まだまだ奥が深い、イギリス菓子の世界。今回は、家庭で作るお菓子の定番、ロックケーキの魅力に迫ります。「ロック」なケーキとは、さて、一体どんなケーキでしょう。『ハリーポッター』の物語にたびたび登場するので、食べてみたい、と思った方もいるかもしれませんね。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに、楽しいお話とともに教えていただきます。

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岩みたいなゴツゴツケーキ

ロックケーキ
ゴツゴツ、ラフな感じがいかにもイギリスっぽいお菓子。David Pimborough/Shutterstock.com

今回は、ロックケーキというイギリス菓子をご紹介したいと思います。ロックケーキ。岩のケーキ? このケーキがそう呼ばれるようになったのは、表面が岩みたいにゴツゴツしているからのようです。

『ハリーポッター』の物語では、ハグリッドがハリーたちに、岩のように硬いお手製ロックケーキをふるまっていましたが、本来は硬いものではありません。ふかふかで、とっても美味しいもの。ドライフルーツの入った、少し硬めの、ゴツゴツしたスコーンのような感じです。

型で抜くこともないし、スコーンのように、膨らむか膨らまないか気をもむこともないので、もっと簡単に、そして、気軽に作れるお菓子です。なにせ、岩のような見た目に作ればいいのですから! イギリスでは、子供が初めて焼くお菓子はこのロックケーキ、とよく言われます。味のほうはというと、ジャムをつけないで食べるものなので、スコーンより少し甘め。ティールームなどでは、軽く温めて、バターを添えて出されます。

ロックケーキ

このロックケーキは、食糧難だった第二次世界大戦中にイギリス政府が大々的に宣伝したことで、イギリス中に広まりました。従来のケーキより砂糖も卵も少ない分量で済み、シンプルに作れるというのが、宣伝の理由だったようです。当時はオートミール入りで、よりゴツゴツ感のある「ロック」ケーキだったのでしょうね。

材料はスコーンに似ていて、そこにドライフルーツとスパイスを混ぜて焼きます。あまり知られていないかもしれませんが、イギリスの焼き菓子にはスパイスがたくさん入ったものが結構あって、このロックケーキもその一つ。ロックケーキに使う「ミックススパイス(Mixed Spice)」は、シナモンやナツメグ、クローブ、コリアンダー、ジンジャーなどを混ぜたスパイスなのですが、その香りを、私は「幸せの香り」と呼んでいます。オーブンからその香りが漂ってくるだけで、幸せいっぱいの気分。ロックケーキが焼きあがって、ミルクティーを入れたら、もう最高に幸せです。

ベティーズのファットラスカル

ベティーズのファットラスカル
出っ歯の顔がおちゃめな、ファットラスカル。Clare Louise Jackson/Shutterstock.com

ヨークシャー地方には似たようなお菓子で、ファットラスカルというものがあります。このお菓子が有名になったのは、ヨークシャー州の避寒地ハロゲイトに本店を構える老舗ティールーム、ベティーズ(Bettys)の影響が大きいでしょう。日本人にも知られるこのティールームの一押し商品が、「太っちょのいたずらっ子」という意味のお菓子、ファットラスカルなのです。ニヒヒと笑ったような、いたずらっ子の顔をドライフルーツとアーモンドで描く、ロックケーキに似たこのお菓子は大人気。今では、ベティーズが「ファットラスカル」を商標登録しているそうです。

ハロゲイトにあるベティーズ本店
イングランド中部の美しい町、ハロゲイトにあるベティーズ本店。cktravels.com/Shutterstock.com

じつは、ベティーズは、私が人生の転機を迎えるきっかけとなったティールームです。ヨークシャー地方には何度か訪れている私ですが、初めて行ったのは20年くらい前のこと(驚き!)。当時、日本で習っていた、シュガークラフト教室のツアーに参加して訪れました。今となっては信じがたいことですが、その頃の私は、紅茶が嫌いでした。正確にいうと、紅茶が嫌いだと、信じ込んでいました。しかし、教室の仲間とベティーズでアフタヌーンティーをしようということになり、そのとき初めて、イギリスでちゃんとした紅茶をいただいたのです。

ベティーズのティールーム
ベティーズのティールームはお茶を楽しむお客さんでいっぱい。Alastair Wallace/Shutterstock.com

その紅茶は、甘みとコクがあってとっても美味しく、さらに、そのアフタヌーンティーに出てきたお菓子も美味しくて、私は深く感動しました。それが、私のイギリス菓子をめぐる旅の出発点。それからどんどん、興味が湧いていったというわけです。その後、縁あって、東京の英国風ティールームで働き、後にイギリスのホテルでも働くことに。そんなわけで、私の人生の中で、ベティーズはとっても大切なティールームなのです。

と、話はそれましたが、今回はそんな、ほっこりするロックケーキを作っていきましょう! ぜひ出来立てを召し上がってみてくださいね!

ロックケーキの作り方

ロックケーキの作り方

材料(12個分)

  • 薄力粉……200g
  • ベーキングパウダー……15g
  • 無塩バター……100g(約1cm角の角切り)
  • きび砂糖……75g
  • レーズン……50g
  • カレンツ……30g(小粒のレーズン)
  • シナモン……約小さじ1
  • ミックススパイス*……適量
  • 卵……1個
  • 牛乳……大さじ1
  • カソナード(フランスの茶色い砂糖、オプションで。なくてもよい)
  • ミックススパイス
    日本では、英国で売られている製菓用ミックススパイス(Mixed Spice)はあいにく入手が難しく、手に入るものの中では、米国の「パンプキンパイ・スパイス」が近いように思います。
    もしくは、下記のスパイスを混ぜて、ご自分で作ることもできます。スパイスの配分を好きなにアレンジしても結構です。

〈お手製ミックススパイス〉

  • シナモン、コリアンダー……各大さじ1
  • ジンジャー、クローブ……各小さじ1
  • キャラウェイシード、ナツメグ……各小さじ1/2

作り方

  1. オーブンは200℃に予熱する。
  2. ボウルに薄力粉とベーキングパウダーを入れ、そこに角切りにしたバターを入れて、粉をまぶす。全体的にまぶしたら、両手を擦り合わせるようにして、バターと粉を混ぜる。角切りのバターがなくなり、サラサラの粉のようになったらOK。
    ロックケーキの作り方 ロックケーキの作り方
    バターがよく混ざった状態。
  3. ドライフルーツと砂糖、スパイス類を加えて、全体を混ぜる。
    ロックケーキの作り方
    砂糖とドライフルーツを加えて。
    ロックケーキの作り方
    スパイス類も入った状態。全てさっくりと混ぜる。
  4. 溶いた卵と牛乳を入れ、ゴムベラでさっくりと混ぜる。
    ロックケーキの作り方
  5. 生地ができたら、オーブンシートを敷いた天板に、手で丸くのせていく(スプーン2本を使ってもよい)。カソナードをかけたい時は、上からパラパラ降りかける。
    ロックケーキの作り方
  6. 200℃のオーブンで15分くらい焼く。
    ロックケーキの作り方
    焼き上がり。
ロックケーキ

ぜひ焼きたてを食べて、幸せの香りを感じてみてくださいね!

しばらく置いた場合は、トースターなどで少し温めると美味しくいただけます。

Credit

写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA

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