暑い夏にカラフルな花を咲かせるオシロイバナ。夕方から咲き始めて翌朝の午前中にはしぼむ一日花ですが、花付きよく夏中途切れることなく咲き継いでくれます。こぼれ種で増えるほど強健で、管理の手間がほとんどかからないのでビギナーにもおすすめ。この記事では、オシロイバナの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、種類、育て方、花を使った遊び方についてご紹介します。
目次
オシロイバナの基本情報
植物名:オシロイバナ
学名:Mirabilis jalapa
英名:four o’clock plants
和名:オシロイバナ(白粉花)
その他の名前:ユウゲショウ(夕化粧)、ケショウバナ(化粧花)
科名:オシロイバナ科
属名:オシロイバナ属(ミラビリス属)
原産地:ペルーなどの熱帯アメリカ
分類:宿根草(多年草)
オシロイバナの学名は、Mirabilis jalapa(ミラビリス・ハラパ)。オシロイバナ科オシロイバナ属の多年草です。日本では寒さに耐えられずに枯死することもあるため、一年草として紹介されることが多くなっていますが、暖地では越年します。原産地はペルーなどの熱帯アメリカで、暑さに強い性質を持っています。草丈は30〜100cmです。
オシロイバナの花や葉の特徴
園芸分類:草花
開花時期:6〜10月
草丈:30〜100cm
耐寒性:普通
耐暑性:強い
花色:赤、オレンジ、黄、ピンク、白、複色
オシロイバナの開花期は6~10月で、次々に花芽を上げて咲き続けます。花色は赤、オレンジ、黄、ピンク、白など。絞り咲きや咲き分けのものもあります。花茎は3cmほどと小さく、筒状の部分は5cmほど。花びらに見える部分は萼片が変化したもので、花弁はありません。夕方から翌朝にかけて開花し、午前中にはしぼんでしまいます。また、芳香があるのも特徴です。葉は先が尖った卵形で対生し、よく分枝して成長します。
オシロイバナの名前の由来や花言葉
オシロイバナの黒い種子の中には白い粉質のものが詰まっています。それがおしろいの粉に似ていることが名前の由来です。また、午後4時頃から開花するため、「夕化粧」という別名もあり、英語では「four-o’clock」と呼ばれています。学名のMirabilisはラテン語で「不思議な」という意味。1株に異なる花色が混じり咲くことがあるためです。
オシロイバナの花言葉は「臆病」「内気」「恋を疑う」など。夕方から開花し始めて、翌日の午前中にはしぼんでしまう性質からきているようです。
オシロイバナと近縁の仲間
オシロイバナの仲間は、アメリカ大陸を中心に約50種類が確認されています。日本で園芸植物としてポピュラーに流通しているのは、以下の2つです。
ミラビリス・ハラパ
ごく一般的に栽培されているオシロイバナです。熱帯から温帯にかけて広く分布し、日本では帰化植物として定着しています。花色のバリエーションは豊富ですが、園芸品種は多くはなく、品種名のないものがほとんどです。
ミラビリス・ロンギフローラ
和名はナガバナオシロイバナ。名前のとおり花筒が長く、10cmほどになります。
オシロイバナの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜10月
植え付け:6〜8月
植え替え:10~3月
肥料:特になし
種まき:5月頃
オシロイバナの栽培環境
日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所を選びます。日照が不足すると花つきが悪くなったり、ヒョロヒョロとか弱い茎葉が茂って草姿が間のびしたりするので注意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】乾燥に強く、やせ地でもよく育ちます。水はけのよい土壌を好むので、地植えする場合は植え付け前に有機質資材を投入してよく耕し、ふかふかの土づくりをしておくとよりよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
暑さに強い反面、寒さにはやや弱いですが、関東以西の平野部であれば地上部が枯れても根が残るため、枯れた地上部を地際で刈り込んでおけば、春には再び芽吹きます。凍結する地域では掘り上げて室内で冬越しさせてもよいですが、種まきして株を更新するほうが簡単です。
オシロイバナの育て方のポイント
用土
【地植え】
丈夫な性質で土壌を選びませんが、植え付ける1〜2週間前に、腐葉土や堆肥などの有機質資材を投入し、よく耕してふかふかの土をつくっておくとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成します。
【鉢植え】
草花の栽培用に配合された園芸用培養土を利用すると便利です。
水やり
株が蒸れるのを防ぐために全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。真夏は気温が上がっている昼間に水やりすると、水がすぐにぬるま湯になり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
【地植え】
しっかり根づいて茎葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、水切れしないように管理しましょう。根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らずに乾燥が続くようなら、水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。成長期を迎えてぐんぐん茎葉を広げ、多数のつぼみが上がってくるようになると、水を欲しがるようになります。気候や株の状態に適した水やりを心がけましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。
特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。
肥料
チッ素成分を多く含んだ肥料を施すと、茎葉ばかりが茂ってあまりよい花が咲かなくなるので、開花を促す成分配合の液肥を選ぶようにします。
【地植え】
やせ地でもよく育つので、十分な土づくりをしていれば不要です。開花期に株の勢いがない場合には、液肥を与えて様子を見るとよいでしょう。
【鉢植え】
開花期を迎えた頃に、10日に1度を目安に液肥を与えます。
注意する病害虫
【病気】
病気の心配はほとんどありませんが、まれにうどんこ病や灰色かび病にかかることがあります。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になります。対処せずにそのままにしておくとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまうため、注意が必要。チッ素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすく、ボトリチス病、ボト病とも呼ばれます。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
発生しやすい害虫は、ナメクジ、アブラムシなどです。
ナメクジは花やつぼみ、新芽、新葉、果実などを食害します。体長は40〜50mmで、頭にツノが2つあり、茶色でぬらぬらとした粘液に覆われているのが特徴。昼間は鉢底や落ち葉の下などに潜んで姿を現しませんが、夜に活動します。植物に粘液がついていたらナメクジの疑いがあるので、夜にパトロールして捕殺してください。または、ナメクジ用の駆除剤を利用してもよいでしょう。多湿を好むので風通しをよくし、落ち葉などは整理して清潔に保っておきます。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
オシロイバナの詳しい育て方
苗の選び方
葉が黄色いものや株元がぐらついたものは避け、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。
植え付け・植え替え
植え付けの適期は6〜8月です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりも一回り大きな穴を掘って植え付けます。オシロイバナは移植を嫌うので、苗をポットから出したら根鉢をくずさずにそのまま植え付けるのがポイントです。複数の苗を植え付ける場合は、約50cmの間隔を取りましょう。最後に、たっぷりと水やりします。
越年できる環境の場合、放任しても毎年咲くので、植えっぱなしでかまいません。
【鉢植え】
鉢の大きさは、5〜7号鉢を準備します。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れます。苗を鉢に仮置きし高さを決めたら、ポットから出してそのまま植え付けます。オシロイバナは移植を嫌うので根鉢をくずさないよう注意。水やりの際にすぐあふれ出さないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取ってください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。寄せ植えの素材として大鉢にほかの植物と一緒に植え付けてもOKです。
越年できる環境の場合、3〜4年に1度は植え替えます。オシロイバナが休眠している時期が、植え替えの適期です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から球根を取り出し、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。根を傷めないように、丁寧に扱うことがポイントです。
日常のお手入れ
【摘心】
しっかり根付いたら、茎の頂部を切り取りましょう。すると下からわき芽が伸び出すので、その作業を何度か繰り返すと、こんもり茂るとともに花数も多くなります。
【花がら摘み】
次から次へと花が咲くので、終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながります。また、いつまでも花がらを残しておくと、種子をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【整枝】
8〜9月、旺盛に生育して株姿が乱れてきたら、適宜刈り込みます。
【冬越し】
暖地で冬越しできる場合は、11〜12月に地際で切り取ります。さらにバークチップなどを敷き詰めてマルチングし、霜対策をしておきましょう。
寒い地域では、11月頃に球根を掘り上げ、発泡スチロール製の箱などに入れて室内など暖かい場所で管理し、春に植え直します。
増やし方
こぼれ種でも増えるほど強健な性質なので、ビギナーでも種まきから育てられます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境になじみやすいことです。敷地が広くてたくさんの苗が欲しい場合には、コストカットにもなります。
発芽適温は20〜25℃。種まきの適期は、十分に気温が上がった5月頃です。オシロイバナは直根性で移植を嫌うので、育てたい場所に直まきするのがおすすめです。しかし、植える場所を決めていない場合は、黒ポットに種子を播いて育苗し、幼苗のうちに定植してもかまいません。
【直まき】
土づくりをしておいた場所、または培養土を入れた鉢に約50cmの間隔を取り、穴をあけて2〜3粒ずつ播きます。1cmほど土をかぶせ、手のひらで押さえて最後にたっぷりと水を与えます。発芽して本葉が2〜3枚ついたら、勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。
【ポットまき】
3号の黒ポットに草花用にブレンドされた市販の培養土を入れます。中央に穴をあけて種を2〜3粒ずつ播き、1cmほど土をかぶせましょう。最後にたっぷりと水を与え、日当たりのよい場所で管理します。発芽までは水を切らさないように管理しましょう。本葉が2~3枚の幼苗のうちに、植えたい場所へ根鉢をくずさずに定植します。その際、勢いがあって元気のよい苗を1本のみ残し、ほかは間引きましょう。ヒョロヒョロと伸びて弱々しい苗や葉が虫に食われている苗、葉が黄色くなっている苗などを選んで間引きます。
オシロイバナの受粉方法
オシロイバナは他家受粉と自家受粉の両方を行う植物です。午後4時頃から開花し始め、6時頃になると花の中からおしべとめしべが伸びてきます。開花とともに漂わせる香りに誘われ、スズメガなどの夜行性昆虫が訪れて他家受粉し、夜8時頃にはおしべとめしべが丸まって花の中に収まります。他家受粉ができなかった場合は、このときに自家受粉するというメカニズムを持っています。
オシロイバナに含まれる毒性成分
オシロイバナは、全草にアルカロイドの1種のトリゴネリンが含まれています。特に塊根と種子に強い毒性があり、誤食すると嘔吐や腹痛、下痢を起こすことがあるので注意。幼児やペットがいる家庭では、誤食する事故が起きないように管理してください。触れる分には問題ありません。
オシロイバナの遊び方
オシロイバナは昔から親しまれてきた植物で、古人はいろいろな遊びを楽しんできました。ここでは、子どもが楽しめるものをご紹介します。ただし、全草に毒を含むので、口に入れないように十分注意してください。肌に触れるだけなら問題はありません。
おしろいとマニキュアでお化粧ごっこ
種から採れる白い粉を利用し、おしろいのように肌に塗って、お化粧ごっこができます。また、花びらを爪にこすりつけると、花色に爪が染まります。
色水作り
花びらを水の中に入れてほぐすと、色が水に移ってきれいです。また、種子に詰まっている白い粉を水に溶かすと白い水ができます。
パラシュート
萼片が緑色の状態であれば、花の管をすっと引っ張ると、花と種がめしべでつながります。これを高い位置から落とし、パラシュートのように風にふわりと乗せて遊びます。
オシロイバナを育てて長く楽しもう
初夏から秋にかけての長い期間にわたって、多数の花を咲かせ続けるオシロイバナ。夕方から翌日の午前中にかけて咲き、芳香もあるので真夏の涼しい時間帯に愛でるのもいいですね。ぜひ庭やベランダで育ててみてください。
Credit
文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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