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開花前から楽しもう! 写真家を魅了する個性あふれるバラの若葉

開花前から楽しもう! 写真家を魅了する個性あふれるバラの若葉

ガーデンフォトグラファーとして雑誌などで多くのバラの写真を撮影してきた山口幸一さん。花の美しさはもちろん、早春の若葉の頃も品種ごとに豊かな個性に溢れていると話します。瑞々しい若草色や真紅の棘、陽に透けて浮かび上がる葉脈、光り輝く産毛。写真家が捉えた早春のバラの姿をご紹介します。

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私が植物の写真を撮るようになったのは、あるインテリア雑誌の取材で、ハーブを扱うおしゃれなショップに行ったことがきっかけです。その取材で植物の面白さに気づき、以来30年以上、植物や庭の撮影をしてきました。毎年、多いときで20件近くの庭を撮影しますが、やはり5月のバラの頃には最も多くの庭を訪れます。みなさんが感じているように、バラは写真家の私にとっても特別な存在です。そう、山で例えるなら「富士山」。姿が美しいというだけでなく、その背景には深遠なる歴史と文化が広がっていて、知れば知るほど魅了されてしまいます。

庭の撮影では、季節や天候、時間、アングルなど、いろいろなタイミングを合わせることに神経を使います。最も美しい瞬間を捉えるために、まだ暗いうちから家を出発し、撮影現場の庭で朝日が昇るのを待つこともしばしばです。早朝の庭はまだ昆虫たちも眠りについていて、物音一つしない静寂の中で、ファインダー越しに朝露をまとったバラをじっと見つめていると、なんともいえない幸福感に浸れます。朝のひんやりした空気とともにバラの芳香が身体を包み込み、私はバラを撮影しながら、ますますこの花の虜になっていきます。

バラの撮影は当然、開花をねらって行くことが多いのですが、すっかりバラに魅せられてしまった私は、一年を通してバラを見てみようと思い、芽出しの頃から落葉まで、バラ園を訪ねて観察しました。その過程で気づいたのが、若葉の美しさです。5月になると華やかに花を咲かせるバラですが、まだ少し寒さの残る早春にやわらかな若葉やつぼみが生まれています。それらのなんと瑞々しく個性的なことか。丸い、細長い、瑞々しい若草色や、まるで紅葉のような赤色など、さまざまな形や色があります。ああ、また美しい季節が始まったのだという春の喜びは、花の季節にも勝るとも劣らない高揚感を私に与えてくれます。

今回は、そんな若葉が萌え出る季節のバラをご紹介します。東海地方で4月上旬から中旬にかけて撮影した若葉やつぼみの様子です。

‘アンジェラ’
濃いピンク色の花をたくさんつけるつるバラです。
黄緑色の丸い葉に赤い縁取り、赤い棘が可愛らしい。

‘コーネリア’
ピンク色の丸い花びらには濃淡があり、やさしい印象です。
芽吹いたばかりの葉は赤く、やがてきれいな黄緑色に。

‘アムステルダム’
朱色の花びらに黄色い花心が鮮やかです。
小ぶりで丸い葉がぎっしりとつきます。

‘ドミニク・ロワゾー’
重なり合った白い花びらに黄色い花心が見える房咲きの花です。
若葉が重なり合い、深紅のグラデーションができました。

‘セプタード・アイル’
びっしりと花びらが重なったピンク色のイングリッシュローズ。
葉がたくさんつき、全体がこんもりとした印象になります。

‘ザ ・リーヴ’
愛らしい淡いピンク色のオールドローズです。
鮮やかな朱色の若葉も、やがて緑色に変わります。

‘エドガー・ドガ’
緑色のつぼみは鳥のくちばしのように長く尖っています。
花は濃いローズピンクと白色の絞り模様。

‘ダム・ ドゥ・ シュノンソー’
サーモンピンクの八重咲きの大輪の花。
葉はやがて丸めで濃い緑色になります。
できたての棘はやわらかく、赤い色。光を通して透けて見えます。

‘ピーチブロッサム’
花色が淡いピンクから白色に変わります。
赤く縁取りされた、黄色や若草色の細長い五枚葉が展開しています。

‘シャルダン・ドゥ・レソンヌ’
シャーベットオレンジ色の花。八重咲きです。
逆光で透けて見える葉脈、茎の産毛がきれい。

‘エリザベス・テイラー’
花弁が尖ったローズピンクの大輪。凛とした花姿です。
赤みを帯びた茶色の若葉がリズミカルに広がっています。

‘ミッシェル ・ブラス(左)’
ピンクの花びら、黄色い花心の花を咲かせます。
繊細で細長い若葉が広がります。

‘グラン・シエクル(右)’
淡いピンク色の花びらに、少しフリルがある大輪の花です。
鮮やかな赤色の若葉は、やがてきれいな緑色に。

‘ローズ・ デ ・キャトルヴァン’
深紅の八重咲き。大輪の花を咲かせます。オレンジ色の若葉もやがて濃い緑色の葉に。‘ダム・ドゥ・シュノンソー’の棘(下)は細長く、‘ローズ・デ・キャトルヴァン’はどっしりとした三角形をしています。子どもの頃、バラの棘を取って、ちょいとなめて鼻の頭につけて遊んだことを思い出します。

桜の花が散り始める頃には、バラたちはどんどん新しい芽を吹いて、その様子は日々刻々と変わっていきます。また、ファインダー越しにバラに恋する季節がやってきます。

Credit

撮影&文/山口幸一
写真家。インテリアやガーデン雑誌、カレンダー、広告などで活躍。取材をきっかけに植物に興味を持ち、年間20以上の庭を訪れることも。自宅の庭は北斜面の日陰の庭で、最初にオールドローズ2、3品種を植栽したものの、元気がなくあきらめる。朝日が当たる玄関側に白花のモッコウバラを植えたところ、現在は6mにも。外階段に降り注ぐような春の花を楽しんでいる。

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