愛犬と楽しむハーブ いろいろな薬効が穏やかに効くカモミール
心身を癒やす力を持つハーブは、じつは人間にとってだけでなく、動物にとっても有用なものです。愛犬の健康維持に、ハーブを取り入れてみませんか? 今回ご紹介するのは、やさしい香りのカモミール。さまざまな薬効成分を含み、穏やかに作用してくれるハーブです。ハーバルセラピストの資格を持ち、ペットのための自然療法も学ぶ海野美規さんが、カモミールの活用方法と使い方を解説します。
目次
愛犬と一緒にハーブ

野生の動物は、本能的にハーブを食べることで病気や傷を癒やし、体調を整えてきたとのこと。動物とハーブの関係は、人間よりも古く、動物が特定の草を好んで食べたり、傷を癒やしたりする光景を見て、人間はハーブについての知識を得ていたそうです。
我が家の愛犬あんも、散歩の途中でいつも同じ特定の草を食べることがあります。そういうときは、胃もたれがするとか、胃腸の調子が悪いとか、何かちょっとした不調があるのだと思います。
犬は自らの健康を守るために、草(ハーブ)を取り入れているのです。
ハーブには医薬品のような即効性はありませんが、もともと動物が持っている自然治癒力に働きかけて、全身的に体調を整えてくれる効果があります。私たち人間と同じように、愛犬も一緒にハーブを活用できたらいいなと思っています。
春に収穫したカモミール

5月頃でしょうか、庭のカモミールがたくさんの花を咲かせました。うまく育つ年と、あまりよく育たない年とあるのですが、たくさん咲いたときには、花を収穫しておくことにしています。今年も、花の部分だけを摘み取って乾燥させておきました。

たくさん咲いたといっても、一番きれいなときに摘んでしまうのが忍びなく、お茶にして1〜2回楽しめるくらいの量ですが、収穫して役立てるというのは楽しみの一つになります。
カモミールってどんなハーブ?

カモミールは伝統的に、消化不良や下痢などの消化器系の不調や、ストレスなどの精神的な疲労に、リラックス、鎮静目的で古くから使われてきました。また、抗炎症作用にも優れているので、歯周病のようなオーラルケアや、皮膚炎や湿疹、虫刺されなどにも使えるハーブです。いろいろな薬効が安全で穏やかに作用するので、犬へのハーブ療法を行う場合におすすめということです。
ただし、カモミールはキク科の植物です。キク科アレルギーのある人間も犬も注意が必要です。アレルギー反応がないか確認してから使用しましょう。妊娠中の場合は使わないでくださいね。
犬に使う場合

犬へのハーブの使い方は、内服と外用とがあります。
<内服の場合>
ドライハーブを粉末状にして混ぜたり、ハーブティーとして与えるのが手軽です。ハーブティーといっても、ごくごく飲むのではなく、体重10kgの犬で1日に10mlほどの量を、2回程度に分けて与えるくらいにとどめます。初めはもっと少ない量で様子を見ながら与えましょう。ティーよりも成分濃度が高いチンキにすれば、少量でも効果的に摂取できます。
チンキは、ドライハーブ10gを、食品グレードの植物グリセリン、またはウォッカなどのアルコール40〜100mlに漬け込んで作ります。ただし、アルコールの匂いを嫌う犬も多いので注意しましょう。浸けておくのに少し時間はかかりますが、作り方は簡単ですので、常備しておくと便利です。使う量は、体重10kgの犬で1日あたり0.5~1.5mlくらいを目安に。初めはさらに少量から試してください。
せっかくなので確実に摂取できるよう、ティーもチンキも、フードやおかずに添えるようにするとよいでしょう。
<外用の場合>
内服と同じように浸剤(ハーブティー)を作って、湿布をしたり、リンスのようにかけたり、足湯などに利用することができます。
また、ハーブティーを内服して治療効果を得るほどの量を与えることは難しいのですが、飼い主が飲んでいる側で、マグカップから上がる蒸気と香りで、一緒にリラックスするのもよいでしょう。蒸気を吸入することで、上気道にも作用するとのことです。
愛犬の足湯に

カモミールは、抗炎症作用や抗菌作用、かゆみを抑える作用があります。
愛犬あんは、時々、前脚を舐めていることがあります。ただ退屈なのかもしれませんが、痒いのだとかわいそうです。そこで、カモミールの浸剤(ハーブティー)の足湯を試してみることにしました。

足湯のやり方は簡単。鍋で沸騰させたお湯に、お茶パックに入れたカモミールを入れて火を止め、蓋をして10分ほどおきます。浸剤を洗面器に入れて、水やお湯を追加し、量と温度を調節します。

今回は洗面器が小さいので、前脚と後脚と分けて入れました。あんは、初めは少し警戒していましたが、気持ちいいのか、じっとしているようになりました。こちらも1〜2分など短い時間から始めて、慣れてきたら少しずつ長くするといいですね。
足湯の効果はというと、なんとなく舐めることが減ったような気もしますが、経過を観察中です。
ピーターラビットとカモミール

カモミールティーというと、ピーターラビットのおはなしを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。私もピーターラビットが大好き。先日、静岡で開催されているピーターラビット展に行ってきました。
『ピーターラビットのおはなし』が出版されて今年で120年だそうです。世界中で長く愛されてきた青いジャケットのピーターラビットは、今でも色あせることなく、元気でとびきりの可愛さでした。
ピーターラビットのおはなしで、ピーターはマクレガーさんの庭でたくさんの野菜を食べて大騒動を起こします。なんとか家に帰ったピーターは、お腹が痛くなって寝込んでしまいます。そんなときにピーターのおかあさんが淹れたのが、カモミールティーです。温かいカモミールティーで、お腹も整い心身ともにリラックスして、ピーターはゆっくり眠れたのではないでしょうか。

お話はフィクション。本物のウサギがカモミールティーを飲んでもいいのかどうかは分かりませんが、イギリスでは古くから、カモミールティーをごく普通に飲んでいたのが分かります。まだまだ医薬品が高価だった時代は、民間では薬草(ハーブ)を育て、それを煎じて薬の代わりにしていました。日本でも古くから伝わる民間療法がたくさんありますね。
ちょっとした不調のとき、ほっとリラックスしたいとき、愛犬と一緒に、温かいカモミール ティーを一杯いかがでしょうか。
Credit
写真・文/海野美規(Unno Miki)
フラワー&フォトスタイリスト。ハーバルセラピスト。愛犬あんとの暮らしを通じて、動物のための自然療法を学ぶ。パリで『エコール・フランセーズ・ドゥ・デコラシオン・フローラル』に入門、ディプロムを取得。『アトリエ・サンク』の山本由美氏、『From Nature』の神田隆氏に師事。『草月流』師範。フランス、ハンガリー、シンガポールでの暮らしを経て、現在日本でパリスタイル・フラワーアレンジメントの教室『Petit Salon MILOU(プチ・サロン・ミロウ)』を主宰。
https://www.annegarden.jp/
参考:『犬と猫のためのメディカルハーブガイド』日本アニマルウェルネス協会
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