日本に上陸! 中国医学理論が認定した美と健康の「食香バラ」
花びらが幾重にも重なり、優雅に花開いて香りを振りまくバラ。その圧倒的な美しさで人々を魅了してやまないバラを、眺め、触れ、香りを嗅ぐだけではなく、食べてしまいたい! と願う人へ。その望みを叶えるバラが今年の春、発表されました。その名も「食香バラ(しょっこうばら)」。苗の販売もスタートしているので、庭で育ててフレッシュなバラの味を楽しむことができます。
これまで日本で「食べられるバラ」として利用されているのは、観賞用のバラを無農薬で育てたものですが、今年登場したのは、主に食や薬を目的として中国で改良された平陰玫瑰(へいいんまいかい/平陰県のバラの意)の中の「食香バラ(しょっこうばら)」。直径6㎝前後の鮮やかなピンクの花を咲かせる‘豊華(ホウカ)’と‘紫枝(ズズ)’の2種類があり、ワックス分が少ない花びらは、後味に苦味がないのが特徴です。
この2種のバラは、ヨーロッパ向けにローズオイルを輸出している中国産のバラの原産地、山東省(さんとうしょう)平陰県(へいいんけん)生まれ。唐の時代から1,300年もバラの栽培が続くバラの村「玫瑰鎮(めいくいちん)」の自生種(ハマナスの近縁Rosa maikuwai var.pingyin)が改良されたものです。ハマナスの近縁のため病気に強く、うどんこ病や黒星病にほとんどかからないのも、家庭で栽培するには嬉しい性質です。
食香バラの産地である平陰では、東京ドーム約800個分(面積3,500ヘクタール)の栽培畑で年間9,000トンもの花びらが採取されています。咲き始めの開ききらない頃の花を手で摘み取り、朝のうちに乾燥させてお茶にしたり、高品質のローズウォーターやローズオイル、バラジャム、バラ酒、バラのスキンケア製品など、さまざまに加工しています。加工されているお茶は、日本で4年間、重金属と残留農薬230項目を検査して安全性を確認済み。平陰県バラ鎮の平陰玫瑰は無農薬で栽培され、中国で唯一食用バラとして認定されています。また、2012年には薬食同源の中国医学理論に基づき、中国中央政府衛生部が、食香バラを新資源食品に認定しました。
中国では、バラを暮らしに役立てる歴史が長く、最も古くは唐時代(618-907年)、宮廷での沐浴に使用されていました。また、『本草綱目(食薬学書)』には、気分をほぐし、血行をよくし、肝臓機能を整える薬として紹介されているなど、観賞するだけでなく、薬材や食材として積極的に使われてきました。さらに近年は技術が進み、1960年、中国において水蒸留法での精油の抽出に成功。2013年には香りを劣化させることなく花をドライにする低温焙煎バラ茶技術を成功させるなど、暮らしに取り入れやすい加工技術も進化を続けています。
乾燥させた花は、バラの季節を思い出させてくれる香り高いお茶として楽しんだり、ポプリやサシェにして枕元に置いたりなど、暮らしのさまざまなシーンで生かすことができます。ドライのバラを数輪ティーカップに入れ、そこへ熱いお湯をゆっくり注いだら、花びらのピンク色が湯に移り、同時にやさしいバラの香りが湯気とともに立ち上ります。
数ある芳香性のバラの中でも、食香バラの香りは飛び抜けていて、甘い香りに突き抜ける爽快感があるのです。
農研機構野菜花き研究部門、大久保直美氏の論文「アロマリサーチ(No.62)」によると、平陰バラの香気成分は「β-シトロネール」「ゲラニオール」「2-フェニルエタノール」が主要な成分であると分かっています。成分の一つ「ゲラニオール」には、体臭や口臭を抑えたり、肌のターンオーバーを促進する効果が。古くから健康と美、若さの象徴として愛されてきたバラ。世界三大美女のクレオパトラがバラの香りを味方につけたように、私たちも食香バラでその効果を試さないわけにはいきませんよね。
1,300年の栽培の歴史があるバラの村からやってきた食香バラを庭で育てて、咲きたての香りを胸いっぱい吸ってください。そして、摘んだ花はお風呂に入れてバラ風呂を楽しむのもオススメ。これは、身近に育てて花が開いたその瞬間を見逃さない、育てている人だけが体験できる特権です。
Information
‘豊華(ホウカ)’と‘紫枝(ズズ)’は、バラ科バラ属の耐寒性落葉低木。四季咲き性で、樹高70〜90㎝のブッシュローズです。食香バラの苗や玫瑰茶(ドライ)は、以下のサイトでお取り寄せできます。各トップページで「食香バラ」と検索してください。平陰玫×瑰総代理店「フロスオリエンタリウム(http://flos-ori.jp)」では、玫瑰茶の販売の他、新しい情報を発信中。
【苗】
園芸ネット http://www.engei.net/
サカタのタネっと http://sakata-tanet.com/shop/
【玫瑰茶】
宝蓮華 http://hourenka.com
飯塚園芸 https://ohana3rose.thebase.in/
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Credit
写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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