クリスマスにぴったりの上品デザート、ポーチドペアー【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
イギリスのクリスマスって、どんな感じでしょう? 英国伝統のクリスマス菓子は、私たちの思い浮かべる「クリスマスケーキ」とは、ちょっと様子が違うようです。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに、クリスマスにまつわるお話を伺いつつ、クリスマスディナーにぴったりの、おしゃれな洋梨のデザートを教えていただきましょう。
目次
クリスマスはお正月?

もうすぐ12月。12月といえば、クリスマス! どの国でもクリスマスといえばワクワクするものですよね。日本では恋人の季節といった感じがありますが、イギリスでクリスマスといえば、家族で過ごすもの。たくさんご馳走を作って、お酒を飲んで家族と過ごす。私はなんだか日本のお正月を思い出しました。

ドライフルーツたっぷりのクリスマス菓子

イギリスでクリスマスのお菓子といえば、クリスマスケーキにクリスマスプディング、そして、ミンスパイ。といっても、どれもどんなものか、パッと思い浮かばない方もいるかもしれませんね。いずれも、乾燥させたブドウやリンゴ、イチジクやチェリー、オレンジピールといった、何種類ものドライフルーツをたっぷり使ったお菓子です。

イギリスのクリスマスケーキは、ドライフルーツをたっぷり入れて焼いた、どっしりと重いフルーツケーキで、マジパンとアイシングを被せて仕上げます。このケーキの特徴は、熟成させること。クリスマスの数カ月前に焼き上げたケーキに、2週間に1度くらいのペースで、大さじ2杯ほどのブランデーなど、好みのお酒をふりかけて、熟成させていくのです。このような、お酒の効いたどっしりとしたフルーツケーキは、日本人の舌にはあまり合わないようなのですが、私は大好き! 薄くスライスして、たっぷりのミルクティーといただきます。かつて、語学留学をしていた時、ホームステイ先のおばあちゃんと一緒にこのケーキを焼いたのですが、おばあちゃんは私の帰国の際、半年くらい熟成させたものを持たせてくれました。その美味しかったことといったら! ケーキの味とおばあちゃんの優しさは、今も忘れられません。

では次に、クリスマスプディングはどんなものかというと、同じようにドライフルーツとスパイス、お酒がたっぷり入ったものですが、こちらは焼くのではなく、蒸し上げます。そして、そのスチームしたプディングに、牛乳、ブランデー、砂糖、コーンスターチを混ぜて火にかけ、とろりとさせたブランデーソースをかけていただきます。このプディングを作る人は、現代のイギリスでも少ないかと思いますが、作り方はいたって簡単。ただ、スチームするのに時間がかかるのが難点です。でも我が家では、クリスマスといえばこのクリスマスプディング。こちらもいつか、詳しくご紹介できたらと思います。
英国人に身近なフルーツ、洋梨

さてさて、イギリスの冬。レストランなどで、この時期おしゃれなデザートとして人気なのは、ポーチドペアー。簡単にいえば、洋梨のコンポートです。洋梨って、じつはたくさんの種類があることをご存じでしょうか。日本では現在20種類くらい栽培されているそうですが、世界ではなんと4,000種類ほどあるそう! 日本で見る洋梨はどちらかといえばずんぐりしていますが、イギリスでよく売られていたのは、小ぶりでシュッと細長く、首が長いもの。形がとってもよいのです。イギリス人は、その洋梨を皮ごとパクッと丸かじりする人も多くてびっくりしますが、真似してみると、とっても美味しい。日本のものほど甘味はなくサッパリした味で、ジューシーでもないので、食べている間に果汁でベトベトになることもありません。イギリス人は、リンゴでも洋梨でも丸かじり。スーパーで、支払い前のものを食べている人もいたりして、びっくりしたのを覚えています。お菓子でもペットボトルの飲み物でも、買うときにちゃんとお金を払えばOK、というのが英国スタイル。さすがにそれは真似できませんでしたが、コロナ禍になって、そういう習慣もなくなったかもしれませんね。

私が働いていたホテルでも、毎年このポーチドペアーを作っていました。いろいろとバリエーションはありますが、クリスマスの時期によく出していたのは、スパイスの効いたもの。シナモンやバニラを加えて、赤ワインか白ワインと煮たものが人気でした。作る手順はシンプルなのに、ちょっとファンシーで上品なデザートです。一度にたくさん作れて、多少なら保存も効くという点も、忙しいクリスマス時期に重宝される理由の一つでしょう。

コンポートにしたいので、洋梨は硬めのものを使います。イギリスでの修業時代は、毎日、何十個もの洋梨の皮を剥いて、寸胴鍋で仕込んだものでした。それまで日本の小さなカフェやティールームでしか働いたことのなかった私にとって、とにかく仕込む量がなんでも桁違いで、笑ってしまうほどでした。以前の記事でも書きましたが、シェフたちには基本的にきっちりとしたレシピというものがなかったので、ポーチドペアーを作る際も、いつも目分量。それでも、感覚で美味しく作れてしまうのです。ポーチドペアーは、誰でも美味しく作れる、失敗知らずのスイーツかもしれません。

働いていたホテルでは、スイーツを作るエリアとコンロやオーブンの場所がかなり離れていて、大きな寸胴鍋を抱えて歩いていくのは一苦労。同じように、寸胴鍋になみなみと作る、熱々のカスタードを運ぶ時など、これで転んだらどうしよう……と、ドジな私はいつも考えていました。パティシエって一見華やかそうですが、地味な作業も多いし、力仕事もたくさん。基本的に一人の作業ですし、暗くて厳しい仕事です。ですが、自分の作ったお菓子をお客様が美味しそうに食べて、幸せそうな笑顔を見せてくれると、私自身も幸せを感じます。やっぱり、お菓子作りはやめられません。

話をポーチドペアーに戻しますと、レストランでは、ショートブレッドやバニラアイス、もしくは、カスタードソースなどを添えて出していました。チョコレートソースやキャラメルソースなどもおすすめ! それから、煮た洋梨を使ってタルトにするのもいいですよ。ポーチドペアーは冷やしていただくのが基本ですが、少し温かい状態でもまた美味しいもの。スパイスは、今回はクリスマスらしさの感じられる組み合わせにしていますが、お好みに合わせて量を調節してみてくださいね。では、作っていきましょう!

ポーチドペアーの作り方
材料(洋梨6個分)

- 洋梨……6個(硬めのもの)
- 白ワイン……500ml
- オレンジジュース……350ml
- 水……500ml
- グラニュー糖……250g
- シナモンスティック……3本
- クローブ……4個
- スターアニス……2個
- バニラビーンズ……1本

*スパイスですが、スターアニス(別名:八角、大茴香/だいういきょう)は中華食材売り場で、その他は製菓用品店やネット通販で手に入ります。このレシピでは、バニラビーンズはバニラエッセンスでは代用できません。バニラビーンズを使うと出来上がりの風味が格段によくなるので、ぜひ試してみてくださいね。
作り方
- 洋梨の皮を、ヘタをつけたまま剥いて、芯の下の部分を取り除く。

左がお尻の硬い部分を取ったもの。 - 材料のすべてを鍋に入れて、沸騰させる。

バニラビーンズは縦半分に切り、中身をこそげとるようにして取り出す。中身とさやの両方を使う。

すべての材料を鍋に入れたところ。 - 沸騰したら弱火にして15分くらい煮る。

オーブンペーパーをクシャクシャにして、落とし蓋にするとよい。洋梨に竹串がスッと入るようになったら、火を止める。 - そのままシロップの中で冷ます。

冷めたら、シロップに漬けたまま冷蔵庫で保管する。日持ちは5日ほどですが、お早めにどうぞ。

お好きなものを添えて召し上がれ。素敵なクリスマスを!
Credit

写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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