ナツユキカズラは雪のような白花が美しいつる植物! 特徴や育て方を解説

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夏に白い花を密に咲かせて、ダイナミックな景色を見せてくれるナツユキカズラ。丈夫な性質で暑さや寒さに強く、まるで雪をかぶったように株いっぱいに咲く姿が魅力のつる植物です。この記事では、ナツユキカズラの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方、似ている植物など、詳しく解説します。
目次
ナツユキカズラの基本情報

植物名:ナツユキカズラ
学名:Fallopia baldschuanica (Polygonum aubertii、Polygonum baldschuanicum)
英名:Silver lace vine、Russian vine
和名:ナツユキカズラ(夏雪葛)
その他の名前:シルバーレース・バイン、ポリゴナム・オーベルティー
科名:タデ科
属名:ソバカズラ属
原産地:中国西部や中央アジア
分類:落葉性つる性低木
ナツユキカズラの学名はFallopia baldschuanica、別名はシルバーレース・バイン、ポリゴナム・オーベルティーなど。タデ科ソバカズラ属の落葉性つる性低木です。原産地は中国西部や中央アジアなどで、暑さや寒さに強い性質を持っています。つるを約10mも伸ばして生育範囲を旺盛に広げますが、剪定によってコンパクトに抑えることは可能です。
ナツユキカズラの花やつるの特徴

園芸分類:庭木
開花時期:7〜10月
樹高:3m以上
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、ピンク
ナツユキカズラの開花期は7〜10月で、径1cmほどの小さな花がびっしりと枝先を覆うように咲き、名前のとおり雪が積もったような光景に。花色は白が基本ですが、うっすらとピンクを帯びた‘ピンクフラミンゴ’という品種も流通しています。
ナツユキカズラのつるは旺盛に伸びるので、範囲を広げたくない場合はこまめに剪定する必要があります。吸着性はなく、他者に巻きつきながらつるを伸ばします。葉は3〜6cmほどのハート形で、秋に紅葉したあとに落葉します。
ナツユキカズラの名前の由来や花言葉

ナツユキカズラ(夏雪葛)の「葛(かずら)」とはつる植物を指し、夏に白い花を咲かせるつる性の樹木という意味で名付けられました。旧学名のポリゴナム・オーベルティーと呼ばれることもあります。
ナツユキカズラの花言葉は「友情」です。
ナツユキカズラと近縁の仲間

ナツユキカズラと同じソバカズラ属の植物には、身近な野草であるイタドリがあります。イタドリにはケイタドリやオオイタドリなどいくつかの種類がありますが、総称してイタドリと呼ばれることが多いです。日本の広い範囲に生息し、道端や空き地などで育つ姿をよく見かけます。「すかんぽ」などとも呼ばれ、食用や薬用にも利用されて広く親しまれている植物です。
ナツユキカズラの栽培12カ月カレンダー
開花時期:7〜10月
植え付け・植え替え:4〜5月、10月頃
肥料:特になし
ナツユキカズラの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を好みますが、半日陰でも育ちます。極端に暗い日陰には向きませんが、つるを伸ばして葉を日向に出してやれば問題なく生育します。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】土質は選びませんが、水はけ・水もちのよい土壌を好むので、地植えする場合は植え付け前に有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。注意しておきたいのは、旺盛につるを伸ばすために生育範囲が広がりやすいこと。大きくなることを想定し、あらかじめ広いスペースを用意し、ほかの植物の生育を妨げないように配慮しましょう。また、他者に絡みつきながら生育するので、フェンスやパーゴラ、オベリスクなど、支える資材が必要です。道具小屋などの屋根に誘引してもよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
夏の暑さにも冬の寒さにも強く、一年を通して戸外で管理できます。
ナツユキカズラの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付ける1〜2週間前に、約50cm四方の穴を掘り、掘り上げた土に腐葉土や堆肥などの有機質資材をよく混ぜます。植え穴に土を戻して、ふかふかの土をつくっておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、根の生育がよくなります。
【鉢植え】
花木の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために、全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は気温の高い昼間に与えると、水がすぐにぬるま湯になり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。真冬は十分に気温の上がった昼間に行います。夕方に与えると凍結の原因になるので注意しましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん枝葉を広げ、多数のつぼみが上がってくるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。枝葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料

【地植え】
やせ地でも旺盛に生育するので、植え付ける際にしっかり土づくりをしておけば、追肥は不要です。
【鉢植え】
旺盛に生育するので基本的には不要です。ただし、樹姿に勢いがなかったり、葉や花の発色が悪かったりする場合は、3月か10月に液肥を与えて様子を見てください。
注意する病害虫

【病気】
ほとんど病気の心配はありませんが、べと病が発生することがあります。
べと病は糸状菌が原因で、3〜6月、9月下旬〜11月の気温15〜20℃の条件下、かつ気温差が大きいときに発生しやすくなります。葉に黄色みがかった斑紋が現れ、だんだんと広がって枯れ上がっていきます。気温などの条件が揃うとまもなく全体に広がってしまうので注意します。チッ素成分が多い肥料を与えすぎると発生しやすくなります。
【害虫】
発生しやすい害虫は、コガネムシ、ウスカワマイマイなどです。
コガネムシは主に5〜8月に発生しやすく、成虫の体長は2〜3cm。主に葉を旺盛に食害するので、網目状態になっていたら近くにいることが疑われます。外部から飛来してくるので防除しにくく、見つけたらすぐに捕殺しましょう。また、土中に産卵されると、今度は幼虫が根を食い荒らして株を弱らせ、枯死に至ることもあるので注意します。
ウスカワマイマイはカタツムリの1種で、主に5〜6月、9〜10月に発生します。体長は2㎝くらい。主に葉や茎を食害します。昼間は落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に不快な粘液がついていたら、ウスカワマイマイの疑いがあるので夜にパトロールして捕殺してください。または、駆除剤を利用して防除してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
ナツユキカズラの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、節間が短くがっしりと締まって勢いのあるものを選びましょう。
植え付け・植え替え

植え付け・植え替えの適期は4〜5月か10月頃です。ほかの時期に花苗店などで購入したら、すぐに植えたい場所に定植してください。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗木より1回り大きな植え穴を掘り、苗木をポットから出して植え付けます。最後に、たっぷりと水やりします。
地植えにした場合は、環境に合ってよく育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢は、購入した苗木のポットより2〜3回り大きなサイズのものを準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れます。苗木を鉢に仮置きして高さを決めたら、根鉢をくずさずに植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
ナツユキカズラは旺盛に生育し、植えっぱなしにしておくと根詰まりしてくるので、1〜2年に1度は植え替えます。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から出した際に根が回っていたら、根鉢をほぐして1/2から1/3くらいまで小さくして植え替えるとよいでしょう。
誘引・剪定

【誘引】
つるが伸びて行き場をなくしている場合は、適宜フェンスやオベリスクなど構造物に誘引します。
ナツユキカズラのつるは吸着性がないので、壁に這わせたい場合は、ネット(網)やワイヤーなどを利用するとよいでしょう。
【剪定】
ナツユキカズラは旺盛に生育してつるの範囲を広げるので、繁茂しすぎるようなら剪定して生育スペースをコントロールしましょう。樹勢が強いので、そのつど剪定してもかまいませんが、初夏に花芽がついて夏に開花するので、開花を楽しみたい場合はその時期をはずします。大幅に縮小したい場合は、つるがよく見える落葉期に行います。
夏越し・冬越し

【夏越し】
暑さに強いので、特に対策の必要はありません。日照りが続いて乾燥するようであれば、十分に水やりをしておきましょう。
【冬越し】
に強いので、戸外で越冬できます。
増やし方

ナツユキカズラの増やし方は、挿し木です。挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して、生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、ナツユキカズラは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、5〜9月です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10〜15cm切り取ります。剪定したときに切った枝を利用してもよいでしょう。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきます。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ナツユキカズラを育てるにあたっての注意点

ナツユキカズラは丈夫で育てやすい植物ですが、生育旺盛がゆえに手のかかる一面も持っています。ここでは、栽培の注意点についてご紹介します。
他者にむやみに絡まないようにする
そばに高い樹木があると、絡みついてつるが登っていくことがあります。すると樹木が日照不足になって弱ったり、絡まったつるをはがす際に幹や枝を傷つけてしまったりすることがあるので注意。建物に絡めている場合も同様です。パーゴラやアーチ、オベリスクなど、あらかじめ仕立てる場所や範囲を決めておき、そこからはみ出たつるは剪定するメンテナンスが必要です。
隣家の敷地まで広がらないようにする
つるを盛んに伸ばしてどんどん生育範囲を広げていくので、隣の敷地まで広がらないように注意してください。まめに誘引や剪定をして、隣家などに迷惑がかからないように配慮しましょう。
落ちた花弁で近隣に迷惑がかからないようにする
開花時期は見応えがありますが、逆にいえば花弁が散ると大量のゴミになります。花数が多いと、地面が真っ白になることもあり、放置すると風に舞って周辺へ散らばってしまいます。近隣の迷惑にならないように、落ちた花弁は適宜掃除するようにしましょう。
ナツユキカズラとハツユキカズラの違いとは

ナツユキカズラとハツユキカズラは名前が似ているため、混同されることが多いようです。ここでは、ハツユキカズラの特徴やナツユキカズラとの違いについて、解説します。
ハツユキカズラの特徴
ハツユキカズラは、キョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑性つる植物。テイカカズラを品種改良した園芸品種で、学名はTrachelospermum asiaticum(トラケロスペルマム・アジアティクム) ‘Hatsuyukikazura’です。日本の気候によくなじんで寒さ暑さに強く、手をかけずとも丈夫に育ちます。つる性の枝を伸ばして匍匐しながら覆うように茂ります。草丈は10〜30cm程度ですが、つるの長さは50cm以上になります。
ハツユキカズラは、ピンクや不定形の斑が混じる新葉が展開するのが特徴で、主に葉の美しさを楽しむ植物です。新葉はピンクから白の斑入り葉へ変化し、やがては緑一色に変化していきますが、生育期は次々と新葉が出るため、1株でも変化に富んだ葉色を展開します。秋になると、真っ赤に紅葉する姿を楽しめます。
ナツユキカズラとの違いとは
ナツユキカズラはタデ科、ハツユキカズラはキョウチクトウ科に属するので、まず分類が異なっています。ナツユキカズラは夏に白い花が豪勢に咲く姿を楽しみますが、ハツユキカズラは花よりも美しい斑入りの葉を観賞するカラーリーフプランツであることが大きな違いです。
雪のようなナツユキカズラの花を自宅で楽しもう

ナツユキカズラは夏に雪を積もらせたかのような咲き姿を見せるつる植物です。丈夫で育てやすい一方で、旺盛に茂るので範囲を広げすぎないようにするメンテナンスも必要。それでも手をかけた分だけ、開花期は息をのむようなシーンを作り出してくれるので、庭の一角に取り入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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