旬の野菜を「ベジトラグ」で収穫! 美味しさ引き出すおうちレシピ<夏>

野菜やハーブを狭小地でも育てられる画期的なプランター「ベジトラグ」。ベランダにベジトラグを置き、10種類以上のハーブや野菜を育ててレシピに挑戦するのは、フードスタイリストの黒瀬佐紀子さん。今回は独特の風味のあるパクチーと丸く太った赤いビーツの栽培記録、そして、レシピ誕生までの試行錯誤を交えながら、育てていればこそのオリジナルレシピを初公開! 秋からでも栽培できるのでぜひチャレンジを。
目次
歴然! ベジトラグと鉢では植物の育ちが違う

ベジトラグをベランダに設置して、早いもので半年が経ちました。日々観察していて一番驚いたのは、野菜たちがとにかく元気によく育っていること! 鉢で育てていた頃のバジルやパクチーとは比べものにならない勢いで成長しているのです。その理由は、ベジトラグに土がたっぷり入っているから。植えるスペースが腰ほどの高い位置なのは、立ったままで作業がしやすいからだと思っていましたが、根を長く伸ばすことができる深さも利点なんですね。
「野菜栽培には、土、水、日光が必要。この3つがバランスよく十分であれば、よく育つ」と教えてくれた農家さんの言葉を思い出しました。
●ベジトラグで野菜栽培を始めたスタート時のストーリーはこちら
パクチーの成長過程とその調理法を模索

パクチーは私が大好きな食材の一つなので、よく目にとまるベジトラグの右奥に植えました。成長を見守っていたある日、茂った葉の間から糸のような葉をつけた茎がニョキッと伸びてきました。それは花芽のようです。調べてみると、それはいわゆる“薹(とう)が立った”状態。盛りが過ぎたことを表していて、どうやらこの後、株は花を咲かせて結実するのに集中する段階に入ったようです。確かに食べるのによさそうな柔らかな新しい葉は出てこなくなりました。人生初対面のパクチーの薹立ち、このまま観察を続けることにしました。

結実が始まるとその重さに茎が耐えられず、自然とベジトラグから枝垂れるようになりました。ちらほら咲き始めた白い花が満開になり、やがて先端には緑の小さい実をつけました。この実が熟して乾燥すると、あのスパイスとして売られているコリアンダーになるのです!

成長の観察を通して、食用の葉とスパイスの実が一つの植物として私の中でリアルに結びつくこの体験に感激! これが植物を育てる楽しさなのですね。
パクチーの花と若い実を食べる<トマトサラダ>

これまで、花は料理のあしらいとして食べたことはありましたが、緑の若い実は食べたことがありません。毒性はないようなので味見してみると…プチッと割れてパクチーの香りが口の中に広がりました。うん、美味しい!
この感触を味わえる料理として、花と実をそのままトマトと和えてシンプルなサラダにしました。パクチーの香りと食感がアクセントになって、見た目にも華やかな一皿です。

花が全て実に変わったところで収穫しました。さて、この実の独特な香りを料理に生かすにはどうしましょうか?
パクチーの実を酢漬けにして香りや風味が移るか?<ピクルス>

酢漬けにしたらパクチーの香りと風味が染み出すのではないかとピクルスに入れてみました。作り方は、こんな感じ。
- 赤タマネギをくし切りに、コリンキーカボチャと大根を短冊状に切って、パクチーの実と一緒に瓶に詰める。
- 小鍋に酢、水、砂糖、塩を適量入れて沸かし、熱いまま①の瓶に入れたら一晩おく。

期待していたのですが、漬け汁にはパクチーの味や香りは移らず残念。やはり実が割れることで風味が広がるようです。ピクルスにしたパクチー自体は美味しいので、野菜と一緒に頂きました。残った漬け汁は、実と共にドレッシングに活用。
パクチーの実を塩漬けにして潰す<パクチー胡椒>

次なる挑戦は、実を潰して美味しさを引き出せるよう、柚子胡椒ならぬパクチー胡椒を考案。
柚子胡椒は、柚子の果皮、生の青唐辛子、塩をすり合わせて寝かせた調味料です。柚子胡椒の作り方を参考に、パクチーの実10gを塩5gに漬け、塩が溶けてなじんだタイミングで、青唐辛子3gを刻んでから、すり鉢ですり合わせました。

仕上がりは、香りいっぱい、唐辛子の辛味で引き締まってとても美味しい!
この香りと辛味は淡白な鶏肉との相性がよさそうです。さらに発展させて、蒸し鶏にかけるタレを作ることにしました。
パクチー胡椒で彩る蒸し鶏のエスニックサラダ

オクラとトマトがカラフルな、夏にぴったりな味わいのサラダに仕上がりました!
一つ気になったのは、潰した果皮が口に残る感じがあったこと。果皮が柔らかいうちに収穫するのも一案だなぁ……。そんなことを考えながら、小瓶に詰まった少量のパクチー胡椒がとても愛おしい調味料となり、大事に味わいました。
「パクチー胡椒で彩る蒸し鶏のエスニックサラダ」作り方

- 鶏ささみ200g、白ワイン大さじ2をフライパンに入れ、蓋をして火をつける。沸騰したらごく弱火にして3分、ささみを裏返して2分ほど加熱する。火を止めてしばらく蒸らす。
- ①のフライパンに残った汁とパクチー胡椒、ナンプラー少々、オリーブオイルを混ぜてタレを作る。
- 器にトマト、茹でたオクラ、①のささみを盛り付け、②のタレをかける。
真っ赤な果肉のビーツ栽培に挑戦

ベジトラグに一番興味を持ったのは、深さ30cmの部分もあって、根菜も育てられるというところ。まさかベランダで根菜が育つだなんて考えてもみませんでした。必ずチャレンジするぞと選んだのは、スーパーではあまり見かけない赤紫色の果肉が美しい「ビーツ」。
ビーツは赤カブのように見えますが、ヒユ科フダンソウ属の根菜で、てんさい糖の原料となるテンサイ(甜菜)の仲間。アブラナ科のカブとは別物です。「ラフィノース」というオリゴ糖が含まれているので、ほんのりとした甘みがあり、腸内環境を整える効果が期待されます。またビーツの赤い色素には「ベタシアニン」という抗酸化作用を持つポリフェノールが多く含まれています。

ビーツを使った料理といえば、鮮やかな赤が特徴的なウクライナ発祥のボルシチではないでしょうか。ビーツをはじめとした野菜と肉を煮込んだスープで、ロシアやヨーロッパではポピュラーな料理です。またそれらの地域では、丸ごと加熱したビーツをパック詰めにしたものや瓶詰めなども売られていて、スライスしてサラダなどに入れて食べられています。近頃は日本でも注目されている野菜で、国内で栽培されたものやパック詰めのビーツも買うことができるようになりました。
ビーツ苗の植え付けから収穫まで

4月中旬に苗を入手して栽培を始めました。まだ葉だけの苗が、どんな風に見覚えのあるあのビーツの姿になるのだろうと観察を続けていると、赤い茎と葉は、上に伸びるというよりも放射状に茎が伸びて広がるように育ちました。可食部となる根は地面すれすれのところで肥大していきました。

こぶし大くらいになった7月上旬、栽培の相談に乗ってくれている友人農家さんから「そろそろ収穫したほうがよい」とのアドバイス。その段階で、広がった葉はベジトラグの半分もの場所を占めるようになっていました。

ついに抜く時がきた! と高まる期待に反して強い力は必要なく、スルスルと根の先の髭根まで切れずに抜けて、あっという間に収穫完了。ベジトラグの一番深さがあるエリアに植えていたので、髭根が真っ直ぐにストレスなく伸びることができたのかもしれませんね。
赤色が活きるビーツのマリネ

さて、収穫したビーツ2個。ボルシチも大好きだけれど、しっかりと噛んで食べ応えがあるものにしたい……。ホイルで包んでオーブン焼きもきっと美味しいはずだけど、それには1時間近くかかるし、ボイルする場合も長時間かかるので、どうしても魅力的な赤色が抜け出てしまうという過去の経験を思い出しながら、最適なレシピに思いを巡らせました。できるだけ短時間で栄養素も逃さない方法としてたどり着いたのは、角切りにして素揚げしてマリネ! よし、採れたてのうちに作ってみましょう。
「ビーツのマリネ」作り方

- ビーツの皮は、土が食い込んで取り除けない箇所だけむき、一口大に切る。ニンジン1/3本も同様に一口大に切る。
- フライパンに多めの油を入れ、①を中火で上下返しながら素揚げする。楊枝で刺してみて火が通ったものから順に取り出す。
- 保存容器に②、スライスしたタマネギ1/2個、ワインビネガー大さじ3、砂糖大さじ1、塩小さじ1/2、コショウ少々を入れて全体を混ぜる。そして半日以上おく。

少しおいて全体がなじんでくると、酢とビーツの甘みがまとまるようです。調理後のビーツは、固めに加熱したカブのような食感で、育てた達成感と共にじっくり味わうことができました。

後日、ビーツマリネをアレンジ。レタスと半熟卵と盛り合わせてビーツサラダに、またポークソテーに付け合わせたら抜群の相性でした!
夏の収穫後、空いたスペースに何を植える?

ベジトラグの右奥と手前に育っていたパクチーとルッコラなどのリーフ類、中央部のビーツがなくなって、空いたところには、秋以降に収穫できる「ミニキュウリ」を植えることにしました。キュウリ栽培というと、広いスペースが必要で手入れが大変なイメージがあるけれど、果たして栽培初心者の私の手に負えるのだろうか。そんな私の心配を察した友人農家さん曰く、「ミニキュウリは、それほど背が高くならない品種で、つるを伸ばしたい方向にコントロールしたり枝垂れさせたりできる」と教えてくれました。

これまでは買ってくるものと思い込んでいた野菜が、ベランダで日々姿を変えて立派に育っていく、そのたくましい姿に励まされたり、様子が気になってついついベランダに出てしまう「ベジトラグ」のある暮らし。まだまだ手探りの栽培が続きそうですが、収穫した貴重な野菜たちを美味しくいただくレシピ考案チャレンジは始まったばかり。また次のシーズンもお楽しみに!
Credit
記事協力 / 青山ガーデン

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