【芯から温まるレシピ】ガラムマサラ香る「イギリス式アップルチャツネ」

寒い冬には身体の内側から温める、スパイス料理がおすすめ! 「チャツネ」と言えば、カレーの隠し味をイメージしますが、イギリスではさまざまなフルーツや野菜、スパイスを使ったチャツネを、サンドイッチやお肉料理に合わせる、独自のチャツネ文化が発展しました。一言で言えば、甘酸っぱいお食事系ジャム。冬に向けて果物や野菜をスパイス、酢、砂糖などで煮込んだ、イギリスの秋には欠かせない保存食です。今回はイギリスにもなじみ深い国インドのミックススパイス「ガラムマサラ」を使い、旬のリンゴを煮込む「ガラムマサラ香るアップルチャツネ」と活用法を、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
イギリスで出会った「チャツネ」

わざわざ飛行機に乗らなくても、世界中の美味しい料理が食べられる世界屈指の「美食大国」ジャパン。ネットショッピングの普及や輸入食材を扱うお店が増えて、さまざまな国の食材や調味料がすぐに手に入る、便利なご時世です。イギリスの物だってそう。しかし、有名ブランドのジャムや紅茶ではなく、地元の人が日常的に食べている物って、意外と現地に行かないと手に入らなかったりします。ここ数年は気軽に海外に行けず、喉から手が出るほど恋しかったのが、イギリスのスーパーマーケットに並ぶ「チャツネ」。日本ではインドカレーの隠し味でしょう? と言った感じの認知度の「チャツネ」ですが、じつはイギリスの「国民食的調味料」でもあります。

私とチャツネの運命の出会い、あぁ、あれはイギリスのアンティークショップに併設しているカフェだったわ♡ 造花の花がそこら中に飾られている、ロマンチックなようで全くロマンチックではない、摩訶不思議なお店。サンドイッチやスープ、缶ジュース、もちろん紅茶も提供する田舎のカフェテリア。
スティルトン(イギリスのブルーチーズ)が好きな私は、適当にスティルトン&ベーコンのパニーニをオーダーしました。パクっと一口噛み付いた瞬間に、口の中に広がった、チーズのコクと肉の旨味、そしてそれらを包み込むように香る、華やかでゴージャスな「甘みと酸味」。ん!!!なんなのこの感覚⁉︎ と、よくよくメニューを見返してみたら、「chutney(チャツネ)」という文字が。それ以来、私はこのチャツネという食べ物にフォーリンラブしてしまったのです。

チャツネの語源はヒンディー語で「舐める」を意味する「チャートゥナー」。発祥はインドですが、インド帝国が英国領だった時代に、カレーなどと共にイギリスに伝わりました。インドでは手に入るマンゴーやタマリンドがイギリスでは手に入りにくいために、リンゴなどイギリスでも気軽に手に入る食材に置き換えられて、独自のチャツネ文化が発展したようです。

イギリスではスーパーにさまざまな味の「チャツネ」たちがズラーッと並んでいます。ナス、トマト、イチジク、ビーツ、玉ねぎ、アプリコットなど、バリエーションも豊富!
日本の食卓では馴染みのないチャツネ。1度食べればクセになる、不思議な魅力を持っています。一言で言えば、甘酸っぱいお食事系のジャム。
冬に向けて果物や野菜をスパイス、酢、砂糖などを煮込んで作る、イギリスの秋冬には欠かせない保存食です。英国王室に嫁入りしたキャサリン妃が、エリザベス女王に初めて贈ったクリスマスプレゼントはチャツネだったとか。チャツネはイギリス人にとってアットホームで家庭的、それくらい馴染み深いものなのです。

チャツネは、サンドイッチやチーズ&クラッカーにと何かと便利で、冷蔵庫にあると安心するものの一つです。ジャムのようなモノなので、じつは家でも簡単に作れちゃう。今回はリンゴとガラムマサラを使った、ルーシー流「ガラムマサラ香るアップルチャツネ」をご紹介します。ガラムマサラ? カレー? リンゴ? ん?? 甘いの? どーいうこと? って、常に探求心を持つことは、子供と大人の狭間に生きるってこと。これって若さの秘訣よね♡ とりあえずガラムマサラってなんだっけ? から解決しましょう。
インドの万能ミックススパイス「ガラムマサラ」

「ガラムマサラ」は魅惑の国インドのミックススパイスです。シナモン、クローブ、カルダモン、クミン、胡椒などがよく使われ、約10種類のスパイスがブレンドされています。
「カレー粉」と混同されがちなガラムマサラ。どちらもさまざまなスパイスを配合したミックススパイスですが、カレー粉はじつはイギリス生まれ。簡単にカレーを作るためにイギリスで誕生したものです。一方、インド生まれなのがガラムマサラ。ガラムマサラはカレーや炒め物など、一般的に調理の終盤に加えて、素材の風味を引き立てて香り高く仕上げるのに使われます。肉料理の下味に使うと臭み消しにもなっちゃう、インド料理以外にも活躍する魔法の粉。

2つの決定的な違いはターメリック。ガラムマサラにターメリックは使われず、カレー粉特有の黄色い色味もありません。各家庭で配合のバランスも違い、「おふくろの味」的なものなのかもしれません。日本のスーパーでも気軽に買えますが、メーカーによって使用されるスパイスの種類や配合のブレンドが異なっています。以前何かで読んだインドの方が書いた記事に「ガラムマサラは使っても使わなくてもいいけど、とりあえず入れとけば安心で美味しい、インド版の味の素みたいなものだよ」と書かれていました。なるほどね!

ガラムマサラの基本となるのは「シナモン」「クローブ」「ナツメグ」。これらは東洋では漢方薬として使われ、西洋ではアロマセラピーにも使われているスパイスたち、健胃作用、加温効果、食欲増進作用などなど嬉しい効能が詰まっています。
今回は、このガラムマサラに医者も青ざめるほどのスーパーフルーツ「リンゴ」を合わせて、チャツネを作ります。
ルーシー流「ガラムマサラ香るアップルチャツネ」

さてさて、チャツネ作りのお時間です。今回は酸味があり溶けやすい「グラニースミス」と甘みと香りがある「フジ」2種のリンゴを使います。香りと質感の違うリンゴを使い味に複雑さを。さらにガラムマサラを加えて、深みを出します。ポークソテーやサンドイッチ、アフタヌーンティーからお酒のツマミにも。甘いようなー、酸っぱいようなー……。あ、でも嫌いな人は嫌いかも。百聞は一見にしかず。とりあえずレッツクッキン!
■ 材料

※分量は、350g瓶3本弱の量です。
- リンゴ 3個 ※今回はグラニースミスとフジ
- 玉ねぎ 1玉
- レーズン 大さじ3
- 砂糖 120g
- ガラムマサラ 小さじ1〜2
- シナモン 小さじ1/4
- リンゴ酢 大さじ2
- 赤ワインビネガー 大さじ1
- 塩 小さじ1/2
■ 作り方
- リンゴの皮を剥き2cm角に切り、玉ねぎは粗みじんにする。
玉ねぎが入ることでセイボリー(おかず感)な風味が出ます。 - 鍋に全ての材料を入れて強火にかけ、沸騰したら弱火で30分から1時間程煮る。
時々かき混ぜて、焦げないように!
※前半は蓋をして水分を染み出させて、後半は蓋を取って水分を飛ばします。ガラムマサラにはシナモンも入っているので、リンゴとの相性が○。 - 余計な水分が飛び、とろっとしたテクスチャーになれば完成。お好みでガラムマサラを一振りどうぞ。

煮沸消毒し、脱気すれば常温で1年以上保存可能です。開封後は冷蔵庫保管で1カ月ほど。私はすぐ食べ切るので、そのまま瓶に詰めて、だいたい1週間ほどの冷蔵保存で食べ切ります。
チャツネとチーズはベストフレンド
チャツネとチーズの相乗効果の凄さったら、パーフェクト。チーズのコクと、チャツネの甘さと酸味を生かした「グリルドハムチーズサンド」と「クラッカー」を召し上がれ!
チャツネで作るグリルドハムチーズサンド
■ 材料
- サンドイッチパン 適量
- ハム 適量
- チェダーチーズ 適量
- チャツネ 適量
- ローズマリー 適量
- バター 適量
■ 作り方
- 熱したフライパンにバターを溶かし、パンを両面にバターを吸わせながら焼く。
- 片面に焼き色が付いたら、ひっくり返してハム、チーズ、チャツネ、みじん切りにしたローズマリーを少量挟む。
- もう片方の面にも焼き色が付き、挟んだチーズが溶ければ出来上がり!
チャツネで作るチーズクラッカー

これはパーティーの前菜や、軽食、ちょい飲みのおツマミにも。素敵な大皿に、ナッツやドライフルーツなどと並べても。チーズの種類はおまかせ。ブルーチーズもいいですねぇ。
■ 材料
- お好みのクラッカー 適量
- カマンベールチーズ 適量
- チャツネ 適量
- タイムなど飾りのハーブ 適量
■ 作り方
クラッカーにチーズ、チャツネをのせて、ハーブを飾り付けて完成。

ほかにもハンバーガーや、トンカツのソース代わりにも。お肉やチーズと組み合わせてみてください。日本ではまだまだ可能性を秘めているチャツネ。街中のカフェでも気軽にお目にかかれる日を楽しみにしています。自称「チャツネ親善大使」に勝手にセルフ任命。スパイスで内側からポカポカ、まずはご自愛♡ 心も身体も温めましょう。2023年は未だかつてないくらいに、心地よい一年に! とりあえず、チャツネ作りお試しあれ〜!
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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