フルーティーな甘い香りも魅力のハーブ、チェリーセージは、ワイルドな咲き姿がナチュラルガーデンと相性のよい草花です。放任してもよく育つので、ビギナーにもおすすめ。この記事では、チェリーセージの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方について解説します。
目次
チェリーセージの基本情報
植物名:チェリーセージ
学名:Salvia microphylla/Salvia greggii/Salvia jamensis
英名:Baby sage、cherry sage、blackcurrant sage、hot lips salvia
和名:チェリーセージ
その他の名前:サルビア・ミクロフィア、サルビア・グレッギー、サルビア・ヤメンシス
科名:シソ科
属名:アキギリ属(サルビア属)
原産地:メキシコ、アメリカ南部
分類:低木
チェリーセージの学名は、Salvia microphylla/Salvia greggii/Salvia jamensis(サルビア・ミクロフィラ、サルビア・グレッギー、その交配種のサルビア・ヤメンシスをまとめてチェリーセージと一般に呼ばれています)。シソ科アキギリ属(サルビア属)で、低木に分類されており、大きくなると1.5mほどになります。ハーブの一種で、芳香を持つのも魅力です。原産地はメキシコやアメリカ南部で、暑さに強い一方、寒さにはやや弱いので、霜対策が必要。関東以西で太平洋側などの暖地では、戸外で管理できます。冬には葉を落として休眠しますが、越年して春の生育期を迎えると、再び新芽を出して旺盛に生育します。
チェリーセージの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:5〜11月
草丈:40〜150cm
耐寒性:やや弱い
耐暑性:強い
花色:赤、白、ピンク、黄、オレンジ、紫、複色
チェリーセージの開花時期は5~11月で、長い期間にわたって咲き続けます。基本種の花色は鮮やかな赤。園芸品種も多く、白やピンク、アプリコット、黄色、紫などもあります。花穂をよく立ち上げ、唇のような形の唇形花が下からぽつぽつと咲き上がって穂状になります。野趣的な花姿は、ナチュラルガーデン向きです。切り花やポプリ、ドライフラワー、押し花などにしても楽しめます。
チェリーセージの葉は、軽くもむとフルーツのような甘い香りを放ち、ハーブティーやポプリに利用できます。
チェリーセージの名前の由来や花言葉
チェリーセージの「チェリー」は、さくらんぼのような甘い香りを放つことに由来します。属名のSalvia(サルビア)は、ラテン語の「salvare(治療)」「salveo(健康)」が語源です。 花言葉は「燃ゆる思い」「尊重」「知恵」など。「燃ゆる思い」は赤い花色から。「尊重」は、昔からセージ類が薬草として用いられてきたため、尊いものとして捉えられていたことによります。「知恵」はセージという言葉が賢い人という意味を持つことに由来します。
チェリーセージの種類
チェリーセージの主な種類や園芸品種は以下のとおりです。
サルビア・ミクロフィラ
チェリーセージというと、この種を指すのが一般的です。花は赤色のほか、赤紫やピンクなどがあります。
サルビア・グレッギー
ミクロフィラとよく似ていますが、花弁の基部付近に突起がない点が異なります。
‘ホット・リップス’
ミクロフィラの園芸品種。季節や気温、環境によって、花色が赤になったり、赤×白の2色咲きになったりと、色が変化する特性があります。
チェリーセージの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜11月
植え付け・植え替え:5月頃、9~10月
肥料:5月、9月
チェリーセージの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を選びます。日照が不足すると花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。ただし、寒冷地では冬は取り込むとよいでしょう。
【置き場所】酸性土壌を嫌うので、植え付け前に苦土石灰を散布することがポイントです。水はけ・水もちのよい土壌を好むので、有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよいでしょう。暑さには強い反面、寒さにはやや弱く、冬はマルチングなどで霜や凍結の対策をするとよいでしょう。関東以西の平地では、戸外でも問題なく冬越しができます。
耐寒性・耐暑性
耐寒性は品種にもよりますが、マイナス5℃程度。寒さにより地上部が枯れても翌春にまた芽吹きます。
チェリーセージの育て方のポイント
用土
【地植え】
丈夫な性質であまり土質を選びませんが、酸性に傾いた土壌を嫌うので、植え付ける3〜4週間前に苦土石灰を散布して土に混ぜ込んでおきましょう。さらに1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温の高い昼間に与えると、水がすぐにぬるま湯になり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬に水やりする場合は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理します。根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。乾燥しすぎると株が弱るので、水切れには注意。土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料
【地植え】
元肥を施して植え付ければ、追肥はほとんど必要ありません。株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見てください。
越年後は、新芽が旺盛に動き出す5月頃と、暑さがおさまる9月頃に緩効性化成肥料を施します。
【鉢植え】
開花期間が長いので、真夏を除いた5〜7月、9〜11月上旬に開花促進用の液肥を与えます。10日に1度を目安にするとよいでしょう。
病害虫
ほとんど病害虫が発生することはありません。
チェリーセージの詳しい育て方
苗の選び方
節間が短く、茎ががっしりと締まって丈夫な苗を選びましょう。
植え付け・植え替え
植え付け適期は5月頃か、9〜10月です。ただし、ほかの時期にも苗が出回っていることがあるので、花苗店などで入手したら早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりも一回り大きな穴を掘り、やや根鉢をくずして植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、30〜40cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
根付いて順調に生育していれば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢の大きさは、6〜7号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れます。苗を鉢に仮置きし高さを決めたら、やや根鉢をくずして植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えます。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して根鉢をくずし、新しい培養土を使って植え直しましょう。
日常のお手入れ
【摘心】
苗を植え付けるタイミングで、新葉を2枚ほどつけた茎の頂部を切り取る「摘心」を行うと、下からわき芽が出てきます。このわき芽が勢いよく伸びたら、同様に摘心し、この作業を繰り返すと、分枝が進んでこんもりと茂った株になります。枝の数が多くなる分、花数も多くなるのがメリットです。ただし、「寄せ植えの花材の1つとして加えたいので、スマートな姿を保ちたい」といった場合には、不要な作業です。
【花がら摘み】
チェリーセージは花穂を立ち上げて、下から順に咲き上がっていきます。花穂が咲き終わったら、一番下の分岐点で摘み取ります。次から次へと花が咲くので、早めに摘み取りましょう。まめに花穂を摘み、落ちている花弁なども掃除して株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながります。また、いつまでも終わった花穂を残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
剪定・切り戻し
【剪定(切り戻し)】
チェリーセージは開花期間が長く、ある程度咲きそろった後は徐々に草姿が乱れてきます。夏前には草丈の半分くらいまで刈り取って、風通しよく管理しましょう。すると秋から再び勢いを取り戻して生育し始め、晩秋まで開花を楽しめます。
【冬越し前の刈り取り】
冬にチェリーセージの地上部が枯れたら、地際で刈り取っておきます。霜が降りる地域などでは、バークチップなどで厚めにマルチングをして、寒さ対策をしておくとよいでしょう。
増やし方
挿し木、種まきで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木とは、枝葉を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、チェリーセージは容易に挿し木で増やせます。
挿し木の適期は、6月頃です。新しく伸びた枝を2節以上つけて切り口が斜めになるように切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、水の吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を2〜3枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意して新しい培養土を入れ、水で十分に湿らせておきます。培養土に3カ所の穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。十分に育ったら、植えたい場所へ定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
チェリーセージは、ビギナーでも種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境になじみやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなりますね。
発芽適温は20℃前後。種まきの適期は、春まきなら十分に気温が上がった5月頃、秋まきなら9月下旬〜10月です。
まず、セルトレイに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れます。中央に穴をあけて種子を2〜3粒ずつ播き、ごく薄く土をかぶせましょう。最後に浅く水を張った容器に入れて、底から給水します。これはジョウロなどで上から水やりすると水流によって種が流れ出してしまうことがあるからです。発芽までは暖かく明るい半日陰で管理し、乾燥しないように適度に水やりをしましょう。
発芽後は日当たりのよい場所で管理します。本葉が2〜3枚ついたら、勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。間引いた後は、黒ポットに培養土を入れて植え替えます。10日に1度ほど薄い液肥を与えて育苗し、十分に成長したら花壇や鉢などに植え付けます。
チェリーセージを植えてはいけない⁉︎ 間違った情報に注意
「チェリーセージを庭に植えてはいけない」と、ネットの情報に書かれているのを目にしたことがあるかもしれませんが、他のガーデンプランツと比較して注意を払わなければいけないほど、危険な植物ではありません。ここでは、植えてはいけないといわれている項目について検証します。
大きくなりすぎることはない
“繁殖力が旺盛でどんどん広がるため、地植えでは特に注意が必要”という説明がされている記載を見かけますが、チェリーセージは茎が細く、温暖な地域でも冬に枯れ込む場合もあり、大きくならないことが多いです。※品種や環境によっては、大きくなることがあります(西日本の海沿いのごく温暖な地域など)。
また、近年は40〜50cmに収まる品種も多く、大型の宿根草に比べればコンパクトな種類です。こぼれ種や地下茎で広がって手に負えなくなるなどということもないので、隣家の土地まで侵食する恐れを感じる必要はありません。もし、株が増えて大きさを抑えたいならば、他の宿根草の手入れと同様に、間引き剪定や株分け、花がら摘みを行って種子がつかないようにすれば、こぼれ種による増殖の心配もありません。
毒成分を含むとのうわさがある
シソ科アキギリ属のセージに分類されるチェリーセージは、芳香を持つハーブの一種です。“身体に有害な成分が含まれている可能性がある”という記述が一部のネット記事に見られますが、他のハーブの利用と同様に、幼児や妊婦の利用にはやや注意が必要という範囲内です。大量摂取や高用量・長期間の使用には注意が必要ですが、一般的な使用法であれば過度に恐れる必要はありません。チェリーセージが特筆して毒性があるといううわさに惑わされず、香りのよい丈夫なハーブとして、上手に利用しましょう。
チェリーセージのコンパニオンプランツ効果とは
チェリーセージは甘い香りを持っていますが、この香りを嫌ってアブラムシなどが寄りつかないとされています。そのため、コンパニオンプランツとしてアブラムシなどがつきやすい植物と一緒に植えるとよく、キャベツやニンジン、ローズマリーなどと相性がよいようです。
チェリーセージの木質化を防ぐ方法
チェリーセージは低木に分類されており、株が古くなると木質化してきます。すると緑の枝が茶色くなり、新しい枝が出にくくなってきます。そこで木質化した枝は切り戻し、株元から新しい枝が生えるようにするとよいでしょう。挿し木して新しい株を作るのも一案です。
チェリーセージで夏から秋にかけての庭を華やかに
甘い香りを漂わせるハーブの一種で、夏から秋にかけて長くガーデンを彩ってくれるチェリーセージ。株姿が乱れてきたら、切り戻しながら管理するのがポイントです。庭やベランダなどに取り入れて、楚々とした花姿を愛でてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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