう一年草ですが、こぼれ種でよく増え、毎年楽しむことができます。
苗は市場に出回りませんので、4〜5月頃、自分で種をまいて苗を育成することになります。発芽率が抜群によいので、誰でも簡単に苗を育てられます。
おすすめハーブ②
タイム
木立性や匍匐性など、いくつかの種類がありますが、高地では匍匐性がよいでしょう。庭のグラウンドカバーとしても活躍し、雑草を抑えるのにも重宝します。生育旺盛で次第に形が乱れてきますので、時々、整姿をかねて伸びすぎているところを刈り取り、それを麻縄などでしばって保存し、ドライフラワーにします。
このドライのタイムを、ほんの少量、指先でもんで、カレーやシチュー、パスタ料理のソースなどに加えると、味が格段にアップします。
おすすめハーブ③
バジル
バジルは、ハーブの中でもとりわけ有用な植物です。苗が市場に出回ることは少なく、出てもすぐに売り切れてしまいますので、自分で種をまいて苗を育てましょう。
種のまき時は通常は5月中〜下旬とされていますが、筆者の経験では6〜7月頃、気温や地温が十分に高くなってからまいたほうが、発芽率が格段によくなります。あなた様の場合は、ご自宅でポリポットなどにまいて苗を育成し、クラインガルテンに移植されるとよいでしょう。
バジルは盛夏から秋にかけて、白い小さな花を咲かせます。その花は適宜摘み取り、側枝がたくさん出るようにします。葉を適宜収穫し、サラダなどに加えると、素晴らしい香りと風味が楽しめます。
また、バジルの葉でペーストを作るのもオススメです。ジェノベーゼソースとも呼ばれるバジルペーストは、トーストに塗ったり、パスタ料理のソースにしたりすると超美味です。
[バジルペーストの作り方]
- バジルの葉 30g
- ニンニク 1片
- ナッツ類、または剥き胡桃 2〜3個
- 塩 小さじ1/2
- オリーブオイル 60g
以上をミキサーやグラインダーにかけてペースト状にし、煮沸消毒したガラス瓶に入れて冷蔵庫で保存します。ペーストの表面にオリーブオイルを少量加えておくとカビを防ぐことができます。小瓶に分けて保存し、作った分はなるべく早く食べきって、また新たにペーストを作るようにしましょう。
おすすめハーブ④
ミント類
ペパーミントなどのミント類も、料理に添えたり、ティーにしたりできる大変有用なハーブですが、一度植えると地下茎でいたるところに増えまくるので、栽培する場合には、波板トタンなどを地中に埋め込んで囲いを作り、地下茎が伸び広がらないようにする必要があります。さまざまな種類があり、苗も多く流通しています。
おすすめハーブ⑤
花のきれいなハーブ
キャットミント
ブルーの花が美しいハーブです。宿根草で、大株になってくると内側から枯れ込んでくるので株分けをします。アブラムシなどを食べてくれる益虫のハナアブの棲み処にもなるので、コンパニオンプランツとしてもオススメです。
エキナセア
6月中旬頃から咲き始め、暑い夏の盛りに元気よく庭を彩ってくれます。春か秋に、日当たりのよい場所に元肥を施して花苗を定植します。花がらをつけたままにすると美観上もあまりよくありませんし、種ができると花が咲かなくなるので、長く花を楽しむためには、花がらをこまめに摘むとよいでしょう。開花期間が一通り終わったら、株元からバッサリ切ります。
・ハーブティーで風邪予防! 免疫力を上げる「エキナセア」をおいしく飲もう
アキレア
花色豊富なアキレア(写真では赤い花のほう)。とにかく丈夫で、寒さにも暑さにも乾燥にも強く、痩せた土地でも日当たりさえよければスクスク育って花を咲かせます。植えどきは秋か春で、その頃、園芸店や通販で苗が出回ります。地植えの場合、植栽したての頃は水やりをしますが、多湿にすると茎が倒れやすくなるため、根付いた後は、ほとんど放任でOKです。一度根を張ると、こぼれ種のほかに地下茎でも増えます。数年したら増えすぎに注意して、必要に応じて間引くとよいでしょう。
カレンデュラ
耐寒性のとても強いハーブです。タネを秋にまき、11月初旬くらいまでに定植します。タンポポのように葉っぱが地面に張り付いたような「ロゼット状」になっている場合は、−15℃ほどの寒さにも耐えます。春から咲き始め、涼しい場所なら夏まで花を咲かせ続けます。
・私のガーデンストーリー 「庭の花を摘んでカレンデュラオイルを手づくり」
野菜づくりも花の庭づくりも、たくさんの喜びをもたらしてくれます。あなたの楽しいクラインガルテン生活を応援しています!
Credit
文/岡崎英生(文筆家・園芸家)
早稲田大学文学部フランス文学科卒業。編集者から漫画の原作者、文筆家へ。1996年より長野県松本市内四賀地区にあるクラインガルテン(滞在型市民農園)に通い、この地域に古くから伝わる有機栽培法を学びながら畑づくりを楽しむ。ラベンダーにも造詣が深く、著書に『芳香の大地 ラベンダーと北海道』(ラベンダークラブ刊)、訳書に『ラベンダーとラバンジン』(クリスティアヌ・ムニエ著、フレグランスジャーナル社刊)など。
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