秋を感じる香り、自家製「パンプキンスパイス」で作るオートミールクッキー【ルーシーのおいしい暮らし】
きらきらと太陽が輝く夏が終わり、いよいよ本格的な秋のシーズン。「食欲の秋」といわれるように、この季節は魅力的な食べ物ばかりで大忙し。なかでも、おすすめしたいのが「カボチャ」。オレンジ色が秋のムードを高め、ほっこりとした食感に心が温まります。今回は、アメリカでこれからのシーズンに欠かせないスパイスミックス「パンプキンスパイス」の作り方と、それを使ったクッキーレシピを、神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんが教えてくれます。
目次
パンプキンスパイスは心温まる冬の香り
正式名称「パンプキンパイスパイス」は、秋〜冬にアメリカなどで頻繁に使われているミックススパイスの一つです。略して「パンプキンスパイス」と呼ばれ、成分にカボチャは入っていません。スパイシーで温かい香り、いわゆる「パンプキンパイ」の香りを出すためのスパイスです。ほっこりと甘い日本のカボチャと違って、ハロウィンに使われるオレンジ色のカボチャは、水っぽくてコクがないので、お世辞にも美味しいとはいえません。そんなカボチャを楽しく美味しく食べるのに欠かせないのが、このパンプキンスパイスです。
エム&エムズやオレオなど、アメリカのお菓子メーカーは、この時期に揃って「パンプキンスパイス」フレーバーのお菓子をリリースします。最近では日本でも、コーヒーチェーン店で期間限定「パンプキンスパイス ラテ」が発売されているので、見かけたらぜひご賞味あれ。本場アメリカでは食べ物だけではなく、ハンドソープやキャンドル、ボディークリームまで、「パンプキンスパイス」の香りの商品が登場します。アメリカ人にとっては季節の定番の香り。心躍るホリデーシーズンの始まりなのです。
マスクばかりの生活の中で、私たちは香りの「神聖さ」を少々おざなりにしている気がします。香りは「記憶」と密接な関係にあります。人間の「五感」の中で、唯一ダイレクトに「脳」へ伝わるのが「嗅覚」。嗅覚は脳の「扁桃体」と「海馬」という部分などに、ビビビッ! とダイレクトに作用します。この「扁桃体」と「海馬」という摩訶不思議な名前の場所は「感情と記憶」を司っています。だから、過去に慣れ親しんだ香りを嗅ぐと、まるでタイムマシンに乗ったかのように、瞬時に「記憶の引き出し」がオープン♡
ふとした瞬間、懐かしい場所の匂いや昔の恋人の香水の香りで、楽しい記憶が蘇ったり、ちょっと切なくなる。そういう経験って、誰しも心当たりがあるはずです。過去の経験をより深いものにするには「香り」の存在が必要不可欠。今年もあとわずか。これからどんな楽しいことがやってくるのかしら? ぜひパンプキンスパイスの香りで、記憶を紐付けてみてください。西田ひかる的に言うと、生涯忘れられない、人生変えちゃう2021年秋冬かもね! すてきだね! って感じです。
パンプキンスパイスの配合はメーカーによって異なりますが、大体決まって「シナモン」「ジンジャー」「クローブ」がスタメン。2軍で「オールスパイス」「ナツメグ」が登場します。どれも肌寒い季節にピッタリな香りの子たち。パイやクッキーなど、秋から冬にかけてハートウォーミングなお菓子を演出するのに欠かせないスパイスです。日本のスーパーでは見かけませんが、簡単に作ることができます。自分で作ると香りの調整も自由自在! なかなか奥深いのです。
心も身体も喜ぶ「パンプキンスパイス」の効能
パンプキンスパイスに使われているスパイスたちは、身体を温めてくれるなど、香りだけではなく心も身体も喜ぶ「効能」を持っています。旬の食材を取り入れ、日常的にスパイスを使えば健康の維持に役立ち、何より料理の腕もグッと上がるという、まさに一石二鳥のいいことずくめ。スパイスやハーブを使い、季節を感じながら地球に寄り添う暮らしは、イキイキと「自分らしく」過ごすための大切な「キー」だと思うのです。
シナモン
日本でも身近なスパイス、シナモン。甘くてエキゾチックな香りで世界中を虜にし、「世界最古のスパイス」とも呼ばれています。「クリスマス」のイメージもあり、優しく温かい冬の香りです。身体を内側から温めるので、冷えからくる腹痛や関節痛、月経痛などの痛みを和らげ、胃腸の働きをよくして消化機能を高めてくれます。風邪の予防や諸症状にも効果を発揮します。漢方の世界ではシナモンは桂皮とも呼ばれ、葛根湯に配合されているのも納得です。
ジンジャー
ショウガは身近な食材として、また薬用として世界中で広く知られています。ピリッとしたスパイシーな香りとわずかにレモンを思わせる柑橘の香りが特徴で、日本の食卓でもおなじみですね。体を温め、免疫力を高めてくれるほか、消化促進作用や利尿作用もあるので、むくみがちなアナタにもおすすめです。気軽に使えるので、積極的に取り入れたいスパイスの一つ。シナモンと共にショウガも葛根湯に配合されています。
クローブ
漢方の世界では丁子(チョウジ)として知られるクローブ。スパイシーでありながらもバニラのような甘さを秘めたセクシーな香り。インドのスパイスミックス「ガラムマサラ」や、中国のスパイスミックス「五香粉」にも含まれています。独特な香りは世界中で愛され、辛口な料理からデザート系まで幅広く使われています。胃腸を温め、冷えからくる腹痛や、消化不良に効果的です。強い殺菌作用を持ち、14世紀頃のヨーロッパでペストが大流行した際には、魔除けやおまじないとしても使われていました。現代でも欧米では幸運を呼ぶシンボルとして、クリスマスシーズンにはクローブを使ったオーナメントや料理を作る習慣が残っています。
オールスパイス
漢方では、オールスパイスは三香子(さんこうし)とも呼ばれます。クローブ・シナモン・ナツメグの3種の香りを併せ持つオールスパイス。爽やかな香りと、ほのかに甘く苦い後味が特徴です。まるでミックススパイスのような雰囲気の名前ですが、一人三役をこなす名役者! 消化促進、血行促進、鎮痛作用、免疫力アップなど、多くの効能のあるオールスパイス。単品のクローブ、シナモン、ナツメグと併せて使うことで、それぞれのクセをうまく調和させることができます。
ナツメグ
甘くほろ苦い香りが特徴的なナツメグ。肉や魚の臭み消しによく使われるので、ハンバーグに入れるスパイスとしてご存じの方も多いかも。身体を温めてくれたり、快眠に誘う効果もあるので、不眠でお悩みの人におすすめ。眠れない夜はホットミルクにナツメグを少々! 心地よい夢の世界へ導いてくれるかもしれません。他にも胃腸の調子を整える消化促進作用があり、シナモンやクローブと共に胃腸薬の太田胃酸にも配合されています。
ルーシー流「パンプキンスパイス」レシピ
心と身体に優しく嬉しいパンプキンスパイス。じつは、手軽に手に入る材料で作ることができます。シナモンが好きならシナモンを多めに、大人っぽさが欲しければクローブとオールスパイスを増やしてみるのもいいかもしれません。あくまでこれは私のバージョン、一つの目安です。効能を踏まえて、秋冬シーズンの「セルフケア」的感覚で調合にトライしてみては?
材料
- シナモン 大さじ4
- ジンジャー 大さじ1
- クローブ 小さじ2
- オールスパイス 小さじ2
- ナツメグ 小さじ1
■ 作り方
- 全ての材料を混ぜ合わせる。
- 密閉容器に保存して完成。
長くても2年ほどで使い切りましょう。スパイスは時が経つと香りが飛ぶので、少量ずつ作るのがおすすめです。
我が家の定番オートミールクッキー「パンプキンスパイス」バージョン
パンプキンスパイスを使えば、いつものカフェラテやカップケーキが、簡単に季節を感じるスペシャルバージョンに大変身。今回は我が家の定番オートミールクッキーを「パンプキンスパイス」バージョンで作ります。肌寒い朝にローブを羽織り、コーヒーや紅茶を淹れながら甘〜いクッキーを一口かじれば、血糖値アゲアゲのベリーグッドモーニング。よい一日は朝から! ですからね。
材料 約40枚分
- バター 100g
- グラニュー糖 200g
- 三温糖 180g
- 卵 2個
- 塩 小さじ1/2
- カボチャ(茹でて皮ごとペースト状に潰す) 40g
- バニラエッセンス 小さじ1/4ほど
- 薄力粉 300g
- ベーキングソーダ 小さじ1
- ベーキングパウダー 小さじ1
- パンプキンスパイス 小さじ2
- オートミール 180g
- レーズン 130g
- クルミ(刻む) 100g
コーティング
- a) グラニュー糖 大さじ4
- a) パンプキンスパイス 小さじ1
- a) シナモン 小さじ1
■ 作り方
- 常温に戻したバターに、グラニュー糖と三温糖を加え、よく混ぜる。
- 卵と塩、ペースト状にしたカボチャ、バニラエッセンスを①に加え、さらによく混ぜる。
- 別のボウルに薄力粉、ベーキングソーダ、ベーキングパウダー、パンプキンスパイスを入れ、泡立て器でまんべんなく混ぜる。 ※粉をふるう必要はありません。
- ②のボウルに③を入れて軽く混ぜ合わせ、そこにオートミール、レーズン、クルミを加えてよく混ぜる。
- a)のコーティング材料を小皿などで全て混ぜ、小ぶりなピンポン玉程度に丸めた④にコーティングする。
- 190℃に予熱したオーブンで、9〜12分程焼いて出来上がり! 出来たてはかなり柔らかいのが正解。固くなるまで焼くと、冷えたときにカチカチになってしまうのでご用心!
材料の計量さえしてしまえば、後は混ぜ混ぜするだけ! 雑な私でも気楽に作れる、チューイー(ねっとりした食感)な「アメリカンスタイル」クッキーです。もし、ご自身の定番クッキーがあれば、そこにパンプキンスパイスを足すだけでも十分。バニラアイスに混ぜこみ、キャラメルソースをかければもう最高! ちなみにカレーの隠し味にも使えます。料理は発想力と応用力。へんてこな常識なんかに捉われず、自由に楽しんでみてください。さぁ、パンプキンスパイスの香りを嗅ぎながら深呼吸! インヘール(吸ってー)、エクスヘール(吐いてー)。あぁ、いい香り。なんだか今日もいい日になりそうです。
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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