キャラウェイシードの香りを楽しむシードケーキ【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
イギリスのお菓子といえば、スコーンとショートブレッドが有名。でも、田舎のティールームを巡れば、素朴で美味しい、いろいろな焼き菓子に出会えます。シードケーキもその一つ。青リンゴのような、独特の爽やかな香りを持つキャラウェイシードを使ったお菓子の作り方を、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
爽やかスパイス、キャラウェイシード
シードケーキと聞いてどんなケーキか分かる方は、きっとかなりのイギリス通。このシードケーキには、キャラウェイシードというスパイスを使います。だから「シード」ケーキなのですが、皆さん、このスパイスをご存じでしょうか。使ったことがある方は少ないのではないかな、と思います。
キャラウェイは、和名をヒメウイキョウという、セリ科の二年草です。そして、キャラウェイシードはそのシード(seed、タネ)ということになりますが、じつはこれ、種子ではなく果実なのだそう。ややこしいですね。
キャラウェイシードは、青リンゴのような甘さと、すっきりとした独特の清涼感のあるスパイスで、ヨーロッパでは昔から、お菓子や料理に使われてきました。ビスケットやケーキ、パン、肉料理やソーセージ、スープにザワークラウトなど、今も幅広く使われています。
我が家では子供たちが嫌がるので使いませんが(娘は味見して「ぶぇ〜〜!!」と、すごい顔をしていました)、私の大好きなスパイスです。主人も大好物で、このシードケーキをほとんど一人で食べてしまったくらいです。
このキャラウェイシードを使ったケーキとの出合いは、イギリスの地方を旅した時のこと。イギリスの田舎のお土産屋さんでは、その地方独特のお菓子や料理について書かれた、手頃な価格の小さな本が、必ずといっていいほど置いてあって、私は田舎を訪ねる度にどんなものがあるかチェックしていました。写真の小さなレシピ本も、そうして巡り合ったもの。どこで手に入れたのか忘れてしまいましたが、面白いなと気を引かれて手に取ったのだと思います。
この本には、ショートブレッドやスコーンはもちろん、チェルシーバンズやエクルスケーキ、オーツケーキなど、イギリスの農家で食べられている、伝統的なお菓子のレシピが載っていました。日本ではあまり知られていないものばかりで、シードケーキもその一つ。シードケーキってなんだろう? と、私は興味を持ちました。
本には、こう書いてありました。
シードケーキはかつて、豊作を祝って焼かれました。野に生えるキャラウェイの実は、布袋の上から叩いて取り出され、お菓子やパンに広く使われました。キャラウェイシードは消化によいと考えられています。
さっそく、レシピ通りに作ってみると、キャラウェイシードの爽やかで独特な風味がクセになるケーキでした。この本のレシピはブランデーなどを入れるものでしたが、ここでご紹介するのはもっとシンプルな、一般的なレシピです。他に、バリエーションとして、オレンジピールなどを入れることもあります。
では、この爽やかな陽気にふさわしいケーキを、一緒に作っていきましょう!
キャラウェイシードケーキの作り方
材料(パウンドケーキ型1本分 サイズ:21×8×6cm)
- 無塩バター……125g
- きび砂糖……125g
- 卵……2個
- 薄力粉……120g
- アーモンドパウダー……35g
- ベーキングパウダー……小さじ1.5
- キャラウェイシード……小さじ2
作り方
- オーブンを180℃に予熱する。型にオーブンシートを敷き詰める。
- 室温に戻したバターに砂糖を加え、白っぽくなるまでよく混ぜる。
- 白っぽくなったら、溶いた卵を少しずつ加えていく。
*1回目の卵がしっかり混ざってから次の卵を入れる。
卵全量が混ざったところ。 - 薄力粉、アーモンドパウダー、ベーキングパウダーの粉類をふるい入れて、さっくり混ぜる。
- 粉類が混ざりきる前にキャラウェイシードを入れ、さらにさっくり混ぜる。
生地の完成! - 用意しておいた型に流し入れる。お好みで、ブラウンシュガー(粗糖)を上にふりかける。
今回、私が使ったのは、〈デメララシュガー〉というイギリスでよく使われる砂糖です。
粒子が大きくてコクがあり、焼いても溶けずに粒のまま残るので、食感が楽しく仕上がります。〈デメララシュガー〉は残念ながら日本では手に入らないので、私は個人輸入しています。フランス産のブラウンシュガー〈カソナード〉で代用することもあり、こちらは輸入食材店や製菓食材店で入手できます。この仕上げはお好みなので、砂糖をかけずに焼いても大丈夫です。 - 180℃のオーブンで約40分焼く。
焼き上がり。
たっぷりの紅茶と一緒に召し上がれ!
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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