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ポットマムは鉢植え向きの洋菊! 特徴や育て方のコツを詳しく解説

ポットマムは鉢植え向きの洋菊! 特徴や育て方のコツを詳しく解説

Nadya So/Shutterstock.com

ポットマムは、鉢植え用に品種改良された洋菊で、草丈が低くコンパクトにまとまる性質です。暑さ寒さに強く、一度植え付ければ毎年開花を楽しめるので、ビギナーにもおすすめ。こんもりと育ち、秋には株全体を覆うほどにたっぷりと咲く花姿が楽しめます。この記事では、ポットマムの特徴や基本情報、名前の由来や花言葉、育て方などについて解説します。

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ポットマムの基本情報

ポットマム
Katarzyna Mazurowska/Shutterstock.com

植物名:キク
学名:Chrysanthemum morifolium
英名:garden mum、florist’s mum、florist’s chrysanthemum
和名:洋菊(ようぎく)
その他の名前:ポットマム、スプレーギク、スプレーマム、西洋ギク、ガーデンマム
科名:キク科
属名:クリサンセマム属
原産地:中国
分類:宿根草(多年草)

ポットマムは、キク科クリサンセマム属の落葉性多年草です。キクの原産地は中国ですが、ポットマムは20世紀半ばにアメリカで鉢植え用として作出された洋菊です。そのため背丈が低く抑えられているのが特徴です。とはいえ、庭で地植えすることもできます。暑さや寒さに強く、一度植え付ければ越年して毎年開花を楽しめます。

ポットマムの花の特徴

ポットマム
Photo/長田節子

園芸分類:草花
開花時期:9〜11月
草丈:15〜50cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:赤、ピンク、オレンジ、黄、白、緑、茶、複色など

ポットマムの開花期は9〜11月です。花色はじつに多彩で、赤、ピンク、オレンジ、黄、白、緑、茶、複色など。花姿は、一重咲き、八重咲き、ポンポン咲きなど多様で、選ぶ楽しみがあります。ちなみに、キク科の花は小さい花が複数集まって1つの花を形成しており、ポットマムも中心部分の筒状花(とうじょうか)/管状花(かんじょうか)と、周囲の舌状花(ぜつじょうか)からなる頭花というつくりになっています。摘心や切り戻しを行うと分枝してこんもりとした株姿になり、増えた花々が茎葉を覆い尽くす満開時の姿は見応えがあります。

洋菊が生まれた過程と種類

ポットマム
Ole Schoener/Shutterstock.com

ここでご紹介しているポットマムは洋菊の1種。洋菊は、日本で愛されていた園芸種が海を渡って西洋で品種改良された品種群です。その歴史や洋菊の種類について見ていきましょう。

洋菊が生まれた過程

菊は、もともとは中国が原産地で、8〜9世紀頃に日本にもたらされました。花の美しさから人々の心をつかんで愛される存在となり、江戸時代には品種改良も盛んに行われて幅広く普及。19世紀に育種された菊は、当時交流のあった西洋に渡り、特にイギリスで人気に火がつきました。現地でも品種改良が盛んに行われ、ヨーロッパではスプレーマムが、アメリカではポットマムが誕生。菊の学名がChrysanthemum(クリサンセマム)であることから、海外で品種改良された洋菊は、語尾に「マム」とつくことが多くなっています。

洋菊の種類

西洋で品種改良された洋菊は、ポットマムのほかに、1つの茎から分枝してたくさんの花を咲かせるスプレーマム、庭植え用として作出され、鮮やかな花色とこんもりと咲く姿で人気が高いガーデンマムなども含まれています。いわば日本に里帰りしたともいえる洋菊ですが、日本での分類は曖昧で、本来は背丈が高くなるスプレーマムを、矮化剤を使って背丈を低く調整し、ポットマムとして出荷するケースも多いようです。その場合は2年目になると矮化剤の効果が切れて、背丈が高くなることもあります。

ポットマムの名前の由来や花言葉

ポットマム
Steph Couvrette/Shutterstock.com

「マム」とは菊のことで、学名である「Chrysanthemum(クリサンセマム)」を短縮した呼称です。ポットマムという名前は、鉢植え(pot)の菊(mum)という意味。作出したアメリカの種苗会社がポットマムという名称で販売したことによります。一般的な菊の花言葉は「高貴」「高尚」「高潔」ですが、洋菊には「あなたを愛しています」「清らかな愛」といった花言葉もあります。

ポットマムの栽培12カ月カレンダー

開花時期:9〜11月
植え付け・植え替え:3〜5月
肥料:3〜10月

ポットマムの栽培環境

ポットマム
Photo/長田節子

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を好みます。日照不足だと花つきが悪くなり、株もひょろひょろと徒長ぎみに伸びて軟弱な株になるので注意しましょう。1日6時間以上の日照がある場所が理想的です。

マムは短日植物で、夜に人工灯が当たる環境では開花しないことがあります。秋になったら、夜間に外灯など人工の明かりが当たらない場所で管理するとよいでしょう。

【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。寒さに強いので、周年戸外で管理します。寒さにあうことで翌春に成長のスイッチが入るので、室内に取り込まないようにしましょう。

【置き場所】水はけのよい環境を好み、また蒸れや泥はねが病気の原因になるので、土を盛って周囲より高くしたり、レイズドベッドや傾斜地に植え付けたりするのもおすすめです。マルチングをして泥はねを防ぐのもよいでしょう。鉢植えの場合、開花期は雨の当たらない軒下などに移動すると、花が傷みにくくなります。

耐寒性・耐暑性

品種によって差はありますが、多くはマイナス5℃以下の気温にも耐えるため、一年を通じて屋外で栽培できます。寒冷地の場合は、軒下に移動させたりマルチングするなどの防寒対策をするとより安心です。耐暑性も高く、夏越しも問題ありません。

ポットマムの育て方のポイント

用土

土
funnyangel/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕し、有機質に富んで水はけ・水もちのよい土壌を作ります。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の草花用培養土を利用すると手軽です。

水やり

水やり
wavebreakmedia/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温の高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に行うようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期間中は水を欲しがるので、水切れしないように管理しましょう。また、冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。

肥料

肥料
Singkham/Shutterstock.com

【地植え】

3〜10月までの成長期に、緩効性化成肥料を月に1度を目安に施します。

【鉢植え】

3〜10月までの成長期に、緩効性化成肥料を月に1度を目安に施します。9〜11月の開花期は、液肥も与えて株の勢いを保つとよいでしょう。

注意する病害虫

アブラムシ
nechaevkon/Shutterstock.com

【病気】

ポットマムに発生しやすい病気は、葉枯病や白さび病などです。

葉枯病は葉に発生しやすく、赤褐色で楕円形の斑点ができます。斑点の中心部はやや淡く、少しくぼむのが特徴です。病気が進むと斑点同士がくっついて、さらに大きな斑点を形成します。葉はちぢれてやがて枯れ、ひどくなると株自体が枯死することもあるので注意。病原菌はカビの一種で、気温が20℃前後かつ多湿の環境下で発生しやすい病気です。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。水はけのよい土壌づくりをし、水やりの際は株元を狙って泥はねしないようにしましょう。被害の出た葉などは早めに摘み取って処分してください。

白さび病は、カビによる伝染性の病気です。葉の裏に白く小さな楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。放置すると株が弱り、枯死することもあるので注意。梅雨や秋の長雨の時期に発生しやすくなります。茎葉が茂りすぎたら適宜間引いて風通しよく管理しましょう。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用のある薬剤を散布して防除します。

【害虫】

ポットマムに発生しやすい害虫は、アブラムシやヨトウムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mm程度の小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。

ヨトウムシは蛾の幼虫で「夜盗虫」と書き、主に夜に姿を現して茎葉を食害します。食欲が旺盛で、大きくなった幼虫は一晩で株を丸裸にしてしまうほどです。葉から食害し始めるので、異変を見つけたら幼虫がまだ若いうちに駆除しましょう。発生しやすい時期は4〜6月、9〜10月です。食害の痕が認められたら夜にパトロールして捕殺するか、適用のある薬剤を散布して防除します。

ポットマムの詳しい育て方

苗の選び方

苗を購入する際は、下葉が黄色くなっているものや葉色の悪いものは避け、葉色が濃く、ハリのあるものを選びましょう。開花株の場合は、つぼみが多いもののほうが長く楽しめます。

植え付け・植え替え

ガーデニング
AlenKadr/Shutterstock.com

植え付け・植え替えの適期は、3〜5月です。ただし、ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘り、根鉢をくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。複数の苗を植える場合は、30〜40cmくらいの間隔を取っておきます。水やりや降雨時の泥はねによって病気が発生するのを防ぐために、表土にバークチップなどを敷いておくとよいでしょう。

地植えにしている場合は、数年は植えたままにしてもかまいません。しかし、大株に育って込み合ってきたら、掘り上げて株分けして植え直し、株の若返りをはかるとよいでしょう。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗をポットから取り出して鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。水やりや降雨時の泥はねによって病気が発生するのを防ぐために、表土にバークチップなどを敷いておくとよいでしょう。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えます。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、毎年植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。

摘心・切り戻し

剪定
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ポットマムは、苗が幼いうちに茎の先端を切り取る「摘心」、または深めに切り取る「切り戻し」を行うと、よく分枝してこんもりと茂ります。適期は4~7月。枝葉が増えることで花数も増えるので、ひと手間かけておくことをおすすめします。

日常のお手入れ

花がら摘み
New Africa/Shutterstock.com

花がら摘み

終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。

刈り取り

秋が深まると地上部を枯らして休眠するので、地際で刈り込んでおきましょう。枯れた茎葉をそのまま残しておくと病害虫の越冬地となってしまうので、株まわりをきれいにしておきます。また、晩秋からロゼット状になって冬を越す芽が出てきますが、寒さにあたることで春からの成長につながるので、過保護にして室内に取り込むことのないようにしてください。

増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

「株分け」と「挿し芽」で増やすことができます。

【株分け】

株分け適期は3〜5月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて数芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。

【挿し芽】

挿し芽とは、茎葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し芽ができないものもありますが、ポットマムは挿し芽で増やせます。

挿し芽の適期は、5〜6月です。新しく伸びた茎葉を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した茎葉(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。黒ポットを用意して新しい培養土を入れ、十分に水で湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。発根後は日当たり・風通しのよい場所に移動し、十分に育ったら植えたい場所へ定植しましょう。挿し芽のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

カラフルで愛らしいポットマムを楽しもう

ポットマム
blueplanet97/Shutterstock.com

鮮やかな色やくすんだ色など、花色の幅が広く花つきもよいために、満開時には色の塊となって目に飛び込んでくるポットマム。花姿も一重咲き、八重咲き、スプレー咲きと多様なので、選ぶ楽しみもあります。暑さ寒さに強いので、ぜひ庭やベランダ、寄せ植えなどで育ててみてはいかがでしょうか。

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