カサコソと落ち葉が賑やかな晩秋の庭は、草木の紅葉と実物が色鮮やか。「小さな庭が冬の眠りにつく前に、器にあしらって、終の彩りを愛おしみます」という、神奈川県横浜で小さな庭のある暮らしを楽しむ前田満見さんの花暮らし。ヤマモミジや京カノコの紅葉、五色ノブドウや西洋カマツカ、原種バラの実などの秋の恵みを使った花飾りをご紹介します。

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五色ノブドウと秋の草花の花あしらい

秋のアレンジ

夏椿の枝に自由奔放につるを絡ませて伸びる五色ノブドウは、褐色の茎と繊細な斑入り模様の葉がとても美しい落葉低木。春の芽吹きから一年を通して目を楽しませてくれます。中でも、秋の紅葉と宝石のような翡翠色の実の美しさは格別。それを最も堪能できるのがシンプルな一種活けです。実の一粒一粒、葉の一枚一が際立ち、伸びやかな茎の動きや虫食いの葉さえも、まるでアートのよう。移ろう季節をたくましく刻んできた姿は、凛としてなんて美しいのだろうと、しばし見惚れてしまいます。

野菊

また、五色のノブドウは、庭の野菊や紅葉を合わせると野趣溢れる花あしらいに。

10月半ばから咲き始めるノコンギクや清澄シラヤマギクの可憐な野菊との組み合わせは、千利休の教えに習い「花は野にあるように」。自然がお手本なので、一番身近に自然を感じられる庭で活けるとイメージが膨らみます。時折吹く乾いた秋風、チラチラと草花を揺らす木漏れ日、カサコソと囁く落ち葉…。庭の自然を五感で感じながら手を動かしていると、いつの間にか心地よい開放感に満たされ、花を活けるというより、写生しているような感覚になります。

野菊

器の中に描く自然の景色は、簡単のようで意外と難しく、毎回思い通りにならないけれど、試行錯誤する過程が楽しくて…。そういえば、庭づくりと同じかもしれませんね。

まだまだ、「花は野にあるように」という域に辿り着けそうにありませんが、やっぱりわたしは、こんな花あしらいと庭で過ごすひと時が一番好きです。

秋の紅葉

そしてもう一つ、ヤマモミジや京カノコを合わせて、紅葉を愛でる花あしらいもこの季節ならでは。赤紫の鮮やかな小菊とヨウシュヤマゴボウの実も添えると、まるで錦を織ったような彩りになります。なるべくありのままの姿を一輪ずつ丁寧に、宝箱に詰め込むイメージで器に活けます。

秋のアレンジ

それにしても、小菊と実と葉っぱだけなのに、何と華やかなこと。冬の眠りにつく前の草花たちの眩いばかりの装いに、愛おしさと感動で胸がいっぱいになります。

心温まる西洋カマツカの花あしらい

秋の庭

夏の涼やかな緑色から、秋には真っ赤に色づく西洋カマツカの実も、晩秋の花あしらいに欠かせない花材です。さくらんぼのような愛らしい実はもちろん、黄〜橙〜赤と変化する紅葉も美しく、そのうえ、10月下旬から12月半ば頃まで鑑賞できるので、クリスマスシーズンにはさまざまな器に活けて楽しみます。

セイヨウカマツカ

その一つが、小鳥の絵柄が美しいフランスアンティークのコンポート。本来の用途は、果物などを飾るお皿だそうですが、水を張れる深さもあるので花器としても重宝します。お洒落な佇まいはそれだけで絵になりますが、西洋カマツカの実をあしらうと、小鳥の絵柄と赤い実が相まって何とも微笑ましい雰囲気に。コンポートの淵に沿って枝を短くカットして活けると、リースのような花あしらいになります。

西洋カマツカのアレンジ

さらに、初冬の気配漂う肌寒い日には、中央にキャンドルを。赤い実と温もりのある灯りが心を和ませてくれます。

こんなふうに、花器以外の器に活けると、いつもと違うアイデアが浮かび、花あしらいがより楽しくなりますね。

秋のアレンジ

そして、もう一つが、深さのあるガラスの花瓶。長い枝物を活けても安定感があるので、水に浸かる脇枝のみをカットして、出来るだけありのままの姿を活けます。

クリスマス間近には、真紅の実だけ残った西洋カマツカの小枝に、ドングリやマツボックリのオーナメントを吊るしてクリスマスのしつらえに。羊毛で手作りされた小さなトムテンも添えて気分を盛り上げます。

これがわが家のクリスマス飾り。ささやかだけれど、今の暮らしに丁度よい気がします。

季節バラの実の花あしらい

秋バラの実

秋の草花が終盤を迎える頃、北東の庭では、初夏に咲いた原種バラが、小さな真紅の実を結び輝いています。そのバラの名はロサ・フィリペス‘キフツゲート’。生育旺盛で鋭いトゲもある暴れん坊のバラです。それゆえ手入れが厄介で、その都度心が折れそうになりますが、一重咲きの可憐な白い花とルビーのような美しい実を目にすると、それさえも忘れてしまいます。

バラの実

木枯らしが吹く前にバラの実をカットして、ガーデンテーブルに集めたら、庭で花あそび。

バラの実と残花を束ねた花束をバードバスに、ガーデンシェッドの窓辺にもこんもりと飾ります。いたってシンプルだけど、それだけで、ちょっと洒落たオブジェのように見えるから不思議ですね。

バラの実

それにしても、艶々と輝くバラの実を束ねていると、どうして、こんなにも幸せな気分になるのでしょう。

そう、この厄介なロサ・フィリペス‘キフツゲート’のバラの実は、庭からの最後の贈り物。わたしにとって、何より嬉しいご褒美です。

Credit


写真&文/前田満見
高知県四万十市出身。マンション暮らしを経て30坪の庭がある神奈川県横浜市に在住し、ガーデニングをスタートして15年。庭では、故郷を思い出す和の植物も育てながら、生け花やリースづくりなどで季節の花を生活に取り入れ、花と緑がそばにある暮らしを楽しむ。小原流いけばな三級家元教授免許。著書に『小さな庭で季節の花あそび』(芸文社)。
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