冷える季節に嬉しいのが、心も身体も満たされる、温かいスープ。リンゴとニンジン、旬の2つの食材を使い、身体を温めてくれる作用のあるスパイス「クローブ」をアクセントにしたスープをご紹介します。意外な組み合わせかもしれませんが、ローストしたニンジンの旨味、リンゴの酸味と、すっきりとした甘みに心弾む、秋冬におすすめのスープを、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
旬のごちそうをいただく

ようこそ!食欲のオータム&ウィンター♡ 首をなが〜くして、お待ちしておりました!春夏も好きだけど、秋冬は家での食事がさらに楽しい季節。気の合う仲間と、温かく美味しい料理を囲めば、心も身体もほっかほか。お気に入りの鍋から湯気を出して、コトコト。香りを立てながらのお料理が、心地よい季節の到来です。

畑では夏の終わりの「ひと休み」を終えて、冬野菜が着々と育ってきています。
ほとんどの食材は通年買えるので、旬が分かりにくい、ある意味では便利な時代となりましたが、せっかく四季のあるニッポン。季節の味を楽しむ、感謝の心を忘れずにいたいものです。
旬を迎えた野菜は、ほかの季節と比べて香りや旨味が豊か。例えば、夏野菜のトマトは体を冷やし、冬の根菜類には、体を温める効果があるといわれています。旬の食材には、その季節に体が必要とする栄養分が多く含まれているので身体に優しい。そのうえ、たくさん収穫できるので価格が安い、つまりお財布にも優しいと、いいことずくめなのです。「旬のもの」で素材を楽しむお料理には、ハーブやスパイスが大活躍します。私のキッチンでは、お肉のグリルや野菜のオーブン焼き、スープや煮込みにも欠かせないスパイスたち。冬の「イチオシ」スパイスは「クローブ」。身体を温める作用を持ち、そのスパイシーで甘い香りは、リンゴやニンジンとの相性が抜群です。
クローブは寡黙な姉御肌

何度かご紹介しているスパイス「クローブ」は、かなり個性的。「スパイシーさの中に感じる、独特な甘さ」はなんとも奥深く、形容しづらい香りです。この独特な香りは世界中で愛され、料理からデザートまで幅広く使われています。単品で嗅ぐと、苦手な人もいるかも。

インドでは「チャイ」、ヨーロッパでは「ホットワイン」に、また中華料理に欠かせないミックススパイスの一つ「五香粉(ごこうふん)」にもクローブが使われています。なんともワールドワイドなご活躍! 私のキッチンでも、ジャムやアップルパイ、焼き豚など、さまざまなレシピに使っています。独特な香りですが、適量を料理に使うと、あら不思議、味に深みが出てプロ級に。しかも嬉しい効能も兼ね備えたクローブ。主成分であるオイゲノールには、強い抗菌作用、抗ウイルス作用、鎮痛といった特徴があるので、風邪予防にも効果的。
身体を温め、消化の働きをよくして、免疫強化も期待できるので、特に寒い季節に活用したいスパイスです。

アロマオイル(精油)としても重宝するクローブ。私の大好きな精油の一つです。クローブは口数は少ないけれど、どっしりと見守ってくれる「寡黙な姉御」みたいな存在。心を温めながらも背筋を「ピシッ」とさせてくれる頼もしいアネキです。精神的にふわふわしちゃっているときには、地に足をつけ、自分の軸をしっかり持って前に進むことを思い出させてくれます。恐れや不安などのネガティブなエネルギーを解消&変換する手助けとなり、過去や未来に捉われず、「いまこの瞬間」を生きる喜びを感じさせてくれるでしょう!媚薬として使われていた歴史があり、催淫作用も期待ができます。うっふん♡

私はルームスプレーやピローミストにクローブを使っています。甘く重たい香りで、毎晩眠る前から夢見心地。クローブは中世ヨーロッパで、金と同等に扱われるほど高価だったとか。この奥深い香りを嗅ぐと、その歴史にも納得なのです。
クローブ香る、リンゴとローストニンジンのスープ

日本人の感覚からしたら「リンゴとニンジンのスープ」って、なんだか奇々怪々。
おかずだけど甘い、酢豚のパイナップル的存在かしら? もしかしたら、嫌いな人は嫌いかもしれません。ズコーッ! そもそもみんなに好かれるなんて、無理な話。人間関係だってそうでしょう? 個性を全面にアピールすれば怖いものなし。
ニンジンは、必ずローストしてください。一手間ですが、コクや旨味が凝縮して、茹でたときとは別物! 甘さとほのかな酸味にクローブの香りが彩りを添える、冬らしいメニューです。
■材料 (約2〜3人前)

- ニンジン 1本
- リンゴ 1個 (紅玉やジョナゴールドがオススメ)
- 玉ねぎ 1/2個
- セロリ 1/2本
- 水 3カップ
- 塩 適量
- コンソメ 小さじ2
- クローブ 小さじ1/4ほど
- タイム 1枝〜 お好みで
- ナッツ 少々
- オリーブオイル 少々
■ 作り方
① ニンジンを7mmほどの輪切りにして、オリーブオイル大さじ1と塩少々(分量外)を加えて混ぜ、210℃に予熱したオーブンで色づくまで約25分ローストする(焦げそうなら途中ひっくり返す)。


② 鍋にオリーブオイル大さじ1(分量外)を温め、粗みじん切りにした玉ねぎを弱火〜中火で10分ほど炒める。

③ 薄く切ったリンゴと粗みじんのセロリを②に加えて、リンゴが柔らかくなるまで中火で炒める(約5分)。

④ 水、コンソメ、クローブ、タイム、ローストしたニンジン、塩ひとつまみを③に加えて、15分ほど中火で煮込む。

⑤ 粗熱をとった④をハンドブレンダーやミキサーで撹拌し、塩・胡椒で味を調節する。

⑥ お皿に盛って、オリーブオイルとナッツ、ハーブなどを添えて完成!

甘いリンゴよりも、紅玉やジョナゴールドなど爽やかで酸味のあるリンゴのほうが合います。カリカリにトーストしたパンと、山盛りのグリーンサラダを一緒に食べれば、大満足のワンプレートミールに。ホリデーシーズンにはローストポークやグリルドチキンに合わせてみては? こっそり教えますけど、ローストしたニンジンをサラダにトッピングするだけでも、最高にデリシャス! 暮らしを豊かにする「ヒント」は、毎日の生活の中に潜んでいます。すべてを完璧にしようなんて忘れて、常に自分の好きなことに意識を向けてみてくださいね。個性を活かすのよ♡ 今回のリンゴとローストニンジンのスープは、そんなスープです。
さぁさぁ、今年もあと僅か。終わりよければ、オールグッドよ♡
Credit
制作・レシピ・写真・文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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