日増しに陽射しが暖かくなってくる春のはじめ。どこからともなく、ふんわりと甘い花の香りが漂ってきたら、ひょっとしたらそれはジンチョウゲの香りかもしれません。春の始まりを告げる花木の一つ、ジンチョウゲをご紹介します。

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三大香木の一つ、ジンチョウゲ

春の暖かい日に誘われて歩いていると、甘く爽やかな香りが鼻をくすぐったことはありませんか? 辺りを見渡しても花の姿が見えず、どこから漂ってくるのか不思議に思った人もいるかもしれません。もしかしたら、それはジンチョウゲの香りだったかも。香りのよい花はたくさんありますが、その中でも強い香りを放つジンチョウゲは、夏に咲くクチナシ、秋に咲くキンモクセイと並んで三大香木の一つとされる芳しい花木で、少し離れたところにも豊かな香りを届けてくれます。その上品な香りから庭木として人気があり、道端に植えられている風景を見かけることもよくあります。

ジンチョウゲは漢字で書くと「沈丁花」。香木として有名な沈香と、スパイスの一つである丁子(クローブ)になぞらえて名づけられたといわれています。開花期は2月下旬~4月上旬頃。手毬のように小さくまとまり、紅紫色のつぼみから純白の花が開く様子は上品で可愛らしいものです。ほかに、純白の花を咲かせるシロバナジンチョウゲや葉に斑が入る品種などもあります。ジンチョウゲは雌雄異株ですが、日本には圧倒的に雄株が多く、雌株のつける赤い実は滅多に見ることがありません。

ジンチョウゲの花の香りからは、リナロール、シトロネロール、ゲラニオールなどをはじめ、120種以上の香気成分が報告されています。主成分の一つであるリナロールには、鎮静作用やリラックス効果があるそうで、ジンチョウゲの香りが人々に愛されている理由の一つかもしれませんね。

ジンチョウゲを育ててみよう

ジンチョウゲの一番の魅力は、なんといってもその香りのよさですが、ゲッケイジュに似た常緑の葉や、半日陰でも育つこと、樹高1mほどであまり大きくならず、コンパクトにまとまる株姿などの特徴があり、庭木として人気が高いのもうなずけます。花のように見える部分は実は萼なので、花期が長いのも嬉しいですね。ただし、ジンチョウゲの実は有毒なので、誤って口に入れたりしないように気をつけましょう。

ジンチョウゲの植え付け時期は、3月下旬~4月頃と、9月下旬~10月頃。マイナス5℃程度まで耐寒性があるので、東北地方南部の平地以南では、庭植えで栽培できます。根が傷つくと枯れてしまうことが多く、移植が難しいため、植え付ける際は場所をよく考えて決めましょう。同様の理由で鉢替えも難しいので、地植えのほうが育てやすいです。また、根を深く張らないため、水切れには注意が必要。地植えの場合でも、夏場に乾燥が続くようであれば水を与えたほうがよいでしょう。

成長がさほど早くなく、樹形がまとまりやすいので、剪定は基本的に必要ありません。剪定をする場合は、花芽を落としてしまわないよう春の花後すぐに行います。強い剪定をすると枯れてしまうことがあるので、乱れた樹形を整える程度の軽い剪定にとどめましょう。

ジンチョウゲは比較的寿命が短い樹木で、突然枯れてしまうこともあります。そのような場合に備えて、事前に挿し木で予備の株をつくっておくのもよいでしょう。ちょっと気難しいところもありますが、基本的に栽培はさほど難しくありません。ジンチョウゲの香りが好きな方は、一株育ててみてはいかがでしょうか?

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Credit

写真&文/3and garden

ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

Photo/ 1)janken/ 2)High Mountain/ 3)F_studio/ 4)traction/ Shutterstock.com

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