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今、免疫力アップの効果で注目されている有用植物のハーブ。ナチュラルに過ごすおうち時間の楽しみとしてもハーブを取り入れる人が増えています。ボタニカルショップのオーナーで園芸家の太田敦雄さんが、植物とのさまざまな関わりを通して、より健康で心地よい暮らしの実現を提案する連載【乙庭Styleのガーデンセラピー】。今回は、春先に悩む方も多い花粉症の予防・症状緩和を手助けしてくれるメディカルハーブの種類とハーブティーのおすすめブレンドについてご紹介します。

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花粉症対策をサポートするメディカルハーブティー

春先に向けて、スギ花粉の飛散量がニュースになったりと、毎年、花粉症に悩まされている方も多いと思います。今回は、健康増進のためにハーブを用いる分野である「メディカルハーブ」の観点から、花粉症の予防・症状緩和を手助けしてくれるメディカルハーブをご紹介します。

メディカルハーブティー

メディカルハーブは医薬品ではありませんが、植物が含む多様な成分が穏やかに心身に作用し、副作用も少ないのが特徴です。

メディカルハーブティー

あくまで治療は医療・医薬品の専門分野となりますが、現代では、近代医学とメディカルハーブなどの代替療法として、両者のよいところを取り入れて、よりよい治療に生かす「統合医療」という考え方も生まれています。おうちでできる花粉症対策のセルフケアとして参考になれば幸いです。

メディカルハーブティーも美味しく飲みましょう

健康増進のために飲むメディカルハーブティーではありますが、「美味しい」と思えないと続けにくいですよね。ハーブは作用が穏やかで成分も短時間で吸収・代謝されてしまうので、たまに飲むのではなく、一日数回ずつ、続けて飲むことで、より高く安定した効果が期待できます。

メディカルハーブティー

日常的に飲むとなると、直感的に「美味しくない」と思ってしまうものは続けにくいですし、楽しくないですよね。

次項以降、花粉症対策におすすめのメディカルハーブを数種ご紹介しますが、中には単体では味がはっきりしなかったり、イマイチなものもあります。

美味しく、続けて飲むために、「味もよく効果も期待できるハーブ」と「味はどうあれ効果が期待できるハーブ」を組み合わせて、好みの味のブレンドティーを作るのがおすすめです。

ハーブティーのブレンドや習慣化についての過去記事も、ぜひ参考にしてください。

メディカルハーブティー

美容と健康、そして美味しいをサポートするメディカルハーブティーライフ2 習慣化編【乙庭Styleのガーデンセラピー10】

では、花粉症対策に効果的なメディカルハーブを解説しましょう。

ネトル (Urtica dioica)
予防・体質改善のために

西洋イラクサとも呼ばれるシソ科の植物です。葉部を乾燥・粉砕したドライハーブの形で流通しています。

ネトル

ネトルは欧米の植物療法では古来からとても重要なハーブとして知られ、今でもドイツなどでは春先に起きるアレルギーや体調不良の予防のために「春季療法」として、ネトルなどのハーブティーを摂る習慣があります。

ネトルハーブティー

ネトルの含有成分は、豊富なフラボノイド、クロロフィル(葉緑素)、複数のビタミンやミネラル、葉酸など多岐にわたります。それらの複合的な作用として体の中の老廃物の排泄を促し、それによって血液が浄化され、体質改善を促します。花粉症やアトピー性皮膚炎といったアレルギー性疾患の予防に用いられます。花粉症対策としては、予防の目的で、スギ花粉が多く飛散し始めるより前、年末くらいからティーにして飲み始めるとよいでしょう。ネトル単体だとあまりはっきりしない味なので、カモミールやルイボスなど風味のよいハーブと組み合わせるのがおすすめです。

エキナセア (Echinacea angustifoliaE. purpureaE. pallida)
予防・免疫力向上のために

ガーデニング分野でも人気の宿根草の一つであるエキナセアは、北米原住民が最も大切にし、伝染病や毒蛇にかまれたとき、また風邪などに用いたことでも知られるハーブです。

エキナセア

20世紀中盤以降、ドイツなどで科学的研究が進み、今日では「免疫力を高めるハーブ」として広く知られています。全草を乾燥・粉砕したドライハーブの形で流通しています。

エキナセアのハーブティー

エキナセアには免疫賦活、抗菌、抗ウイルス、消炎などの作用があり、花粉症対策としては、予防・免疫力向上の目的で、スギ花粉が多く飛散し始めるより前、年末くらいからティーにして飲み始めるとよいでしょう。エキナセア単体だとあまりはっきりしない味なので、ペパーミント、ルイボスなど風味のよいハーブと組み合わせるのがおすすめです。

※キク科アレルギーの方は注意が必要です。
※8週間以上の長期常用は避けます。(例:3週飲んだら1週休みのように間を空けて飲む など)
※自己免疫疾患や膠原病に対しては使用できません。

ルイボス (Asparathus linearis)
症状緩和・体質改善のために

ルイボスは南アフリカのシェダーバーク山脈周辺にしか生息しないハーブです。周辺の先住民が「不老長寿のお茶」として飲用していたことでも知られています。

ルイボス

18世紀以降、その健康増進効果と飲みやすい風味も相まって欧米に急速に普及しました。抗酸化作用が強く、身体の老化を促進する体内の活性酸素を消去する働きをはじめ、抗アレルギー作用、代謝促進作用による冷え性や便秘の解消など、さまざまな症状の予防や緩和のために服用されています。

ルイボスティー

スギ花粉の飛散量が多くなる2~3月は、寒く、身体の代謝機能も下がる時期なので、アレルギーである花粉症への対策と冷え性の改善、体内の毒素や老廃物排出もかねて飲むのもよいでしょう。単体でも美味しく、ブレンドにも多く用いられるハーブです。エルダーフラワーやローズヒップなど、他のハーブと組み合わせて味と作用の補完・相乗効果を高めるのもいいですね。

ジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla)
症状緩和のために

カモミールは、リラックスティーの代表格として世界で最も親しまれているハーブでしょう。花部を乾燥させたドライハーブの形で主に流通しています。

カモミール

カモミールは、精油成分のカマズレンに抗アレルギー作用・消炎作用があり、花粉症による鼻腔やのどの炎症緩和を助けます。同じく精油成分のα-ビサボロールには優れた鎮静作用があり、鼻づまりなどの諸症状によるストレスを和らげてくれます。

カモミールティー

ジャーマンカモミールのハーブティーは、青リンゴを連想させる香りとフルーティーで甘い味わいで人気があります。単体では味がはっきりしないネトルなども、カモミールを組み合わせることで、風味がはっきりして飲みやすくなります。

※キク科アレルギー、ブタクサ花粉症の方は注意が必要です。

エルダーフラワー(Sambucus nigra)
症状緩和のために

カラーリーフ品種がバラと組み合わせて植えられることも多い、サンブカス・ニグラの基本種です。花部を乾燥させたドライハーブで流通しています。

エルダーフラワー

欧米では「インフルエンザの特効薬」とも呼ばれ、インフルエンザや風邪の初期症状の緩和に用いられます。フラボノイドを多く含む代表的なハーブで、発汗・利尿・抗アレルギー作用があります。アレルギーの一種である花粉症対策にもよく、鼻水・鼻づまり・くしゃみなどの症状緩和を手助けしてくれます。その他、発汗・利尿作用によるデトックス効果も期待できます。

エルダーフラワーティー

エルダーフラワーティーは、マスカットのような爽やかな香りとフルーティーな味わいが特徴で、単体でも美味しいですし、その他のハーブとのブレンドでも風味のバリエーションを楽しむことができます。

リンデン(Tilia europaea)
症状緩和のために

リンデンはセイヨウボダイジュとも呼ばれ、ヨーロッパでは古くから風邪やインフルエンザに用いられてきたハーブです。花と苞葉の部分を乾燥・粉砕した形のドライハーブで流通しています。

リンデン

鎮静、発汗、利尿など多くの作用をもつフラボノイドを豊富に含み、精油成分のファルネソールの甘い芳香が心身の不安や緊張を和らげてくれます。花粉症対策としては、鼻水・鼻づまり・咳などの症状緩和を手助けしてくれます。

リンデンのハーブティー

リンデンのティーは、単体でも甘い香りで美味しいですし、その他のハーブとのブレンドでも風味のバリエーションを楽しむことができます。

ペパーミント(Mentha × piperita)
症状緩和のために

メントールの清涼感のある風味が特徴で、集中力アップや気分のリフレッシュに役立つハーブです。葉部を乾燥・粉砕したドライハーブの形で主に流通しています。自家栽培のフレッシュハーブを使ってもよいでしょう。

ペパーミント

緊張を和らげる鎮静作用と活力づける賦活(ふかつ)作用の両方をもつのもペパーミント特有で、花粉症対策では、鼻づまりによるイライラやぼんやりした気分をすっきりさせたり、頭痛を和らげる効果が期待できます。

ミントティー

ペパーミントティーは、ミント特有の清涼感のある風味が好まれ、単体でも美味しいですし、エルダーフラワーやカモミールなど、他のハーブとのブレンドでも風味のバリエーションを楽しむことができます。

ローズヒップ (Rosa canina)
栄養補給のために

ローズヒップは「ビタミンCの爆弾」とも呼ばれ、ハイビスカスと組み合わせた赤いハーブティーが定番的に親しまれています。偽果の部分を乾燥・粉砕したドライハーブの形で主に流通しています。

ローズヒップ

ローズヒップにはレモンの約20倍ものビタミンCが含まれます。花粉症対策においては、鼻腔・喉などの炎症によって消耗されるビタミンCの補給に役立ちます。

ローズヒップに含まれるビタミンCは熱に強い性質を持つため、体内でより効率的に吸収されます。

ローズヒップティー

赤色のカロテノイドであるリコピン、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンEなどのビタミン類も豊富に含んでいて、身体に必要な栄養の補給や抗酸化にも役立ちます。ルイボスやエルダーフワラーなど、花粉症の症状緩和に役立つハーブとブレンドして飲むと効果的でしょう。

メディカルハーブを使用する際の注意事項

本記事でご紹介したメディカルハーブは、人類が薬草として使用してきた歴史もあり、比較的安全性の高いものです。とはいえ、メディカルハーブに含まれるフィトケミカルは、元来、植物が強い紫外線や病害虫や食害から身を守って自然界を生き抜くために進化の過程で身につけた防具や武器のようなものであるとも言い換えられます。

メディカルハーブ

植物だから安全というわけではなく、用法用量を守ることが肝要です。

下記注意事項もよく理解した上で、正しく・安全に利用しましょう。

【注意事項】

※メディカルハーブは医薬品ではなく、それを使用する行為は医療ではありません。治療目的で使用するものではないので、体調が悪い場合、気になる症状がある場合は必ず医師に相談しましょう。

※ハーブは安全性が高く、作用も穏やかですが、アレルギーや飲み合わせ等によっては使用に注意が必要なもの、使用できないものもあります。各ハーブの注意事項をよく調べてから使用しましょう。

※治療中の病気がある、服用している薬があるなど健康状態に問題のある方、妊娠中の方は、決して自己判断では使用せず、必ず医師に相談の上、ハーブを利用しましょう。

※ハーブの持つ効能や作用の現れ方には体調差・個人差や製品による差があり、同じ人が同じハーブを使用しても反応が異なる場合があります。

※子供や高齢者、妊娠中の方が使用する場合は、分量を減らす等、安全に注意を払ってください。

※ハーブを用いて作ったものは自身が製造者となります。自己責任で安全に活用しましょう。

ガーデンセラピーとしてのメディカルハーブティー

植物を多角的に生活の中に取り入れ、健康寿命を延ばしたり、日々の暮らしを心身ともに溌剌と健やかに過ごして人生の質を高めることを目指すガーデンセラピー。

ガーデンセラピー

ガーデンセラピーでは庭や植物の有効性を改めて確認し、さまざまな関わり方で心身を整え、健康な暮らしを実現する「住まい方療法」として「芳香療法(アロマセラピー)」「食事療法」「森林療法」「芸術療法」「園芸療法」という5つの療法をバランスよく組み合わせて、病気になりにくい健康的な生活や未病状態の改善、生活の幸福度の向上を実現させていきます。

ガーデンセラピー

味や香りなど植物が与えてくれるナチュラルな癒しを感じながら栄養素の補給や心身の不調改善に効果が期待できる植物成分を美味しく摂取できるハーブティーも、「食事療法」の大切な要素の一つです。

コーヒーや緑茶のように日常的な飲み物として生活に取り入れることができ、心身のさまざまな不調を整えるサポートとなったり、美容やアンチエイジング効果も期待できるメディカルハーブティー。老若男女問わず、人生の質を向上させる生活習慣として、ぜひ効果的に生活に取り入れたいですね。

メディカルハーブティー

「一箱のお茶の中には、たくさんの詩と素晴らしい感情がある。」

ラルフ・ウォルド・エマーソン(Ralph Waldo Emerson 思想家 1803 – 1882)

Photo/ 3) Mr. and mrs. Black 4) Africa Studio 6) Tatyana Azarova 7) Olenaduygu 8) mimi-TOKYO 9) ViktoriyaFivko 10) Robyn Gwilt 11) GreenArt 12) Esin Deniz 13) Geo-grafika 14) Rhoenbergfoto 15) Madeleine Steinbach 16) Victoria Tucholka 17) Julia Cherk 18) Olesya Myzzz 19) Vaclav Mach 20) Jirik V 21) Alina Yudina 22) JurateBuiviene /Shutterstock.com

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