宿根草とは? その特徴&春夏秋冬のおすすめ品種
一度植えると、毎年必ず花を咲かせてくれる宿根草(しゅっこんそう)。植えっぱなしの放任でよいものが多く、肥料や水やりもほどほどでOK。違う季節に咲く宿根草や多年草、一・二年草と組み合わせて、おしゃれな花生活を楽しみましょう。ここでは、四季それぞれに咲き、楽しませてくれるおすすめの宿根草を、春夏秋冬の季節ごとにご紹介します。
目次
春に開花する宿根草
おすすめ5選
(1)クレマチス
種類が非常に多く、花の大きさも小輪・中輪・大輪とさまざま。また花色も紫、空色、白、ピンクと多彩です。つるが長く伸びるタイプも多いので、種類に合わせてトレリスやフェンスに絡ませて楽しみましょう。
初心者でも育てやすいのは、濃い紫色の小ぶりの花がたくさん咲く‘エトワール・ヴァイオレット’。その年に伸びたつるに花が咲きます。7月中旬には散りますが、このとき地際まで切り戻しておくと、夏の終わりから秋にかけて再び花を咲かせてくれます。晩秋にはすべてのつるが枯れますので、地際で剪定(切り取る)して、翌年に備えます。このとき株の周りに完熟堆肥や少量の肥料を散布しておくとよいでしょう。
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(2)シャクヤク(ピオニー)
日当たりと風通しのよい場所なら、ほぼ植えっぱなしの放任でOK。毎年、4月末から夏の初めにかけてボタンに似た大輪の花が楽しめます。さまざまな品種があり、花色も多彩。花壇はもちろん、鉢やコンテナでの栽培もできます。
花が散ると、すぐにタネをつくろうとし始めますので、花がらはこまめに摘み取りましょう。
冬には地上部分は枯れますが、地中の根は生きていて越冬し、翌春再び芽吹いて花を咲かせてくれます。地上部分が枯れた頃、翌年に備えて表土に完熟堆肥や肥料を少し散布しておくとよいでしょう。
(3)宿根アマ
細い茎の先に淡い空色の花が咲き、それが風に揺れている様子がとても美しい。何株かを群植すると見事な景観をつくり出してくれます。英名‘ペレニアル・フラックス’。
日当たりがよく、やや乾燥気味の場所を好みます。苗がまだ小さいうち(草丈7〜8cm程度)に、摘心(てきしん/新芽の先端を摘み取る)をすると、側枝が伸びて花数が増えます。
4月末から咲き始め、1〜2日で花は散りますが、6月中旬頃まで次々に咲いてくれます。咲き終わったら、順次こまめに花がら摘みをしましょう。
ただし、花がら摘みをしなければ、秋には丸い球果ができ、その中には小さな黒いタネがたくさん入っています。このタネを播いて自分で新たな苗を育ててみるのもいいでしょう。
タネの播き時は9〜10月、または3〜4月。タネは好光性で、発芽には光を必要としますので、覆土はしません。発芽率はかなりよく、4〜5日から1週間程度で発芽します。秋播きした場合は、冬の間は日当たりのいい窓辺などで育苗を続け、翌春、定植しましょう。
秋にできた丸い球果をそのままにしておくと、こぼれダネでもよく増えます。
・植物に合わせた3つの「タネ播き」の方法
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(4)タイツリソウ
弓なりの花茎に小さなハート形の花が一列に並んで咲きます。その花姿がとてもユニークで可愛らしい。花をつけたときの様子が鯛を釣り上げているように見えるところから‘タイツリソウ’の名がつきました。別名‘ケマンソウ’。
もともとは森林や湿った深い谷間に自生していた野生種でした。現在はさまざまな園芸品種がつくり出され、花色も赤、ピンク、白と多彩。葉が緑色ではなく、鮮やかな黄色の種類もあり、カラーリーフとしても活躍します。
苗の植えつけは2〜3月上旬。明るい半日陰を好みます。花期は4~6月上旬くらいまで。
数年経つと株の勢いが次第に衰えてきますので、新規に苗を購入して植え替えましょう。
(5)ジギタリス
草丈80〜120cmほどになり、まっすぐ伸びた花穂に小さなベル形の花が下から次々に咲き上がっていく様子は、まさに圧巻!
英国庭園にはなくてはならない花の一つで、今は日本でも大人気です。別名‘フォックスグローブ’、‘キツネノテブクロ’。
秋や早春に出回る苗を買ってコンテナや庭に植えつけます。できれば秋に植えつけ、苗を冬の寒さに当てましょう。そのほうが花つきがよくなるからです。日当たりと水はけのよい場所を好みます。
花期は5~6月中旬頃まで。
草丈が高くなるので、手前や周りには背の低い草花を植えましょう。
花が咲き終わると、花穂にたくさんの小さなサヤができ、その中に非常に細かいタネがぎっしり入っています。
そのタネを播いて、自分で苗を育てることもできます。播き時は9〜10月。タネ播き専用土か、「サカタのタネ」が販売している「ピートバン」にバラ播きし、タネを用土によく密着させます。好光性なので覆土はしません。発芽率はかなり良好です。
冬越しした苗を翌年植えつけると、その年の5〜6月か、あるいは翌々春に開花します。
・国内入手可能! 世界一のガーデンショウでベスト1に輝いた夢の花「ハイブリッド・ジギタリス」
夏に開花する宿根草
おすすめ5選
(1)アガパンサス
長い花茎の先端に小さな房状の花を咲かせた姿が、とても魅力的。性質は強健で、育てやすく、ほとんど放任でOK。ガーデニング初心者にもおすすめの宿根草です。
植えつけの適期は3月と9月。日当たりと水はけのよい場所を好みます。
鉢やコンテナでも栽培できますが、夏の高温多湿と冬の寒風には弱いので、置く場所に注意。水やりは控えめにしましょう。
5月中旬から咲き始め、7月半ばまで花を楽しむことができます。肥料は春先に1回、花後に1回の年2回で十分です。
つやのある葉と茎は暖地では常緑ですが、寒冷地では冬になると地上部分が枯れます。ワラなどで株元を覆い、冬越しさせましょう。
(2)ルドベキア
いくつか品種がありますが、オススメは、チョコレート色の花心と黄色い花びらが可愛いルドベキア‘タカオ’。
草丈60cmほどになり、細かく分枝した花茎の先に輝くような小花がたくさん咲きます。
植えつけの適期は5月上旬〜下旬。日当たりと水はけのよい場所を好み、多湿と多肥を嫌います。
花が咲き始めるのは6月中旬頃から。秋、10月いっぱいくらいまで花を楽しむことができます。
株の勢いがやや衰えてきたら、3分の1ほど切り戻し、一回り大きな鉢やコンテナに植え替えましょう。
(3)ルリタマアザミ
長い花茎の先端に、アザミに似た青いボール状の花が咲きます。暑い時期の涼しげな花の色合いが魅力的。別名‘エキノプス’。
植えつけは秋10月頃か、春3月頃。植える前に完熟堆肥と苦土石灰を施しておきましょう。日当たりと水はけがよく、やや乾燥気味の場所を好みます。
花期は6月中旬~8月中旬。まだ花色が鮮やかなうちに刈り取ってドライフラワーにすると、素敵なインテリアになります。
(4)アスチルベ
ふわっとした柔らかい感じの花穂。とてもロマンチックな雰囲気の宿根草です。基本の色はピンクですが、白、赤、チョコレート色などの品種もあります。
花期は4月中旬~7月末頃まで。草丈が30cmほどと低いので、もう少し背の高くなる草花と混植すると華やかになります。
(5)カラミンサ
草丈30〜50cm。こんもりしたブッシュ状になり、初夏から秋まで白い小花をたくさん咲かせ続けます。ほかに、ピンクや淡紫色の花が咲く品種も。
植えっぱなしの放任でよく、肥料もほとんどいりません。水やりもなるべく控えめに。庭植えの場合は雨水だけで十分です。
他の草花と組み合わせて鉢やコンテナに植えてもよく、花期が長いので玄関やベランダの彩りとして便利です。
ハーブの一種なので、全草にミント系のスパイシーな香りがあります。葉は乾燥させ、レモングラスなどとブレンドし、ハーブティーとして利用することもできます。
秋に開花する宿根草
おすすめ5選
(1) ワイルドストロベリー
ハーブの仲間。4月、春の陽光が日に日に強くなっていく頃、白い小さな花が咲き始めます。やがて、そこに赤く可愛いイチゴが!
その後、猛暑の時期は少しお休みしますが、涼しくなると再び旺盛に生育を開始。秋遅くまで花と実が楽しめます。
植えつけは3〜5月。日当たりと水はけのよい場所を好みます。鉢やコンテナでの栽培も、もちろんOK。
植えつけ後、10日に1回程度、200倍ぐらいに希釈した液肥を与えましょう。株が充実してくると、こぼれダネでよく増えます。
実ったイチゴは、その都度収穫し、砂糖をふりかけてレンジでチン! 素晴らしい香りと風味のフレッシュジャムになります。
(2)フジバカマ
ドライフラワーにすると甘い芳香が得られることから、万葉人や平安朝の貴族たちにこよなく愛された草花。
秋の七草の一つで、海を越えて長距離の渡りをする蝶‘アサギマダラ’の食草としても知られています。
地下茎が伸びて増え、群生します。かつては草原や明るい林などに豊富に自生していたのですが、自然環境の悪化で激減。絶滅危惧種となってしまいました。従って、現在、フジバカマとして流通しているのは、雑種の‘サワフジバカマ’。
植えつけは3〜4月。7月下旬~10月下旬にかけて、長い花茎の先端に小さな花を房状にたくさん咲かせます。植えつけたときと花後の剪定をしたときに肥料を施しましょう。
全体の花姿は地味ですが、前述したようにドライフラワーにすると上品な甘い香りを放つようになります。その香りの正体は、香水にもよく使用されている芳香成分クマリン。玄関や階段の踊り場などに吊り下げておくと、通る度にほのかに香ってくれます。
(3)シュウメイギク
秋、やや寂しくなりかけた庭やベランダガーデンに鮮やかな彩りを添えてくれる貴重な宿根草。
大輪の花のように見えるのは、実はがく片ですが、紅紫色の半八重咲き、白花の一重咲きなどの種類があります。どちらも草丈50〜120cmほどと背が高く、風に揺れる様子がとても素敵です。
性質はきわめて強健。庭植えはもちろん、鉢やコンテナでも栽培できます。秋の寄せ植えにも活躍してくれます。
植えつけは3〜4月頃。このときに完熟堆肥、油粕、苦土石灰を株の周りに少量施します。
植えつけ時には、たっぷりと水をやりましょう。庭植えの場合は、その後は雨水だけで十分です。鉢やコンテナ植えの場合も水やりにさほど神経質になる必要はありませんが、夏場の水切れには注意しましょう。
花期は8~10月末頃まで。花が終わったら地上部を剪定し、肥料を施して翌年に備えます。
(4)ホトトギス
きわめて風情のある草花で、庭やベランダガーデンに和風のテイストを添えてくれます。
植えつけは3〜4月。半日陰を好みますので、鉢やコンテナ植えの場合は置き場所に注意しましょう。
花期は7月中旬~10月中旬頃まで。草丈30〜90cmほどになり、葉の横から花が顔をのぞかせ、上を向いて咲きます。
白い花に紫色の細かい斑点のある様子がホトトギスに似ているところから、この名がつきました。
品種は非常に多く、白花のほかにピンク、紫、黄色など。さらに乳白色の花が咲く種類もあります。
春先と花後の剪定をしたときに、完熟堆肥、油粕などを株の周りに少量施しましょう。
鉢やコンテナ植えの場合は、毎年、新しい用土に植え替えます。
(5)原種シクラメン
花期が長いので何カ月も花を楽しむことができ、育てやすいシクラメン。庭植えよりも、鉢やコンテナでの栽培がオススメ。秋のベランダガーデンを美しく彩ってくれる宿根草です。
さまざまな品種がありますが、オススメは淡いピンク色の花が咲く‘ヘデリフォリウム’。苗は街の園芸店やホームセンターなどでは手に入りませんので、ネット通販で宿根草専門ショップから購入しましょう。
植えつけは8月末~9月。水はけのよい用土に植え、半日陰の風通しのよい場所に置きます。
寒風に吹かれると葉や茎が傷みますので、鉢やコンテナを風の当たらない場所へ。
花は9~12月いっぱいくらいまで楽しめます。その間、薄い液肥を月に1回ぐらい与えましょう。
次第に根が混み合ってきますので、1〜2年に1回、新しい用土に植え替えます。
冬に開花する宿根草
おすすめ5選
(1) スノードロップ
可憐な白い花がうつむいて咲く様子は、まるで雪の妖精のよう!
鉢やコンテナでの栽培がオススメ。球根を9〜10月に植えつけます。5号鉢(直径15cm)なら5〜7球ぐらいを目安とします。
芽が出る前の12月頃から薄い液肥を与えましょう。
花は1月頃から咲き始め、4月上旬くらいまで楽しめます。
花の時期は日向に置き、花後は日陰で乾燥させ、翌年に備えます
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(2)クリスマスローズ
非常に多くの種類があり、花色はきわめて豊富。一重咲き、八重咲きなど、咲き方も多彩です。
花期は2~4月上旬くらいまで。
花が終わっても葉は常緑のままですので、鉢やコンテナに植えてベランダなどに置けば、一年中緑を楽しむことができます。宿根草のなかでも特に育てやすくて長持ちする丈夫な種類です。
苗は宿根草専門ショップで購入するのがおすすめ。3〜6月に肥沃で水はけのよい土壌に植えつけます。酸性を嫌いますので、苦土石灰を少量散布しておきましょう。
古い葉や枯れた葉は切り取って、花芽が出るのを促します。
庭植えにすると、こぼれダネでよく増えます。
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(3)ゼラニウム
鉢やコンテナでの栽培がオススメ。本来は、猛暑の時期を除き、一年中咲いている花で、ヨーロッパでは窓辺を飾るための花として愛好されています。
寒さにはやや弱く、霜に当たると枯れることがあります。しかし、室内に取り込み、日当たりのいい窓辺などに置いておくと、冬でも次々に花を咲かせてくれます。
苗は春と秋に出回ります。市販の培養土、または小粒の赤玉土と腐葉土を7対3の割合で混合した用土に植えつけ、緩効性の肥料と酸性を中和するための苦土石灰を株の周りに散布します。
窒素系の肥料をやり過ぎると、葉ばかり繁って花付きが悪くなります。肥料を買うときは、窒素・リン酸・カリの配合比に注意しましょう。
水やりは控えめに。なるべく乾燥気味に育てましょう。株の成長に合わせて、その都度、一回り大きな鉢やコンテナに植え替えます。
(4)日本水仙
地中海地方原産の花。日本には中国経由で伝わったといわれています。
何よりの魅力は、素晴らしい芳香があること。フランスでは、この花から抽出したエッセンシャルオイル(花精油)を香水の原料として用いています。
10~11月くらいまでの秋植えのシーズンの間に日当たりのいい場所に球根を植えつけ、その後、春先まで定期的に施肥を続けます。
緑色の葉が見え始めたら、こまめに水やりをしましょう。
花は1月中旬から咲き始め、4月半ばまで楽しむことができます。
鉢やコンテナ植えの場合は、花が終わったら日陰に置いて、そのまま乾燥させます。
(5)フクジュソウ
キラキラと輝く黄色い大きな花を咲かせ、いち早く春の訪れを感じさせてくれる耐寒性がある宿根草。9〜10月、あるいは2〜3月に植えつけます。
肥沃な土壌を好みます。植えつけ後は定期的に施肥をします。
花は2月初旬から咲き始め、4月初めまで楽しめます。
花が終わると落葉し、休眠期に入ります。鉢やコンテナ植えの場合は、開花期には日向に置き、休眠期になったら半日陰に置いて越冬させましょう。
Credit
文 / 岡崎英生 - 文筆家/園芸家 -
おかざき・ひでお/早稲田大学文学部フランス文学科卒業。編集者から漫画の原作者、文筆家へ。1996年より長野県松本市内四賀地区にあるクラインガルテン(滞在型市民農園)に通い、この地域に古くから伝わる有機栽培法を学びながら畑づくりを楽しむ。ラベンダーにも造詣が深く、著書に『芳香の大地 ラベンダーと北海道』(ラベンダークラブ刊)、訳書に『ラベンダーとラバンジン』(クリスティアーヌ・ムニエ著、フレグランスジャーナル社刊)など。
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