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リネンとは? 暑さをやわらげる高性能な天然素材「リネン」の特徴を解説

リネンとは? 暑さをやわらげる高性能な天然素材「リネン」の特徴を解説

Photo Studio/Shutterstock.com

節電と熱中症リスクのはざまで、あたふたと始まった2022年の夏。今後も例年より暑さが厳しいことが予想されています。暑さ対策として今、注目されているのがリネン。青紫色の愛らしい花を咲かせるフラックスという植物を原料とするリネンは、繊維構造そのものに、風を通し熱を逃がす優れた機能があります。リネンの知られざる機能と、簡単にシワが取れるお手入れ方法もご紹介。

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リネンとは? やわらかな肌触りは麻のなかでも「リネン」だけの特徴

リネン
Switlana Sonyashna/Shutterstock.com

リネンは「麻」と呼ばれる布の仲間の一種です。よく麻というとチクチクゴワゴワする、というイメージを持たれることがありますが、それはリネン以外の麻布の特徴。麻は本来、植物の葉脈や靭皮(じんぴ)を原料にした繊維の総称で、「リネン」や「ラミー」「ヘンプ」など20種類以上の麻があります。その違いは、原料となっている植物。例えば「リネン」は一年草のフラックス、「ラミー」はカラムシというイラクサの仲間、「ヘンプ」は大麻を原料としています。チクチクゴワゴワといった感触は使われている植物の繊維構造によるもので、リネンは麻のなかでも唯一、チクチクしません。逆に、やわらかくなめらかで肌にやさしいため、古くから下着やタオル、寝具など、直接肌に触れるものに用いられてきました。ちなみに、ランジェリーの語源はリネンに由来します。ですから、ソフトな肌触りの麻を手に入れたいときは、それが「リネン」であるかどうかを確かめる必要があります。やわらかな肌触りは、麻のなかでも「リネン」だけがもつ特徴なのです。

リネンのひんやり冷たい感触の秘密

リネン
Breslavtsev Oleg/Shutterstock.com

近年、「冷感敷きパッド」や「ひんやり寝具」など、冷たさを感じる寝具が夏に人気です。あの冷たさの仕組み、不思議ですよね? ひんやりの秘密は「接触冷感」という現象で、高温から低温に移動する熱伝導性により、体温を生地から放出させる(逃す)ことによって、ひんやりと感じるのです。リネンはこの「接触冷感」に優れた天然素材で、同じ天然素材でも綿やウールには接触冷感効果はありません。その違いは、それぞれの繊維構造にあります。綿やウールは「クリンプ」という構造で、繊維が縮れて繊維同士が絡まっているため、熱がそこで保持されるのです。

リネン
長くまっすぐなリネンの茎から繊維を取り出す。M G White/Shutterstock.com

一方、リネンは繊維が一方向にまっすぐ揃っており、顕微鏡で見ると繊維1本の中にたくさんの空洞がある構造になっています。そのため熱を遮らず、風通しのよさも手伝ってひんやりとした感触が得られるのです。この繊維構造こそリネンの最大の特徴で、接触冷感のほかにもたくさんの効果があります。

リネンは水をよく吸い、風を通してすぐ乾く高性能な天然素材

リネン
Kryvenok Anastasiia/shutterstock.com

ある研究では、リネンの吸水性はコットンの約4倍。さらに、吸った水分が乾く速度は約2倍というデータがあります。素早く水を吸い取って、すぐに乾く性質も、上記のようなリネンのまっすぐな繊維構造によるものです。水分や空気の通りがよく、水を吸っても繊維の内部に水分をいつまでも残さないため、いつもサラッとした感触が得られ、雑菌の繁殖も少なく、清潔を保つことができます。

リネンのシーツ、タオルはひんやりサラサラ感触で人気

リネン
Breslavtsev Oleg/Shutterstock.com

こうした特徴から、暑さに向けてリネンの寝具やタオルに注目が集まっています。リネンのシーツは体温で繊維が温まりにくく、寝返りをうつたびに接触冷感によるヒンヤリ感が皮膚に感じられ、安らかな眠りをサポートしてくれます。寝汗をかいてもすぐに乾き、サラサラと常に快適です。また、リネンのタオルは驚くほど吸水性がよく、肌をこすらなくても、布を当てるだけで水分を吸い取ってくれるため、アトピーなど敏感な肌の人にもおすすめです。

リネンのカーテンは汚れにくく虫がつかない

リネン
Photo Studio/Shutterstock.com

リネンはインテリアでも用いられますが、近年人気急上昇中なのがリネンのカーテンです。コロナ禍以降、おうち時間が増えてインテリアにこだわる人が多くなったことが理由の一つですが、リネンは光に透け豊かな表情を見せてくれる繊維のシルエットが好まれ、人気を集めています。しかし、リネンのカーテンの実力は、見た目だけにとどまりません。リネンの繊維は摩擦耐電圧が低く、静電気による生地のまとわりつきや、ほこりの吸着が起きにくい性質があります。さらに、虫を寄せ付けないセルロースという成分でできているので、いつも清潔で快適。前述の優れた吸水発散性によって空気中の湿気をコントロールして部屋の心地よさを保ってくれる効果もあります。ヨーロッパなどではお皿やグラスを拭くキッチンクロスも、こうした特徴を生かしてリネンが定番です。

使うほどに風合いが増すから家事やガーデニングでも重宝

リネン

リネンの繊維はペクチンという成分で覆われていて、中まで汚れが染み込みにくい性質があります。ですから、キッチンやガーデニングでもリネン製のエプロンを愛用する人も少なくありません。着け心地が軽やかで動きやすく、洗ってもすぐに乾きます。そして、リネンのいいところは、経年変化が楽しめるところです。色が褪せても、くたびれた感じがせずに風合いが増し、むしろ新品よりも素敵に見えます。使えば使うほど肌なじみがよくなり、家事のよきパートナーとなってくれるでしょう。

リネンは夏だけじゃなく冬も大活躍!

リネン
Kostikova Natalia/Shutterstock.com

ひんやりサラリとしたリネンは、夏の素材として扱われることが多いのですが、じつは保温性にも優れています。リネンの特徴として先にあげた「接触冷感」と相反するようですが、前述の通り、リネンの繊維のなかにはたくさんの空洞があります。リネンの上にもう一枚別の布をかけると、この空洞が密閉状態になり、体温が保持されます。ですから、冬はウールなどと一緒にリネンを使うことで、蒸れずに保温性を得ることができます。

リネンのシワをあっという間に伸ばすお手入れ方法

リネン
Bogdan Sonjachnyj/Shutterstock.com

風合いがよく心地よいリネンはブラウスやワンピースでも人気ですが、シワが気になるという人は少なくありません。しかし、これもリネンのまっすぐな繊維の特性により、すぐに戻すことができます。リネンのシワは、水を霧吹きで多めに吹きかけ、形を整えるようにしておくと、見る間に乾きながら魔法のように消えていきます。ですから、必ずしもアイロンを必要としませんが、もしアイロンをかける場合は、たっぷりと霧吹きで濡らすか、半乾きの状態でかけると、生地に見事な張りと光沢が生まれます。この際、水の代わりに香りをつけたリネンウォーターを使うのもおすすめです。湿った布地にアイロンをかけると湯気がふわっと立ち上りますが、リネンウォーターは、この時のアロマ効果をねらって生まれました。アイロンの時間をリラックスタイムとして楽しみましょう。

リネンに柔軟剤と乾燥機はNG

リネンは吸水発散性が大きな特徴ですが、柔軟剤はその性質を低下させ、使用感を変えてしまうので、避けたほうが無難です。また、すぐ乾くので、わざわざ乾燥機を使う必要もありません。乾燥機を使うと、むしろ摩擦で繊維が傷むので避けたほうがいいでしょう。ですから、洗濯は水と普通洗剤だけで十分。余計な洗剤代や電気代もかからず、経済的です。もし、香りを付けたい場合には、リネンウォーターをおすすめします。

リネンはSDGsで環境負荷の少ない素材

リネン原料フラックスの花
NsdPower/Shutterstock.com

リネンの原料は一年草のフラックス(亜麻)ですが、フラックスは病害虫に強く自然の降雨で十分に育つため、水や農薬の使用量が少なくて済みます。肥料もほとんど必要とせず、土中の窒素分もあまり消費しないで育つうえに、フラックスの長い根は土壌環境を最適化し、次の作物の収穫量を20〜30%あげる効果もあります。生育過程では大気中のCO2を1ヘクタールで年間3.7トン吸収し、温室効果ガスの削減にも貢献しています。リネンを選び、暮らしの中に取り入れることは、SDGsに貢献することにもなるのです。

リネンの花言葉は「感謝」。プレゼントにも最適

リナム・ウジタティッシマム
Davydele/Shutterstock.com

使い心地がよく、環境にもやさしいリネン。原料となるフラックスの学名Linum Usitatissimum(リナム・ウジタティッシマム)は、「最も役に立つ繊維亜麻」という意味です。人類最古の植物繊維リネンは、この暑い夏にもきっと役に立ってくれるはずです。リネンの花言葉「感謝」に思いをのせて、エプロンやタオルなど日常使いできるものをプレゼントしても喜ばれるでしょう。

『小さな庭と花暮らし「日々の暮らしに寄り添うリネン」』の記事もご覧ください。

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協力・資料提供/株式会社エヌ・ビー・アール

Credit

文/3and garden
ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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