さっくりと一口かじれば、バターの豊かな風味が広がるショートブレッド。紅茶と相性ぴったりのこのお菓子を手作りして、幸せなお茶の時間を楽しみませんか。お土産にも喜ばれるショートブレッドを、イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
スコットランド生まれの焼き菓子
イギリスのお菓子といえば、スコーンとショートブレッド。でも、正確に言うと、ショートブレッドはスコットランド発祥のお菓子です。赤いタータンチェックのパッケージで有名な〈ウォーカーズ〉も、スコットランドの小さな村にある老舗メーカー。1898年の創業以来ずっと変わらない、伝統のレシピを守って作り続けています。
いまやショートブレッドはお茶菓子の定番として広まり、イギリスのスーパー各社も自社ブランドで製造販売しています。イギリスに暮らしていた頃は、身近にありすぎて食べそびれてしまいましたが、次に渡英の機会があれば、ぜひ食べ比べてみたいもの。チャールズ皇太子が手がけるオーガニック食品のブランド〈ダッチー・オリジナルズ〉の品は、とっても美味しかったのを覚えています。
ショートブレッドは、バターたっぷりでとってもリッチなお味。分厚く焼いたその食感は、普通のビスケットとは違って特別感があり、その特別感ゆえに、イギリスではチョコレートと並んで贈答用として高い人気があります。高級スーパーに行けば、いつでもステキな缶に入ったショートブレッドが並んでいて、特に、家族の集まるクリスマス時期には贈り物に重宝されます。
暖炉の前でお茶を
イギリスの冬は暗くなるのも早く、寒いので、家で過ごすことが多くなります。お茶の時間を大事にするイギリス人にとって、たっぷりの牛乳を入れた温かいミルクティーに、小皿にのせたビスケットという組み合わせは、ティータイムにマストのもの。暖炉に火を入れ、間接照明をつけて、ブランケットを膝にかけて、お茶をする。これこそ、イギリス流の冬の過ごし方です。ホームステイをしていた時も、ワーキングホリデー中に仕事仲間とお家をシェアしていた時も、少し時間が空くと、そのように過ごしていました。思い出していたら、なんだかしみじみ。暖炉ってやっぱりいいなあ、欲しいなあ、と思ってしまいます。
女王も愛したシンプルな美味しさ
さて、話は戻って、ショートブレッド。
ショートブレッドはその特別感から、作るのが難しそうに思えますが、なんと材料は4種類のみ。薄力粉、砂糖、バター、塩と、とってもシンプルです。シンプルな分、素材の味がダイレクトに伝わるので、いつもより上質な材料を使うなど、こだわってみるのもおすすめです。
ショートブレッドの形はいくつかありますが、日本でいちばん知られているのは、長方形に穴がプツプツある「フィンガー」形でしょう。イギリスでは、型抜きしたものもよく見かけます。もう一つの伝統的な形は「ペチコートテイル」と呼ばれるもの。ホットケーキみたいな大きな円形にのして、フォークや指を使ってフリルのような縁飾りを付けて焼き、放射状にカットします。16世紀のスコットランド女王、メアリー1世は、この形のショートブレッドが大好きだったといわれています。
今回は、フィンガー形をご紹介しましょう。生地をのして、冷蔵庫で休めて、包丁でカットしたら、フォークで穴をあけるだけ。特別な型も必要なく、手軽に作れます。おうちで家族と食べるなら、これで十分。お友達にも、手作りのショートブレッドをプレゼントできたら最高ですね!
それでは、作っていきましょう!
ショートブレッドの作り方
材料(約12枚分)
- 有塩バター……110g(常温に戻す)
- グラニュー糖……55g
- 薄力粉……170g
- 塩……ひとつまみ(私はフランス産の「ゲランドの塩」を愛用)
- 仕上げ用グラニュー糖……適量
作り方
- 常温に戻したバターをボールに入れ、木べらなどで均一になるよう混ぜる。
*電子レンジで柔らかくしてもよいですが、溶かさないように要注意。 - グラニュー糖を入れ、全体的に白っぽくなるまでしっかりと混ぜる。
白っぽくなったところ。 - 薄力粉と塩を入れ、木べらでさっくりと混ぜる。
上写真のような状態になればよい。 - 3のようになったら、手でひとまとめにする。
- ラップで包み、めん棒を使って厚さ1.5cm程に伸ばす。
この時、形は特に気にしなくても大丈夫。丸みが出たら、端を切り落とせばOK。形よりも厚さが重要です。 - このまま冷蔵庫で30分ほど休ませる。
- オーブンを180℃に予熱する。休ませていた生地を冷蔵庫から出し、包丁で好きな大きさにカットして、フォークで穴をあける。
自宅用なら、形もそこまで気にすることはありません。もちろん、お店のように仕上げたければ、定規を使ってカットしてくださいね。 - 天板にオーブンペーパーを敷き、7を並べ、予熱したオーブンで20~25分焼く。
ショートブレッドは色をつけないで焼くほうがいいのですが、私はいくらかしっかりと焼くのが好きなので、端っこがほんのり色づくまで焼いています。焼いてみて、お好きな焼き加減を試してみてください。 - 焼き上げたら、すぐにグラニュー糖(分量外)を適量振りかけ、冷ましたら完成!
お店のように仕上げたい時は、焼いた後すぐに、膨らんで歪(いびつ)になった部分をカットしてください。
大好きな本とたっぷりのミルクティーを用意したら、もうイギリス気分。
気づくと何枚も食べてしまうから危険です!(私はこの時、カロリーを考えないようにしています……)
それでは、皆さま、楽しいお茶のひとときを。
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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