バーバスカムは華やかな咲き姿や豊富な品種が魅力! 育て方や特徴を詳しく解説

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ナチュラルガーデンやイングリッシュガーデンにもよく使われ、人気の高いバーバスカム。花穂を長く立ち上げて開花する姿はダイナミックで、アイキャッチにもなります。この記事では、バーバスカムの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方などについて詳しくご紹介します。
目次
バーバスカムの基本情報

植物名:バーバスカム
学名:Verbascum
英名:Mullein
和名:ビロードモウズイカ
その他の名前:マレイン
科名:ゴマノハグサ科
属名:モウズイカ属(バーバスカム属)
原産地:地中海沿岸〜中央アジア
分類:宿根草(多年草)、二年草
バーバスカムは、ゴマノハグサ科モウズイカ属(バーバスカム属)の二年草、多年草です。原産地は地中海沿岸〜中央アジアで、約300種が分布。種類にもよりますが寒さには強く、高温多湿の環境を嫌います。草丈は10〜200cmと幅がありますが、これは種類によって異なるため。入手する際にはラベルなどで確認し、庭など植えるスペースに合う種類を選ぶとよいでしょう。
バーバスカムの花や葉の特徴

園芸分類:草花
開花時期:6〜7月
草丈:10〜200cm
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:ピンク、オレンジ、黄、白、紫など
バーバスカムの開花期は6〜7月で、花色はピンク、オレンジ、黄、白、紫など。一つひとつの花は大きくはありませんが、花茎を長く立ち上げて花穂を形成し、花が咲き上がっていく姿は大変ダイナミックな印象です。
葉は楕円形で、やや肉厚。地際から放射状に葉を立ち上げていきます。草丈が高くなって葉を大きく広げるので、やや広めにスペースを確保しておくとよいでしょう。冬には葉はロゼット状になり、地面にぺったりと張り付くような姿で越年します。
バーバスカムの名前の由来や花言葉

バーバスカムという名前は、ラテン語でひげという意味の「バルバ」からきています。おしべに産毛があることにちなんでいるようです。バーバスカムの花言葉は「臨機応変な態度」。
バーバスカムの代表的な園芸品種

種類豊富なバーバスカムについて、主に流通している種類や人気の園芸品種についてご紹介します。
フェニセウム系
日本で流通している品種のうち、最もポピュラーなのがバーバスカム・フェニセウム。草丈は1m前後と大きすぎず、庭に取り入れやすいのが特徴です。長い花穂を何本も伸ばして下から咲き上がっていく豪華な花姿を楽しめます。‘サザンチャーム’は、アプリコット、ベージュピンク、クリームイエローミックスの花色があり、花心がビロード状になる優雅な園芸品種。‘ビオレッタ’は濃い紫色の艶やかな花が魅力です。
シルバームレイン
シルバームレインは流通名で、学名はバーバスカム・ボンビシフェルムです。茎葉全体が白い毛で覆われたシルバーリーフが爽やかな印象。黄色い花が目を惹き、庭のアイキャッチになる存在感があります。
ウェディングキャンドルズ
バーバスカム・シェクシーの園芸品種で、草丈は80〜100cm。長く立ち上げた花穂に花が密につき、色の塊となって目に飛び込んできます。白い花に紫の花心がのぞき、清楚な佇まいが魅力です。
ポーラサマー
美しいシルバーリーフを持ち、カラーリーフプランツとしても存在感のある美しい品種です。草丈は150cmほどと大きく育つので、スペースに余裕を持っておくとよいでしょう。花は黄色で、明るい雰囲気をもたらします。
バーバスカムの栽培12カ月カレンダー
開花時期:6〜7月
植え付け・植え替え:3~5月、10〜11月
肥料:3月頃、10月頃
種まき:3~5月、10〜11月
バーバスカムの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。
【日当たり/屋内】一年を通じて屋外で管理します。
【置き場所】高温多湿や蒸れに弱いので、水はけのよい場所を選ぶことがポイントです。
耐寒性・耐暑性
寒さに強い一方で暑さには弱く、日本の酷暑を乗り切れないケースもあるようです。特に高温多湿の環境を苦手とするので、蒸れないように注意しましょう。
バーバスカム育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで、よく耕しておきます。水はけの悪い土壌であれば、植え穴を大きめにあけ、川砂やパーライトを混ぜて土壌改良しておくとよいでしょう。さらに腐葉土や堆肥を多めにすき込み、10〜20cmくらい土を盛って周囲よりも高くしておきます。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
草花用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために茎葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温の高い昼間に与えるとすぐに水の温度が上がり株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に行うようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。バーバスカムは多湿を嫌う性質とはいうものの、乾燥しすぎると弱るので、水切れしないようにすることが大切です。しかし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えてください。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬に生育が止まってもカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
植え付け時に元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。
その後は、毎年3月頃と10月頃に緩効性肥料を株の周囲にばらまき、軽く耕して周囲の土に馴染ませます。
注意する病害虫

【病気】
発生しやすい病気は、うどんこ病、灰色かび病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
灰色かび病は花や葉に発生しやすく、褐色の斑点ができて灰色のカビが広がっていきます。気温が20℃ほど、かつ多湿の環境下で発生しやすい病気です。ボトリチス病、ボト病などとも呼ばれています。風通しが悪く込み合っていたり、終わった花や枯れ葉を放置していたりすると発生しやすくなるので注意。花がらをこまめに摘み取り、茎葉が込み合っている場合は、間引いて風通しよく管理しましょう。
【害虫】
発生しやすい害虫は、アブラムシ、アザミウマなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4mmの小さな虫で繁殖力が大変強く、発生すると茎葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、シャワーではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、植え付け時に土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
アザミウマは花や葉につき、吸汁する害虫です。緑や茶色、黒い姿で、スリップスともいいます。体長は1〜2mmと大変小さく、群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに刺して吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になる異変が見られるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
バーバスカムの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、病害虫の痕がなく、節間が短く茎ががっしりと締まって丈夫なものを選びましょう。
植え付け・植え替え

植え付け・植え替えの適期は、3〜5月か、10〜11月です。バーバスカムの根は「直根性」で、ゴボウのように太く長く伸びます。この根を傷めると後の生育が悪くなるので、移植する際は根鉢をくずさずないよう、丁寧に扱ってください。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗よりも1回り大きな穴を掘り、根鉢をくずさずにそのまま植え付けます。複数の苗を植え付ける場合は、50〜60cmの間隔を取りましょう。草丈が高くなる高性種の場合は、支柱を立てて麻ひもかビニールタイで誘引してください。最後に、たっぷりと水やりします。
移植を嫌う性質なので、一度植え付けたら植え替えないようにしてください。
【鉢植え】
鉢の大きさは、8〜10号鉢を準備しましょう。
用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから培養土を半分くらいまで入れましょう。苗を鉢に仮置きし、高さを決めたら、根鉢をくずさずにそのまま植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。草丈が高くなる高性種の場合は、支柱を立てて麻ひもかビニールタイで誘引しておいてください。最後に、鉢底からたっぷりと流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えます。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出して軽く根鉢をくずし、太い根を傷つけずに新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
剪定・切り戻し

【花がら摘み】
終わった花は早めに摘み取りましょう。まめに花がらを摘んで株まわりを清潔に保つことで、病害虫の抑制につながりますよ! また、いつまでも花がらを残しておくと、種をつけようとして株が消耗し、老化が早まって花数が少なくなってしまうので注意。花がらをまめに摘み取ると、次世代を残そうとして次から次に花がつき、長く咲き続けてくれます。
【切り戻し】
二年草のバーバスカムは、一通り咲いて草姿が乱れてきたら、早めに草丈の半分くらいまでを目安に全体を刈り込む「切り戻し」をするとよいでしょう。すると株が盛り返して勢いよく生育し、再び開花を楽しめます。
【冬越し前の剪定】
寒くなってくると、葉を地面に這うように平べったく放射状に広げて冬越しの準備に入ります。枯れた下葉などがあればきれいに取り除き、病害虫の越冬場とならないようにしておきましょう。
夏越し・冬越し

【夏越し】
日本の暑さに耐えられずに枯死することがあります。鉢植えにしている場合は、風通しがよく涼しい場所に移動して管理するのがおすすめです。
【冬越し】
バーバスカムは寒さに大変強いので、戸外で越冬できます。
増やし方

バーバスカムは種まきで増やすことができます。種まきからスタートするメリットは、輸送などによる苗への負担がかからず、環境に馴染みやすいことです。敷地が広くて多数の苗を植えたい場合は、コストカットにもなります。
発芽適温は15〜20℃で、種まきの適期は3〜5月か10〜11月です。花壇などに直まきすると、幼苗のうちに病気や虫の害にあいやすく、天候不順にも左右されやすいので、種まき用のトレイを使い、適した場所で管理すると、より確実です。ただし、バーバスカムの根は「直根性」で、ゴボウのように太く長く伸びます。この根を傷めると後の生育が悪くなるので、移植する際は根鉢をくずさないよう丁寧に扱ってください。
種まき用のトレイを準備し、市販の種まき用の用土を入れて種子をまきます。微細な種子なので土をかぶせる必要はありません。種子が流れ出さないように、水を浅く張った容器にトレイを入れ、底から給水します。発芽までは乾燥させないように水の管理をしましょう。1〜2週間ほど経つと発芽し、双葉が揃います。
発芽したら日の当たる場所で管理し、数本が込み合っている場合は抜き取って間引きましょう。もったいないからといって密になっている部分をそのままにしておくと、ヒョロヒョロと間のびした徒長苗になってしまうので、注意。
本葉が2〜4枚ついたら、トレイから抜いて鉢上げします。黒ポットに草花用の培養土を入れて、根を傷つけないように苗を周りの土ごと抜き取って植え付けましょう。日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたら水やりして育成します。多湿になると根の張りが悪くなり、ヒョロヒョロと頼りなく伸びる徒長苗になったり、病気が発生したりするので注意。適切な水分管理をすることがポイントです。ポットに根が少し回るくらいまでを目安に育苗し、幼苗のうちに植えたい場所に定植します。
花数が多く長く楽しめるバーバスカムを育ててみよう

花穂を立ち上げて色鮮やかな花を次々に咲かせるバーバスカムは、ガーデナーにとって一度は育ててみたい憧れ的存在です。ぜひ庭に取り入れて、優美なその姿を愛でてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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