夏らしい甘酸っぱさがたまらない、パッションフルーツムース【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】

イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんが、夏になると思い出すのは、ひんやりして甘酸っぱい、パンチの効いたパッションフルーツのムース。イギリスで修行していた頃に何度となく作って、磨きをかけた一品です。修行時代の苦労話を伺いながら、絶品のムースを教えていただきます。
イギリスの短い夏を彩る南国フルーツ

近年は梅雨明けが異例の早さで、夏が長いですね! 夏が大好きな私でも、さすがに疲れてしまいそう……。疲れた時には甘いものが、そして、暑い時には冷たくてさっぱりしたものが食べたくなりますが、今回は、その2つの願いが一度に叶う、パッションフルーツのお菓子をご紹介します。

私がイギリス修行時代にコッツウォルズ地方で過ごした夏はとても短く、8月にはもう秋めいていました。そんな夏の短いイギリスですが、その間はやはり夏らしいお菓子が人気で、中でも特に人気が高かったのがパッションフルーツを使ったお菓子です。パッションフルーツは、華やかな香りと甘酸っぱさが魅力の南国の果物ですが、ムースはもちろん、タルトにしたり、メレンゲと合わせたり、意外かもしれませんが、イギリスではデザートの材料として人気があって、よく登場します。普段は定番のお菓子を好むイギリス人ですが、夏の間や特別なシチュエーションではエキゾチックな気分を味わいたい時もあるのかな、と思ったのを覚えています。

パッションフルーツは、じつはガーデニングでもおなじみのトケイソウの仲間で、和名ではクダモノトケイソウといいます。ブラジルなど南米を原産とする常緑のつる性植物で、熱帯から亜熱帯で育ちます。日本でも紫色の実の品種が暖かい地方で栽培されるようになって、最近ではスーパーでも見かけるようになりましたね。パッションフルーツはゴーヤのように、グリーンカーテン用に栽培するのにも向いているそうですよ。
難題だらけのムース作り

今回は、パッションフルーツのムースをご紹介したいと思いますが、じつは、ムース作りにはとにかく苦い思い出がたくさんあります。私が修行時代を送ったコッツウォルズ地方の田舎のホテルは、普段はそれほど多くの宿泊客がいることはなかったのですが、夏は人気で、一度に100人を超えるお客様を迎えることもありました。以前の記事でも触れましたが、何せ、当時はほぼ一人でお菓子を作っていたので、信じられないほどの量の仕込みをすることに。一度に何リットルもの生クリームを一人で泡立てるのも初めての経験でした。そしてまた、イギリスの生クリームは日本のものと性質が違って、扱いがとても難しいのです。突然泡立ち、そのポイントを過ぎると急にボソボソに。最初は本当に失敗ばかりでした。
さらに、レシピも、先輩シェフは生クリームとピューレの分量の比を教えてくれただけで、砂糖に関しては味見をして決めるという、日本人の私からしたら、信じられないほど大雑把なもの! そんな教わり方なので、仕込む量が足りなかったり、分離してしまったり……。家に帰って、失敗が悔しくて泣いたことが何度もありました。

無我夢中で過ごし、2〜3カ月経った頃、やっと、このままじゃいけない! と、自分でレシピをグラム単位で全部書き直し、物によってはレシピを変えて、オリジナルで作り直しました。仕込みのスケジュールもしっかり書いて管理するシステムを作ると、だんだんと失敗も減って、泣くこともなくなりました。そう、今ではもう笑い話ですが、そこまで達するのに数カ月かかったのです……。当時、近くにいて、私の気持ちを支えてくれた語学留学時代の友人には、感謝しかありません。

そんな苦い思い出があるムースですが、このパッションフルーツのムースはとっても美味しくて、味見をするたびに幸せを感じていました。
パッションフルーツのピューレは、製菓材料店などで冷凍のものが手に入ります。
では、作っていきましょう!
パッションフルーツムースの作り方
材料(6~8人分)

- 生クリーム……200ml
- グラニュー糖……80g
- 板ゼラチン……1.5枚(1枚約2.5gのもので、4g相当。粉ゼラチン4gで代用可)
- パッションフルーツピューレ……130ml (冷凍のものは解凍する)
- お好みで、パッションフルーツ適量
*板ゼラチンは同量の粉末ゼラチンで代用できますが、仕上がりが少し変わってきます。板ゼラチンのほうが舌触りが滑らかで柔らかく、透明感のある仕上がりになるので、おすすめです。
作り方
- まずは、ゼラチンをたっぷりの氷水でふやかす。
- 生クリームにグラニュー糖を入れ、ボウルの底を氷水に当てながら、しっかりと泡立てる。
- パッションフルーツピューレを鍋に入れて火にかけ、ふつふつと沸いてきたら火を止める。そこに、水気をギュッと絞った板ゼラチンを入れ、溶かす。
- 板ゼラチンが溶けたらボウルに移し、ボウルの底を氷水に当てて冷ます。
*冷えすぎるとゼラチンが固まってしまうので、かき混ぜながら冷やします。
- パッションフルーツピューレが冷めたら、2の生クリームの1/3くらいをピューレに入れて、よく混ぜる。
- 5を残りの生クリームに混ぜる。均一になれば大丈夫。
- お好きな型に入れ、冷蔵庫で半日ほど冷やし、固まったら完成。
お好みでパッションフルーツを上にのせていただきます。

Credit

写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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