まるで小さな鈴のような愛らしい形の、白く清楚な花を咲かせるスズラン。かぐわしい香りを持ち、結婚式の花嫁に贈る花としても人々に広く愛されています。しかし、スズランには毒性があり、過去にはスズランを原因とする中毒事件による死亡例もあります。今回は、身近にみられるガーデンプランツとしてではなく、有毒植物としてのスズランのエピソードに加え、スズランの毒性や症状、致死量についてご紹介します。

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禁帯出 ガーデン毒草図鑑

スズラン 植物DATA

List of Koehler Imagesより
List of Koehler Imagesより

名称 スズラン
英名・別名 lily of the valley、may lily、君影草、ミュゲなど
学名 Convallaria
科 ユリ科
有毒部位 全草(特に根)
有毒成分 コンバラトキシン、コンバラトキソール、コンバロサイド などの強心配糖体

ある少女の命を奪ったスズランの逸話

20世紀の終わり、旧西ドイツにあるオスターマーケンという町である痛ましい事件が起きました。3歳になる幼い少女が、花瓶替わりに花を挿してあったコップの水を飲み、中毒症状を呈して死亡したのです。

この恐ろしい毒殺者はスズランの花でした。純白の小さな花は素晴らしい香りを放ち、清楚な草姿のスズラン。ヨーロッパでは、5月の祭りをスズランの花で祝うスズラン祭りがあるほど人々に愛されています。その一方で、青酸カリよりも強力な致死性の毒をその身に隠し持ってもいるのです。この悲劇はスズランに含まれる有毒物質の一つ、コンバラトキシンが水溶性であったために起こりました。

毒草としてのスズラン

しかしながら、毒草としてのスズランの真骨頂は、その切り花にはありません。数こそ多くはありませんが、秋に実るつややかな赤色の実こそが最も危険の高い誘惑者です。スズランによる中毒事件の発生例の多い欧米諸国では、このおいしそうな毒の果実を子どもたちが口にしてしまう事件が毎年のように発生。死に至るケースも報告されているといいます。日本ではスズランによる食中毒の発生は少ないですが、春先に芽吹く葉と山菜の行者ニンニクを取り違えた例があります。

スズランに含まれる有毒成分は優に30種を超え、その多くが心臓への影響を持つもの。摂取すると、頭痛や嘔吐、めまいなどのほか、不整脈や血圧低下などの症状が現れ、大量に摂取すると死を招きます。中でも主たる有毒成分であるコンバラトキシンは、致死量がおよそ18mg前後という強力なものです。とはいえ、スズラン自体に含まれている量はそれほど多くないので、あまり神経質になる必要はありません。花束を部屋に飾る際は、食卓は避け、子どもやペットの届かない場所に置くなど、少し気を遣うと安心です。

聖母マリアの涙から生まれたという伝説を持つ、清楚な白花。淡いピンク色のスズランの花も美しい。
聖母マリアの涙から生まれたという伝説を持つ、清楚な白花。淡いピンク色のスズランの花も美しい。
つややかな赤い実は、特に好奇心旺盛な子どもにとって魅惑的。
つややかな赤い実は、特に好奇心旺盛な子どもにとって魅惑的。

ヨーロッパでは、結婚式の花嫁に贈る花としても一般的なスズラン。清楚な姿と馥郁とした香りを持ちながら、強い毒を持っているその二面性こそが、愛される花の秘密なのかもしれません。

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Credit

写真&文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

参考文献:『邪悪な植物』エイミー・スチュワート著(山形浩生・守岡桜訳 朝日出版社刊)

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