レモンに似た爽やかな香りとボリュームのある草姿で、夏の庭や畑を彩るレモングラス。熱帯性の植物なので日本の暑い夏にも強く、丈夫でたくさん収穫できるものの、活用法のレパートリーは少なめかもしれません。せっかくだから茎と葉、余すことなく美味しく召し上がってほしい! 今回はレモングラスの茎を使った「アジアンそぼろ飯」と、葉を使った「レモングラスミントティー」を、香りの効能と育て方のヒントを交えながら、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
「香り」は心のスイッチ
「香り」は、気分を変えるスイッチ。私たちは人生を複雑に考えて、毎日を過ごしてしまいがちです。でも本当はすごくシンプルで単純明快。自分自身が心地よく過ごしていれば、外の世界で何が起ころうがノープロブレム。ドラマクィーンになりたいならいいけれど、いろいろなことに一喜一憂していると疲れちゃう。「香り」は自分の心をニュートラルな状態に戻す手助けをしてくれます。古来より「香り」は私たちの意識に働きかけ、エクスタシー状態にして、宗教的体験を受け入れやすくするために使われてきました。現代風に解釈すると、私たちが成長過程で無意識に作り上げた、人それぞれの「固定概念」や「常識」を払拭し「本来ある姿」へ戻る手助けをしてくれるのでは?
レモングラスの香りはスッキリとした柑橘系で、清涼感があり「脳天」をスパーン! と突き抜けるような爽やかさです。「レモン」のような香りがする「草」…なので、「レモングラス」というド直球な命名。レモンの香りは「シトラール」という芳香成分によるものですが、レモングラスには、このシトラールが本家のレモン以上に含まれているため、レモンよりも強く鮮やかでビビッドに香ります。フレッシュなハーブの香りはイキイキとして、生命力を感じる力強さがありますが、季節や場所を問わずに香りを楽しむには、芳香成分が濃縮された「精油」もおすすめです。
詰まりを流す、レモングラス
私たちの身体の中では絶えず新しい細胞が作られ、脳の記憶ではこの瞬間も1秒後には「過去」となります。川が流れるように流れに身を任せていないと、過去の感情にとらわれたり、古傷が痛むように体調がイマイチ、なんてことも。レモングラスの効能をひと言で例えると、「流す」。心と身体、どちらの「詰まり」も流してくれる香りです。
レモングラスは、なんといってもエネルギッシュで爽快! 過度の興奮状態や神経過敏で「交感神経」のスイッチが切れないときに嗅ぐと、パチン! と指を鳴らすように「副交感神経」へとチャンネルを切り替えて、リフレッシュさせてくれます。
「鎮静作用」を持ちながらも精神を高揚させてくれるので、「気分が乗らないわぁー」ってときや、「さぁ!ここ一番の大勝負!」ってときにもイチオシ。仕事や人間関係の悩みから、頭の中をいつも同じ光景や不安がグルグル、思考がパターン化しているときにも頼れる精油です。
レモングラスの精油には「鎮痛作用」や「血行促進作用」があり、アロマトリートメントでは筋肉痛や肩こりのほか、むくみや冷え性のケアとしても使われています。また、「抗菌&抗ウイルス作用」もあり、生活に役立つ精油の一つ。ボディー、ハンドソープやシャンプーなどにもよく配合されています。
※レモングラス精油は高濃度で使用すると皮膚刺激があるので、敏感肌の方は注意が必要です。妊娠初期は使用を避けてください。
レモングラス栽培3年目
私の「レモングラスライフ」も3年目を迎えました。1年目の越冬は掘り起こして株上げしましたが、失敗。昨年2年目は新たな苗を植えて、越冬は放ったらかしに。その結果無事に越冬して、今年の夏は一回り大きく成長しました。いくつかに株分けして、3カ所の畑でスクスクと成長中です。
正直、レモングラスに関して「育て方」なんて偉そうに書けることは一つもなく、「放っておいたら勝手に大きく育っちゃった!」という感じなので、お伝えできることはあまりありません。鉢植えでもいいのですが、地植えのほうがワイルドに大きく育ちます。もともとは熱帯性の植物なので、種子から発芽させて育てるには日本の夏は短すぎ。春に苗から育て始めるのが賢明です。2年目以降は春先に株分けすると簡単に増やせます。太陽の光がたっぷり当たる場所に植えると、嬉しそうにグングン大きく成長。痩せた土地では必要に応じて追肥をしましょう。とはいえ、私は追肥をしませんでしたが、大きく成長しました。レモングラスと土とあなたの三者面談、話し合って決めてください。
葉はその都度必要な分を外葉から収穫し、ハーブティーやハーブウォーターに! レモングラスは新しい葉が内側から育つので外葉から収穫しましょう。乾燥レモングラスとはまた違ったフレッシュな香りです。茎は小指ほど(私の小指は華奢な女子の親指ほど)の太さになったら根元から切って、トムヤムクンやグリーンカレーなどのお料理に。11月頃にはバッサリ切って収穫終了。葉は適当な大きさに切り、乾燥させてお茶に。茎は冷凍保存が可能です。
夏の恒例、レモングラスレシピ第3弾
勝手にシリーズ化して楽しんでいる「夏の恒例、レモングラスレシピ」の巻。今年でレシピをご紹介するのも3回目です。近所のスーパーではあまり見かけないレモングラス。栽培していない方には他人事かもしれませんが、諦めるなかれ! レモングラスは生姜とレモン果汁でなんとなく代用可能です。なんとなくね。これを機に、ぜひ来年は栽培にトライしてみてください。
1年目はレモングラスの「葉」と「茎」を楽しむ2種のレシピ、ベトナム風レモングラスの竜田揚げと、レモングラスのフレッシュハーブティー。
どれも食欲をそそるいい香りで、美味しいレシピです。そして3年目、3回目となる今回は「レモングラスのアジアンそぼろ飯」と「レモングラスミントティー」をご紹介します。
レモングラスのアジアンそぼろ飯
レモングラスを栽培している特権は、フレッシュな茎が手に入ること。茎の根元、柔らかい部分は料理に使います。これがまたいい香り! 挽肉との相性は特にバツグンです。お手軽&お気楽に作れて、しっかりアジアご飯。そんな夢のレシピが、今回ご紹介するこちら。丼にするのはもちろん! おにぎりの具にもいいかもしれません。甘く味付けしたお肉に、ピリッと唐辛子の辛みと、ライムの酸味が爽やかで、食欲をそそります。さぁ、食欲の秋到来だわ。張り切ってお料理タイム! ヒァーウィーゴォ!
■ 材料
- 豚ひき肉 500g
- ニンニク 1片
- レモングラスの茎 1本
- 玉ねぎ 半個
- 生姜 1片
- 塩・胡椒 適量
- ナンプラー 大さじ1
- 砂糖 大さじ5
- 青唐辛子 1〜2本 (赤唐辛子でも)
- ライム 1個
<飾り>
- 万能ネギ 適量
- パクチー 適量
- 唐辛子やパプリカなど色味のあるもの
※ レモングラスが手に入らなければ、生姜とレモン果汁でなんとなく代用可能。
※ アジア食材店やネットで、冷凍のレモングラスの茎が買えますので調べてみてね。
■ 作り方
- 鍋に油を熱して、みじん切りにした玉ねぎとレモングラスを4分ほど中火で炒めたら、みじん切りにしたニンニクと生姜を加えて香りを出す。
- 豚ひき肉を加え、塩・胡椒をして、さらに炒める。あまり混ぜずに炒めることで、ひき肉が大きな粒状になり食べ応えが出ます。放置気味に炒めましょう。
- 豚ひき肉に火が通ったら、ナンプラー、唐辛子、砂糖を加え全体に馴染むように混ぜて、また放置。少し焦げ付くくらいが美味! 火を止めて、カットしたパクチーとライム汁を加え、軽く混ぜる。
- ご飯の上に③をのせて、刻んだ万能ネギ、パクチー、唐辛子などを散らして完成!
レモングラスミントティー
ニンニクを使ったそぼろ飯のお供には、爽やかなレモングラスミントティーを。市販のミントティーのティーバッグを使うので簡単! レモングラスティーには消化促進作用があり、胃もたれにも効果的。お食事のお供にはもちろん、カフェインフリーなので就寝前にもおすすめです。今回はミントティーを使いましたが、緑茶やジャスミンティー、紅茶など、ホットでもアイスでもお楽しみいただけます。
■ 材料
- ミントティー ティーバッグ 2袋
- レモングラスの葉 軽くひとつかみ
- 水 1.5ℓほど
- 砂糖 お好みで大さじ2
■ 作り方
分量の水を鍋に沸騰させ、火を止めて、ティーバッグとレモングラスの葉を加える。5分ほど蒸らし、氷を入れてアイスティーに。
お気に入りのお皿で、美味しい食べ物を気の合う仲間と。五感を満たすことは、最上級な「心のリラクゼーション」♡ 今回そぼろ飯に使ったベトナムのお皿は、雰囲気とサイズ感が気に入り、数カ月前に購入。麺やご飯、おかずにもエクセレント! このお皿のおかげで、料理がさらに楽しくなっちゃった。料理上手への道は、お皿上手が近道かもしれません。今回ご紹介した2種のレシピはどちらも簡単で、味は本格的。お気に入りのお皿で、ぜひお試しを。
お皿と運命の出会いのチャンス
あ! そうだ。お気に入りのお皿といえば、お知らせです。お皿と運命の出会いを求めているなら、ぜひこちらへ。2022年10月23日まで、神奈川県葉山町にある「HAYAMA BREAD Club」にて『Japanese Old Things 用の美と和骨董』を開催します。メインはお皿。家に帰ってゆっくりお料理したくなる子たちを集めました。期間中は私も顔を出しますので、お皿に合うレシピもお教えします。ぜひお越しください。
Information
『Japanese Old Things 用の美と和骨董』
2022年10月5日(水) 〜 10月23日(日)
HAYAMA BREAD Club [BAKERY&CAFE]
【住所】〒240-0111 神奈川県 三浦郡葉山町一色 1382-1
【営業日時】水曜〜土曜11:00〜17:00 / 日曜8:00〜15:00(月曜日が祝日の場合は基本的に営業)
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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