数ある植物の中から今、咲かせ時、育て時の注目の植物をピックアップするシリーズ「Now blooming」。今回は、白やピンクの柔らかな色彩の花を咲かせ、秋の風情を感じさせるシュウメイギクをご紹介します。日本にも古くに中国から伝わり、京都では野生化したものがキブネギクという名で親しまれるなど、多くの人に愛されてきた可憐な花です。
秋を告げる花

9~10月頃に花開くシュウメイギクは、漢字では秋明菊と書き、秋を告げる代表的な花の一つです。日本では古くから愛されている花で、秋になるとあちこちで白やピンクの花が群れ咲く様子が見られます。シュウメイギクは「キク」という名前がついていますが、キク科の植物ではなく、春に咲くアネモネの仲間。とはいえ、性質は大きく異なり、地下茎を伸ばして大きく広がる大型の多年草。枝分かれした枝茎の先に花を付け、風に揺れて多くの花が群れ咲く様子は繊細で、いかにも秋めいた風情があります。和風の庭にも洋風の庭にもよく合い、秋のガーデンに取り入れやすく、海外での人気も高いガーデンプランツです。

シュウメイギクの花のように見える部分は、実はガク。白やピンク、濃ピンクなどに色づき、丸みのある形が優しい印象を与えます。近年では交配が進み、もともとシュウメイギクと呼ばれていた赤紫色の半八重咲きの野生種のほか、一重咲きや八重咲き、ボタン咲きなどの花を持つ交配種が多くあります。最近の品種には整った花形のものが多いですが、一重咲きの品種にはガクの1~2枚が小さいなど、ややアンバランスな形の花を咲かせるものもあり、そんな花にもナチュラルな魅力があります。ガーデンに向く高性種や、鉢植えなどに扱いやすい矮性種などの品種も増え、ガーデンシーンで幅広く活躍します。



可愛らしいシュウメイギクの品種いろいろ
シュウメイギクは色のバリエーションを増やすのが難しく、代表的な花色は白、ピンク、濃ピンクの3色ですが、咲き方は豊富で、ピンクの八重花や白のボタン咲きなど、さまざまな品種が流通しています。京都府の貴船周辺に野生化し、親しまれているキブネギクも、濃いローズ色の八重花です。ここではシュウメイギクの品種の一部をご紹介します。

ピンクの一重花を咲かせる‘スプレンデンス’。

濃ピンクの八重咲き花‘プリンツ・ハインリッヒ’。

白一重咲きの‘オノリーヌ・ジョベール’。

濃淡のあるピンク花‘ハドスペン・アバンダンス’。

半八重咲きの濃いピンク花を咲かせる‘ブレッシンガム・グロウ’。
シュウメイギクの育て方

シュウメイギクは耐寒性、耐暑性があり、山野草として野生化しているように、日本の気候で栽培しやすい草花です。庭植えにした場合、根付いてしまえばほとんど手間をかけなくても毎年花を咲かせてくれます。放任すると広がりすぎることもあるので、場合によっては囲いをしておくとよいでしょう。
植え付けの適期は春か秋。日向から明るい日陰で、やや湿り気のある場所を好みます。根は高温や乾燥に弱いため、株元には直射日光が当たらないようにするとよいでしょう。夏の強い日差しでは葉焼けすることがあるので、鉢植えであれば風通しのよい半日陰に移動するのも一手です。
植え付けの際は、水はけのよい土に。過度な乾燥は嫌うものの、水はけが悪いと根腐れや白絹病が発生しやすくなります。白絹病が発生してしまった場合、株全体が急にぐったりするので、このような株があれば、周りの土ごと早めに取り除きましょう。庭植えの場合は水やりはほとんど必要ありませんが、鉢植えの場合は、根を乾燥させないように、土の表面が乾き始めたら早めに水やりをします。
根をよく伸ばして広がるので、鉢植えの場合は根詰まりしないよう、毎年春に植え替えをするとよいでしょう。庭植えの場合は、3~4年に一度、株が混んできたら春か秋に株分けをしましょう。品種によっては花後に綿毛で覆われたタネができ、タネから育てることもできます。

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Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
Photo/ 1)Igor Sokolov (breeze)/ 2)IanRedding/ 3)Altin Osmanaj/ 4)starryvoyage/ 5)PJ photography/ 6)Foxxy63/ 7-9)Anna Gratys/ 10)guentermanaus/ 11)Del Boy/ 12)Elena Kirey/ 13)Dora Zett/ Shutterstock.com
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