数ある植物の中からいま、注目の植物をピックアップするシリーズ「Now blooming」。ガーデナーや育種家、ナーセリーなど、植物の達人たちへの取材を元に編集部がセレクトした植えどき・買い時・咲き時のオススメ植物をご紹介します。今回は、豪奢な花姿で初夏を彩るシャクヤクをピックアップ。
目次
よく似た花姿の美しい花 シャクヤクとボタン
美しい人を形容する言葉に、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」というものがあります。この中でも、シャクヤクとボタンは、両者ともに多くが大輪八重咲きの艶やかな花。一見よく似たこの2つの花ですが、それぞれの違いをご存じでしょうか?
シャクヤクとボタンはどちらもボタン科ボタン属。花弁が何枚も重なり合う絢爛豪華な大輪花を咲かせます。
両者の最も大きな違いは、ボタンは樹木(木本性)なのに対し、シャクヤクは草(草本性)であること。英名はどちらもpeonyですが、特にボタンをtree peonyと呼ぶことによって両者を区別しています。
他にも、丸みと艶のある葉のシャクヤクに対し、ギザギザで光沢のない葉を持つボタン、シャクヤクのつぼみはやや丸く、ボタンは少しとがっていること、ボタンよりも花の咲く時期がやや遅いのがシャクヤクなど、よく観察することでシャクヤクとボタンを見分けることができますよ。
人々を魅了し続けるシャクヤクの花
このようによく似たシャクヤクとボタンですが、季節が巡るとまた芽を吹く宿根草であるシャクヤクは、よりガーデンに取り入れやすい植物。イングリッシュガーデンの基礎をつくり上げたガ―トルード・ジーキルや、ナポレオンの皇妃で美しいバラ園をつくったことで有名なジョゼフィーヌなどに熱愛された花でもあります。花期はやや短めですが、まあるいつぼみからあふれるように幾枚もの花弁を開き、花の形状も花色も極めて多彩。花後につくさやが割れると、中からは黒と赤の鮮烈なコントラストを描くタネが現れます。品種によってはかぐわしい芳香を持つものもあり、野生種に多い一重の花もはかなげな美しさを持っています。
シャクヤクの原産地は、中国やバルカン半島、シベリアなど。フランスやアルバニアを原産とするシャクヤクは、古くは15世紀頃からヨーロッパに普及しました。18世紀になると、中国を原産とするシャクヤクもヨーロッパに伝えられ、英国キュー王立植物園にコレクションがつくられたほか、育種も盛んにおこなわれて、19世紀後半には次々に新品種が登場。マネ、モネ、ルノワールなどの印象派の画家の手により、絵のモチーフとして多く描かれました。一方、日本でも奈良時代の頃に中国からシャクヤクが伝来し、観賞用の花木として広まりました。特に江戸時代には高いレベルで栽培されていたようです。シャクヤクの園芸品種は3,000種を超えるといわれるほどで、洋の東西を問わず、今日に至るまでその豪奢な美しさで人々を魅了し続けています。
シャクヤクの育て方
シャクヤクの花期は5~6月頃。植え付けは9~10月頃に行います。新しい根の伸びる秋以外に根をいじると生育が悪くなるため、適期以外の植え付けや植え替えは避けたほうが無難です。日当たりと水はけがよく、肥沃な場所を好みます。根張りがよく、大きく葉が茂るので、その分のスペースを確保して栽培しましょう。鉢植えの場合は、根詰まりしないように2~3年を目安に植え替えます。
水やりは、土の表面が乾いたらたっぷりと。肥料もたっぷりと必要なので、元肥のほか、春の芽出し肥、花後のお礼肥、秋の追肥や冬の寒肥を与えると花付きがよくなります。つぼみがついたら、頂点の大きなものを残して摘蕾すると大きな花が咲きます。花後には花がら摘みを忘れずに。つぼみに灰色カビ病が発生すると、花が咲かずに終わってしまうことがあるので、高温多湿や風通しの悪い状況を避け、発生してしまったら殺菌剤などで対処しましょう。
宿根草なので、冬は葉を落として地上部が枯れますが、春にはまた新芽を吹いて成長します。大株になったら、株の更新を促すためにも、4~5年に一度ほど株分けをするとよいでしょう。
Photo
1)S.O.E/ 2)Africa Studio/ 3)Barisev Roman(L), Del Boy(R)/ 4)David R Butler/ 5)Martin Fowler/ 6)Okyela/ 7)S.O.E/ 8)Dainty_Picture/ Shutterstock.com
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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