数ある植物の中から今、注目の植物をピックアップするシリーズ「Now blooming」。ガーデナーや育種家、ナーセリーなど、植物の達人たちへの取材をもとに編集部がセレクトした植えどき・買い時・咲き時のオススメ植物をご紹介します。今回は、真夏の暑さの中でもトロピカルな色の花が咲き続けるインパチェンスの改良品種、サンパチェンスをピックアップ。
目次
真夏も花が休まない! 炎天下でも咲き続けるサンパチェンス
初夏から秋にかけて花を咲かせ、育てやすい秋播きの一年草、インパチェンス。生育が速く、開花期にはこんもりと茂って次々に花を咲かせる、豪華な咲き姿が楽しめます。花色も幅広く、八重咲きになる品種などもあり、バラエティ豊かな色と形も魅力。日当たりの悪い場所でも育ち、春から秋まで花壇を彩るガーデニングの花材として親しまれています。

さて、このインパチェンスですが、夏に花期を迎える一方で、酷暑や直射日光に弱いのが難点でした。この難点を改良した品種、サンパチェンスをご存じでしょうか? インパチェンス属の種間雑種として、サカタのタネにより改良されたサンパチェンスは、高温多湿で陽射しも強く、花が少なくなってしまいがちな厳しい日本の夏でも、休まず元気に咲き続けます。真夏だけでなく、春から秋までの長い期間、次々に花を咲かせてくれる花期の長さも魅力。一株でもこんもり大きく育ち、大鉢いっぱいにたくさんの花をつけるので、ガーデンのアクセントとしてもよく目立つ、夏に取り入れたい育てやすいガーデンプランツです。


サンパチェンスは、夏にぴったりのトロピカルな色合いも魅力。オレンジや白、赤など、太陽を浴びて輝くようなクリアな発色の花を咲かせます。それに加え、優しいピンクやパープルなどの花色や、斑入り葉を持つ品種などのシリーズも登場し、ガーデンに取り入れる際の選択肢も徐々に増えてきています。
驚くべき特質を持つサンパチェンス

さらに、サンパチェンスの大きな特徴が、環境浄化植物ともいわれるその性質。排気ガスに含まれる二酸化窒素や、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドといった大気汚染物質を、他の園芸植物に比べて速く吸収し、無害化して養分として利用します。水質浄化についても効果が見込め、植物プランクトンの大発生など、生態系のバランスを崩す要因の一つとなる窒素やリンをはじめとする栄養塩類を素早く除去する作用があります。さらに、サンパチェンスは他の植物よりも表面温度がやや低く、夏場には周囲の温度を下げる「打ち水効果」も。夏の暑さに負けずに茂るので、日陰をつくって冷たい空気を周囲に循環させる働きもあります。きれいなだけではなく、さまざまなメリットがある高機能な植物であるところも、面白いですね。
サンパチェンスの育て方

サンパチェンスは光が十分に当たらないと花が咲きにくくなるので、日向か半日陰の場所に植えつけます。植えつけの適期は4~7月頃。サンパチェンスは直根性のため、植え込む際は根をあまりいじらないよう気を付けましょう。地植えでは大きくなるので、株間を十分にとっておくことが大切です。
サンパチェンスは暑さに強い反面、寒さには弱いので、まだ苗が小さく気温が低い時には、水やりを控えめにして日向に置き、根をしっかりと張らせましょう。ここで根を育てておくことが、夏の成長につながります。
サンパチェンスは水を好み、特に夏が近づくと水をよく吸い上げます。鉢植えの場合は、水が切れないよう、表土が乾いていたらたっぷりと水を与えましょう。また、大きく育ち、花を次々に咲かせるので、肥料も多く必要とします。株の成長に合わせ、春から秋にかけて追肥を行います。
枝が伸びて株姿が乱れてきたら、1/3~1/2程度を目安に切り戻しを。株姿を整え、再び花が咲くようになります。また、気温が高くなる6月下旬~8月にかけて、一度花やつぼみをすべて摘み、液肥をたっぷり施すと、2週間ぐらいで再び花が咲き出し、約1カ月後には枝数も増えて再び開花を楽しむことができます。
Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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