常緑で耐寒性もあるハーブ「タイム」はこれからの季節のガーデニングにもおすすめしたいハーブの一つです。大昔から薬草として重宝されてきた歴史があり、嬉しい効能がたくさんのタイム。今回は育て方と効能に触れながら、玉ねぎをタイムとバルサミコで味付けした、上下逆さに作るフランス式タルト「タルトタタン」を、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんが教えてくれます。

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西洋料理に欠かせないハーブ「タイム」

タイム

日本の食卓ではバジルやローズマリーの一歩後ろに隠れて、日陰な道を歩んでいる「タイム」。何となくイタリアンに使うハーブ? というイメージかも。タイムはイタリア料理をはじめ西洋料理に幅広く使われ、ニンニクやオリーブオイルとの相性が抜群♡ 肉や魚料理、スープ、サラダ、デザート、ハーブティーまで多くの料理に使え、レパートリーを増やさずにメニューを豊かにしてくれる「万能ハーブ」なのです。

ブーケガルニ
タイムは数種類の香草類を束ねた、洋風煮込み料理に欠かせない「ブーケガルニ」に使われているハーブで、肉料理や魚料理の臭み消しにも使われています。

タイムの仲間は多く、なんと350種類超え。シソ科の多年草で小さな葉が特徴的です。ガーデニングに活躍する観賞用や、香りを楽しむ食用など、さまざまな香りの品種が存在しますが、料理に最も使われているのがコモンタイム。ラベンダーやローズマリー同様に地中海沿岸が原産です。私の「個人的に好きなハーブランキング」でも常に上位に鎮座。タイムの香りは清々しく気品があり、まるで「空の上の草」のような神聖さを感じる香り。ハーブとしての歴史も古く、古代から薬草としても重宝されてきました。

タイムの歴史

タイム

古くからさまざまな国で愛されてきたタイムには、ここでは書ききれないほどの「伝説」がいくつもあります。例えば、古代エジプトでは「ミイラを作成する際の防腐剤」として使われ、古代ギリシャでは「神殿で焚く香」として、古代ローマでは「聖堂の浄化」にも使用されていたとか。16世紀にヨーロッパでペストが蔓延した際には、タイムの枝を焚いて空気を浄化したり、ローズマリー、タイム、セージ、ラベンダー、ミントなどのハーブを、お酢に漬け込んだものを身体に塗って感染を防止していたと伝えられています。そもそも身体からお酢の香りってどうなの? って感じもしますが……。

タイム

タイムの香りは、優雅さと勇気、気品を意味するものであり、「タイムの香りがする」という表現は誉め言葉だったとか。タイムは「勇気」をもたらすと信じられていたことから、女性たちは愛する騎士にタイムの枝を刺繍したスカーフをプレゼントしたとも言われています。また、イギリスのウエールズ地方では、来世への旅路を確実なものとするために、葬式の際にタイムの花を棺に添えたのだとか。タイムの香りで三途の川を渡るなんてロマンティック! ハーブは医学が進歩していない大昔から、疫病、天災、悪魔的な力など、人知を超えた「恐怖」や「苦しみ」から身を守る為に重宝されてきました。香りがよく、心と身体を守る効能があり、しかも美味しい!  今だからこそ、そんなハーブたちを生活に取り戻す時だと思うのです。

タイムの効能

タイムの効能

メディカルハーブの代表ともいわれるタイム。数多くの優れた効能を持っており、キッチンに常備しておきたいハーブです。タイムには「チモール」という成分が含まれており、ハーブの中でも最強クラスの殺菌効果と抗ウイルス作用があります。喉の痛みを鎮めたり、痰を取り除く効果もあるので、咳の症状の緩和にはハチミツを加えたハーブティーもおすすめ。消化促進作用もあり、食べ過ぎた後にも。血行促進作用があるので、大胆に切り戻して収穫した際には、お風呂に入れて、ぬるめの湯でハーブバスもオススメです。神経を静め、メランコリー(憂鬱な精神状態)を追い払ってくれるハーブ。なんと悪夢にも効果的だとか! お悩みの方は早速お試しあれ。効果があったかどうか教えてくださいね。

タイムの育て方

タイム

タイムは耐寒性と耐暑性があるので、ハーブ初心者の方でも気軽に挑戦できます。一般的な園芸店やホームセンターで苗が購入可能です。極寒地でなければ、そのままでも越冬しちゃう元気な子。私は10月に新たに2株植えました。日当りと風通しがよく、水はけのよい乾燥した石灰質土壌を好み、湿気は苦手。乾燥には強いので多少ほったらかしでも大丈夫。

タイム
庭でほったらかしていたタイム。株元が木化している悪い例です。

剪定せずに育てていくと株元が次第に木化していくので、適度に(2年に1度など)切り戻していくと良いでしょう。冬前にも収穫を兼ねて、ばっさりと切り戻し剪定を行います。真夏と真冬以外は挿し木や株分けで簡単に増やすことができるので、子孫繁栄型の子沢山ハーブ。万が一、冬の寒さで地上部が枯れてしまっても、根は生きていて春になるとまた芽を出します。

タイム

葉が茂ると蒸れやすくなるので、どんどん毎日の料理に使いましょう! 採れ立ては香りが格別。庭やベランダのガーデンから、ハーブを摘んで使うと気分はイタリアの肝っ玉母ちゃん、マンマ! でボーノボーノ。ハーブの使い方にルールはありません。必要なのは「経験」&「イマジネーション」。パスタやサラダ、グリル料理など考えただけでヨダレが出ちゃう♡  スーパーで都度ハーブを買うよりも、コストパフォーマンスが優秀です。

おっちょこちょいなタルトタタン

タルトタタン
本来はリンゴのお菓子でしたが、今ではひっくり返すスイーツを総称して「タルトタタン」と表現されています。

天地無用の概念を壊されるお菓子「タルトタタン」。タルトタタンは19世紀後半のフランス、ホテル経営をしていたタタン姉妹によってアクシデント的に誕生しました。諸説あるようですが、「アップルパイを作ろうとリンゴをバターと砂糖で炒めていたところ、炒めすぎて焦げるような匂いがしてきたので、えーい! っとリンゴの入ったフライパンの上にタルト生地をのせ、そのままフライパンごとオーブンへ入れたら、なんか美味しそうなデザートができちゃった!」ってストーリー。これが美味しくて大当たり。フランス全土に広まったそうです。今では、逆さに焼くタルトを総称してタルトタタンと呼ぶようになりました。失敗と思われることすら、楽しく成功へと変えてしまうポジティブなタタン姉妹。レシピだけではなく、その姿勢も見習いたいものです。

ルーシー流「タイムとバルサミコのオニオンタルトタタン」

オニオンタルトタタン

クリームパンより焼きそばパン派の私。硬派なリンゴのタルトタタンではなく、お惣菜系「玉ねぎのタルトタタン」をご紹介します。材料も工程もとってもシンプル。玉ねぎの旨味、バルサミコの酸味、そしてタイムの香りがクセになる簡単タルトタタンです。

■ 材料  ※16.5cmスキレット1個分

オニオンタルトタタンの材料
  • 玉ねぎ 約1個半〜2個
  • ニンニク 2片
  • タイム 約小さじ1 ※フレッシュでも乾燥でも
  • ローズマリー 約小さじ1 ※フレッシュでも乾燥でも
  • 砂糖 大さじ1/2
  • バルサミコ酢 大さじ1
  • 水 30ml
  • 溶けるチーズ 1カップ
  • 冷凍パイシート 1枚を四角にカット
  • 塩胡椒 適量
  • 飾りに フレッシュタイムの枝、ブルチーズをお好みで

■ 作り方

  1.  玉ねぎを7mm程にスライスして、ニンニクはぶつ切りにする。
    オニオンタルトタタンの作り方
  2. スキレットに大さじ1強のオリーブオイル(分量外)を中火で熱し、玉ねぎを数分炒める。
    ※私は洗い物を減らしたいのでスキレットで炒めていますが、もちろんフライパンで別途炒めてもOKです。
    オニオンタルトタタンの作り方
  3. タイムとローズマリー、砂糖、バルサミコ酢、水を②に加えて良く混ぜ合わせ、さらに炒める。
    オニオンタルトタタンの作り方
  4. 水分が飛んでねっとりとした質感になったら、塩胡椒、ニンニクを加えてさらに数分炒めて、火から下ろして冷ましておく。
    オニオンタルトタタンの作り方
  5. オーブンを220℃に余熱する。解凍したパイシートを、スキレットより一回り大きくなるように伸ばす。
    ※すぐに使わないなら冷蔵庫に戻す。
    オニオンタルトタタンの作り方
  6. 粗熱がとれた④に、チーズをたっぷりのせ、パイシートをかぶせる。
    ※具は真ん中に寄せて、パイシートはスキレットのフチにタックインするように。
    オニオンタルトタタンの作り方

    オニオンタルトタタンの作り方
    空気の逃げ穴の為に、パイシートに2カ所切り込みを入れる。
  7. 220℃に予熱したオーブンで20分焼いたら焼き上がり! オーブンから出して数分置いてから、お皿にひっくり返す。
    オニオンタルトタタンの作り方

フレッシュタイムの枝と、お好みでブルーチーズを散らして完成! お食事にもお酒のお供にもなる、簡単でオシャレ風になれちゃう一品です。

オニオンタルトタタン

スキレットがなければフライパンで炒めてから、オーブン可能な耐熱皿に移して、パイ生地をのせてください。パリパリ&トロトロの焼きたてもいいけれど、冷蔵庫で一日冷やしてもデリシャス。寒い冬の夜のテーブルにピッタリなメニューです。忙しい現代人には、なかなか難しいかもしれませんが、朝はハーブや植物の世話をして、夜はハーブと野菜を料理する。そんな感じに「地に足を付ける時間」、ぜひ大切にしてみてくださいね♡ チャオ!

Credit

ルーシー恩田

写真&文/ルーシー恩田
アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト
20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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