可愛らしい5弁花がまとまって咲き、ナチュラルで優しい咲き姿が魅力のソープワート。古くは洗剤の材料として使われ、人々の暮らしに寄り添ってきた植物です。この記事では、ソープワートの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、種類、庭での用い方、育て方などについて、詳しく解説していきます。
目次
ソープワートの基本情報
植物名:サポナリア
学名:Saponaria
英名:soapwort、bouncing-bet、soapweed
和名:シャボンソウ
その他の名前:ソープワート、サボンソウ、セッケンソウ
科名:ナデシコ科
属名:シャボンソウ属(サポナリア属)
原産地:ヨーロッパ~西南アジア、北アフリカ
分類:宿根草(多年草)・一年草
ソープワートの学名はSaponaria(サポナリア)。シャボンソウとも呼ばれています。ナデシコ科シャボンソウ属(サポナリア属)の落葉性多年草、一年草です。原産地はヨーロッパ〜西南アジア、北アフリカ。冬の寒さには大変強く、マイナス15℃くらいまで耐えるので、温暖地では戸外で越冬できます。丈夫で初心者でも育てやすく、多くは多年草で一度植え付ければ毎年開花する、コストパフォーマンスの高い植物です。自生地に20〜30種ほどが確認されており、草丈も5〜100cmと種によって幅があるので、購入する際は、ラベルなどで草丈を確認しておくとよいでしょう。痩せた土地でもよく生育する強健な性質で、地植えにしても、鉢植えにしてもOK。地下茎を伸ばして増え広がる性質があるので、環境に合えば繁茂しすぎるケースもあるようです。
ソープワートの花や葉の特徴
園芸分類:草花・ハーブ
開花時期:4〜8月
草丈:5〜100cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い~普通
花色:ピンク、白、黄
ソープワートの開花期は種によって異なりますが、基本的に4〜8月。花色はピンク、白、黄色があり、一重咲きと八重咲きがあります。花には甘い香りがあります。一つひとつの花の寿命は短いものの、次々と小花を咲かせるので長く楽しむことができます。葉は対生し、3~5本の脈が縦に入ります。
ソープワートは全草にサポニンという成分を含み、葉を水に浸してもむと泡立つという特徴があります。
ソープワートの名前の由来や花言葉
ソープワートの属名のサポナリアは、ラテン語のサポ(sapo:石けん)に由来します。ソープワートや、和名のシャボンソウも同様に、古くから天然石けんとして利用されてきたことが名前の由来となっています。ソープワートの花言葉は「清廉」「優しさ」「友の思い出」など。
ソープワートの主な品種
ソープワートには、20〜30種があり、園芸品種もあります。ここでは、代表的なソープワートの種類をいくつかご紹介します。
オフィシナリス
国内で最もポピュラーなのはコモン・ソープワートとも呼ばれるサポナリア・オフィシナリスです。単にサポナリアやソープワートといった場合は、基本的にこの品種を指します。草丈は70〜90cmで、開花期は春から初夏にかけて。パステルピンクの優美な咲き姿を見せてくれます。
オキモイデス
ツルコザクラの別名でも知られるオキモイデスは、匍匐して広がっていく性質が特徴的。花つきが大変よく、開花期は株を覆い尽くすほどにびっしりと咲き、ピンクのカーペットのように見えます。
‘アルバプレナ’
‘アルバプレナ’は白花の八重咲きの園芸品種。清楚な雰囲気が魅力的です。草丈は60〜90cm。別名‘ベティ・アーノルド’。
‘ロゼアプレナ’
‘ロゼアプレナ’はパステルピンクの八重咲きで、豪華な花姿が楽しめます。草丈は60〜90cmです。
ソープワートの活用方法
ソープワートは、ガーデニングで育てるのはもちろん、収穫して暮らしを豊かにする楽しみも味わえます。ここでは、ソープワートの活用法についてご紹介します。
ガーデンプランツとして楽しむ
ソープワートは楚々とした咲き姿が愛らしく、ナチュラルガーデンなどで魅力を発揮します。70〜90cmの草丈が高くなる種は、花壇の中段から後段に向きます。白花は個性の強い植物同士を調和する役割も果たしてくれることでしょう。匍匐するように広がる種は、ロックガーデンや花壇の縁取り、グラウンドカバーなどに向いています。
石けん代わりに使う
ソープワートは全草にサポニンが含まれており、古い時代から天然の石けんとして用いられてきました。枝や葉、根茎を水に入れて20分ほど煮出すと洗剤ができます。洗濯に用いる洗剤のほか、シャンプーとして利用することも可能です。
ドライフラワーにして飾る
ソープワートは、ドライフラワーにして楽しむこともできます。枝を束ねて風通しのよい日陰に逆さに吊るしておくと、3週間ほどでドライフラワーとして利用できます。手作りのリースやスワッグの材料として用いてもよいでしょう。
ソープワートの栽培12カ月カレンダー
開花時期:4〜8月
植え付け・植え替え:3〜5月、10〜11月
肥料:特になし
種まき:4月頃、10月頃
ソープワートの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】ソープワートは、基本的には日当たり、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、あまりに日当たりが悪い場所では、ヒョロヒョロと茎を伸ばして軟弱になったり、花が咲きにくくなったりするので注意してください。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】ソープワートは高温多湿の環境を苦手とするので、夏は風通しよく管理し、水を与えすぎないようにしましょう。
耐寒性・耐暑性
ソープワートは寒さには強く、マイナス15℃程度まで耐えるので、一般地なら戸外で越冬させても特に防寒の必要はありません。夏は蒸れに注意しましょう。
ソープワートの育て方のポイント
用土
【地植え】
植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んでよく耕してください。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。また、乾燥ぎみで水はけのよい土壌を好むので、植える場所は斜面の低い位置よりは高い場所や、少し土を盛って周囲より少し高くした場所に植えるとよいでしょう。
【鉢植え】
ハーブ用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり
ソープワートは蒸れに弱いため、やや乾燥気味に管理します。水やりは毎日行うのではなく、土が乾いてから行うようにしましょう。また、水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメとした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたのを見はからってから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に地上部が枯れても、カラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料
【地植え・鉢植えともに】
強健な性質でやせ地でもよく育つので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。
2年目以降は、切り戻しや収穫をした後、株の生育に勢いがない時などに液肥を与えておくとよいでしょう。夏は肥料が残っていると株にダメージを与えやすいので注意し、施肥する場合は早春か秋に与えるようにします。
注意する病害虫
【病気】
ソープワートは病気を発症することはほとんどありませんが、まれに白絹病にかかることがあります。
白絹病はカビが原因の周囲に伝染しやすい病気です。根や茎に発生しやすく、発症初期は地際あたりに褐色の斑点が見つかります。病状が進むと株元の土に白いカビがはびこり、やがて株は枯れてしまうので注意が必要。病株を発見したら、周囲に蔓延させないためにただちに抜き取り、土ごと処分してください。土づくりの際に、水はけのよい環境に整えることが予防につながります。
【害虫】
ソープワートに発生しやすい害虫は、アブラムシ、マメコガネなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目にも不愉快なので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
マメコガネは小型のコガネムシで、成虫の体長は8〜15mm。6月下旬〜8月中旬に発生しやすい昆虫です。主に葉を旺盛に食害し、網目状態になっていたら近くにいることが疑われます。外部から飛来してくるので防除しにくく、見つけたらすぐに補殺して対処しましょう。また、土中に産卵されると、今度は幼虫が根を食い荒らして株を弱らせます。幼虫は食欲旺盛で、根のほとんどを食いつくすため、枯死に至ることもあるので注意が必要です。
ソープワートの詳しい育て方
苗の選び方
ソープワートの苗を選ぶ際は、葉がきれいで、株元がぐらつかずしっかりした苗を選びましょう。
植え付け
ソープワートの植え付け適期は春か秋。3〜5月か、10〜11月です。ただし、植え付け適期以外にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30〜50cmくらいの間隔を取ってください。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてからハーブ用の培養土を半分くらいまで入れましょう。ソープワートの苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に入れて仮置きして高さを決めます。少しずつ土を入れて、植え付けましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cmほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
植え替えは状況に応じて行う
【地植え】
庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢を崩す程度にして植え替えてください。
日常のお手入れ
開花期は次々に花が咲くので、花がら摘みが必要です。種子を取らない場合は、咲き終わった花は適宜摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫発生の抑制につながります。また、いつまでも終わった花を残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
増やし方
ソープワートは、種まきのほか、株分け、挿し芽で増やすことが可能です。ここでは、それぞれの作業の仕方についてご紹介します。
【種まき】
種まきするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。ソープワートはこぼれ種で増えるほどに強健な性質なので、種まきは容易です。
ソープワートの種まきの適期は4月頃か10月頃で、発芽適温は15〜20℃くらい。黒ポットに市販の種まき用の培養土を入れ、1穴当たり2〜3粒ずつまきます。軽く覆土して、種と土が密着するように手で押さえておきましょう。発芽までは乾燥しないように適度な水管理をしてください。発芽後は弱々しい苗を間引いて1本立ちにし、日当たりがよく、風通しのよい場所で管理します。ポットに根が回るまで育ったら、植えたい場所に定植します。
【株分け】
ソープワートは株分けして増やすことができます。適期は3〜5月か、10〜11月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りを図ります。株を掘り上げて数芽ずつつけて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。
【挿し芽】
挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し芽で増やせるものとそうでないものもありますが、ソープワートは挿し芽で増やせます。
ソープワートの挿し芽の適期は、5〜7月頃です。新しく伸びた枝を10〜15cmほど、切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎葉(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、水を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ソープワートを育てる際の注意点
強健な性質であまり手のかからないソープワートですが、栽培の際に注意しておきたいこともあります。ここでは、ソープワートを育てる際の注意点についてご紹介します。
増えすぎたときは地下茎を取り除く
ソープワートは地下茎を伸ばして増えていく性質があります。強健な性質で痩せ地でも育つため、環境に合うと繁茂しすぎて手を焼くこともあるようです。あまりに増えすぎた場合は、掘り上げて地下茎を取り除くとよいでしょう。増えすぎを防ぐには、地植えにせずに鉢栽培にすることも一案。または範囲を制限したい周囲に波板を埋め込んで対策するのもよいでしょう。
シャンプーとして使う場合はパッチテストを
昔から洗剤として利用されてきたソープワートを利用してみたいと考えている方もいるのではないでしょうか。しかし、人によっては肌に合わない場合もあるので、使用する前にパッチテストをすることをおすすめします。洗濯に使う場合も、布によっては色移りすることもあるので注意しましょう。
ソープワートを育ててみよう
寒さに強く、強健な性質で放任してもよく育つソープワートは、ビギナーに成功体験をもたらしてくれる植物の一つです。ナチュラルな咲き姿は美しく、ほかの草花とも調和しやすいので、ぜひ庭に植栽してみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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