フランスやベルギーなどの亜寒帯地域に育つ、フラックスというアマ科の植物から作られるリネン生地。天然の植物繊維は、丈夫で長持ちするうえ、使い込むほどに風合いが増し、肌馴染みがよくなるのが特徴です。また、吸水性や速乾性にも優れ、衣食住においてとても重宝します。今回は、神奈川県横浜で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんが日常で愛用しているリネン製品と、その魅力について教えていただきます。リネンの製品は、ガーデナーにも一年中寄り添ってくれる、おすすめのアイテムです。
目次
リネンの衣類で快適に<衣>
リネンのナチュラルな素材感が好きで、季節を問わず身につけていますが、特に汗ばむ季節は、リネンの衣類が最適。ニットやシャツ、スカート、ワンピース、ワイドパンツなど、軽くてさらりとした肌触りは、他のどの素材よりも涼やかです。
お出かけには、気に入りのブランドものを愛用していますが、ほぼ毎日、部屋着として身につけているワイドパンツは、洋裁の得意な母が、専用におこしてくれた型紙と、好みのリネン生地で作ってくれるオーダーメイドです。部屋着なので、ウエストはゴムの簡単仕上げですが、裾幅や裾丈までフィットして、とにかく動きやすい。この快適さは、既製品では物足りなく感じてしまうほどです。
長年愛用しているものは、驚くほど柔らかい風合いになりましたが、さすがに色褪せて見た目が悪くなり…。昨夏は、母にねだって3枚新調してもらいました。何だかもったいない気もしますが、またクタクタになるまで働いてもらおうと思っています。
そして、蒸し暑くなるこれからの季節、ガーデニングに欠かせないのが、リネンの長袖シャツ。吸水性と通気性がよいので、涼しく作業できます。
ガーデニング用には、UNIQLOやMUJIのシャツが一番。カラーやサイズが豊富なので、選ぶ楽しみと、何より、手頃なお値段が嬉しい。どんなに汗をかいても汚れてもジャブジャブお洗濯できるし、買い替えも気兼ねなく。本当に重宝しています。
リネンで家事や食事を楽しく<食>
吸水性と速乾性に優れているリネンは、台所仕事や食事の場面でも大活躍。
例えば、食器を拭いたり手を拭いたり頻繁に取り替えるキッチンクロスは、濡れてもすぐに乾くのでとても衛生的。すぐ手に届くキッチンカウンターの上に、カゴに入れて常備しています。好みの色柄を揃えておけば何となく気分も上がり、ちょっと億劫な台所仕事も楽しくなります。
やや小さめのクロスは、ハンカチ代わりにしたり、お弁当を包んだり、何かと便利。ナチュラルなリネンの風合いは、竹やアケビ、山ブドウの天然素材と相性がよいので、根菜類を入れている竹カゴや、アケビの手提げバッグに掛けて楽しんでいます。竹カゴには季節感のある色柄を、バッグは洋服との色合いを意識して。
さもないことですが、こんなふうにちょっと意識して身の回りのリネンを選ぶと、より愛着も湧いてきます。
また、大きめのクロスは、ピクニックの敷物やガーデンテーブルに使用します。雨ざらしのガーデンテーブルは、土汚れやホコリが気になるもの。水拭きした後にリネンクロスを掛けると、清潔で見た目もお洒落に。そのうえ、どんな食事も、まるでレストランのように美味しそうに見えます。
木漏れ日のガーデンテーブルで食事をしたり、季節の手仕事をするひとときは、このうえない癒やしです。
そしてもう一つ、台所仕事に欠かせないのがリネンエプロン。主婦歴30年以上のわたしにとって、もはや肌身離せないものです。これまで穴があくまで使い込んだリネンエプロンは数知れず。
それでも毎年、子供たちが母の日にリネンエプロンをプレゼントしてくれるので、常に5着以上、家事室の壁に掛けています。こうすると、サッと手に取りやすく、たたむ手間も省けてシワにもなりません。
毎朝、着替えを済ませてエプロンをキュッと締めるのが、一日の始まりのルーティーン。自然とスイッチが入ります。
リネンエプロンの使い勝手のよさは、つい付着してしまう調味料や油汚れの落ちやすさと、身に付けたまま水で洗ってもすぐに乾くところ。
また、使い込むほど柔らかな風合いになり、軽やかに身体にフィットします。春夏の着け心地のよさはもちろん、秋冬の厚手のウールセーターに合わせても重量感がなく、意外と保温性にも優れているようで、腰回りが暖かく感じます。オールシーズン快適に使用できるのも魅力の一つですね。
さらに、ここ数年は、さまざまなブランドのリネンエプロンを目にするように。その色柄、デザインも豊富になり、選ぶ楽しみも増えました。主に、サロンエプロンを愛用していますが、その日の洋服とコーディネートしたり、来客時には、ワンピース風のエプロンドレスでよそゆきに。このデザインなら、お客さまの前でも違和感なく着用できます。また時には、エプロンドレスで近所へ買い物に行くことも。エプロンでお洒落も楽しめるなんて、嬉しい限りです。
インテリアとして楽しむリネン<住>
リネン生地は、厚手や薄手、織りの緻密さによって、見た目や風合いが異なります。
厚手のものは、丈夫で程よい柔らかさ。その特徴を生かしたクッションカバーやチェアーマット、ブランケットをリビング&ダイニングで愛用しています。クッションやマットは、荷重や摩擦が気になるところですが、これまで一度も破れたこともなく、厚手のリネン特有のシャリ感が心地よく感じます。
一方、軽やかな透け感が魅力の薄手のものは、キッチンの勝手口や家事室の小窓のカーテン代わりに。どちらも、生地屋さんの切り売りで購入して手作りしました。あえて、裾の部分は切れ端のまま、ナチュラルな風合いを楽しんでいます。
また、薄手のリネンの透け感は、陽射しを和らげ、やんわりと目隠しにも。陽に透けるシルエットが何とも美しく、ふと目にするだけで心が和みます。
こんなふうに、織り方で生地の表情も変わるリネン。インテリアとしても実用性と装飾性を兼ね備えた暮らしの必需品です。
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Credit
写真&文 / 前田満見
まえだ・まみ/高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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