寒い時期にほっこりあったか ブレッド&バタープディング【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
まだ寒さの続くこの季節、イギリス流の温かいプディングを楽しんでみませんか。食パンを使ったブレッド&バタープディングは、イギリス人に広く愛される一品。体も心も温めてくれる、ほっこりデザートです。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
伝統のあったかプディング
イギリス人ならみんな好きではないかな? と思う、ブレッド&バタープディング。食パンを使ったこのプディングは、故ダイアナ元妃にも愛された、イギリスの伝統的なデザートで、イギリスの国民食といってよいでしょう。給食のデザートでも出されていたという話を聞きましたが、今も出されているのかな。このプディングはフレンチトーストをオーブンで焼いたようなもので、バターを塗った食パン、砂糖、レーズンを、層になるよう重ねていって、卵液を流してオーブンで焼き上げます。風味づけにナツメグやバニラを、また、香りづけにオレンジやレモンの皮を使うこともあります。最近では、食パンの代わりにブリオッシュを使ったり、マーマレードやフルーツ、チョコレートを挟んだりと、いろいろなバリエーションもあるようです。今回は、スタンダードなレシピをご紹介しますね。
イギリス人に欠かせない「カスタード」
イギリス人は、このブレッド&バタープディングに温かいカスタードソースをかけて食べるのが好きです。日本で「カスタード」というと、シュークリームなどに入っているカスタードクリームを指しますが、イギリスでの「カスタード」は、サラサラのソース状のものをいいます。食の本場、フランスで「アングレーズソース」というものがありますが、これはこのイギリス流のカスタードソースのこと。そう、「アングレーズ(イギリス風の)ソース」! これを知った時には。ちょっと衝撃を受けました。美食の国の、あのフランス人が、イギリス人の真似をして作ったということに!
もっとも、卵と牛乳、砂糖で作るリッチな「アングレーズソース」に対して、イギリス人にとっての「カスタード」は、インスタントのカスタードパウダーを使うのが王道! それも、赤、黄、青のパッケージでイギリス人にはお馴染みの、〈バーズ〉のインスタントパウダーが主流です(といいますか、それ以外を私は知りません)。
このカスタードパウダーは、1837年、卵アレルギーだった妻のために薬剤師の夫によって開発されたもので、温かい牛乳と砂糖を加えて混ぜるだけでソースができるという優れもの。じつは、私が働いていたホテルで毎日大量に作っていたカスタードも、このインスタントパウダーを使ったものでした。美味しいデザートで有名なホテルで、インスタントパウダーが使われることに驚かれるかもしれませんが、それほどまでに、このインスタントの「カスタード」はイギリス人に愛されているのです。
それから、このパウダーをお湯で溶けば、乳製品アレルギーの方にも対応することができます。私が働いていた10年前には、すでにこのような、卵や乳製品、小麦など、数々のアレルギーへの対応が常に準備されていましたが、それは「イギリスは進んでいるなあ」と、当時カルチャーショックを受けたことのひとつです。
この簡単なカスタードパウダーで作るカスタードは、きっとイギリス人にとってはお袋の味なのでしょう。先日、イギリス人のご近所さんたちにアップルクランブルをおすそ分けしたら、「カスタードパウダーある?」と訊かれました。もうひとりは「家にあった!」と、発掘したことを喜んでいました。私は、温かいプディングに温かいカスタードソースをかけるとくどくて甘いので、代わりに冷たい生クリームをそのままかけていただくのが好きです。イギリス人に話したら、きっと「ありえない!」という顔をされるでしょう。でも生クリームで食べる人も少しはいるはず。
ブレッド&バタープディングはとても簡単で、誰でも作れるものなので、ぜひ気軽に作ってみてくださいね。パンにバターを塗って作るのが一般的ですが、私は溶かしバターで作ります。ホテルのキッチンで、手早くたくさん作るために編み出された方法です。
さあ、作っていきましょう!
ブレッド&バタープディングの作り方
材料(約8人分)
- 10枚切りの食パン……10~12枚
- バター……120g
- きび砂糖……60g
- レーズン……120g
- 卵……2個
- 生クリーム……300ml
- 牛乳……150g
- バニラビーンズ(バニラエッセンスで代用可)……1本分
- オレンジの皮……1個分
- レモンの皮……1個分
*今回使用したのは、容量約1ℓのバット(縦21×横16×深さ5cm)です。オーブンに入れるため耐熱性のある容器にしましょう。
作り方
- 食パンの耳をすべて切り落とす。
6枚はそのまま大きな正方形で使う。2枚は縦半分に切り、残りは対角線で切り、三角形4枚にする。
*使う容器の形に合わせて調整してください。 - 型にバターを薄く塗っておく(分量外)。
- バターをレンジで溶かす。
まず、正方形の食パン2枚の両面にそれぞれバターを軽くつけ、型の底に敷く。
- 分量の1/3のきび砂糖を食パンに振りかける。
- レーズンも同様に1/3の量を全体に広げる。
- 3~5の手順を繰り返し、食パン、砂糖、レーズンの2層目を作る。さらに、この手順をもう一度繰り返し、3層目を作る。
*容器のふくらみに合わせて、2層目、3層目はそれぞれ、正方形のパン2枚と縦半分のパン2枚を並べます。お持ちの容器の形に合わせて、パンの切り方は適宜、調整してください。 - 最後に三角形にカットした食パンを2列に並べる。
バターが残っていればその上にかけるとよい。残っていなければ、そのままでも大丈夫。 - 卵液を作る。ボウルに卵を割り入れ、生クリームと牛乳を入れて、よく混ぜる。
- バニラビーンズを加え、オレンジとレモンの皮はゼスターですりおろして入れ、よく混ぜる。
- 食パンの上から卵液を静かに流し入れる。
- このままラップをして冷蔵庫で最低30分休ませる。
*食パンが卵液を吸い込む時間なので、必ず休ませましょう。 - 180℃に予熱したオーブンで、プディングを40〜50分焼く。
*オーブンによっては表面が焦げる場合もあるので、途中で確認しましょう。もし焦げてきたら、アルミホイルを被せます。
真ん中もふっくら膨らんで、固まっていれば完成。
表面に粉糖(分量外)を振りかけても。
大きなスプーンですくって、たっぷり生クリームをかけていただきます!
焼き立てが美味しいですが、残ったらレンジで温めていただきます。朝ごはんに食べるのも最高。我が家では残りを朝ごはんに出したら、「ママありがとう! 最高のママだよ! 大好き!」と絶賛されました。皆さんも、ぜひ。ちなみに、食パンの耳は、近所の川に棲むカモたちにやりました。
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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