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植物図鑑には書いてない!小さな庭の作り方で気をつけたい雑草化する植物6種
庭の作り方のコツは、庭のサイズや環境に合った植物のセレクト。植物のなかには一度植えたらまるで雑草のように庭中にはびこって「ああ、植えなきゃよかった!」と後悔してしまう植物もあります。日本の個人庭は小さいのが普通なので、植えない方がいい植物や植え方を気をつける植物があるのですが、そんなことは植物図鑑には書いていません。というわけで、我が家の10坪程度の小さな庭で育ててみた結果、その後、増えすぎて困ってしまった植物たちをご紹介します。
目次
小さな庭で雑草化して困る植物①
地下茎を伸ばしてところ構わず出現するラズベリー
ラズベリーは初夏に白い地味な花を咲かせ、やがてそこに小さな赤い実ができ、それが完熟するのを待って収穫すると、タネは木のほうに残り、平べったい果肉だけを採取できる。
この果肉は生食ではあまり美味しくない。ところが、砂糖を加えて加熱すると、素晴らしい香りと風味が出て、とても美味しいフレッシュジャムになる。
だが、ラズベリーは庭に地植えすると、3〜4年後には地下茎があちこちに伸びて、やたらに増え始める。私の庭では今、ウッドデッキの真下で成長した株がデッキの隙間から茎と枝を伸ばして、ふさふさと葉を繁らせている。デッキの上を歩くと、それが足に突っかかるので邪魔で仕方がない。ラズベリージャムの美味しさは魅力的だけれど、デッキの真下から生えたこの株には、いずれ退場願うことになるだろうと思う。
そんなわけで、ラズベリーは庭への地植えは避け、大鉢に植えて、トレリスなどに絡ませて楽しむほうがいいのではないか。
小さな庭で雑草化して困る植物②
かわいい花とは裏腹の陣取り大将スズラン
スズランは夏の初めに白い小さなベル型の花をつける。それが縦に一列に並んで咲いている様子はとても可愛らしいし、白いベル型の花にはちょっと強すぎるくらいの芳香もある。
フランス語で「ミュゲ」と呼ばれるスズランの香りは、香水の調合に利用されており、ミュゲのエッセンシャルオイルは天然香料ではローズ、ジャスミンと並ぶ三大香料の一つとされている。
だが、スズランはできれば自然の中で野生の状態で咲いているのを楽しみたい植物だ。庭に植えると、1〜2年はどうということもないが、4〜5年、あるいは7〜8年ぐらい経つと、庭中のあちこちにタネを飛ばして増えまくる。その増えた場所では地下茎でつながっているので、地上部を刈り取っただけでは除去したことにならない。
あるハーブ図鑑には「スズランはハーブガーデンには欠かせない植物」とあるけれど、ま、かなりの広さがあるガーデンなら、植えても問題はないだろう。だけど、日本の比較的狭小な個人庭にスズランを植えるのは、ちょっと考えものだ。
小さな庭で雑草化して困る植物③
思った以上に巨大化するモッコウバラ
モッコウバラは毎年細いシュートをたくさん伸ばし、無数の小さな花をびっしりとつけるので、アーチ状に仕立てたり、フェンスに絡ませたりすると、素晴らしい景観をつくり出してくれる。黄花種のキモッコウバラは匂わないが、白花種のモッコウバラにはほのかな甘い香りもある。
だが、これらモッコウバラは生育が非常に旺盛で、年数が経つと根元の株周りが20㎝以上もあるような大株になる。そしてシュートが家の外壁や雨水管や屋根へと這い上がり、それを剪定するのはとても大変な作業になる。わが家には今、そういう大株になってしまったモッコウバラが黄花種と白花種の2株あり、私としてはもう退場させたいのだけれど、ウチの奥さんにその意向を伝えると、物凄い剣幕で「切っちゃ駄目ッ!」。
その勢いと三角目玉の何と恐ろしいことか! 勝手に切ったりしたら、離婚されかねない。というわけで、大株になりすぎた2株のモッコウバラ、はてさてどうしたものかと、悩み続けている私の今日この頃……。こちらにも体力があるうちはよいのだが、年齢とともに扱える品種も変わってくるなぁと実感している。
小さな庭で雑草化して困る植物④
増殖スピードがハンパないソープワート
ソープワート(サポナリア・オフィキナリス)はシソ科のハーブ。夏に咲く径1㎝ほどの花には、うっとりするような甘い香りがある。そして名称に「ソープ」とあることからもわかるように、葉をもんで浸出させた液には石鹸のような効果があるので、古くから非常に珍重されてきた植物なのだという。
だが、私が今、「植えなきゃよかった!」と一番後悔していのが、このソープワート。
何しろ、この植物も花が終わるとタネを庭のあちこちに飛ばして増えまくる。そして、スズランと同様、増えた場所では地下茎でつながりながらさらに増殖を続けるので、完全に取り除くのは不可能。
私の庭では今や、バラの近く、シャクヤクの隣、垣根の下など、ありとあらゆる場所に増えて勢力を拡大しており、見つけ次第に引っこ抜いているのだけれど、増えるスピードにはとても追いつかない。
英国のある女性のハーブ研究家は「ソープワートは愛らしい庭園用のハーブとして趣がある」なんてその著書に書いてくれちゃっているけど、私としては、「あんた、ソープワートを本当に栽培したことあるの!?」とツッコミを入れたいところ。
というわけで、この際、以下のように断言しておきたい。英国の広大な庭園ならいざ知らず、ソープワートは日本の狭小な個人庭には「直植えしてはいけない」植物です! 育てたい場合は植木鉢が無難。
小さな庭で雑草化して困る植物⑤
タネを飛ばして増えまくるシオン
シオン(紫苑)はキク科の大型の多年草。秋になると、高さ1.5〜2mほどになり、先端に小さな紫色の柱状花をつける。それが秋空の下で風に揺れている様子はどことなく平安朝風で、何とも優美。皇后美智子さまがお好きな植物だというのも、いかにもと頷ける。
だが、私が今、「植えなきゃよかった!」と後悔しているもう一つの植物が、このシオンだ。
というのも、これまた花が終わると庭中のあちこちにタネを飛ばして増えまくるからだ。私の庭では今や、予想もしなかったところ、そんなところに増えられちゃ困るよというところなど、いたるところに広がっており、抜いても抜いても追いつかない。
というわけで、このシオンも、日本の狭小な個人庭には向かない植物、というより植えないほうがいい植物の代表例として挙げておきたい。
小さな庭で雑草化して困る植物⑥
畑が「フェンネル林」になる恐れあり。フェンネル
ある花友だちからフェンネルの小さな苗を一鉢もらい、庭に植えたのは20数年前のこと──。
それはちょっとワケありの苗で、その花友だちによると、50代で早世した友人の実家に墓参りに行ったところ、亡き友人のお母さんがフェンネル・ティーを出してくれた。そして帰りがけにお土産として、フェンネルの苗を手渡してくれた、というのだった。
で、私の庭に植えたそのフェンネルは、夏になると高さ2mほどになり、頭頂部に大きな房状の花をつけた。なかなかいい感じで、私は庭にいいフォーカルポイントができたと喜んでいた。
ところが、翌年の夏になると、庭や菜園のあちこちにフェンネル、フェンネル、またフェンネル。それが凄い勢いで成長してゆく。このままではフェンネルの林ができてしまうと思い、最初に植えた一株だけを残して退場願ったのだけれど、次の年もまた、庭と菜園はフェンネルだらけ。垣根の外の土手にまでタネを飛ばして増え始め、その繁殖力の強さにはただただ驚くほかはなかった。しかも多年草なので放っておくと年々大株になり、根っこから掘り上げるのが難しくなる。
毎年毎年、増えすぎて困るフェンネルと格闘し続けた結果、私の庭と菜園にはフェンネルはもう一株もない。けれども、垣根の外に増えた分は今も健在。夏になると盛大に繁り、盛りが過ぎると、長い茎がバタバタと道に倒れて、そこを通学路にしている小学生たちの通行の邪魔をしている。
初めてフェンネルを植えてから長い年月が経ち、私に苗をくれた花友だちはすでに他界して、もはやこの世にはいない。だから、垣根の外のフェンネルまで根絶やしにしようとは思わないけれど、誰かからフェンネルについて訊かれたら、私はこう答えることだろう。──「まあ、植えないほうが無難だと思いますよ」。
造園家の阿部容子さんが解説する『ガーデンに一度植えたらどんどん増殖!? はびこって困る5つの植物』もご参考に!
Photo/1&5) Galina Grebenyuk/ 2) Tatevosian Yana/ 3) Mulevich/ 4) mar_chm1982/ 6) volkova natalia/ 7) meimei17/ 8) LFRabanedo/ 9) AN NGUYEN/ 11) vvoe/Shutterstock.com 10)3and garden
Credit
文 / 岡崎英生 - 文筆家/園芸家 -
おかざき・ひでお/早稲田大学文学部フランス文学科卒業。編集者から漫画の原作者、文筆家へ。1996年より長野県松本市内四賀地区にあるクラインガルテン(滞在型市民農園)に通い、この地域に古くから伝わる有機栽培法を学びながら畑づくりを楽しむ。ラベンダーにも造詣が深く、著書に『芳香の大地 ラベンダーと北海道』(ラベンダークラブ刊)、訳書に『ラベンダーとラバンジン』(クリスティアーヌ・ムニエ著、フレグランスジャーナル社刊)など。
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