ラベンダー香るハーブレモネード【ルーシーのおいしい暮らし】
まだまだ夏の太陽は元気いっぱい! 庭では雑草たちとイタチごっこの日々。そろそろ夏のお疲れが出てくる頃では? そんな残暑の疲労回復におすすめの、甘い香りのラベンダーと、すっきり清涼感のあるローズマリーで作るレモネードはいかがでしょう? 甘く柔らかな香りでアロマセラピーの元祖ともいわれるハーブ「ラベンダー」を主役に、北海道富良野で栽培されている「真正ラベンダー」と「ラバンジン」の効能を交えながら、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに「ラベンダー香るハーブレモネード」を教えていただきます。
目次
「ラベンダー畑」への招待状
イギリス好きには特別なハーブ「ラベンダー」。イギリスでは古くから薬用ハーブとして利用され、王室とも深い関係にあります。特にヴィクトリア女王はラベンダー好きで知られています。宮殿にはラベンダーを飾り、ラベンダー入浴をして、リネンの仕上げにはラベンダーオイルやラベンダーウォーターを使わせていたそう。とにかくラベンダー! ラベンダー! ラベンダー! 女王を虜にする魅力的な植物ラベンダー、もちろん私もラベンダー信者です。
私の心の手帳に描いている「行きたい所ウィッシュリスト」。そこに、ずっと入ったままだった、憧れの土地「北海道 富良野」。なかなか「ラベンダーの神様」からお声がかからずでしたが、先日ついにお呼ばれされて(ラベンダーの神様から)、夏の北海道へと導かれました。とはいえ、北海道でラベンダーの見頃は7月下旬まで。間に合うかしら? と淡い期待を胸に、8月上旬に富良野にある「ファーム富田」を訪れました。
案の定、イングリッシュラベンダーは見頃を終えたばかり。乾燥して鮮やかさに欠け、所々刈り取られて、少し寂しげな情景でした。
しかし、がっくり感も束の間。「えっさほいさ」とラベンダーを収穫しているスタッフたちを発見。
息の合ったチームワークで、濃厚な香りを振りまきながら、ラベンダーをバッサバッサと刈り込み進んでいきます。花の見頃を過ぎてしまったおかげで、この収穫風景を楽しめたので、めでたしめでたし!
満開のラバンジン
一方で、遅咲きの品種「ラバンジン」は見頃を迎えていました。一面のラベンダー畑は、やはり圧巻。いい香りで心もフワフワ。ふと、川向こう(黄泉の国)って、こんな感じかしら? と想像してしまいました。
ラバンジン系のラベンダーは、イングリッシュラベンダー系よりも大きく成長するのが特徴。大株で花をたくさんつけるので、精油の収油率が高く、石けんや洗剤などの香りづけなど、商業的にも多く使われています。
ラベンダーの蒸留
収穫の時期なので、敷地内の蒸留所は大忙し。精油の採取には数種類の方法がありますが、ラベンダー精油は水蒸気蒸留法という方法で作られています。
大きな釜に刈り取ったラベンダーをギュウギュウに詰め込み、蒸気を通して精油成分を揮発させます。揮発した精油成分はラベンダーの中を通り抜けた蒸気と一緒に、冷却槽で冷やされ、蒸留水と混ざった状態で出てきます。それを油水分離槽で精油と蒸留水に分けていくのです。その際の副産物が「芳香蒸留水」ラベンダーウォーターです。
蒸留所のまわりには、芳香成分が含まれる蒸気が吹き出し、むせ返るほどの濃厚なラベンダーの香り。ついつい夢見心地、ここは川向こう(黄泉の国)かと、またまた勘違い(2回目)。こんなにラベンダーの香りに包まれたことないんですもの。ついついハイになっちゃう(照。あぁ、なんて幸せ。
こうして抽出されるラベンダー精油は、1kgのラベンダーから6〜8ml、1株のラベンダーから1.2〜1.5mlほどしか採れないそうです。とんでもなくありがたい、自然の恵みです。
今回、ファーム富田で収穫され蒸留された「おかむらさき」と「ラバンジン」の精油を購入しました。ラベンダーの記事は幾度となくご紹介していますが、みなさんの耳にタコができてもおすすめしたい! だって、ラベンダーは「アロマ界のクィーン」、全人類、そして悩める乙女の頼もしい味方。懲りずにお付き合いください。
「イングリッシュラベンダー(真正ラベンダー)」と「ラバンジン」、苗の見た目が異なりますが、じつは精油の効能にも違いがあります。
ラベンダーといえば、真正ラベンダー
ファーム富田で栽培されている「おかむらさき」は真正ラベンダーの一種。一般的に「ラベンダー」というと、だいたいこの真正ラベンダーのこと。学名ではLavandula officinalisやLavandula angustifoliaとも呼ばれます。officinalisとは「薬用の」という意味。古代より薬草として用いられたことに由来します。
真正ラベンダーは「鎮静」「抗痙攣」「鎮痛」作用を持つ、酢酸リナリルとリナロールが主成分のため、リラックスならお任せあれ! 難しい成分名はさておき、芳香成分が300以上も含まれているため用途が広い万能選手。心を落ち着け、ストレスを和らげる作用が高く、不眠にも優れた効能を発揮します。頭痛や月経痛、肩こりなどの痛みの緩和にも効果的。皮膚の炎症を鎮め再生を早めてくれるので、肌トラブルにも役立ちます。不調を感じたら、とりあえずラベンダー! 家庭の救急薬となる頼もしい精油です。
宿泊したホテルにアロマバーナーが備え付けられていたので、購入した「おかむらさき」で、さっそく芳香浴。意識を失ったようにバタンキュー。旅の心地よい疲れと、ラベンダーのリラックス効果でぐっすり快眠。翌日に備えることができました。いい香りで一日を終えるって、とっても幸せ!
甘すぎないハンサム系ラベンダー、ラバンジン
ラバンジンは真正ラベンダーとスパイクラベンダーの交配雑種。学名ではLavandula hybrida、Lavandula ×intermediaとも呼ばれます。真正ラベンダーに比べると、リラックス効果は弱め。脳や神経を刺激して頭をスッキリさせる働きをもつカンファー成分(ローズマリーにも含まれるスーッとした香り)が多く含まれるため、シャープでくっきりとした香りです。リラックスよりもリフレッシュなイメージ! ラバンジンはフローラルな甘さが少なめなので、甘い香りが苦手な方もお気に召すかもしれません。
頭痛、筋肉痛、肩こりなど、痛みのケアには真正ラベンダー以上の効果が期待できます。アロマトリートメントでは、「精神ケア」よりも「身体ケア」向き。鼻づまり、風邪、インフルエンザ、気管支炎、咳などの呼吸器系トラブルに役立つ精油です。新鮮な風を身体全体に通して、エネルギーを爽やかにしてくれるイメージです。
※妊婦、てんかんの方は使用を控えること。
ルーシーの「ラベンダー香るローズマリーレモネード」
まだまだ日中は暑い日が続きます。少しの庭仕事も汗だくの日々。そんなときにおすすめしたいのが、このレモネード。「ラベンダー+ローズマリー+レモン」の方程式は、酸味と甘み、そして香りのバランスがパーフェクトなコンビネーション。オシャレな大人の夕涼みには、お好みでウォッカをプラス。バーベキューやホームパーティーにも大活躍なレシピです。
■ 材料
- 水 700cc
- グラニュー糖 120g
- ドライラベンダー (食用表示があるもの) 大さじ1
- レモン汁 3個分(約160cc)
- ローズマリー 10cmほど
- 飾り用のレモンスライスやローズマリー、ミントなど
- (お好みでウォッカ 適量)
■ 作り方
- 小鍋に水200ccを沸騰させて火からおろし、グラニュー糖を入れて溶かす。
- ドライラベンダー、ローズマリーを①に加えて混ぜ、1時間ほどそのまま冷まして「ラベンダー&ローズマリーシロップ」を作る。
- ピッチャーなどに、絞ったレモン汁、漉した②のシロップ、残りの水500ccを加えてよく混ぜる。※ウォッカを加える場合はこのタイミングで加える。
- 冷蔵庫でよく冷やしてグラスに注ぎ、レモンスライス、ローズマリーなどを飾って完成!
水分不足の身体にスーッと沁みわたる甘みと酸味。心も身体もリフレッシュできる一杯です。キンキンに冷やして召し上がれ! ラベンダーは多く使うと、おばあちゃんの香水みたいな香りになるのでご用心! ほんのり香るくらいがいい塩梅。
※料理やハーブティーなどの食用に使われるのは、イングリッシュラベンダーが主流。
英語にこんな言葉があります。”When life gives you lemons, make lemonade.” 直訳すると「人生がアンタにレモンを渡してきたら、レモネードを作っちゃいなさい!」。文中のレモンは困難や嫌な出来事の例え。つまりは、「アンタの考え方次第で、どうにでも変えられるんだからね!」って意味。酸味があるから甘みが引き立つの。スイート&サワー、何事もバランスが大切。さぁ、とりあえずは、このレモネードでひと休みしましょ。
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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