春から夏にかけて出荷される、採れたてのジャガイモ「新ジャガ」。皮が薄く、水分が多くてフレッシュな味わいが特徴です。「皮の近くにビタミンCが豊富に含まれているので、皮ごと食べるのがおすすめ」と言う神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに、5種類のジャガイモの特徴を交えながら、シンプルに「茹でる」「揚げる」「焼く」の3種の調理法で作る、簡単「新ジャガ」料理をご紹介いただきます。
目次
新ジャガのシーズン到来!

「新ジャガ」とは、春に収穫されたもの、収穫しはじめのもの、収穫後貯蔵せずに市場に出たもの、完熟前に収穫したものなどなど、定義はあいまいで諸説あるようです。通常のジャガイモは収穫後2~3カ月程度冷暗所で貯蔵されてから、スーパーなどに出荷されますが、新ジャガは収穫してからすぐに出荷されます。採れたての新ジャガにはビタミンCが豊富に含まれ、みずみずしく皮が薄いため、皮ごとジャガイモの風味を味わうことができるのが特徴です。野菜は皮の近くに栄養が多いといわれていますから、皮ごと丸ごと! 旬の恵みをいただきましょう。 美容や疲労回復にも効果的ですよ♡
キタアカリの収穫

我が家の畑では、2月下旬に植え付けたジャガイモ「キタアカリ」の収穫を、梅雨入り前の6月中旬に行いました。6月とはいえ、日差しは夏! 新緑生い茂る山の中で、お腹の底までの深呼吸。大自然の一部になる感覚は、とても心地よい瞬間です。

ジャガイモは下葉が黄色っぽくなってきたら、収穫開始の合図。

収穫したら日陰で乾かし、表面の土を軽く落としましょう。水で洗うと腐りやすくなるので、長期保存に向きません。

かわいいかわいい「ジャガイモ君」が呼吸できなくなってしまうので、ビニールの袋に入れるのはNG。新聞紙などで包み、風通しのよい日陰に置きましょう!
カラフルなジャガイモたちにご注目!
ジャガイモといえば、‘男爵薯’と‘メークイン’、一般的にスーパーではこの2種類が並んでいます。ラッキーなことに私の住む田舎町近郊の直売所では、さまざまな種類のジャガイモを買うことができます。

それぞれ色味や風味、食感に違いがあり、料理によって使い分けるのも楽しみの一つ。量り売りで好きな種類を好きなだけ買えるので、とっても便利です。お気に入りのエコバッグを持参すれば環境にも優しく、とても気分のよい朝に。

最近はインターネットでも探して買える便利な時代。食べたことないものを食べるドキドキって、何ものにも代え難い非日常的モーメント! 気になるものがあれば、ぜひお試しください。そこで! 私のおすすめの5種類のジャガイモを、特徴や調理法を交えてご紹介します。
① キタアカリ
■皮の色:黄 ■果肉の色:濃黄

ぱっと見、一般的なジャガイモ風な‘キタアカリ’。‘男爵薯’から品種改良された品種です。姿形は‘男爵薯’によく似ていますが、‘キタアカリ’のほうが小ぶりなサイズ感で糖度が高いのが特徴。煮崩れしやすいので、長時間煮込む料理には不向きです。炒め物や蒸かし料理に向いています。ジャガバターやフライ、ポテトサラダにも。

② インカのめざめ
■皮の色:黄褐色 ■果肉の色:濃黄

南米アンデスのお祭りで振る舞われていた高級ジャガイモを、日本向けに品種改良し誕生したという‘インカのめざめ’。害虫や病気に弱く栽培が難しい上、長期保存や大規模栽培には不向きな品種です。近年では知名度が上がり、生産量が少しずつ増えてきていますが、少し前までは「幻のイモ」とも呼ばれていました。

なんといっても特徴的なのは、この名前。私の中のイメージでは、インカ帝国といえば「黄金伝説と太陽神」。一度聞いたら忘れられない、なんともロマンを感じるネーミングなのです。肝心の味も一度食べたら忘れられない美味しさ。とにかく甘〜い! 風味はナッツに似ているともいわれ、栗やサツマイモを連想させる甘みがあります。舌触りもねっとりと滑らかで、煮崩れしにくい品種です。油との相性もよいので、フライドポテトにもおすすめです。
③ インカのひとみ
■皮の色:淡赤 ■果肉の色:橙

‘インカのめざめ’のアップデート版といった感じで、風味や甘み、黄色い肉質をしっかりと受け継ぎ、さらになめらかな舌触りが際立つのが、この‘インカのひとみ’。皮も特徴的で、瞳(ひとみ)のような「まだら模様」。煮崩れしにくく、揚げ物や炒め物にもおすすめ。コク深い味わいで、とんでもなく滑らかなテクスチャーなので、まずは! 蒸かしイモなどのシンプルな料理で味わってみてください。

④ ドラゴンレッド
■ 皮の色:赤 ■果肉の色:赤

皮も果肉も赤い、陽気な見た目のジャガイモです。赤色の成分であるアントシアニンは茹でると抜けやすいので、皮付きのまま茹でましょう。煮崩れしにくく、‘男爵’と‘メークイン’の中間のような質感なので、用途も広く調理しやすい品種です。色味を活かし、ポテトサラダやポテトチップス、ポタージュにして料理に彩りを!

④ シャドークイーン
■皮の色:濃紫 ■果肉の色:紫

毒々しいほどに綺麗な紫の‘シャドークイーン’は、抗酸化作用をもつアントシアニン色素を豊富に含み、健康志向のジャガイモとして注目されています。加熱しても果肉の紫色がしっかりと残るので、色味を生かしたスープやきんぴらなどがおすすめです。

シンプルに!3種の調理法で「ジャガイモ」を楽しむ

旬の恵みは手をかけずとも、美味しさが詰まっています。今回はシンプルに、「茹でる」「揚げる」「焼く」の3種の調理法で作る、簡単ジャガイモ料理をご紹介します。
BOIL 茹でる
「ハーブバターで食べる茹で新ジャガ」

ジャガイモの美味しい食べ方といえば、まず「ジャガバター」。ジャガイモのホクホク感とバターのコクが最高のコンビネーション。ふと我に返り、カロリーを考えると少しひるんでしまいますが、美味しいものは美味しい! 後悔は後回しにして大いに楽しみましょう。今回は‘インカのひとみ’を、ハーブを刻み混ぜ込んだ「ハーブバター」で召し上がれ!
■ 材料
- ジャガイモ 7個程
- 有塩バター 150g ※常温に戻しておく
- フレッシュハーブ 適量 (今回はイタリアンパセリ、バジル、セージ)
- (ニンニクのすり下ろし お好みで少々)
■ 作り方
- ハーブの葉を茎から外し、細かいみじん切りにする。
- ボウルに①とバターを入れ、フォークなどでよく混ぜる。クッキングシートで筒状に成形し、冷蔵庫で冷やし固める。
- ジャガイモを半分にカットし、鍋で柔らかくなるまで茹でる。熱々のジャガイモにハーブバターを絡めて完成!
ハーブバターって、なにかと便利。バケットに塗れば立派なスターターになるし、お肉料理に添えたり、卵料理との相性もバッチリです。ローズマリーや、タイムなどでもOK。適当に作れる魔法のバター! 冷蔵保存は1週間、冷凍保存では1カ月を目安に食べ切りましょう。
FRY 揚げる
「クミンソルトで食べる新ジャガのポテトチップス」

みんな大好きポテトチップス! 今回は‘シャドークイーン’、‘インカのめざめ’、‘ドラゴンレッド’を使い、カラフルなポテトチップスを作ります。味の決め手は「クミンソルト」、エキゾチックな風味とワイルドな歯ごたえで、ついつい手が止まらなくなるかも。
■ 材料
- ジャガイモ 7個程
- 塩 大さじ1
- クミンパウダー 大さじ1
- オニオンパウダー ひとつまみ
■ 作り方
- 塩、クミンパウダー、オニオンパウダーを混ぜ、クミンソルトを作る。
- ジャガイモを皮つきのままスライサーでスライスする。
- 高めの温度の油(分量外)で②を揚げる。 ※水にさらさないでそのまま揚げます。
- クミンソルトを適量まぶして完成!

クミンソルトは焼き鳥にもナイスマッチ! マヨネーズとの相性もよいので、ディップやポテトサラダにぜひ使ってみてください。
BAKE 焼く
「簡単サマーディップで食べるスマッシュポテト」

小さめの新ジャガで、ぜひ試していただきたいのが「スマッシュポテト」。茹でてからオーブンで焼くので、ジューシー&クランチー! 今回はスイートチリソースとサワークリームを使った、夏にピッタリな簡単ディップで、カリカリに焼いた‘キタアカリ’を召し上がれ!
■ 材料
- 新ジャガ 小さめ20個程
- スイートチリソース 大さじ3
- サワークリーム 大さじ3
- 塩・胡椒 少々
- オリーブオイル 適量
■ 作り方
- 大さじ1の塩(分量外)を入れた鍋で、ジャガイモを柔らかくなるまで茹でる。
- スイートチリソースとサワークリームを器に入れ、ディップを作る。 ※混ぜても混ぜなくてもOK。
- ベーキングシートに軽くオリーブオイルを塗る。ジャガイモを並べ、瓶の底などを使って潰し、塩・胡椒とオリーブオイルを振る。 ※バラバラにならない程度に軽く潰す。
- 230℃に予熱したオーブンで、表面がカリカリになるまで15〜20分ほど焼く。ディップをつけて熱々で召し上がれ!
さて、いかがでしたか? 今回はレシピとはいえないほどに簡単な、3種をご紹介しました。どれも汎用性があり、日々の食卓で活躍してくれるアイデアだと思います。料理や人生がうまくいかない! と、思い込んでいるあなた。ぜひ「汎用性」や「応用力」にフォーカスして毎日を過ごしてみてください。引き出しなんて、あっという間に増えますからね! 「新ジャガ」はその名の通り、英語で「NEW POTETO」。採れたてフレッシュな「NEW ME」(新しい私)で毎日を楽しみましょう。
Credit
写真&文 / ルーシー恩田

ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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