有史上、最も古くから栽培されていたハーブの一つ「ミント」。丈夫で育てやすく、とても身近なハーブです。栽培と料理、どちらも楽しめば、喜びも2倍! 今回はさまざまな種類のミントを使った、グリーンの葉が輝くスリットハンギングを作り、摘心した葉で夏の喉をうるおす「ミントレモネード」をご紹介します。栽培のコツとレシピを教えてくれるのは、神奈川県葉山で旬の野菜を育て、植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんです。
目次
夏には爽快な「ミント」を

気温が上がり、植物たちがおしゃべりになってきました。ガーデニングや畑仕事は五感が研ぎ澄まされる、最高のモーメント。朝の水まきで土やハーブから上る芳純なミスト、花弁についた水滴のゴージャスさ、摘心した指に残る清々しい香り、ベルベットのようなテクスチャーの葉……。新芽や開花など、すべてが奇跡のタイミングで起こり、私たち人間も本来自然の一部だということを思い出せてくれる時間です。

そんなハーブガーデンの中でも、今一番おしゃべりな子がミントたち。ペチャクチャペチャクチャ! 彼らは高めの声で、とっても早口。「出番が来たわよーぉ!」と、やる気満々です。

スゥーッとした香りが特徴的な人気のミントは、夏を代表するハーブの一つ。ガーデンでは眩しいグリーンが彩りを添え、畑では害虫を避けるコンパニオンプランツとしても活躍します。

私の知る限り、ミントは最も栽培が容易なハーブ。放っておいても勝手に育ち、春を迎えて暖かくなると、あちこちから芽が出てきます。グングン広がり、気づいたら庭中にミントが…なんてことも。

ミントは地下茎で広がる丈夫な多年草。挿し芽や株分けで魔法のように増えていくハーブです。身近にあると何かと便利。ハーブティーやお菓子、料理にも幅広く活躍してくれます。

薬効に富んだハーブ「ミント」

ハーブガーデンの起源は、薬草園といわれています。医者や薬局が手軽でなかった時代は、先祖伝来の知恵で薬草(ハーブ)を使用して、不快な症状の緩和をしていました。
それぞれのハーブには、ビックリするほどさまざまな効能があると信じられていました。魔力や伝説とも縁が深く、現代人の感覚からすると「そんな馬鹿な!」と言いたくなるような記述もたくさん。残念ながら、すこぶる健康体の私には確かめようがありません。

ミントは最も古くから使われていたハーブでもあります。「抗菌」「抗炎症」「解熱作用」が期待できるため、風邪をひいてしまった時にも活躍。消化促進や整腸作用もあるので、ハーブティーとして食事のお供にも。リラックス効果があり、安眠を誘うので、ストレスが気になる時にもおすすめのハーブです。
さらにミントは「予見」のハーブと信じられ、予知夢をもたらす力があると考えられていました。嗅いだ瞬間に身体の中を満たしてくれる、ミントの爽やかで清々しい「初夏の風」のような心地よさは、外からの情報で曇ってしまった心をクリアにして、「ひらめき」や「インスピレーション」をきっと授けてくれるはず。 予知夢を見られるかはさておき、直感力がアップする香りなのです。ちなみに、ミントの花言葉は「美徳」♡
いろいろなミントで作るスリットハンギング

春から秋は、ミントがとても元気なシーズン。香りもよく、効能も多く、育てやすい万能ハーブのミント。今年はミント一択で「スリットハンギング」を作ってみました。
スリットハンギングバスケットとは、壁面に掛けることができるプラスチック製の鉢。読んで字の如くスリットが入っていて、植え込むと多方面に向かって育つので、壁から植物が飛び出しているような、立体的な印象のバスケットを作ることができます。

ひと口にミントといっても、種類は600種以上もあるといわれています。それぞれ香りも形も、色味のトーンも違って個性的。涼しげな雰囲気で夏にぴったりのミントは、なんといっても丈夫なので、初めてのスリットハンギング作りにもおすすめです。今回は、買ってきた数株と、すでに花壇に植わっているものを株分けしながら、天真爛漫にお気楽なモチベーションで作っていきます。


本来はずらして植え込んでいくなど、スリットハンギング製作時のコツはありますが、今回はそんなことは全て忘れて、大胆不敵に適当にやってみましょう。大丈夫! きっとできるわ。もし失敗したっていいじゃない♡ ミントは繁殖力が旺盛で、不器用さんが作ってもなんとか形になるので、ご安心を。
作り方はとっても簡単!
① ハンギング用の容器に専用のスポンジを張り付けて、プランター用の土などを底に敷く。

② 一番下の階層から作っていきましょう。苗に付いた土を軽くほぐして、バスケットのスリット部分に上部から苗を植え込む。

③ 引き続き、スリット部を第2階層、第3階層と続け、色味や形状を踏まえてリズミカルに植えていく。

④ 上部にも苗を植え込んで、植物の植え込みが終わったら、土が流失しないように水苔を張る(土の流出防止や夏場の乾燥を防ぐ効果があります。お好みでどうぞ)。多少、プラスチックの鉢が見えていても、成長して隠れるので、ご心配なく。

⑤ 水をやさしく、たっぷりと注いで完成。しばらくは新居に戸惑うミントも、数日経てば馴染んできます。以下のように、植えた当日と翌日は、まるで別人。


枝が暴れ始めたら摘心をしましょう。もっさり感をキープするためにも、摘心は大切。伸びすぎると下葉が蒸れて変色し、葉が落ちてしまいます。あと、土が少ないので乾燥にご用心。


あぁ、喉が渇いた! いよいよ、ここからがクライマックス。この摘心したミントたちで、すっきり爽快なレモネードを作りましょう。
夏のオアシス「ミント&パインのココナッツレモネード」

あたし、レモネードが大好きなのです。甘いのか酸っぱいのか、曖昧なバランス感でついつい元気が出ちゃう。暑い日に飲むレモネード、最高ですよね。夏といえば! のパイナップル、ついでにココナッツウォーターを使って、トロピカルムードを足し算しましょう。ミントの種類はお好みで構いません。なんなら分量も適当に! 甘みを足したり引いたり、夏の恋の駆け引きも、お好きにどうぞ。
■ 材料 (約4人分)

- パイナップル(よく熟れたもの) 1/3個
- ミント 1つかみ
- ローズマリー 4cm
- レモン汁 レモン2〜3個分(約100ml)
- グラニュー糖 40g
- ココナツウォーター 600ml(なければ水でも、ばっちり美味しいです)
■ 作り方
① パイナップルの皮をむき、芯を取り除いてぶつ切りにする。

② レモンを絞り、ミントとローズマリーは茎から葉を外し、その他全ての材料と一緒にミキサーやブレンダーで撹拌する。


③ 氷の入ったグラスに注ぎ、飾りのハーブやレモンスライスを添えて完成。よく混ぜてグビグビッと召し上がれ!


あのね。きっと「天国」とか「パラダイス」ってものは、ハーブガーデンのような場所だと思うのです。いい香りに囲まれて、呼吸をするたびに身体が生まれ変わる感覚を味わい、日々植物の成長に歓喜して、ひとやすみしたくなったらミントレモネードを楽しむ。
あ、でもこれって現世でもできますよね。生きながらにLet’s 極楽浄土。アタシの本籍所在地はパラダイス銀河よ♡ 欲張りに、栽培も収穫も全てひっくるめて楽しみましょ。自分で育てたミントで作るレモネードは、もぅ最高!なんだから。
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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