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ツタ(ナツヅタ)を植える前に知っておきたいメリット&デメリットと育て方を解説

ツタ(ナツヅタ)を植える前に知っておきたいメリット&デメリットと育て方を解説

Andreas Juergensmeier/Shutterstock.com

つるを旺盛に這わせて可愛らしいフォルムの葉をびっしりと茂らせるツタ(ナツヅタ)。秋には真っ赤に紅葉する姿も見応えがあります。おしゃれな雰囲気のツタは、一度は植えてみたいつる植物として人気ですが、メリット、デメリットが顕著な植物でもあります。この記事では、ツタの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方などについて、詳しくご紹介します。

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ツタ(ナツヅタ)の基本情報

ツタ(ナツヅタ)
Sodel Vladyslav/Shutterstock.com

植物名:ツタ
学名:Parthenocissus tricuspidata
英名:Boston-ivy、grape ivy、Japanese creeper、Japanese ivy
和名:ツタ(蔦)
その他の名前:ナツヅタ(夏蔦)、アマズラ(甘葛)、モミジヅタ(紅葉蔦)など
科名:ブドウ科
属名:ツタ属
原産地:日本
分類:落葉つる性木本

ツタ(ナツヅタ)はブドウ科ツタ属の落葉性つる植物です。原産地は、日本の北海道〜九州、朝鮮半島、中国。昔から日本の山野に自生してきたもので暑さや寒さに強く、育てやすい植物です。1年で1.5〜5mはつるを伸ばし、旺盛に茂っていきますが、吸盤のついた巻きひげや茎から出る気根を自ら他者に絡ませていくので、人の手による誘引の必要はありません。

春から秋にかけてはグリーンの葉を広げて面を埋め、みずみずしいシーンを演出、また秋には真っ赤に紅葉するので、季節感を楽しめるのもいいですね。夏は涼しい緑陰を作り、冬は葉を落として日差しをもたらすので、グリーンカーテンとしても利用されています。

ツタ(ナツヅタ)の花や葉の特徴

ツタ(ナツヅタ)
phichak/Shutterstock.com

園芸分類:観葉植物
開花時期:6〜7月
樹高:8m以上
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:緑

ツタ(ナツヅタ)の開花期は6〜7月。直径2〜3mmのグリーンの花なので、あまり目立ちません。秋には小さな果実を鈴なりにつけ、黒く熟した表皮には白い粉が吹いています。

葉は手のひらのような形で、3〜5裂しています。デザインのモチーフとしてさまざまに用いられる、美しい葉姿が特徴です。最大の魅力は晩秋からの紅葉。一面が真っ赤に染まる姿は見応えがあります。

ナツヅタとフユヅタの違い

ツタ(ナツヅタ)
冬に落葉したツタ。Daniel Sztork/Shutterstock.com

ナツヅタとフユヅタは大変よく似ているので、見分けがつきにくいですよね。ナツヅタはブドウ科の落葉性つる植物で、フユヅタ(キヅタ)はウコギ科の常緑性つる植物。生育期のみ葉を茂らせ、冬には葉を落とすためナツヅタ、冬も青々とした葉姿を残すためにフユヅタとそれぞれ呼ばれるようになりましたが、別種の植物です。また、ナツヅタは気根と吸盤を使ってつるを他者に絡めますが、フユヅタは気根のみを使ってつるを這わせます。ちなみに、観葉植物として人気の高いシュガーバインは、常緑ですが、ナツヅタの仲間を品種改良したもの。アイビーはフユヅタです。

シュガーバイン
ナツヅタに分類されるシュガーバイン。KPG-Payless/Shutterstock.com
アイビー
フユヅタに分類されるアイビー。M88/Shutterstock.com

ツタを植えるメリット・デメリット

ツタ(ナツヅタ)
A.Luna/Shutterstock.com

おしゃれな雰囲気をもつツタ(ナツヅタ)は、一度は植えてみたいつる植物として人気ですが、それなりにメリット・デメリットが顕著な植物でもあります。この項目でそれを把握して、植えるかどうか判断してください。

メリット

①つるを広い面に這わせて、みずみずしいシーンを作り出すことができます。
②あまりデザイン性に優れないブロック塀やフェンスに這わせれば、目隠しすることができます。
③窓前や建物に仕立てることで断熱効果・遮音効果を得られます。夏は日陰になって涼しく、冬は葉を落として陽だまりを楽しめるので、グリーンカーテンとしても利用できます。

デメリット

①生命力が旺盛で成長が早く、はびこりすぎることがあるので、メンテナンスに手間がかかります。
②環境によっては虫が発生しやすくなることがあります。
③建物に直接這わせると、壁を傷めてしまうことがあります。壁面にヒビなどがある場合には、そこにつるが入り込むこともあるので、ネットやワイヤーなどを張った上に、つるを這わせるなどの対策が必要です。

ツタ(ナツヅタ)の名前の由来や花言葉

ナツヅタ
Kuttelvaserova Stuchelova/Shutterstock.com

ツタという名前の由来は諸説ありますが、他の木や岩肌に伝って伸びる様子から、「つたう」といわれたものが変化したという説が有力とされています。別名のナツヅタは、前述のとおり、夏に葉を茂らせて花を咲かせ、冬には落葉して見えなくなることから。また、ツタの樹液はほのかに甘く、古来甘味料の採取に利用されたという説から、アマズラ(甘葛)の別名もあります。

ツタの花言葉は「永遠の愛」「結婚」。つる植物らしい、結びつきの強さを表す花言葉です。

ツタの代表的な種類

ツタという言葉は、ツタ属全体を指すこともあります。ツタ属の中から、ここでご紹介しているツタ(ナツヅタ)以外に、ガーデニングでよく利用される代表的な種類をいくつかご紹介します。

アメリカヅタ

アメリカヅタ
bonilook/Shutterstock.com

アメリカヅタは小葉が5つ集まり、掌状に広がる葉が特徴です。夏の青い葉や秋の紅葉が美しく、壁面緑化にもよく使われています。別名バージニアクリーパー。

ヘンリーヅタ

ヘンリーヅタ
AngieC333/Shutterstock.com

ヘンリーヅタは他のツタに比べて成長がやや緩やかで、管理しやすいため、最近人気が高い種類です。こちらも鮮やかな紅葉が楽しめます。

ヴェイチイ

ヴェイチイ
Sodel Vladyslav/Shutterstock.com

ツタ(ナツヅタ)の園芸品種で、一般種に比べるとやや小ぶりな葉を持ち、生育も穏やかで育てやすい品種です。

ツタ(ナツヅタ)の栽培12カ月カレンダー

開花時期:6〜7月
植え付け・植え替え:3月下旬〜9月(真夏を除く)
肥料:5〜9月

ツタ(ナツヅタ)の栽培環境

ツタ(ナツヅタ)
JT888/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日なたから半日陰まで、場所を選ばずよく育ちます。ただし、日照が不足すると、秋の紅葉時に発色が悪くなるので注意しましょう。

【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。

【置き場所】土壌は適度に湿った場所を好みますが、丈夫で乾燥にも耐え、条件を選ばずよく育ちます。ただ、肥沃な土壌のほうがより生育が旺盛になり、枝葉をぐんぐん伸ばしていくようです。

耐寒性・耐暑性

日本の気候によく馴染み、暑さや寒さに強い性質を持っています。マイナス10℃以下にも耐え、耐寒性、耐暑性ともに高いので、基本的に冬越しや夏越しの対策は必要ありません。

ツタ(ナツヅタ)の育て方のポイント

用土

土
blueeyes/Shutterstock.com

【地植え】

植え付けの約2週間前に、腐葉土や堆肥、緩効性肥料少量を混ぜ込んでよく耕してください。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。

水やり

水やり
Vladimir Gjorgiev/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温が高い昼間に与えると、すぐに水の温度が上がって株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に行うようにしましょう。

【地植え】

根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので注意しましょう。土の表面がしっかり乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、休眠中の冬でもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。

肥料

肥料
Pawel Beres/Shutterstock.com

【地植え】

強健な性質なので、1年目は植え付け時に元肥として緩効性肥料を施してあれば、追肥の必要はありません。2年目以降は春の芽出し前に緩効性肥料を株まわりに施します。それ以降は特に必要ありませんが、株の生育に勢いがない場合は液肥を与えて様子を見てください。

【鉢植え】

生育期の4月〜9月中旬に緩効性化成肥料を株の周囲にばらまき、軽くスコップで耕して土に馴染ませます。株の生育に勢いがない場合は、液肥を与えておくとよいでしょう。

注意する病害虫

アブラムシ
nechaevkon/Shutterstock.com

【病気】

ツタ(ナツヅタ)に発生しやすい病気は、炭そ病、さび病などです。

炭そ病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビが原因の伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点が現れるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので、早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していくので、被害を見つけたらすぐに除去して土ごと処分しておきましょう。密植すると発病しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時の泥の跳ね返りがきっかけになりやすいので、株元の表土を狙ってやさしい水流で与えるようにしましょう。

さび病は、カビによる伝染性の病気です。葉にくすんだオレンジ色で楕円形の斑点が現れます。この斑点は、やや細長くイボ状に突起するのが特徴です。症状が進むと斑点が破れ、中から粉のように細かい胞子を飛ばします。放置すると株が弱り、枯死することもあるので注意。発病した葉は見つけ次第切り取って処分し、適用のある薬剤を散布して防除します。

【害虫】

発生しやすい害虫は、アブラムシ、カイガラムシなどです。

アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついてしまうほどに。植物の茎葉について吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。

カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。

ツタ(ナツヅタ)の詳しい育て方

植え付け・植え替え

ガーデニング
OlegDoroshin/Shutterstock.com

植え付け・植え替えの適期は、3月下旬〜9月です。ただし、真夏は株が弱りやすいため避けたほうが無難です。ほかの時期にも苗は出回っているので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘り、軽く根鉢をほぐして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

庭で育てている場合、環境に合えば植え替える必要はありません。ただし、植え付けから5〜6年経って株が込み合っているようなら、掘り上げて株分けしてください。改めて植え直し、株の若返りをはかりましょう。

【鉢植え】

鉢で栽培する場合は、6〜7号の鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れます。苗をポットから取り出して軽く根鉢をくずし、鉢の中に仮置きして高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として、大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、毎年は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。

剪定・切り戻し

剪定
mihalec/Shutterstock.com

剪定適期は、葉を落として休眠中の12〜翌年2月。落葉している状態だと、つるがよく見えるので、作業がしやすいです。茂りすぎている部分や、これ以上範囲を広げたくない部分などをカット。剪定位置はあまり気にせずに、つるとつるとの分岐点を目安に、自由にカットしてかまいません。翌年の生育期になると、再び旺盛につるを伸ばすので、毎年同じくらいの範囲にとどめたい場合は、つるの1/2から1/3くらいまで切り戻します。

また、ツタ(ナツヅタ)は生育期に剪定してもOKです。葉が込み合っていると、病害虫を招くおそれがあるので、うっとうしく茂りすぎている部分は切り取って風通しをよくしましょう。

夏越し・冬越し

ツタ(ナツヅタ)
Walter Pall/Shutterstock.com

【地植え】

暑さ、寒さに強いので、鉢上げして養生させるといったケアは必要ありません。

【鉢植え】

ハンギングや小鉢仕立てにして、移動しやすい状態で栽培している場合、コンクリートに囲まれたベランダやテラスなど、真夏に暑くなりすぎるようなら、風通しのよい明るい日陰に移動するとよいでしょう。寒さには強いので、戸外で越冬できます。

増やし方

ガーデニング
Emmily/Shutterstock.com

株分け、挿し木、つる伏せで増やすことができます。

【株分け】

株分け適期は4〜5月か9〜10月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株の老化が進むので、「株分け」をして若返りをはかります。株を掘り上げて4〜5芽ずつ付けて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、株が増えていくというわけです。

【挿し木】

挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、ツタ(ナツヅタ)は挿し木で増やせます。

挿し木の適期は、4〜5月か9〜10月です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。3号鉢を用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。芽が出て順調に生育し、根が回ってきたら植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

【つる伏せ】

つる伏せの適期は、4〜5月か9〜10月です。

まず、3号鉢に市販の草花用培養土を入れて、十分に水で湿らせておきましょう。つるの気根がついた部分を3〜4cmにカットします。鉢土の上に根を平らに置き、2cmほど土をかぶせておきます。これを水切れしないように管理すると芽を出し、新しい個体として生育し始めます。しばらく育苗し、ポットに十分に根が回った頃に、植えたい場所に植え付けます。つる伏せのメリットは、親株とまったく同じクローンになることです。

ツタ(ナツヅタ)を撤去する方法

農薬
Happy_Nati/Shutterstock.com

「ツタ(ナツヅタ)が繁茂しすぎて手に負えないので、もう撤去したい」という声を聞くこともあります。メンテナンスが負担になってしまうなら、処分するのも一案です。壁面やフェンスに絡ませたつるは、手作業で剥がしましょう。丈夫で育てやすい反面、大変生命力が強いので、地上部を撤去しても地中に残っている根から芽が出て、またすぐにはびこってしまうことがあるかもしれません。その場合は、植えていた部分に除草剤をまいて対処するのも1つの方法です。

ツタ(ナツヅタ)を植えるならこまめに手入れを

ツタ(ナツヅタ)
flaviano fabrizi/Shutterstock.com

ツタ(ナツヅタ)はなんといっても美しい葉姿が魅力ですが、一方ではつるが旺盛に茂りすぎるきらいがあるので、定期的なメンテナンスも必要です。とはいえ、ツタが作り出すシーンは自然のアートといえるほどに見応えがあるので、ぜひ栽培にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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