イギリスの夏の定番 サマープディング【The Pudding Party Tomoのイギリス菓子便り】
まだまだ暑さが続きますが、エネルギーチャージに、ベリー類をふんだんに使ったひんやりデザート、サマープディングはいかがでしょう。甘酸っぱいベリーの風味と、鮮やかな見た目が、元気をくれますよ。イギリス菓子研究家でパティシエのTomoさんに教えていただきます。
目次
初夏の恵み、ベリーがたっぷり
イギリスの夏のデザートといえば、サマープディング。ストロベリー、ブラックベリー、ラズベリーなど、初夏から出回るベリー類をふんだんに使い、冷たくしていただくお菓子です。見た目はとってもゴージャス、でも、食べてみるとさっぱり。日本人の口にもよく合うプディング(デザート)です。
私はかつて、コッツウォルズにあるスリー・ウェイズ・ハウス・ホテルで、パティシエとして働いていましたが、イギリスに渡って、仕事が始まるまでの1週間、環境に慣れるためにホテルのレストランで食事をいただいたことがありました。その時、初めて口にしたプディングの、衝撃的な甘さといったら! コース料理の後だったこともあって、一口しか食べられなかったことを覚えています。ですが、慣れとは怖いもの。数カ月経つ頃にはその甘さにもすっかり慣れ、英国伝統のプディングの美味しさにハマり、仕事中によくつまみ食いをしたものです。
スリー・ウェイズ・ハウス・ホテルは、イギリスの伝統的なプディングを出すことで知られ、週末になると〈プディングクラブ〉という会が開かれます。コースディナーの後に、7種類の伝統的なプディングの食べ放題があって、その日一番美味しかったプディングに投票する、という楽しい会です。
会が開かれる日、キッチンではタライのように大きなプディングをたくさん用意して、それから、プディングに添える温かいカスタードソースを、大きな寸胴鍋で用意します。冬は主にスチームした温かいプディングを出しますが、夏はやはり、冷たいデザートがメインとなります。
夏のプディングは、メレンゲで作るロールケーキのような「メレンゲ・ルーラード」や、名門イートン校で昔から食されているという「イートン・メス」といった、軽さのあるものが人気ですが、サマープディングはその中でも主役級といってよいでしょう。夏には世界中からたくさんのお客様がホテルにいらっしゃいますが、日本からもよく団体のお客様がいらしていて、日本のグループのために小さなプディングクラブを開くこともありました。やはりこの、サマープディングがダントツ人気だったのをよく覚えています。
私は英国に渡る前からこのサマープディングを知っていたので、それを自分の手で作ってお客様に出すことができるようになって、とっても嬉しかったです。サマープディングの材料は、パン! なんと食パンを使います。イギリスには、食パンを使ったプディングが結構ありますが、食パンを使うので、手軽に作ることができるのです。
最近では、日本でもサマープディングを作る方が増えてきたように思います。SNSなどで拝見すると、さすが繊細な日本人。とっても素敵に仕上げている方もいらっしゃいますが、今回は、私がホテルで作っていた、イギリスらしいスタイルでご紹介しますね。手軽に作れるよう、冷凍のミックスベリーを使います。
では、作っていきましょう!
サマープディングの作り方
【材料】(容量300mlのプディングベイスン1個分[小さなボウルで代用可])
- 冷凍ミックスベリー 400g
- グラニュー糖 65g(この他に、型の準備に適量)
- 8枚切り食パン 4枚
*食パンは乾燥したものを使うと、ジュースがよく染みこみます。
【作り方】
- 型にバター(分量外)を薄く塗って、グラニュー糖(分量外)を満遍なく振りかける。
- 冷凍ミックスベリーを鍋に入れ、グラニュー糖を加えて火にかける。弱火で、ベリーからジュースが出てくるまでゆっくりと火にかける。あまり時間をかけすぎると、ベリーが全部煮崩れてしまうので要注意。
- ザルで濾して、ジュースとベリーを分ける。
- ベリーを冷ましている間に、パンを準備する。
1枚は、型の底より一回り大きな円形にくりぬいておく(その大きさの抜き型がなければ、包丁でパンの角を落として円形を作る)。
残りの3枚は耳を切り落とし、半分に切って長方形に。
円形が1枚に、長方形が6枚。 - ベリーが冷めたら組み立てていく。
まず、パンにジュースを染み込ませながら、型に敷いていく。型にパンを全部敷いたら、中味のベリーを入れて包み込み、ラップをして冷蔵庫で一晩休ませる。
円形のパンをジュースに浸す。
裏返して、また浸す。ジュースをたっぷり染み込ませるのがコツ。
まず、円形のパンを型の底に入れる。
次に長方形のパンを6枚、このように入れていく。型からはみ出している部分は蓋になるので、縁からちょっと飛び出しているくらいでOK。
少しずつ重ねながら、6枚すべて型に入れる。
写真のように、ベリーをぎゅぎゅっと詰める。ジュースをたっぷり取れるように多めに作っているので、ベリーは余るはず。残ったベリーはヨーグルトやアイスに添えて楽しんで。 - 型からはみ出している部分を、写真のように閉じる。
この部分は最後にひっくり返して底になり見えなくなるので、多少デコボコでも大丈夫! もしも閉じなかったら、余っているパンを小さく切って使う。
ラップしたプディングは、ジュースが垂れてもよいように皿の上に置く。プディングの上に重石を乗せて、冷蔵庫で一晩休ませる。重石は何でもよい。 - 次の日、型から外して完成!
冷蔵庫で一晩休ませた後。
うまく外れない場合は、ナイフを一周ぐるっと差し込んでみて。
イチゴやブルーベリーなど、フレッシュなベリー類を飾って。 - ナイフで切って、泡立てない生クリームをたっぷりかけていただく。
パンで作ったとは思えない美味しさに、驚くはず! 病みつきになって、ひとりでこの半分を軽く食べてしまいますよ。私の夫は、これは1人分のサイズでしょ? と言い張って、いつも食べ過ぎます。我が家では夏になると、朝ごはんにサマープディング! というリクエストもよく受けます。皆さんもぜひぜひ、作ってみてくださいね!
Credit
写真&文/The Pudding Party Tomo
イギリスのプディングの美味しさをもっと多くの人に知ってもらいたいと活動する、イギリス菓子研究家、パティシエ。ル・コルドン・ブルー横浜校にて菓子ディプロムを取得。英国コッツウォルズのスリーウェイズ・ハウス・ホテルにてイギリス伝統菓子作りの腕を磨く。
〈The Pudding Party Tomoとイギリス菓子作り〉 https://youtube.com/channel/UCV1hGcG5t0SELBBiuJ1GqBA
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