宿根草やバラと調和するシンボルツリー「カラーリーフ落葉樹10選〜中低木編」【乙庭Styleの植物12】
存在感がありつつ、ナチュラルな植栽にも合わせやすいのがカラーリーフの落葉樹です。今回は、高木と草花類をつなぐ役割や、小さな庭のシンボルツリーにぴったりな中低木からセレクトしてご紹介。分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで、園芸家の太田敦雄さんにご案内いただきます。
目次
宿根草やバラの植栽とよく合い、
小さな庭のシンボルツリーにもなる中低木のカラーリーフ落葉樹
春咲きの一年草や球根類の開花に始まり、華やかなバラの開花へと至る4~5月の庭は、一年でも最も生命力と色彩感に溢れる季節。樹木のカラーリーフ品種も、この時期の新葉が一番発色鮮やかで美しいです。
この記事では、前回に引き続き、 ナチュラルな宿根草やバラを使った植栽に似合うという観点から、より季節変化とナチュラルさを感じられる素敵なカラーリーフ落葉樹をご紹介します。 第2回目の今回は、小さな庭のシンボルツリーや、草花類と高木の中間の高さを彩ってくれる中低木編です。
上の写真は、マルバノキ ‘恵那錦’ (エナニシキ)と コリルス(=西洋ハシバミ)‘プルプレア’ 、そして宿根草のホスタを組み合わせた植栽例です。地際の宿根草だけでは出せない高さ方向の広がりが出て、ダイナミックな色彩空間になっていますね。
カラーリーフの高木を背景に、その手前に中~低木(バラも含む)、そして前面に草花を配するというように、高低差を効果的に利用して植えると、空間に奥行きが生まれ、とてもニュアンス豊かな、また構成力の強い植栽になります。
宿根草やバラを多く使った植栽は、開花ラッシュが終わる初夏以降、緑が生い茂って平坦な見た目になりやすいのが難点です。観賞期間の長いカラーリーフを意識的に使うことで、夏~秋もメリハリのある植栽を維持できますよ。
樹木のカラーリーフは、草花のカラーリーフよりもスケールが大きく、とても大胆な色空間を演出できます。ぜひ積極的に庭の植栽に取り入れたいですね。
庭づくりの参考に、前回の「高木編(セレクト1〜5)」もぜひ併せてお読みください。
『宿根草やバラともよく似合い、シンボルツリーにもなるカラーリーフ落葉樹 10選(その1高木編)【乙庭Styleの植物11】』
セレクト6
アルビジア(=ネムノキ)‘サマーチョコレート’
細かい小葉がたくさんついた羽状複葉が装飾的で、エキゾチックにもエレガントにも演出できるネムノキの銅葉品種です。
千葉大学名誉教授 故・横井政人氏により見出された、日本発信の素晴らしいカラーリーフ樹木です。ネムノキは日本から南アジアにかけての比較的温暖な地域原産の樹木です。
耐暑性が強く、ちょっと熱帯的な雰囲気を漂わせるルックスからも、温暖地でのガーデニングにもってこいの素材です。
【DATA】
■ 学 名:Albizia julibrissin ‘Summer Chocolate’
■ マメ科
■ 主な花期:初夏~夏
■ 樹 高:4m程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向
セレクト7
コティヌス・コッギグリア(=スモークツリー)の仲間
スモークツリーのカラーリーフ品種は、バラを多く取り入れた洋風庭園のフォーカルポイントやシンボルツリーとしても定番的人気を誇る樹種ですよね。
コティヌスは、バラの開花期と合う新葉の発色も素晴らしく、秋の紅葉も美しいのが特徴。
日本の気候にも合い、性質も丈夫で育てやすいので園芸初心者の方にもオススメの樹種です。ここでは、紫葉と黄金葉の代表的品種を一つずつご紹介します。下記の他にも、樹高や花色など、いろんなタイプの品種がありますので、用途に応じて選んでみてください。
黄金葉:コティヌス ‘ゴールデンスピリット’(Cotinus coggygria ‘Golden Spirit’)
紫葉:コティヌス ‘ロイヤルパープル’(Cotinus coggygria ‘Royal Purple’)
【DATA】
■ 学 名:Cotinus coggygria (各品種名は上記参照)
■ ウルシ科
■ 主な花期:夏
■ 樹 高:2.5~5m程度(品種により異なる)
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:強い
■ 日 照:日向~明るい半日陰
セレクト8
ケルシス・カナデンシス(=アメリカハナズオウ)の仲間
次にご紹介するのは、アメリカハナズオウの名でも知られるケルシス・カナデンシスの仲間。前出のスモークツリーと並んで、バラのオープンガーデンなどで人気の高いカラーリーフ樹木です。
関東では4月頃、葉の芽吹きに先立って枝にびっしりと咲くピンク色の花から始まり、ハート形の葉の可愛らしさ、ナチュラルな樹形と見どころが多い樹種です。
樹高も大きくなりすぎず、小さな庭にもオススメです。
育てやすい樹木ですが、初夏以降の直射や強い風で葉が傷みやすいので、スモークツリーよりは半日陰の場所に植栽するとよいでしょう。以下に代表的な品種をご紹介します。
黄金葉:ケルシス ‘ハートオブゴールド’(Cercis canadensis ‘Heart of Gold’)
銅葉:ケルシス ‘フォレストパンジー’(Cercis canadensis ‘Forest Pansy’)
白散斑葉:ケルシス ‘シルバークラウド’(Cercis canadensis ‘Silever Cloud’)
【DATA】
■ 学 名:Cercis canadensis (各品種名は上記参照)
■ マメ科
■ 主な花期:晩秋
■ 樹 高:2.5m程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:明るい半日陰
セレクト9
ディサンスス・ケルシディフォリウス(=マルバノキ)‘恵那錦’
前出のケルシスの葉を小さくしたようなハート形の葉が可愛らしい日本原産の樹木マルバノキの、とても美しい斑入り品種。知る人ぞ知る偉大なる園芸家、山口清重氏により発見された、世界に誇る日本発信のカラーリーフプランツです。
明るい灰水色がかった地色に乳白色の覆輪が入る葉色も独特で、山野を感じさせるナチュラルな風情もあり、ホスタなど半日陰で栽培する宿根草植栽にとてもよく似合います。
ピンク~薄灰紫色に色づく秋の紅葉も、幻想的な美しさで必見ですよ!
【DATA】
■ 学 名:Disanthus cercidifolius ‘Ena-nishiki’
■ マンサク科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:3~5m程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:半日陰
セレクト10
サンブカス(=西洋ニワトコ)の仲間
ハーブの分野でもその健康効果が注目されている西洋ニワトコのカラーリーフ品種です。
西洋ニワトコは、その花や実が「エルダーフラワー」「エルダーベリー」とも呼ばれ、ハーブティーや食用でも親しまれています。
ドライのハーブティーやジャムなど、加工品になった状態で目にすることが多いですが、バラと開花期の重なる花も美しく、黒や赤色の房になる実も園芸的に観賞価値が高い品種です。
カラーリーフの園芸品種も登場していて、ハーブとしても観賞用にも価値の高い低木です。バラと開花期が重なるので、オープンガーデンでバラと組み合わせた素敵な植栽を見かけることも多いと思います。ナチュラルな風情もあり、それほど大きく育たないので、小さな庭にも取り入れやすいです。
ここでは、羽状の裂込葉が美しい2品種をご紹介します。これ以外にも広葉や直立樹形などいろいろな品種がありますので、ぜひチェックしてみてください。
銅葉で黒実の美麗種
サンブカス・ニグラ ‘ブラックレース’(Sambucus nigra ‘Black Lace’)
黄金葉で赤実の品種
サンブカス・ラケモサ ‘プルモサオーレア’(Sambucus racemosa ‘Plumosa Aurea’)
【DATA】
■ 学 名:Sambucus (各品種名は上記参照)
■ レンプクソウ科
■ 主な花期:春
■ 樹 高:2.5~3m程度
■ 耐寒性:強い
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:半日陰
「色彩が豊富になる時、形も充実する」
(ポール・セザンヌ 画家 1839 – 1906)
併せて読みたい
・乙庭Styleの植物7「落葉期にハッと魅せられるおもしろ枝モノ樹木」その1〜サンゴミズキの仲間
・宿根草のカラーリーフ基本種5選 寄せ植えや花壇づくりに彩りをプラスしよう!
・「私の庭・私の暮らし」紅葉が美しい木々の庭 東京・前島邸
Credit
新着記事
-
ガーデン&ショップ
都立公園を新たな花の魅力で彩る「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」は秋深まる
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテスト「東京パークガーデンアワード」。第2回のコンテストは、都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開がスタートしています。ここでは、5つのコンテストガ…
-
ガーデン&ショップ
里帰りした宿根草「アスター‘ジンダイ’」が初めての開花! 東京パークガーデンアワード@神代植物公園で観…
今、ガーデンに関わる人たちの間では、温暖化や病害虫の影響を受けない植物のセレクトや、手のかからないローメンテナンスな庭づくりを叶える優れた植物を求めて日々チャレンジが続いています。そんななか、アメリ…
-
イベント・ニュース
【秋バラが本格的に開花!】秋の風情が深まる「横浜イングリッシュガーデン」へ出かけよう!PR
希少なアンティークローズから最新品種まで、国内外でも屈指のコレクション数を誇る「横浜イングリッシュガーデン」は、秋に色香を増すバラも続々開花が進んでいます。11月2日(土)からは、季節を先取りしてクリス…