家庭菜園初心者にオススメ! 失敗なしの青唐辛子で柚子胡椒をつくろう!
信州四賀「クラインガルテン(市民農園)」で、花と野菜づくりを始めて23年の岡崎英生さん。畑で毎年必ず栽培するのが、ジャガイモ、ネギ、トマト、バジル、そして、激辛の青唐辛子。これまで失敗したことがないという、育てやすさピカイチの野菜です。今回はその青唐辛子を使った調味料づくりと、タネ播きから収穫までのお話──。
越生のユズ
埼玉県越生町。わが家から電車で1時間弱のところにあるこの町は、梅園で有名。そして、ユズの産地でもある。
今年初めの、お天気のいいある日、私は散歩のついでに越生町まで行き、駅前にある町営の農産物直売所で6個入り200円のユズを2袋買ってきた。スーパーで買うと、ユズは1個で200円近くする。産地はさすがに安い。
で、そのユズを鍋物のときの薬味にしたりして利用していたのだけれど、ふと思いついて「柚子胡椒」をつくってみることにした。
というのは、わが家の冷蔵庫には、昨年、信州四賀坊主山クラインガルテンの畑で栽培した青唐辛子、信州でいう「コショウ」がまだかなりの量残っている。それと越生産のユズをマリアージュさせて、自家製の柚子胡椒をつくってみようと思ったのだ。
信州のコショウ
信州には在来種の青唐辛子、すなわちコショウが4種類ぐらいある。唐辛子の形をしてはいるけれど、全然辛くないのが甘コショウ。京野菜の万願寺唐辛子のように、香りと食感だけを楽しむコショウだ。
マイルドな辛さで人気があり、広く栽培されているのが牡丹コショウ。坊主山クラインガルテンの畑で私も栽培してみたことがあるけれど、このコショウは他の青唐辛子と同じように、夏になると白い小さな花が咲き、やがてピーマンかパプリカのような緑色のぷっくりとした果実ができる。辛さはいまも言ったようにマイルドで、私にはいささか物足りない。
というわけで、私が毎年、坊主山で栽培しているのが激辛系の太長辛コショウ。辛さは大辛で知られるハバネロやハラペーニョ級で、友人や知人におすそ分けすると、誰もがその激辛度に驚く。
唐辛子醤油と絶品佃煮
この太長辛コショウを青いうちに細かく刻み、醤油に漬けておくと、風味豊かな唐辛子醤油ができる。これは冷や奴などのかけ醤油にしてもよいし、サラダドレッシングに少量加えると味がぐんとアップする。
同じく細かく刻んだ辛コショウに鰹節の本枯れ節の削りたて、酒、醤油を加え、ゆっくり煮詰めたコショウの佃煮も私はよくつくる。これは辛くて旨くて、温かいご飯によく、酒のあてとしても絶品だ。
豆知識あれこれ
『日本国語大辞典』(小学館)によると、「コショウ」は、古くからある唐辛子の異名。戦国時代に奈良の寺院で書き継がれていた日記に、すでに唐辛子を指す「こせう」の文字が見えるという。
その古い言い方が、今も残っているのが信州。そしてもう一カ所が、柚子胡椒という調味料の発祥の地とされている九州地方。
江戸時代に書かれた物の名前に関する書物には、奥州の仙台でも唐辛子をコショウと呼ぶと記されているというから、かつては「こせう」という唐辛子の異名が日本各地で流通していたのかもしれない。
自家製の柚子胡椒をつくる
さて、自家製の柚子胡椒づくり──。
越生産のユズをキッチンのテーブルの上に並べ、ひとつずつ薄く皮をむくと、全部で約200gになった。
一方、信州四賀坊主山産の辛コショウは、ヘタを取ったものが約150g。それに塩70gを加え、何度かに分けてミキサーにかけ、ペースト状にした。それをほんのちょっぴり舐めてみると、実に香りがよく、そしてメチャ辛い!
その日の昼飯時──。
冷蔵庫に残っていた豚の切り落とし肉を軽くソテーして、出来立ての柚子胡椒をつけて食べてみると、いやはや、ただの切り落とし肉とは思えないほど美味だった。
タネ播き、そして定植
坊主山クラインガルテンの畑で毎年絶対に栽培したい野菜の一つが、太長辛コショウ。今年も私は信州産のタネをとっくに仕入れてある。
2月の中旬になったら、そのタネを小さなポリポットに3〜4粒ずつまき、加温器に入れる。で、発芽したら、陽当たりのいい南向きの窓辺、一足早く春が訪れているその窓辺で育て、何度か植え替えをして大苗にした後、信州四賀でも遅霜の心配がなくなった5月の連休明けに畑に定植する。
その名の通り、太くて長いこのコショウは長さ5㎝以下のものだと、あまり辛くない。ところが、13〜15㎝ぐらいまで成長し、太長になると、びっくり仰天の激辛へと変身する。この辛さのためか、害虫被害はほとんどなく、とても育てやすい。ただし、連作を嫌うナス科なので前年、コショウはもちろん同じナス科のトマトやジャガイモを育てた場所は避ける。それほど場所を取らないので、プランター栽培もオススメだ。
私の畑で今年最初の収穫があるのは、たぶん7月の初め。夏の間、次から次へと花を咲かせ、実をつけ、晩秋に近い10月末、坊主山にそろそろ初霜が降りようかという頃まで採れ続けるのだ。
Credit
写真・文/岡崎英生(文筆家、園芸家)
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